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ネットワークRPGメーカー2000
Text by トライゼット 西川善司
/Vmag.2000年8/15号

クリックすると拡大します  7月にDiabloIIも発売され,相も変わらず強力なジャンルであるネットワークRPGだが,やはり「出来合いのゲームには満足できないや」というクリエイティヴ魂みなぎるゲーマーも中にはいるはず。「でもプログラミングなんて出来ないからだめだー」とすぐに諦めてしまう人,意気地がないぞ! アスキーから発売された「ネットワークRPGメーカー2000」(以下NRPGメーカー)を使えば,ゲーム制作経験がなくたってDiabloIIバリのネットワークRPGが作れてしまうのだから(やや誇張)。

どんなゲームが作れるの?
 NRPGメーカーで作れるゲームは最大同時8人でプレイできるRPG。自分で作り上げた世界を,ほかの8人のプレイヤーと共有することができるわけだ。
 ビジュアルは,ウルティマオンラインなどと同様のクォータービュータイプのグラフィックシステムを採用しており,なじみ深い2DベースのRPGが作れることになる。付属するグラフィックスとサウンドは総計800種以上。よくあるファンタジー系のものならば,これらを使い回すだけで見栄えのするものが作れてしまうはず。それこそマルチプレイ対応の「イース」もどきとか「ドラゴンクエスト」もどきなんかは,得意中の得意。
 さて,シナリオとしてはどんなものが作れるのか,クリエイターならこの点も気になるはず。NRPGメーカーで作れるのは,ウルティマオンラインのように「動き続ける一つの世界」にたくさんのプレイヤーが参加するタイプのシステムではなく,気の合うプレイヤー同士が集まってから同時にゲーム世界へダイブするDiablo系のシステムだ。よって,大長編の壮大な物語を作ることも不可能ではないが,数時間,もしくは数回のプレイでシナリオの終末に到達できるような短期決戦型のショートシナリオが好まれるだろう。

どうやって作るの?
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  NRPGメーカーを使ってゲームを制作するのに必要なのは,やる気と根気だけ。いうまでもなく,あらかじめ自分でシナリオを考えておく必要はあるが,とにかくプログラミング知識は必要ない。
 まず,ゲーム世界を構成する全ての基本となるのがマップ。NRPGメーカーを使ってのゲーム制作における起点ともいえる作業だ。グラフィックスがクォータービューのため一見立体的に見えるが,管理は基本的に2Dデータなので,グラフィックスチップを置いて行くだけでマップの作成が可能だ。ペイントツールのようにチップで広範囲を塗りつぶしたり線を引いたりできるので,広いマップの作成もラクにできる。
 マップがある程度できたら,「イベント」の配置を行う。言葉で聞くとなにやら難しそうに思えるかもしれないが,やることは単純明快。NPC(コンピュータ操作のキャラクター),モンスター,トラップといったオブジェクトをマップ中に配置していくだけだ。
 配置したら今度はそれぞれのプロパティを細かく設定していく。例えばNPCは,ただ突っ立ているだけだと不自然なので自発的に移動するようにしてその移動可能範囲を指定したり,話しかけたときに返してくる会話文を設定したりする。
 雑魚モンスターならば,一度倒したあとに再出現するまでのタイムサイクル(スポーン間隔ってやつですな)とか倒したときの報酬などを設定する。また,町の門をくぐって町マップから草原マップへ移動……なんていう処理を実現するには,イベント発動専用の「透明チップ」を門に配置してそこで草原マップへのワープイベントを起こすようにすればいい。
 ……とまあ,こんなふうに非常にオブジェクト指向なのでゲーム制作初心者にも分かりやすいデザインシステムになっている。

グラフィックスやサウンドは,オリジナルのものが使用できる?
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  ゲームメーカー系のツールでゲームを作ると,付属している素材を使って作っている限りは誰が作っても同じ雰囲気になってしまうものだ。オリジナリティ溢れるものを作るためにも,グラフィックスやサウンドにはオリジナルのものが使いたいと思うはず。
 グラフィックスは,NRPGメーカー側で設定する一定のルールの元に描かれたデータなら,インポートして使用することが可能だ。一般的なBMPファイルがインポートできるので,普段使っているツールでキャラクターを描いてNRPGメーカーで使えるというわけ。
 もちろんサウンド関係もインポートできる。対応フォーマットは効果音がWAVファイル,BGMがMIDI(SMF)ファイルで,これまたかなり一般的。MIDIはPCに搭載されているサウンドカードによって演奏がかなり違ってしまうので,GM1レベルの曲データにしておいたほうが無難だろう。

ゲームサーバーは誰が用意するの?
 ネットワークRPGというからには,作成したゲームをサーバーにおく必要がある。そのサーバーはどうしたらいいのか。
 この点については心配無用,発売元のアスキーTECHWinが無料で提供してくれる。ゲームの管理運用も不要,ネットワークの知識もいらない。作成したゲームはNRPGメーカーの専用コマンドを使ってサーバー側へ転送するだけでいい。
 なおロビーサーバは一つで,ゲームごとに用意されることはない(まぁ当然か)。よって実際のプレイは,この共有ロビーサーバにアクセスしている不特定多数のプレイヤーに対して参加を募り,メンバーが揃ったらパーティを編成,「ゲームデータマネージャ」で希望するゲームをダウンロードしてそれを一緒にプレイ……という進行になる。
 ところで,制作されたRPGをプレイするだけならば,NRPGメーカーのソフト本体は不要だ。TECHWinのWebサイトで公開される予定の無料クライアントソフトをダウンロードすれば,無料で数々の珍作,名作RPGが楽しめる。

シナリオコンテスト開催
 TECHWinでは,このネットRPGメーカーを使ったシナリオコンテストを2000年9月から7か月間開催するそうだ。毎月のアクセス数などを基に,月刊優秀作,通期優秀作を表彰し,その制作者には賞品や賞金が出るとのこと。秋といえば学園祭シーズン。各学校のコンピュータクラブなんかはこれで作品を作って出展して,さらに,コンテストにも応募しちゃうといいかも。



■発売元:アスキー
■価格:9800円
■問い合わせ先:アスキー
  TEL 03-5351-8728
■動作環境:Windows 95/98/2000,MMX Pentium/200MHz以上(推奨PentiumII/300MHz以上),メモリ64MB以上(推奨128MB以上),空きHDD容量50MB以上
■クライアントフリー版(4.8MB):http://www.techwin.ne.jp/view.cgi?file=game/nedango/freeclient.html
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こんなのが作れる!
 NRPGメーカーで作られたもので,現在(原稿執筆時点)プレイ可能なユーザーの作品群を紹介してみよう。各ゲームそれぞれに趣向が凝らしてあってかなり興味深い。「RPG」の枠にとらわれない自由な発想に感心する次第。