VM JAPAN

Text by Seal
4th Jun. 2002

幻魔使いが術を使うと,ハデなグラフィックスが表示される。これもアニメーションしているのだから,すごいの一言

 日本ファルコムの新作「VM JAPAN(ブイエムジャパン)」は,和風ファンタジーの世界観が魅力のストラテジーゲームだ。タイトルにも付けられている"VM"とは,やはりストラテジーゲームだった「Vantage Master」を意味しており,基本的なゲームシステムはほぼ同一だ。ネットワーク対戦に対応した"Vantage Master Online"の機能も内包していて,同シリーズの番外編のようなイメージも受けるタイトルだ。
 また同社ならではのユニークなセリフ回しなども健在で,プレイしていて飽きないだけでなく,会話を聞くのが楽しくなってくるのはさすがといえるところだ。

幻魔の召喚と術の応戦によって白熱した戦いが楽しめる

 VM JAPANのゲームシステムを端的にいうと,決められたフィールド上で幻魔を召喚して勢力を拡大し,敵対する幻魔使いを倒すのが目的だ。しかしユニットとなる幻魔はチェスや将棋のコマと同じで,特定のユニットだけを使用していたのではいつまで経っても勝てない。ユニットの特徴を把握して,適材適所で使わなければならない絶妙なバランスが,こだわりが感じられる部分といえる。
 幻魔使いは,精霊のような"幻魔"を道具(幻灯器と呼ばれる)で召喚して操る特殊技能を持つ。幻魔使い自身のレベルが上がれば強力な幻魔を召喚できるようになるのだ。プレイヤーの手足となる幻魔には"地" "水" "火" "天"の四つの属性があり,地属性のユニットは水属性ユニットに対して効果が高いなどといった有利不利の関係がある。この関係はプレイに大きな影響があり,例えば火属性の幻魔が水属性の幻魔に対して,つまり強い立場への攻撃では与えるダメージが極端に少なくなる。また,プレイヤーの分身となる幻魔使いや幻魔達のライフは一定(10)で,この数値を上昇させることは不可能なため,この強弱関係を常に念頭に置きながらプレイすることが肝要だ。
 また幻魔の召喚には術数(マナのようなもの)が必要で,さらに召喚した幻魔を維持するためにも術数が必要となる。無限に召喚できるわけではないので,どの幻魔を呼び出すのかというところも熟考する必要がある。
 この術数は,"術"(魔法のようなもの)にも使用する。術には味方幻魔の能力を一時的に上昇させるものから,敵の幻魔を行動不能にするもの,範囲内にいる幻魔に大ダメージを与えるものなどがあり,使い方によって形勢逆転となりえるほどのパワーを秘めているのだ。このあたりは「Vantage Master V2」から進化しているポイントだ。
 戦場となるフィールドには高低差があり,飛び道具を使う幻魔などが影響を受けるというのも細かく作られている部分。現実のように,高所から低所へとモノを投げるたときは射程距離が伸び,逆に低い位置から高い位置へ攻撃するときは射程距離が短くなるのだ。
 フィールドの種類によっては昼や夜といった時間帯が変化するのだが,その時間帯を得意とする幻魔は能力が上昇したり,また攻撃位置が戦闘結果に反映されていて,背後からの攻撃は大ダメージとなったりと,細かいルールも存在する。高度なレベルでの戦いで非常に緊迫できるのが,このゲームシステムの優れているところといえるだろう。

おそらく8人の幻魔使いのうちでメインストーリーを歩むことになるヒミカ。星落としに関わる重要人物と関わりがあるらしい…… 戦闘ステージは,このようなマス(ヘックス)によって表される。周囲に咲き乱れる桜も絶景だ。移動補足ウインドウを利用して活路をみいだそう 四属性に分かれた幻魔たちの特徴を把握して,使いこなせなければ勝利は見えてこない。範囲攻撃の術を効果的に利用して,敵を追い詰めていこう

楽しくプレイできるシナリオモードと,高度な戦術が展開されるネットワーク対戦

学者で幻魔使いのロレンソ。マジメだが,それがかえって仇となってしまうこともしばしばある

 ゲームのモードは,「シナリオモード」「フリーモード」「ネットワークモード」の三つが用意されている。

 シナリオモードは,剣士,神楽巫女,姫,忍び,学者,海の民,入道,法師の8人の幻魔使いから一人を選択して,それぞれのストーリーを進めていく。ゲーム中では,このとき選ばなかった7人や自分の偽者幻魔使いとの対戦が待っている。これらを倒して,自分の幻魔使いとしてのレベルを上げていくのがシナリオモードの流れだ。
 戦国時代が終わりを告げた慶明12年,何者かが起こした「星落とし」によって,和国は異常な状態となってしまった。海では漁ができなくなり,砂漠と化した場所もある。政治は腐敗して,人さらいなども頻繁に起こる無法の国となってしまったのだ。この「星落とし」を仕組んだ者を見つけ出し,混沌とした状態から正常な状態へ戻すというのが大まかなバックストーリーである。
 シナリオモードでは,いくつか用意されたステージを一つずつクリアしていくのだが,1ステージクリアごとに1レベルアップ+幻灯器の入手という仕組みでプレイヤーキャラクターが成長していく。またステージで負けてしまった場合も,とくにペナルティは用意されておらず何度でもトライでき,ほかのステージをクリアしてレベルを上げてから再挑戦するというのもOKだ。このあたりの手軽さはVantage Master譲りといえる。

 フリーモードは,あらかじめ用意されたステージを,幻灯器の所持状況やレベルなどを任意に変更して対戦するモード。コンピュータ同士で戦わせて戦術を研究したり,1台のPCで友人と対戦したりと,状況に合わせて柔軟に設定を変えられるのだ。ステージは日本全土に渡って68も用意されているので,すべてを遊び尽くすにはかなりの時間を要してしまうだろう。

 最後のネットワークモードは,TCP/IPを利用したインターネット対戦のほかに,IPX,モデム接続,シリアル接続での対戦がサポートされている。ロビーを兼ねたステージ選択画面でのチャット機能(もちろん対戦中のチャット機能もある)も用意されているので,対戦後の感想戦などが盛り上がることだろう。

 シナリオモードでは章の合間に短歌が流れたり,ムービーを省略するためのアイコンが「飛ばしまする」となっていたりと,和風テイストがぎっしり詰まっている。同社ならではのテンポのよいBGMと細かいアニメーション描写,初心者にとってありがたい4段階の難易度設定など,ゲームとしての完成度には文句の付け所がない。キャラクターグラフィックスがセルアニメ調となっているので,これに違和感を感じない人であれば,文句なしにオススメできる一本だ。2002年6月27日発売予定となっているので,夏休みはVM JAPANでゆっくり過ごせそうだ。

時刻の変化によって,能力が増減する幻魔もいる。時刻が変化しないステージもある ヘックスには高さの概念があり,2段以上離れていると接近戦ができなくなっている。高所からの飛び道具攻撃には要注意だ いくつかのステージから一つを選んでストーリーを進めていくシングルモード。右のウインドウには勝利時に入手できる幻灯器が表示されている 敵の幻魔使いに勝利すると,幻灯器の入手と共に能力が上昇する。最大術数は操る幻魔の数に影響してくるステータスだ
オプション設定で「コンピュータAIの降参」をオンにしておくと,状況的に不利となったときにこのように降伏してくる。承認するもよし,却下して確実に倒してしまうのもよしだ 8人の幻魔使いのうちプレイヤーが選ばなかった7人と対戦して成長していく。自分の偽者と出会うことも なんとも形容しがたい金髪少女メリー・ルー。不思議なテンポで周囲を惑わす天然ボケが素晴らしい 幻魔使いが術を使うと,ハデなグラフィックスが表示される。これもアニメーションしているのだから,すごいの一言

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■発売元:日本ファルコム
■価格:8700円
■問い合わせ先:日本ファルコム TEL 042-527-6501
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumIIまたはCeleron/300MHz以上,メモリ[Windows 98/Me]96MB以上(64MB必須),[Windows 2000/XP]128MB以上,空きHDD容量900MB以上

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