スローン・オブ・ダークネス

Text by トライゼット西川善司
23rd Oct.2001

ゲイシャ,ハラキリの世界へヨウコソ

「日本人の女性は16歳になったら,結婚するかゲイシャになるかのどちらか決断しなければならない」
「日本人の男性は,ハタチまでにニンジュツかカラーテのどちらかをマスターしなければならない」
 かつて幼少の頃,私がイギリスに在住していた頃(マジよ)は,「これって本当なの?」と同級生に真顔で聞かれたことがある。茶目っ気たっぷりの私は「もちろんさ。ボクの母親はゲイシャなんだぜ。ちなみにボクは日本にいたところニンジュツをやっていた。」といいふらしていた。イギリスはサリー州の田舎にあるグランド・アベニュー・ジュニア・ハイスクールでは,もしかしたら今もこのウソは生き続けているかもしれない。ちなみに,当時のイギリスの小学生は,11歳の時に進学か職業訓練校かを判断する共通テストみたい なのを受けさせられていたので,「何歳になったら云々しなければならない」という「シキタリ」は妙にリアルに響いたのであった。
 さて,話は大分ずれたが,この「スローン・オブ・ダークネス」(以下ToD)は,西欧人が作った東洋中世ファンタジーのアクションRPGである。向こうの人が考えた「日本」を具現化し,いわばゲイシャ,ハラキリの世界を楽しむRPGというわけである。期待するなってほうが無理だわよな。
 本作をを制作したのは,サンフランシスコのCLICK ENTERTAINMENTというゲームスタジオ。実は開発スタッフにあのBlizzardのDiabloシリーズのデザイナ達が何人か参加しており,「和風テイストのDiablo」の前評判があった。実際,ゲームシステムはかなりに通ったモノになっているようだ。

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オープニングムービーより。最近流行のトゥーンシェイダーによる3DCGを採用。 デンチューでござるよー! ブレイモノー やっぱサムライといったら7人でしょう。

西洋生まれのジャパネスク伝奇ストーリー

 ショーグン,キラ・ベンノスケ(吉良弁之助?)が統治する古代日本,ヤマト(倭?)は神々の祝福を受けながら栄えた。が,彼の息子,キラ・ツナヨシ(吉良綱吉?)が統治する時代になると,人々は堕落し,金や富を神として崇拝するようになる。人々の愚行に対し,ついに神々は罰を与えることを決意,まずはツナヨシへ「死の呪い」をかけたのだった。
 そんな折,1人の僧侶が中国から持ち帰った巻物には呪いを解く秘薬の精製法が記載されており,ツナヨシは,この秘薬を飲んで呪いを解こうとする。しかし,それは自分を伝説の魔神「魔王・破壊鬼」へ変化させるものだった!
 魔神となったツナヨシは,自らの家来達にもこの秘薬を飲ませることで不死身の軍隊を組織,ついには周辺国への侵略を開始する。
 ……というのがToDの背景ストーリー。「なんじゃい,そりゃ」という声が飛んできそうだが,我々日本人が作る西欧ファンタジーも向こうの人から見たら似たようなもんだから文句はいいなさんな。
 ゲームを開始すると,まずは「お家(CLAN)」を選択する画面となる。ストーリー上は,「ツナヨシが侵略をしようとしている隣国」という設定だ。ちなみに「モリ(毛利?)」「オダ(織田?)」「トクガワ(徳川?)」「トヨトミ(豊臣?)」の,我々日本人には馴染みのあるダイミョーが登場するが,同一時代にこの4国があるというのは……っていちいち突っ込んでたらキリがないので気にしないように。

シングルプレイヤー紹介〜ToDの面白さとは

 本作には,RPGにはお約束のキャラクターメイキングは存在しない。「お家」を選択したらすぐさまゲーム開始となる
 プレイヤーは最初,「LEADER(リーダー)」「ARCHER(射手)」「BRICK(巨漢)」の3人を操作可能。最終的には1パーティ,4人まで同時操作が可能だ。プレイヤーが直接コントロールできるのは1人で,あとの3人は自動行動ということになる。
 物理攻撃は攻撃対象を左クリック,魔法攻撃は右クリックというシンプルシステムで,移動方法も移動したいポイントを左クリックするだけでOK。そのほかのキー操作はショートカットキーを使うというこのタイプのRPGによくある王道の操作系を踏襲しているといった感じだ。
 ゲーム進行は特定の敵を倒したり,捜査対象となる人物を捜し出したり……といった小クエストで綴られる方式。アクションRPGとはいっても,戦闘はド突き合いが基本(避け,防御といったシステムはなし)なので反射神経はほとんど不要だ。戦闘に勝つか負けるかは,戦略よりも各種能力パラメータが敵よりも上か下で決まってくると考えていい。コーヒーを飲みながら,ゆったりとゲーム世界に浸る……という楽しみ方が正しい。
 マップは広大だが,オートマッピングシステムがあるので迷うことはなく,基本的にどの場所も一度行くことでゲームが進展していくので謎解きの難易度は低め。もし,ゲームが進まなくなったら,単純に「行ってないところがある」と考えたほうがいい。

豊富に用意されたアイテムと,ユニークなパワーアップシステム

 アイテム類は,敵を倒すか,ゲームフィールドにある宝箱を開けることで入手できる。アイテムは大別すると薬や武具,防具,魔法石類といったものになるが,それぞれに膨大な種類があり,強力なアイテムやレアな(珍しい)アイテムを見つけていくことが,ToDの面白さということになる(のだと思う)
 さて,取得した武具や防具アイテムには魔法スロットなる空きスロットがある物があり,魔法石を仕込むことによってパワーアップが図れる。キャラクターがレベルアップしていくのと同様,武具,防具も自分ならではのパワーアップが楽しめるということだ。
  突き詰めて見るとToDという「ゲームの面白さ」というのは,キャラクターの成長プロセス,アイテム取得プロセス,武具防具のアップグレードプロセスに集中することになる。そうした部分に面白さが見出せないと,日本のRPGのような「登場人物間のドラマで進行していくストーリー」を楽しめるわけではない分,ToDは退屈なゲームと思えてしまうかもしれない。このあたりはよくも悪くもDiabloシリーズと一緒である。

仲間は全部で7人,ゲームフィールドに存在できるのは4人まで

 キャラクターは,ゲーム開始直後は3人しかいないが,ゲームを進行させていくことで出会いがあり,最大7人まで増える(7人という数は"7人のサムライ"が由来)。
 ゲームフィールドに存在できるのは4人までとなっているので,全7人のメンバーのうち冒険者として連れ出す4人を選ばなくてはならないのだ。とはいってもそれほど仰々しいものではなく,物理法則を超越して常にパーティのメンバーは切り替えが可能になっている。冒険にでていないメンバーはダイミョー(君主)のそばで彼を警護しており,必要に応じて,テレポートで行ったりきたりできる……という都合のよい設定だ。
 ちなみに冒険に参加せずにダイミョーのそばにいるオヤスミキャラクター(?)は,経過時間と共に体力と魔力が自動回復する。また,キャラクターが倒されてしまったとしても,ダイミョーの元に戻せば一定時間後に復活させられるのだ。傷ついたキャラクターは随時ダイミョーの元へ帰し,活きのいいキャラクターだけで冒険を進めていく……というのが基本プレイスタイルということになる。
 さて,その7人だが,以下のような個性がある。

LEADER(リーダー):必殺剣の使い手で弓も操れる万能キャラクター。カリスマに優れる
ARCHER(射手):キュードー(弓道?)の使い手で,飛び道具の扱いにも優れる。小太刀も扱えるが接近戦は得意ではない
BRICK(巨漢):巨体に見合った体力を持ち,その怪力は重剣類を難なく使いこなす
SWORDMAN(剣士):ブシドー(武士道?)を修得しており,肉体精神,その両方において卓越したパワーを誇る。剣術が得意だが,弓も撃てる
WIZARD(呪術師):7人の中で肉体的にはもっとも弱いが,逆に精神力は最も強い。魔術を使っての遠隔攻撃を得意とする。接近戦では剣や弓を使う
NINJA(忍者):俊敏性と知性に優れ,剣,弓,飛び道具,魔法なども無難に使いこなす
BERSERKER(狂戦士):格闘と槍の扱いに優れた戦士。1人で大勢を相手に出来る怪力の持ち主
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LEADER ARCHER BRICK SWORDMAN WIZARD NINJA BERSERKER

ノートPCでもプレイ可能,マルチプレイヤーもあり!

 ToDのゲーム画面は基本的に2Dベースで描かれており,DiabloIIのようなパースペクティヴ処理などもしていないので3Dアクセラレーションがなくてもプレイが可能だ(なお,ライティングのオン/オフだけは設定できるようになっている)。CPU速度も300MHzクラスがあればストレスなくプレイできるので,ノートPCでも問題なくプレイができるだろう。ただし,キーディスクが必要になるので,CD-ROMドライブは必要になる。
 画面解像度は800×600固定で,640×480や1024×768以上には設定できない。画面描画は2Dだが,サウンドは3Dサウンドに対応しており,4スピーカーサラウンドにも対応する。背後から忍び寄る敵の足音が聞こえる……のような,プレイしていてあまり音響効果に助けられるような局面はないので,あくまで雰囲気を盛り上げるためだけのものという感じではある。
 マルチプレイヤーは最大8人まで。LAN内か,あるいはシエラのサイトに設置された専用サーバーを介してのプレイが楽しめる
 マルチプレイヤーのゲームモードは二つ。一つはDiabloシリーズのように,ほかのプレイヤーと一緒にダンジョンを探検するモード。そしてもう一つは四つの「お家」に分かれて「魔王・破壊鬼」を倒すのを競い合うゲームモードだ。なお,シエラの専用サーバーを使用するアカウントは,メールアドレスがあれば無料で取得が可能で,課金はない。
 今年の秋の夜長は,ジャパネスク・ファンタジーの世界へ旅立ちませんかい。え? まだDiabloIIでいいって? このブレーモノー!!

 

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■発売元:カプコン
■価格:8800円 (2001年11月30日発売予定)
■問い合わせ先:カプコン TEL 052-760-0335
■動作環境:Windows 9x/NT4 SP5/2000,Penrium/266MHz以上(Pentium/300MHz以上推奨),メモリ32MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量100MB以上(700MB以上推奨)

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