RALLY CHAMPIONSHIP XTREME
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コクピット内のグラフィックスも,マシンごとに用意される。ちなみにこの視点でプレイすると,筆者は一瞬で酔う…… |
「PCのラリーゲームといえば?」と聞かれたら,「Colin McRae Rally」や「Mobil1 Rally Championship」(以下MRC)と答える人が多いのではないだろうか。そんなMRCを含め,Actualize(旧Europress)がリリースするラリーゲームには,必ず"Rally
Championship"というタイトルが付いている。このRally Championshipシリーズは,DOS時代にラリーゲーム傑作といわれた「Network
Q RAC Rally Championship」,その続編の「International Rally Championship」,そしてMRCへと進化を続けてきた作品群。常にリアルさを追い続け,次々と進化したラリーゲームを登場させてきた歴史あるシリーズなのだ。
このシリーズは,マシン挙動,細かく再現された破損,圧倒的なスピード感,実際のレースと同じくらい長い走行時間など,どれをとってもリアル指向。それゆえに難しいと感じるプレイヤーが多いのも事実だが,逆にマニアのプレイヤーからは絶賛されてきた。毎回,ほかのラリーゲームにはない新しい要素を取り入れてくるというのも,このシリーズの大きな特徴である。
そして今回,シリーズ最新作「RALLY CHAMPIONSHIP XTREME〜完全日本語版〜」(以下,RCX)が登場した。"最新作"とはいうものの,MRCのようなマニアック指向という
よりは,どちらかといえばビギナーからマニアまで楽しめる味付けになっている。しかし安心(?)してほしい。それは決して簡単になったというわけでなく,コアなラリーゲームファンでもてこずるようなコースも用意されているのだ。また新しい要素として,ペースノートエディタという機能が搭載されているのも特徴だ。
ゲームモードは,Scottish,Manx,Wales,USA,Kenya,Arctic(各4STAGE)のすべてのラリーに出場し,総合ランキングでトップを目指す「Campionship」,1Rallyまたは1STAGEを選択して走行練習ができる「Quick
Play」,Championshipの逆走コースでチェックポイントを制限時間内に通過して完走を目指す「Arcade」,入賞してお金を稼ぎ,マシンを買い替えながら上のステップを目指す「Challenge」,LANやインターネットで対戦する「Multiplayer」の5種がある。
登場マシンは合計27台。ノーマルクラス(A5)とWRCクラス(A8),そして往年の名車がクラシッククラスとして登場する。SUBARU公認のためかImprezaが多く,SUBARUファンはニンマリといったところか。ワークスとして参戦していないとはいえ,TOYOTA
Carollaが収録されていないのはちょっぴり寂しい感じもする 。最初から全てのマシンが使えるというわけではなく,Championshipで総合優勝を果たせば次のクラスへのフラグが立ってステップアップできるというシステムなので,ビギナーでもじっくり取り組める。コクピットやエンジン音などは各マシンごとに忠実に再現してあるので,普段ビハインドビューでプレイしている人も,一度くらいはコクピットビューでプレイしてみてほしいところだ。
激しいクラッシュでマシン全体がボロボロ。もはや,なにもなくても走り切れないのではないかという状態だ |
さて,ラリーゲームの要といえる挙動に関してだが。
マシンによる特性の違い,FFと4WDの挙動の違いなどがキチンと再現されていて,路面の状況によるマシンの挙動変化やグリップ力の違いも実にリアルだ。バンプで跳ねたときやジャンプ後の着地などでは"マシンの重さ"を感じることができ,実際にマシンでドライブしているような気分にさえなってくる。
筆者を含めたマニアックな人々(笑)が気になるであろう「マシン破損」についても完璧だ。コース上にバンプの多いRCXでは,クラッシュしなくともボディに歪みが生じ,さまざまな部分にダメージが出てくる。ジャンプの着地でバンパーをヒットしたりするだけで微妙に歪みが出ているのが,リプレイを見ると分かるだろう(外ビューなら走っていても気づくけれど)。小さなクラッシュでもしっかりグラフィックスに反映されるのは,やはりラリーファンなら嬉しいところだ。外れかけのバンパーやボンネットをバタつかせながらコースを攻めるというのもラリーらしさ満点で,プレイしながら思わずニンマリしてしまう。足回りなどのダメージもしっかり挙動に反映されており,このあたり,さすが2000年のNational
Rally Championshipで優勝を飾ったMarcus Doddの協力を得ているだけのことはあるといえるだろう。
また,美しく移り変わる風景やコースも必見。同じSTAGE内でも前半と後半で景色がガラっと変わるところがある。しかし景色に見とれていてはマシンを速く走らせることはできない。コース全体にいえることだが,道幅が狭く,ターマック(舗装路)以外の路面では凹凸や傾斜が付けられ,さらに先が見えない(ブラインド)箇所が多いため,きちんとコースを把握し,どれだけマシンコントロールできるかが重要になってくる。上り坂を全開で駆け上ったら,すぐにコーナーだった……なんてことはザラだと思ってほしい。バンパービューやボンネットビューでは,恐ろしいくらいスピード感があり(このへんはMRC譲り),瞬きすらままならないぞ。
このゲームのウリであるペースノートエディタ。実際に走りながら,マークを表示するタイミングを調整することができる。凝りだすと止まらないかも…… |
ペースノートエディタに触れる前に,まずはペースノートについて簡単に説明しておこう。ラリーでは,ドライバーのほかにコ・ドライバーが同乗する。コ・ドライバーは,事前にコースを詳細に調べ,次に来るコーナーや注意すべき点などを記したペースノートを作成する。そのペースノートを読み,次に訪れる状況をドライバーに的確に伝えるため,先の見えないコーナーも極限のスピードで攻めることができるのだ。それだけにコ・ドライバーの役目は非常に重要。
いままでのラリーゲームでは,画面上に表示されるコーナーや注意を示すマーク,音声でコ・ドライバーを再現するのが常だった。しかしRCXでは,そのマークや音声を出すタイミングを自由に変更したり,新たにさまざまなマークを追加したりできるのだ。地味ながらも画期的機能だといえる。
ペースノートエディタは,各ゲームモードにあるView Stagesの「下見走行」で使うことができる。実際にマシンを走らせながら,自分に合ったタイミングでマークを表示させていくわけだ。マークや音声はTurn(コーナー),Hazzard(注意),Surface(路面状況)と大分類され,かなりの数が揃っている。さらに連続してマークを表示させたり読みあげたい場合のために,Prefix(接頭辞),Link(関連),Suffix(接尾辞)などの接続詞も用意されている。標準の状態では表示が速すぎたり,ナビが欲しいところなのに全く表示されなかったりすることもあるが,このペースノートエディタを使えば,自分の走りに合わせてマーク表示が可能になる。コースも,自分でペースノートをいじれと言わんばかりの複雑な構成なので,気になる部分は自分で調整して,走りの助けに役立ててほしい。
シミュレーション性が高く,マシンコントロールの難しいRCXは,はっきりいって難度が高い。しかしビギナーでも自分に合ったマシン,セッティング,ペースノート作成などで十分に楽しめる構成に仕上がっている。さまざまに移り変わる美しい風景の中,細く,バンピーで挙動が不安定になりがちな道をハイスピードで駆け抜ける爽快感がたまらなく,狙ったラインをそのまま走って難しいコーナーを抜けられたときには,自分がラリードライバーになった気分に浸れるはずだ。
PCゲームらしくデモ版もリリースされているが,正直言ってその出来はあまり良いとはいえないと思う。しかし実際に製品版をプレイしてみると「デモで損しちゃってるなぁ」と思えてしまうほど印象が変わり,お勧めの1本になったことを付け加えておこう。
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