マイクロソフト ズー タイクーン

Text by 大路政司
4th Jun. 2002

マイクロソフト発,動物園経営SLGの実力はいかに?

動物,来客者が共に幸せになれるような動物園を目指して頑張ろう

 ここでレビューする「マイクロソフト ズー タイクーン」は,マイクロソフトが発売した動物園経営SLG。プレイヤーは,動物の買い付け,飼育,繁殖はもちろん,園内の空間デザインやサービス施設の設置などもこなしつつ,理想の動物園を作り上げていくこととなる
 実際にプレイしてみると,経営SLG色はかなり希薄なので,数字の遣り繰りや難解なゲームが苦手な人でも,すんなり遊ぶことができるはずだ。ただし,動物の飼育や動物園のデザインに関しては,非常に奥の深い作品に仕上がっているので,じっくりと時間をかけて遊びたいゲーマーにもオススメできる。とりあえず,動物が嫌いでなければ誰でも楽しく遊べるゲームであることは確かなので,興味のある人は以下の本文に進んでほしい。

意外なほどの知的興奮が味わえる動物飼育が面白い

 本作には,キリンやゾウ,ライオンといったお馴染みの動物から,ユキヒョウやローランドゴリラといった希少種まで,多種多様(40種以上。パッチや,キャプションで紹介した裏技を用いればさらに増える)な動物たちが登場する。プレイヤーは,各動物に設定されている生息地,習性,ほかの動物との相性などを考慮して,その動物にとって最適な環境をデザインし,展示場を作っていくこととなる。無論,ただ動物を展示するだけなら,囲いの中に動物を放り込むだけでもOKだが,動物たちには「しあわせ度」「住みごこち」といったパラメータが存在するので,あまり適当な展示場を作ってしまっては,動物たちが不機嫌,不健康になってしまう。そんな哀れな動物たちを見た来場客は,その動物園に悪い印象を持つので,来場者数=動物園の収入も当然減少してしまう。つまり,動物のための健全な展示場作りこそが,動物園経営の最も大切なポイントなのだ
 だが,この「健全な展示場作り」がなかなか難しい。ある程度の快適度ならば,飼育係のアドバイスを実践するだけで容易く実現できるのだが,完璧な環境を作ろうと思ったら,動物の情報(ゲーム中で参照可。非常に詳細な情報が文章で得られる)を熟読し,生態を把握してからいろいろと試行錯誤を繰り返さなければならない。ポピュラーな草食動物やライオンなど,飼育が容易な動物ならば,さほど苦労することもなく「完璧な環境」を作ることが可能だが,ユキヒョウやパンダといった希少種の飼育を極めるには,相当な熟練が要求されるはずだ。
 ある意味,パズルゲームや「間違い探し」にも似た魅力を秘める展示場作りは,高度に知的で,プレイヤーの向上心をあおってくれる。とかくルーチンワークとなりがちな「箱庭ゲームの施設配置要素」だが,本作においては,最大の魅力といっても差し支えないほどだ。この点は,素直に,声を大にして評価してもいいだろう。

来客者のリストはこまめにチェックし,彼らが何を求めているのかを知ろう 某国外交戦略の最重要アイテムともいえるパンダも,もちろん飼育できる。この凶悪なまでの可愛さの前に,来客者たちも大喜びだ 動物園の入園料は,臨機応変に調整。序盤は安く抑え,来園者のご機嫌を伺い,経営が軌道に乗ってきたら,高めに設定して客足を(ゆるやかに)抑えるのがオススメ

かなり手強いシナリオゲーム。キミは全クリできるか?

来園者を楽しませるための各種施設を建設することも重要。レストランやメリーゴーランドは,大切な収入源としても期待できるぞ

 本作には,自由にゲームを楽しめる「フリーゲーム」と,それぞれに目標/制限時間が設定されている「シナリオゲーム」の,二つのゲームモードが搭載されている。筆者の場合,この手の箱庭系経営SLGをプレイするときには,自分好みの環境をじっくりと作り込み,完成した理想郷を眺めて悦に浸ることこそが最終目的なので,「シナリオゲーム」の類にはさほど魅力を感じない。しかし,本作の「シナリオゲーム」には,そんな筆者でさえもハマってしまう,不思議な面白さがあった。
 「シナリオゲーム」には,ゲームの基本的な遊び方が学べるチュートリアルを含めて,16のシナリオが用意されている。各シナリオは難度が設定されており,「やさしい」シナリオをすべてクリアしたら「普通」に,「普通」をすべてクリアしたら「難しい」に挑戦することができ,最終的には「非常に難しい」シナリオに挑戦することができる。
 この手の箱庭系経営SLGの「シナリオゲーム」では,「期限日時までに目標金額を稼げ」というような目標が設定されていることが多く,コツさえ掴んでしまえば(時間さえかければ),簡単にクリアできてしまう。癒しの場としての理想郷を求める筆者のようなユーザーにとって,中途半端な制限のあるシナリオなどは,高難度のチュートリアルにほかならないのだ。
 「ズータイクーン」の場合,ゲームの軸である「動物の飼育(健全な展示場作り)」そのものが楽しい作業であり,さまざまな条件化で動物園経営をすることが,動物飼育のトレーニングにつながるため,「シナリオゲーム」嫌いの筆者も,自ら進んでプレイしてしまった。また,「シナリオゲーム」の舞台となる各動物園のデザインがそれぞれ美しく,興味深いものなので,自分の理想郷作りのいい参考にもなる。もちろん,「高難度のチュートリアル」などとはいってられないような手強いシナリオも存在する(「島の動物園」では,ちょっとした発想の転換が要求される)ので,硬派な経営者たちにもぜひ挑戦してもらいたい。

「シナリオゲーム」は難度別に分けられている。3段階に分けられたチュートリアルでは,ゲームの基本をテンポよく学ぶことができるぞ 限られた時間内で,設定されている目標をクリアしていく「シナリオゲーム」。地形の変更や施設の設置は自由だが,マップは各シナリオで固定されている 「フリーゲーム」では,30種近いマップの中から,好きなものを選択可能。スタート時の資金を調節すれば,序盤の難度も調節できるぞ

空間デザインの自由度もかなりのもの。箱庭ファンにはたまらない

動物園の入園料は,臨機応変に調整。序盤は安く抑え,来園者のご機嫌を伺い,経営が軌道に乗ってきたら,高めに設定して客足を(ゆるやかに)抑えるのがオススメ

 動物園に設置できる施設やアイテムは,全175種類。レストランやギフトショップ,メリーゴーランドなどの,動物園の経営に直結するような施設から,ベンチやアーチ,噴水や花壇といった,園内の景観/快適度にかかわるようなアイテムまで,実に多種多様なモノが用意されている。まずは,来場者の不満や要望に応える形で施設を建設していき,客の満足度がある程度高まってきたら,細かな空間デザインに取りかかるのがベストだろう。配置できるアイテムの種類が膨大で,それぞれの配置方法によっては思いもよらない景観が作れるので,空間デザインは,経営が軌道に乗りだしてからの新たな楽しみとなること間違いなし。理想郷の実現という大いなる自己満足に浸るために,ほかのユーザーや実際の動物園などをチェックしてみるのも面白いし,ゲームの参考にもなる。
 これは余談だが,本作に最もハマっている時期,「プロの動物園の空間デザイン」を学ぶため(それと,本物のパンダを見るため)に,上野動物園へ足を運んでしまったほどだ。ちなみに,筆者が上野動物園に行ったとき,肝心のパンダは出張中(?)で不在だった。帰宅後すぐに「ズータイクーン」を立ち上げ,パンダの買い付けに異常な執着を見せたのはいうまでもない。

「まったりと熱中」できる良作。拡張パックや次回作の発売を激しく希望!

 個人的にとても面白いゲームだったため,遠慮なく褒めちぎってしまったが,問題点がないわけでもない。まず,動物園の運営に欠かせないスタッフ(とくにメンテナンス員)の行動パターンに,無駄が多すぎる。目の前に劣化した檻があるというのに,遙か遠方のゴミをのんびりした歩調で回収しにいってしまうのには,ゲーム中何度もイライラさせられた。飼育係のように担当区域を設定できたり,あるいは行動パターンを設定できたりすればいいのだが。また,優れた箱庭ゲームであるにもかかわらず,自分の動物園内を3Dビューで散策できないのは,とてももったいないような気がする。3D機能を強化することは,ゲームのテンポダウンにつながることも多いが,この手のゲームには,できる限り実装してもらいたい機能である。あと,自分はそれほど苦痛ではなかったのだが,「ゲーム内の時間の流れる速度を調節できないのはツラい」という意見もよく耳にする。「まったり遊ぶゲームですから」といわれればそれまでだが,多忙な人や,スペックの低いマシンで遊ぶ人にとっては,結構切実な問題かもしれない。「イベント類が少なく,ゲーム展開が単調」という意見も,最近よく耳にするようになった。
 ……などと,とってつけたように問題点を挙げてみたが,「ズータイクーン」がいいゲームであることに変わりはない。公式サイトから動物やアイテムなどのダウンロードが可能であったり,海外では追加パック「ジュラシック」が開発されていたりと,展開にも広がりがある。基本的なシステムは十分完成されているので,動物や施設,スタッフなどが追加され,不具合等が修正されていけば,長期に渡って遊ぶことができそうだ。
 老若男女,ゲーム初心者から上級者まで,実力に合った遊び方ができる本作は,名作と呼んでも差し支えのない作品だろう。ゲームを低レベルな娯楽だと見なしたり,教育上あまりよろしくない遊技だと考える人も世間にはまだ沢山いるだろうが,「ズータイクーン」のようなゲームが増えていけば,そのような認識も徐々に解れていくはずである。
 願わくば,本作が「隠れた」名作としてフェードアウトしませんように。

飼育が難しい動物も,プレイヤー自身が経験を積めば満足させることができる。ただし,完璧を求めるならさらなる研究が必要だぞ 裏技(?)を使えば,ユニコーンやトリケラトプスを飼育することもできるぞ! ちなみにユニコーンを出現させる方法は,展示場の名前を「Xanadu」と書き換えればいい ゲーム中に特定の条件を満たすことで,さまざまな賞をもらうことができる。自分の動物園の素晴らしさの証明でもあるので,ガンガン集めてしまおう

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■発売元:マイクロソフト
■価格:オープンプライス(実勢価格5800円)
■問い合わせ先:マイクロソフト TEL 03-5454-2300
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/300MHz以上,メモリ64MB以上(98/ME),メモリ128MB以上(2000/XP),セットアップ時に必要な空き容量:350 MB以上 (600MB以上を推奨),実行時に必要な空き容量:100 MB以上

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