MythIII 〜光を束ねし者〜 日本語版

Text by 大路政志
12th Dec. 2002

「Myth」シリーズの最新作が,日本語版となって登場!

地形,天候,敵/味方のユニット特性を常に念頭に置いておき,その状況下での最前の一手を繰り出していこう!

 「MythIII 〜光を束ねし者〜 日本語版」(以下,MythIII)は,"Mythシリーズ"前二作から約1000年前の世界を舞台とする,ファンタジックRTS。基本的な操作系統/システムは前作「MythII 〜ソウルブライター〜」とほぼ同様だが,フル3Dの緻密なグラフィックスを始めとする演出面や,登場ユニットの追加/変更など,ゲームのさまざまな面がパワーアップされている。超有名作が並ぶRTSの中では,(日本では)やや知名度の低いシリーズ作品かもしれないが,戦術そのものを楽しむゲームとしては非常によくできたゲームなので,このレビューを参考にし,購入を検討してみてはいかがだろうか。

重厚な物語性/背景設定は,好みの分かれるところかも

 冒頭で述べたように,本作の舞台はシリーズ前二作から約1000年前の世界。プレイヤーは"狼"の異名を持つ伝説の英雄「コナフト」となり,魔族/巨人族らによって全滅の危機に瀕している人類を救うこととなる。ゲームはコナフトの人生を追っていく形式で進んでいき,チュートリアルを含めて全26のステージが用意されている。ステージ開始の前後には,その作戦を開始するに至った経緯,作戦成功による状況の変化などが語られ,ゲーム展開に重厚な物語性を付与している。
 この"物語性"という要素は,Mythシリーズを語るうえで欠かすことのできない大きな魅力の一つだ。もちろん,ほかのRTSの多くにもストーリー性は備わっている。しかし,まさに最低限のストーリー性(戦うための動機付け)しか備わっていないRTSが多いのは,周知の事実だろう。それに対し,本作にはまるで大作RPGのような物語性と,シリーズ作品を通しての濃厚な神話的世界設定が用意されているのだ。RTSファンにとってこの部分は大した魅力にならないかもしれないし,むしろ邪魔な要素だと一刀両断する人もいるだろう。だが,この過剰なストーリー性は,Mythシリーズにハマッたユーザーにとっては,なくてはならないものなのだ。おそらくMythシリーズのそういった面が,ある意味"一見さんお断り"的な雰囲気を醸しだし,結果知名度の低さに繋がっているように思える。もしそうならば,ゲーム自体はしっかり作られているだけに,残念でならない。

チュートリアルでは,移動/攻撃方法やフォーメーションの組み方など,基本的な操作が学べる 軍の切り札ともいえる魔法の使い手達。破壊力のある火球の魔法や,敵ユニットを味方にしてしまう魔法なども用意されている

「ごり押し不可能,戦術命」のゲーム展開がしびれる!

限られた兵力で最高の結果を残すため,あれこれと戦術を錬ろう。基本的にはユニットを持ち越せないので,多少の犠牲ならばアリといえばアリだが

 Mythシリーズをストーリー重視のRTSだと思っている人が多いのは,想像に難くない。が,だからといってゲーム性まで軽んじているユーザーがいるならば,それは偏見というものだ。実際にプレイしてみれば分かるが,MythIIIは極めて戦術性の高いRTSである。ここでは,本作の戦術性を高めている要素をいくつかピックアップし,解説していこう。

 まず第一に,本作では基本的にユニットが成長しない。コナフトを始めとする一部の主要キャラクターを除き,次ステージへのユニットの持ち越しもない。プレイヤーは,作戦/ステージ単位で,与えられた戦力のみを運用して敵と戦うことになる。ユニット育成要素まで登載されだしたほかのRTSのように,一部の高レベルユニットを用いてのパワープレイができないので,イヤでも戦術を錬る必要があるのだ。もちろん,ほとんどの作戦では敵軍のほうが戦力的に優位なので,攻撃のタイミングや侵攻ルートの選び方一つで,勝負の天秤はいともたやすく敗北に傾く。的確な用兵術と判断力のみが,勝利を得るための武器になるのだ
 第二に,戦場の地形や天候が大きな意味を持っていること。地形の高低差は,ほかのRTSでもうまくシステムに採り入れられている(基本的に高所が有利,移動力の増減など)が,本作ではそれがより強く反映されているのだ。弓兵部隊を小高い丘に配置することのメリットや,左右の崖上から降ってくる投げ槍の脅威を強く実感できるのは,非科学武装による戦闘に興味を持つ人にとってはこたえられない魅力だ。また,強風が吹いていれば弓矢が流れ,雨や雪が降っていれば視界が悪くなり,火矢やドワーフカクテル(手榴弾のようなもの)が使い物にならなくなる。さらに砂地や雪上には足跡が残り,それを辿ることで敵の足取りを追うことが可能(その逆のパターンも発生しうる)であるなど,とにかくリアルな仕様が盛りだくさんなのだ。ただ美しいだけの,"風景"としてのグラフィックスなら,本作よりも優れている作品はいくつもあるだろう。だが,戦術的に意味のある"環境"としての緻密なグラフィックスを備えるゲームは,それほど多くはないはずだ。
 敵,味方ユニットの個性がはっきりしていることも,本作の戦術性向上に大きく貢献している。味方軍(シングルプレイゲーム時のランカーファン軍)の代表的なユニットは「戦士」「弓兵」「ヘロン衛兵」「魔導士」「工兵」で,このうち白兵戦に使えるのは戦士とヘロン衛兵だ。ただヘロン衛兵は特殊技能として数回分の治療を行えるので,乱戦に参加させるのは愚策である。またほかのユニットは遠隔攻撃タイプだが,基本的に足が遅く,打たれ弱い。さらに工兵の投げるドワーフカクテルは,敵だけではなく味方にもダメージを与えるので,ほかのユニットとの連携にかなり気を遣わなくてはならない。一方敵軍(闇の軍勢)にも,水中に潜んでいることもある「スラル」,浮遊しているため地形を無視できる「ソウルレス」,滅びるときに大爆発を起こす「ワイト」,ハンマーの一振りで敵を瞬殺する「鉄の巨人」などなど,実に多彩なユニットが揃っている。人によっては,敵軍と比較して味方軍ユニットのバリエーションの少なさを嘆くかもしれない。しかし,味方軍にさまざまなタイプのユニットが揃っていたら,戦術を練る楽しみの大部分が失われてしまいかねない。制限が多く,敵が強大だからこそ,ユーザーの立てる戦術が重要になってくるわけだ。そういった意味では上級者向けのゲームといえるが,ユニット操作や部隊分け,陣形選択などは非常に簡単だし,ゲーム中いつでもセーブ/ロードが可能なので(これ意外に重要!),リトライするにも手間がかからない。作戦ごとに難易度も設定できるので,Mythシリーズの硬派なイメージに気後れしているRTSファンでも,十分遊ぶことができるだろう。

シングルプレイヤーゲームで遊べるミッションは,チュートリアル(リスト最上段訓練キャンプ)を含めて全26面。各ミッションごとに,難易度の設定も可能だ チュートリアルでは,移動/攻撃方法やフォーメーションの組み方など,基本的な操作が学べる ミッション選択後には,シブい雰囲気のグラフィックスと共にストーリーが流れる。ミッション達成後には,詳細な戦績画面も表示される
ミッション選択後には,シブい雰囲気のグラフィックスと共にストーリーが流れる。ミッション達成後には,詳細な戦績画面も表示される ミッション遂行中でも随時ヒントを参照できるので,ストーリーをスキップしていても目的を見失うことはない 地形,天候,敵/味方のユニット特性を常に念頭に置いておき,その状況下での最前の一手を繰り出していこう!

脱初心者〜上級者にオススメしたい硬派な一本。戦術マニアもぜひ挑戦を!

的確なフォーメーションで戦いに望み,的確なタイミングで攻撃をしかければ,おつむの弱いアンデッドごときは瞬殺できる

 過剰とも思えるほどの重厚な神話/物語性と,極めて戦術性の高いゲーム展開が,MythIIIの二大特徴といえるだろう。この二点を併せ持つ本作が,国内のRTSファンにさほど認知されていないのは,やはりライトユーザーに対するハードルの高さゆえだろうか。しかし,forGamer.netを毎日欠かさずチェックしているようなRTSファンならば,シリーズ未体験でもすんなり遊べること請け合いだ。大作オンパレードのこの時期に,新たな楽しみを開拓しようかと考えているRTSファンは,一度プレイしてみてはいかがだろうか。本作の背景世界と戦術性の奥深さに一度ハマれば,極めてエキサイティングなひとときが過ごせるはずである。

マルチプレイについて〜豊富な対戦メニューと競技性の高さが魅力的!〜

 つい先ほどマルチプレイゲーム(LANによる二人プレイ)を遊んでみたのだが,これがかなり面白かった。敵戦力に与えるダメージを競う"ボディーカウント",マップ上に点在するボールすべてにタッチした軍が勝利となる"戦利品",両軍で旗を奪い合う"キャプチャーザフラッグ"などなど,計10種類もの競技が選べる。軍編成に関しても,シングルプレイヤーゲームでの敵軍(闇の軍勢)が選べたり,兵士の構成を変更したりできる。実力に差があるプレイヤー同士が対戦するならハンデも付けられるし,純粋に戦術手腕を競い合いたいなら同等の戦力での対戦も可能だ。
 対戦に協力してもらった友人によると,
「対戦目的のみで買うのもアリなゲーム。長い時間遊べそう」
とのこと。確かに,筆者も対戦目的で購入しても損しない面白さだと思った。残念ながらインターネットを介してのマルチプレイは未体験だが,大人数でプレイすれば面白さはさらにアップするはず。マルチ対戦が好きな人には,声を(ちょっと)大にしてMythIIIをオススメしたい。

薬草を使って味方を治療できるヘロン衛兵は,長期戦には欠かせないユニット。無駄死にさせないよう,常に注意しておきたい ドワーフ工兵は爆破のエキスパート。ドワーフカクテルを投げたり,地面に爆薬をセットしたりできるのだ。ただし扱い方を間違えると,敵だけではなく味方も木っ端微塵に……
軍の切り札ともいえる魔法の使い手達。破壊力のある火球の魔法や,敵ユニットを味方にしてしまう魔法なども用意されている グラフィックスに関するオプションは細かく設定できるので,プレイ環境に合わせて変更しておこう これはマルチプレイゲームのセットアップ画面。さまざまな対戦メニューがあるので,長い間楽しめそう。シングルプレイヤーゲームでのミッションに,友達と共同で挑戦できるモードも完備されている

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■発売元:メディアクエスト
■価格:7980円
■問い合わせ先:ユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/XP,PentiumII/500MHz以上(PentiumIII/600MHz以上推奨),メモリ128MB以上,空きHDD容量550MB,OpenGLに対応したメモリ16MB以上登載したビデオカード

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