CODENAME:OUTBREAK 正規輸入英語版
日本語マニュアル付

Text by 川村ハルト
10th Apr. 2002 

ウクライナの特殊部隊が地球を救う近未来FPS

屋内では,うっかり銃声を響かせるとフロア中の敵兵を呼び寄せてしまうことになる。あまり好ましい戦法ではない

 昨年から続く大作FPSラッシュのさなか,大きく話題には上らなかったものの通好みで渋いFPSがリリースされた。それが今回レビューする「コードネーム:アウトブレイク」だ。発売以前は「Venom」の名で紹介されていたが,諸処の事情から発売直前にタイトルが変わってしまったという,めずらしい経緯を持つタイトルだ。
 ちなみに開発元はウクライナのGSC Game Worldで,このメーカーは傑作「コサックス」を世に送り出したことで知られている。これは,なかなかに期待できそうである。

 2012年,彗星とのニアミスで地球の大気が蒸発したことから,大量の隕石が燃え尽きぬまま大地に降り注いでしまう。だが,大量の隕石の落下は恐怖の序章にしかすぎなかった。降り注いだ隕石には地球外生命体の胞子が付着しており,それらは地球の環境に適応すると人類を襲うエイリアンへと成長してしまったのである。
 そこでエイリアンによる侵蝕を一掃するため,最新鋭の装備で武装した特殊部隊が出撃することになった。それがウクライナの特殊部隊"Cフォース"である。

 ……と,わりとありがちな設定でゲームは始まるが,こうしたバックストーリーから,本作はエイリアンを相手にバリバリと激しい銃撃戦を繰り広げるアクションゲームでは? と思う人も多いはず。しかし,実際はそうではなく,硬派なリアル系コンバットシムのような面も持ち合わせているのだ。このレビューでは,そうした興味深い点をクローズアップしつつ進めていくとしよう。

独特な武装でエイリアンを殲滅せよ!

多くのミッションでは,最初に出撃時刻を昼か夜か選択できる。森林などでは,夜にナイトゴーグルを使用したほうが視界がいい場合もある

 本作を一言で説明すると,バリバリ撃ちまくれるFPSと特殊部隊シムの融合といったところだろうか? ゲーム自体はスタートからゴールまで敵を倒しながら駆け抜けるだけの一本道FPSといった感じではなく,特殊部隊モノによく見られるような一定のエリア内で任務を遂行するタイプだ。

 エイリアンと戦うことは冒頭でも触れたが,ヤツらは成長段階によって形態が異なり,攻撃方法も変化する。幼体は地面を這いずり顔めがけて寄生しようとするし,成体は巨大で鋭い鉤爪で襲い掛かってくる。そして母体は卵を産み,新たな幼体の発生源となる。まるで某FPS(というより映画か)のエイリアンにソックリである。
 だがゲーム中でプレイヤーが相手をするのは,エイリアン本体よりも,むしろエイリアンに寄生された軍隊のほうが多いだろう。寄生された人々は知性を失うことなく,銃や各種兵器を駆使して攻撃してくる。エイリアンの手先と化してしまっている以外は,人間となんら変わらないのだ。彼らの延髄のあたりに,寄生したエイリアンの幼体の姿を確認できるだろう。

 最初にこのゲームの特徴として真っ先に目がいくのが,使用するメインアームだろう。この架空の汎用攻撃ライフルは,単体でサブマシンガンにも,レーザーガンにも,スナイパーライフルにも切り替えられる夢の銃だ。普通のFPSのように使用兵器を変更すると,銃そのものを取り替えるのではなく,リボルバー式(?)に連結したマガジン部がクルッと回転して装填弾薬が切り替わる。
 このハイテクライフルは,M-36に始まり,M-38,M-40,M-42と進化していく。ナンバーが大きくなるほど対応する弾薬の種類が多くなり殺傷力も強力になるが,重量や射撃間隔が大きくなってしまうというデメリットもある。M-40やM-42などは,1挺でSMGにもショットガンにもレーザーガンにもフレアガンにも狙撃銃にも地雷ランチャーにもロケットランチャーにも擲弾ランチャーにもフラッシュ弾ランチャーにもなってしまう。
 これ自体が従来のFPSと比べてゲーム性を激変させるほど大きな要素というではないが,雰囲気作りとしてはイイ感じだ。

バディとの2人一組で任務にあたる。途中で1人が倒れてしまっても,残された者だけで任務を遂行することが可能だ 兵士は装着しているアーマーの保護によって,水中でも約20分間もの潜水活動が可能。要するに溺れて死ぬ心配はほとんどない 敵に占拠された施設から生存科学者を救出&脱出,核ミサイルの発射阻止など,全14ミッションは内容もさまざま

バディとの連係プレイで作戦を遂行しよう!

エイリアンや寄生された軍人以外に,軍事メカまで登場する!

 Cフォースの活動は,常に2名のチームで行なわれる。バディはAIによって行動するが,アクティブキャラの切り替えはいつでも可能だ。そして二人一組の重要性はいくつかある。一つは装備の分担。このゲームは装備重量がシビアで,アイテム一つひとつの重量が厳しく加算されていく。いくら9種類の弾薬を1挺で使用できるとはいえ,弾薬はかさばるものだ。ミッションによってはミサイルが何発も必要だったり,爆薬が必要だったり,また現地で大量のデータデバイスをかき集めたりと,人手はいくらあっても足りない。
 純粋に戦術の一つとしての連携,例えば突入と支援の役割を分担することも重要だ。敵の見張り塔などを1人が制圧して援護射撃の拠点とすることで,生存率はグッと上昇する。
 また人質救出任務などでは,人質を連れたまま敵陣を突破するのはほぼ不可能に近い。そのため1人が先行して敵を排除し,もう1人が人質を連れて移動するなどの連携が必要になる。なんせ,このゲームの人質ときたら不用意にウロチョロするくせに,アッという間に死んでしまう困り者なのだ。

 また,こうした連係プレイと併せて非常に重要視されるのが,"隠密行動"だ。敵アルゴリズムの品質向上に伴い,できるだけ敵に見つからずに行動するという要素は,今どきのFPSなら程度の差こそあれ当たり前である。とはいえ,結局は火力にモノをいわせて敵を全滅させる(せざるをえない)ゲームが多い。だが,このゲームの隠密行動に対するこだわりは強くなかなかに面白い
 任務達成後,ミッションの成果に対していくつかのチェックが入る。その中で重要なのが,全エリア内の敵殺傷率,重要アイテム回収率,隊員の残存体力,そして敵に発見された回数だ。これらの成績によって,隊員の階級と能力値アップの方向性は変化する。
 "敵からの発見を2回以下に抑える"とか"敵殺傷率を20パーセントに留めつつ全重要アイテムを回収する"といった隠密行動には,高い評価が与えられる。もちろんこのゲームも,正面からバリバリ交戦して,ボロボロになりながら突き進むことは不可能ではない。だが,その成果には辛い評価を下されるだろう。全14ミッションを戦い抜くためにも,隊員の育成を怠るわけにはいかないのだ。

 それでは,理想的な隠密作戦を実現するための手段を紹介しよう。まずはアーマーの光学迷彩機能。作動させると,アーマーのエネルギーを消費することで体を半透明化させられる。もちろん万能ではないが,かなり効果は高い。ただし持続時間が非常に短いため,常に使用できるものでもない。また構造上,ステルス作動中は兵器が一切使用できず,また作動オフ後も約3秒間は兵器の作動に障害を与える。絶対に交戦を避け,時間をかけて任務に挑む気がある人向けの物だろう。
 全ライフルが標準で装備しているレーザーガンも,隠密作戦には欠かせない。これは音もなく敵を攻撃する兵器で,頭を狙えば気づかれずに敵兵の命を奪える。敵の亡骸にレーザーを照射すると死体そのものが消滅するので,死体を隠すのにも使える。ただし有効射程距離が短く,連射がまったく利かないため,戦闘向きではない。 またレーザーは,ガラスや照明を無音で破壊することができる。暗い部屋ほど敵からの発見率は下がるので,照明の破壊は屋内での活動では重要だ。
 このゲームも直立,立て膝,腹ばいの姿勢変更ができる。姿勢が与える影響は大きく,隠密性,射撃の安定性など,姿勢を低くするごとに段違いに向上していく。とくに直立状態では,SMGなんか手元がブレてまともに当たらないし,足音であっという間に発見されてしまう。こういった姿勢による影響が,ほかのFPSと比べて極端に大きく設定されている当たりも,制作者のこだわりだろう。

出撃前の武器選択画面。M-36は3種類の弾薬しか使えないが,射出間隔は短いので連射が効く。M-42はフルオートでも射出間隔が大きい スナイパースコープは優秀で,なんとマイクで音声も拾う。茂みに隠れた敵なども発見できるのだ。双眼鏡代わりにガンガン使おう エイリアンには,卵,幼体,ワーカー,ウォーリア,母体という5形態がある。卵の段階で始末できればいいが,孵化すると直ちに幼体が襲ってくる

この作品の位置付けは?

 「コードネーム:アウトブレイク」は,ビジュアルなどを見ると一見かなりの個性派のようだが,実は全体的に非常に細かな試行錯誤の積み重ねによって制作された作品だと思う。しかし,困ったことに大きな魅力は何か? と聞かれると返答に窮してしまうのだ。というのはイイ意味にせよ,悪い意味にせよ,これだ! という本作ならではの独自の要素がないためである。強いていうとすれば,新機軸と呼べる演出や要素はないにせよ,これまでのFPSやミリタリーシムの良い点を「よくまとめた手堅い作品」というのが筆者のこの作品に対する正直な感想である。大ヒットにつながらなかったのは残念だが,通好みの渋い作品であることは間違いないだろう。
 今回は英語版でのレビューとなったが,2002年4月19日には日本語版も発売されるので,この記事で興味を覚えた人はぜひとも日本語版をプレイしてもらいたい。また,当サイトには英語デモ版が「こちら」に,日本語版Screenshotsが「こちら」にUpされているので,本レビューと併せてチェックしておいてほしい。

アイテムのインベントリー画面。銃,弾薬など,各アイテムの重量はすべて計算される。敵の死体から弾薬などを奪うこともできる アーマーの光学迷彩で敵に忍び寄る。1人だったらレーザーで排除。2人以上いる場合はやり過ごすのも一つの手だ Cフォースの6人の精鋭。それぞれ能力差がある。2人だけを集中して育てるか,任務と能力を照らし合わせて投入するかはキミ次第 敵は兵士やエイリアンばかりではない。戦車や戦闘機なども存在する。地雷やロケットなどを携帯していないと勝ち目は薄い

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■発売元:ズー
■価格: 6800円(日本語版は2002年4月19日発売)
■問い合わせ先:ズー
  TEL 0268-38-1561
■動作環境:Windows 95/98/Me/2000,PentiumII/266MHz以上(PentiumIII/500MHz以上推奨,メモリ128MB以上,空きHDD容量800MB以上

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