ウォーコマンダー

Text by TAITAI
7th Oct. 2002

第2USレンジャー大隊を率いて地獄の戦場を潜り抜けろ!

戦車は,歩兵と組み合わせてこそ威力を発揮する

 あの「サドンストライク」や「コサックス」でお馴染みドイツのゲームメーカーCDV Software社の新作「ウォーコマンダー」を,ズー完全日本語化して10月18日発売する
 この作品は第二次世界大戦をテーマに,あの有名な「ノルマンディー上陸作戦」を一人の指揮官の視点で描いたリアルタイムストラテジーゲーム。ISO 2D/3Dエンジンと呼ばれる独自の2D/3Dハイブリッドエンジンを駆使し,激しい戦いが繰り広げられる戦場をドイツ産のゲームらしい細かい描き込みで表現している。精巧なジオラマワールドを舞台に,歩兵や戦車などユニットの数々がところ狭しと動き回るのである。実世界と同様に晴天,雨,嵐などの天候の変化,昼と夜の概念などが盛り込まれており,同社の人気タイトルであるサドンストライクに比べると,若干リアリスティックな点が大きな特徴といえる。

ノルマンディー上陸作戦から始まるキャンペーンモード

 シングルプレイモードには,それぞれ12のミッションで構成される「オマハ上陸作戦」と「ユタ上陸作戦」の二つのキャンペーンが収録されている。プレイヤーは精鋭からなる第2USレンジャー大隊を率いて,海岸沿いのトーチカの破壊を目的とした上陸作戦,味方の救援や敵基地の破壊など,連合軍のパリ解放を目指して各地を転戦していかなければならない。
 キャンペーンには,ミッションを選択する戦略パート実際に任務を行う戦術パートの二つのモードが用意されている。戦略パートでは,作戦全体の状況を表わす地図を眺めながら"任務地"を選び,任務地を選択すれば,任務の概要を説明するブリーフィングが始まり,任務の目的を確認したのち戦場に送り込まれるわけだ。

 ウォーコマンダーは,生産の概念がない戦術級のストラテジーゲームである。ミッションごとにあらかじめ用意されたユニットをうまく運用し,目標の破壊,護衛,防衛など,さまざまな任務をこなしていく。狙撃兵や火炎放射器兵,ロケット砲兵など,特徴あるユニットを巧みに組み合わせながら,途中の障害物や敵を排除していくわけだ。戦術級ウォーゲームのほとんどがそうであるように,本作でもミッションの攻略にはパズル的な思考力が要求される。力押しでなんとかなっていく一部のストラテジーゲームや生産の概念があるRTSとは違い,巧妙なユニット操作と細かいユニットの使い分けが必要不可欠なのだ。全軍を大雑把に移動させるような戦い方は通用せず,要所要所で迎撃体制を取りながら斥候を走らせ,敵の位置,数,兵種を調べていかなければならないのである。
 とくにこのゲームは,自軍のユニットが驚くほど破壊されやすい。見えない位置からの狙撃,砲撃,あるいは特攻からの手榴弾など,敵のちょっとした攻撃で簡単に部隊は壊滅してしまうのだ。障害物や罠などを張り巡らせたうえで,軽装の歩兵一人を索敵に向かわせ,遠距離から迫撃砲で攻撃,敵をおびき寄せて待ち伏せなど,常に工夫を凝らして戦わないとまったく歯が立たない。神経をすり減らしながら敵の配置と行動に注意し,じわりじわりと戦線を押し上げていく雰囲気は,映画や小説のワンシーンを彷彿とさせるものがある。
 ただ,注意をしないとユニットがすぐ自爆的な行動を取るなど,システム的な不備が難しさの一端を担ってしまっている点は非常に残念だ。同社の人気タイトルであるサドンストライクもそうだが,CDV Softwareの作品はもう少し難度を下げてもよいのではないかと感じる。

死地に向かう兵士達。定番だが,いつ見ても緊張感高まる描写である 戦車は圧倒的な防御力を誇る。敵の陣地を切り崩すときに欠かせない兵器だ まず迫撃砲などで敵の防御施設を破壊しておくのが定石

どういう戦いを表現したいのか曖昧な点が課題

戦車は非常に視界が狭い。歩兵を散開させて戦車をサポートしていこう

 どういうテーマ(と面白さ)を提供するのか? という作り手の明確なビジョンは,作品の生き死にを左右する非常に大切な部分だといえる。説明するまでもないことだが,同じ第二次世界大戦でも,歩兵戦主体と戦車戦主体では大きく違ってくるし,ゲームスケールの設定によっても必要な要素とゲーム性はまったく違うモノが要求されるわけだ。
 例えば,サドンストライクは"大局的な視点"の戦術級ゲームであり,ダイナミックな部隊の移動と配置を楽しむ作品である。つまり,ユニットの一つ一つはそれほど細かく操作させる必要がなく,またそういうゲームシステムを搭載しているのだ。逆に,兵士一人一人の役割が大きい「コマンドス」など"局地的な視点"の戦術級ゲームは,細かい操作とユニット(兵士)の使い分けが重要かつ面白いようなゲームシステムを用意している。
 要するに何が言いたいかというと,提供するテーマ(面白さ)と,それを遊ばせるためのより良いシステムが,これらの作品には用意してあったということなのだ(それが最適な形だったかは別にして)。
 その点ウォーコマンダーは,やや中途半端な作りといわざるを得ない。システム自体はサドンストライクのそれにかなり近い設計だが,サドンストライクよりも個々のユニットをシビアに管理しなければならず,個々のユニットを使いこなしていくにも,ユニット管理をサポートするインタフェースの詰めの甘さ,ユニットの特殊能力の扱いの寂しさが目立つ。 ウォーコマンダーは決して作りの悪い作品ではないものの,もう少しゲームのスケールを考えたゲームシステムを用意すべきであっただろう。RTSの王道を踏まえた上で,独自の要素を盛り上げるルールが必要なのだ。個人的には,先行して味方の活路を切り開くというレンジャー部隊らしさを,もう少し感じられると良かったように思える。

 とはいえ,第二次世界大戦ものに目がないミリタリーファンや,ウォーゲームならドンと来いという強者ならば,購入を検討してみても良いだろう。チリチリとした緊張感の中,限られた兵力と弾薬で任務を果たしていく戦術ゲームの醍醐味を味わうことができる。
 ただRTS初心者などには,難度の問題からちょっとお勧めできない。初心者なら,大規模な戦いを手軽に堪能できるサドンストライク(この作品も簡単とはいえないが)のほうがお勧め。こちらもチェックしておくとよいだろう。

各地域で任務を遂行し,ドイツ軍を追い詰めていくのだ 少数の部隊で敵の陣地に乗り込まなければいけないことも 潜入ミッションも用意されている。敵基地で待機中の戦闘機を破壊しよう
部隊の割り振りなどは陣地内でしっかりと行い,戦いに万全を期すように 橋は戦術上の要所になりえる。戦車などが思うように移動できないからだ 開けた地点は非常に危険。見えない位置から敵の砲弾が飛んでくることも

このページを印刷する

■発売元:ズー
■価格:8800円(10月18日発売)
■問い合わせ先:ズー TEL 0268-38-1561
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/450MHz以上(PentiumIII/700MHz以上推奨),メモリ 64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量 600MB以上

(C) 2002 CDV Entertainment Software AG and Independent Arts Software. Unlawful duplication prohibited. All violations will be prosecuted under civil and criminal law.