ザ・セトラーズ4 完全日本語版

Text by Rzn
24th Apr. 2002

戦闘のポイントは,特殊能力を持った「僧侶」を活用すること。僧侶は8種類の奇跡を起こすことが可能で,敵を痛めつけたり,寝返らせることができる(文明によって能力は違う)

 ドイツのBlueByte社が開発を手がける「セトラーズ」シリーズは,中世風の世界を舞台とした開拓シミュレーションゲーム。10年近い歴史を持つ人気シリーズで,"箱庭系"というジャンルの筆頭に挙げられるタイトルだ。その最新作となる「ザ・セトラーズ4 完全日本語版」(以下セトラーズ4)は,強敵「暗黒の種族」の登場やマルチプレイ時のゲームタイプの追加などの新しいフィーチャーによって,プレイスタイルを追加しているのが特徴だ。
 プレイヤーは開拓地のリーダーとなり,自給自足的な生活を整えつつ街を発展させ,外敵から身を守るための兵力を充実させていく。ただし,プレイヤーは街の人に対して直接命令がだせなくなっており,パン屋や風車小屋などの"場所"を指定することしかできない。プレイヤーが指示したあとは,街の人が自動的に資源を採取/加工して,施設を建てていくという箱庭系の基本的なスタイルを踏襲している。
 セトラーズシリーズの魅力は,戦闘要素も含まれていること。戦闘は比較的単純で,基本的に兵士の数で押すタイプ。操作も簡便となっているので,根っからの箱庭ファンも安心して楽しめるのはさすがといえるだろう。リアルタイムストラテジー(以下,RTS)のマルチプレイで内政ばかりに夢中になり,「いつまでもシムシティしてんじゃねぇ!!」と言われてしまうあなた(筆者のことだ)にも強くお勧めしたい作品である。

きれいな街並み,スムースな資材流通など,自分なりの街を作り上げていこう 領土の概念を持つ本作。中央に映っている赤と青のラインがその境界線である。自分の開拓地を守りながら領土を広げていくのだ

生き生きと動きまわる,愛すべきセトラーたち

 このシリーズを印象深くしているのは,タイトルにも示されているセトラー(開拓者/入植者の意)の存在である。このセトラーは,RTSでの生産ユニットと同じような役割を担っている。違うのは,プレイヤーが直接操作するのではなく,勝手に働いてくれるという点だ。ちょっと乱暴だが,指示さえ出しておけばあとはこのセトラーたちが働いてくれるので,その様子を眺めていればOKなのだ。
 開拓シミュレーションというと,シムシティのようなスケールの大きな開発を想像するかもしれないが,セトラーズはもっとにぎやかで生活感に溢れている。一生懸命働くセトラーたちの姿や開拓地の風景が,暖かいタッチで描き出されているので,眺めているだけで楽しくなってしまうほどだ。少しずつ発展していく開拓地を見守る喜びは,箱庭系共通の魅力ともいえるが,このにぎやかさと生活感がセトラーズならではのポイントである。
 ちなみにセトラーズ4のグラフィックスは,デザイン面では前作とほとんど変わらないが,中身のエンジンは一新されている。最大1280×1024ピクセルの解像度に対応し,また画面の拡縮機能が追加されたことによって,いままで以上にプレイヤーの目を楽しませてくれるのだ。

セトラーたちが資材を運び,施設を作り,どんどん開拓が進んでいく。キャラクターの動きはアニメーションで表示されるので,開発の様子が手に取るように分かる

モノ作りの面白さを感じさせる,凝りに凝った生産体系

 シリーズの醍醐味ともいえる開拓地の運営の側面にも触れておこう。このゲームにおける「発展」とは,自給自足的な生産体系を作り上げることにほかならない
 ゲームをスタートすると,プレイヤーには最小限の資材とセトラーが与えられる。最初にすべきことは,「建築資材の流通ラインの確保」だ。これを行う前にいろいろと施設を建ててしまうと,すぐに資材が尽きてしまってそれ以上の施設を作れなくなってしまうのである。そこで,木こり小屋と製材所,それに石工小屋を建てて,ラインを確保するのが先決となる
 本作のこだわりが感じられる面白い部分は,木を伐採したら,それを加工する製材所が必要になることだ。すべてのモノの生産プロセスが実に細かに設定されているのである。例えば,「食料の生産」に関わってくるだけでも,麦農家,羊小屋,風車小屋,パン屋,食肉処理場,漁師小屋,猟師小屋,給水所,醸造小屋の計8種の施設がある。パンを作ろうと思えば,給水所(水)→麦農家(麦)→風車小屋(小麦粉)→パン屋(パン)の流れで,モノが各施設を流れていくのだ。
 こうしたモノの連鎖的な関係は,次の「工業資源の採取」や,さらにその次の「武器や道具の生産」まで続いていく。例えるなら,一つ一つのプロセスは小さな歯車で,この歯車をうまくかみ合わせることで全体をスムースに動き出させるのである。この歯車に油をさすのがプレイヤーの役割で,このあたりが非常に奥深い。一つの施設で8個までしかモノをストックできなかったり,石炭を掘る坑夫はパンが好き,といった細かなルールがたくさんある。施設を建てる順番を考えるのはもちろんのこと,物置き場を作ってモノの流通をよくしたり,運搬役のセトラーの数を調整するなど,きめ細かく管理していく必要がある。つまり,開拓地という「小社会」の物流をシミュレーションしているのである。
 セトラーズ4では,全部で40種類以上の施設が存在し,猟師小屋などのいくつかの施設と,「アイキャッチャー」が新たに追加された。後者のアイキャッチャーとは,ベンチや噴水などの福祉的な設備で,開拓地に花を添えるだけでなく,軍隊の強化にもつながる面白いフィーチャーだ。

前作よりも使いやすくなった倉庫(物置き場)。積極的に作ってモノの流れをスムースにしよう 新要素のアイキャッチャーを並べて建ててみた。実際にはどこに作っても構わないので,自分の開拓地を飾っていこう

好みで選べる多彩なゲームモード

 ゲームモードは,シングルプレイとマルチプレイ共に,豊富に用意されている。シングルプレイでは,4つのキャンペーンシナリオのほか,単体で遊べる10マップが用意されていて,戦闘なしで開拓に専念することもできる。
 キャンペーンシナリオでは「ローマ」,「マヤ」,「バイキング」の3文明に加え(前作はローマ,エジプト,アジアの3つだ),「暗黒の種族」を倒すという新しいタイプのキャンペーンが追加されている。セトラーズファンには,とくに暗黒の種族キャンペーンが,歯ごたえもあってお薦めだ。
 この暗黒の種族は,従来の文明とは違い,肥沃な開拓地を不毛の地へ変え,こちらのセトラーを捕まえて奴隷にしてしまう。いわばセトラーたちの天敵のような邪悪な存在である。彼らに対抗するには,強大な兵力と,新たに追加された「造園職人」を使って汚染された土地を浄化させなければならないという仕掛けだ。
 一方のマルチプレイでは,「戦闘」「協力」「経済」「開拓競争」の4つのゲームモードのほか,BlueByte社のサーバー専用のランキングモードが用意されている。箱庭系とマルチプレイというのは意外な組み合わせかもしれないが,ゲームモードに工夫が凝らされているので,結構楽しめるようになっている。制限時間内でどれだけ発展させられるかを競う「経済モード」が,セトラーズファンにうってつけのゲームモードだろう。

バイキングの街並み。施設やキャラクターなどのグラフィックスが異なるだけでなく,生産体系や兵士の能力にも特徴がある 画面右上の不気味な土地が,「暗黒の種族」の領土。大地を浄化する「造園職人」が大活躍する 土地を浄化しないと,「暗黒の種族」の力は弱まらない。兵力を溜めに溜めて一気に勝負!(非常に処理が重くなってしまう)

仕組みがわかってくると,ついついプレイしてしまう

 前作に細かなリファインを加えたセトラーズ4。目新しさに欠けるという点は否めないが,従来からのファンは安心してプレイできるのはもちろん,いままで一度も箱庭系ゲームをプレイしたことがない人でも十分に楽しめる一本となることは間違いない。
 本作の醍醐味はゲームシステムや操作に馴染むに従ってどんどん面白くなってくる部分だ。ゲームを始めたばかりの頃は,施設の多さや細かい指示にとまどうかもしれないが,丁寧なチュートリアルもあるので,じっくりと付き合ってみてほしい。最初のハードルを超えてしまえば,開拓者気分を満喫できるし,セトラーたちの姿に不思議と温かい気分になれるのだ。BGMもやすらぎを感じさせる曲が多いので,休日にのんびりとプレイしてみてはいかかがだろうか。

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■発売元:ユービーアイ ソフト
■価格:9800円
■問い合わせ先:ユービーアイ ソフト
  TEL:052-760-3691
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,MMX Pentium/200MHz(PentiumIII/500MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量250MB以上(350MB以上推奨),DirectX 7.0以上
■日本語版デモ(147MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/set4.html

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