ノックス 
Text by トライゼット 西川善司 /Vmag.2000年6/15号
ノックスの世界へヨウコソ
ノックス……と聞いて「府知事の野球チームかなにか?」と疑問を抱く人もいるかもしれないが(イヤ,いない),まったく無関係である。ノックスとはこのゲームの舞台となる世界の名前だ。
この世界では,はるか昔に「ネクロマンサー」と呼ばれる死者を操る邪悪な魔術種族と人々との長い戦争があった。ネクロマンサーたちの絶大な戦力の前に人々は絶望の中で戦い続けていたが,ウィザード・ホルヴァスが開発した最終兵器「忘却の杖」をウィザード・ジャンドアが用い,ネクロマンサーたちの能力を封印したから戦局が大逆転。死者を操れなくなったネクロマンサーは恐るに足らず,人々は勝利を収めたのだった。
ネクロマンサーたちは皆殺しになったが,1人の女の赤ん坊だけは見逃してやったのだった(どうしてそういうことするかな)。かくして大きくなったこの女はヘキュバーと名のり,例によってSM系のボンデージを着込み,売れないでくすぶっているロックミュージシャンみたいなメイクをして悪の女王になり,「打倒人間ども!」をスローガンに迷惑千万な逆恨みプロジェクトを発足するのであった。
でもって,和製RPGならば高貴な血を引く勇気溢れる若い戦士が登場してくるのであろうが,洋ゲーは胡椒が利いていてひと味違う。ヘキュバーが「忘却の杖」によって封印されたネクロマンサーの秘術の復活の儀式に使った蝋燭がたまたま安物で途中で消えてしまい,その影響で空間の亀裂が地球上のフロリダの片田舎に発生。たまたまキャンピングカーの中でプロレス中継を見ていたさえない男ジャック・モーワーがノックスに転移されてしまうのだった。プレイヤーはこのジャックに扮し,元の世界に戻るために一台冒険をする羽目になる。
ノックスのゲームシステム〜2D-RPGシステムの一つの完成形か
と,このように,ふざけているんだかマジメなんだかよくわかんないバックストーリーを持つノックスだが,ゲームは至って硬派。システム自体もグラフィックスも非常によく作り込まれており,全体として見ると,ある意味「クォータービューRPGの一つの完成形」といえるほど。
プレイヤーの操作は,基本的にはマウスだけで行えるようになっている。移動は目的地を右クリックすればその方向へ歩き出す。クリックし続ければ連続的に移動するし,キャラクターから遠く離れたところをクリックすれば走り出す。実に直感的な移動システムだ(ボタンがウルティマオンラインと逆になっただけだ)。
戦闘もリアルタイムに,画面の切り替わりなしで行われる。モンスターたちはフィールド上を歩き回っており,その視界に自キャラが入れば襲ってくる。某有名CG美麗国民的RPGのように,歩いているだけで突然強引に遭遇したことになって戦闘モードに移行させられるうざったさはない。自キャラが弱っているときや,クエストに関係のないモンスターがやってきたときなんかは,逃げて自発的に戦闘を避けることも可能なのだ。
敵キャラが非常に賢くプログラミングされているのも,ノックスの特徴。こちらを波状攻撃してくるもの,ヒット&アウェイで攻撃してくるもの,負けを確信すると逃げ出すものなどさまざま。プレイヤー側も,自分が戦いやすい地形に敵を誘い込んだりするなど,敵の種類ごとの攻略パターンを作っておかないと,雑魚相手でも油断はできない。ノックスにおける戦闘は,戦略シミュレーション的な要素も兼ね備えているといえそうだ。
で,その戦闘方法も,移動操作と同様に直感的な操作系になっている。敵にマウスカーソルをあてて左クリックするだけ。弓矢や魔法などの飛び道具系武器であれば,離れた敵を左クリックすればその相手を目がけて発射する。防御動作はないが,敵を吹っ飛ばすことのできる武器を持っていれば,これを敵に先制ヒットさせることで敵の攻撃を喰らわずに回避することも可能だ。
スペースキーを押すとジャンプができるので,敵を飛び越してから攻撃なんていう3Dアクションゲームばりのアクロバットもできちゃう。連射が可能な武器ならば左クリック連打で連続ダメージも与えられる。ノックスは,アクション性もかなり高いのだ。
見やすい,遊びやすい,美しい
私がノックスで気に入ったのは,まずゲーム画面が640×480ドット,800×600ドット,1024×768ドットの3種類から選べること。これはゲーム自体には関係ない要素だが,ユーザーには実に嬉しい配慮。1024×768ドットではより広い範囲が表示されるため,遠くの敵や地形が確認できるようになり,ゲームがプレイしやすくなるのだ(DiabloIIは640×480ドット固定だし……)。広い画面サイズならば,画面上にドカドカといろんな情報ウィンドウを並べた状態でプレイしても苦にならない。
また,ノックスは分類上2DのRPGだが,3Dゲームのようなライティング効果にも凝っており,グラフィックスの光の描写が非常に美しい。キャラクターは「描ききり」のスプライトなのだが,その描き込みも尋常ではなく,例えば雑魚モンスター「オーガ」の直進パターンなど,ただ歩くだけなのにそれだけで11パターンも用意されており,3Dゲームと見まごう動きをする。
また,2Dながらプレイヤーに立体的なイメージを与えるのに一役買っているのが,開発元Westwood独自のTrue Sight技術だ。これは,プレイヤーが見えている視界の範囲のみをリアルタイムに描き出す表現法のこと。
例えば,扉の向こう側は扉を開けるまで表示されず,扉を少し開けばその隙間から見える範囲のみが描き出される。これが全ての壁や障害物に対してインタラクティヴに処理されるため,かつての見下ろし視点のRPGにはなかった臨場感を出すことに成功しているのだ。例えば「曲がり角を曲がったところにモンスターの一団が」……という3D系ゲームでしかできなかったゲーム性が,2D系ゲームであるノックスでは実現されている。
視界が遮られるということは,マップ内で迷子になりそう……という心配も同時に起こるのだが,オートマッピング機能が備わっており,一度到達した地点に関してはワイヤーフレーム描画されたマップがオーバーレイ表示されるため,その心配はない。
「スリル」と「優しさ」が程良くブレンドされたシステムで,普段RPGをプレイしない(私のような)にわかRPGゲーマーでも安心して楽しめるというわけだ。
ノックスに登場する3種のクラス
プレイヤーがゲーム開始時に選択できるクラス(職業)は3種類。職業それぞれに異なった全11章からなる壮大なシナリオが用意されているので,1本のNOXで3本分のRPGが楽しめるわけだ。それでは,各クラスについての簡単な紹介をば。
●ウォーリアー(戦士)
RPGといったらやはり戦士。登場する刀剣系武器や打撃系武器のほとんどが使える。体力が高く,打たれ強い。接近戦を得意とするが,手裏剣やブーメラン系の飛び道具も扱える。魔法は基本的に使えないので,ウォーリアー。攻撃するときのかけ声は「うぉりゃーっ」(ウソ)
●コンジュラー(まじない師)
魔法と武器が併用できるのが特徴で,肉体的な強度もウォーリアーとウイザードの中間くらい。敵のモンスターを催眠術にかけて味方にしたり,モンスターを味方として召喚したりする特技を持っている。弓も使えるので遠距離攻撃もばっちり,攻撃魔法,治癒魔法もそこそこのものを持っているので,臨機応変に戦っていける。難易度としては普通という感じ。けっこうお勧め。
●ウィザード(魔法使い)
魔力が高いので多くの強力なスペルが使えるが,その分肉体的な耐久力に乏しい。杖を打撃系武器として使えるが,そうなったときは実質,死を覚悟するとき。
魔法は「罠」として任意の地点に仕掛けたり,敵へ直接打ち込んだりできる。いずれにせよ攻撃は魔法による遠距離攻撃になる。ノックスではマウスでも攻撃魔法は唱えられるがそれでは敵に間合いを詰められてしまうため,標的にマウスカーソルをあてながらホットキーで魔法を直接ぶち込むというプレイスタイルになるだろう。よってゲーム中はかなり操作が忙しい。上級者向き。
マルチプレイにも対応
流行のネットワークRPGだが,ノックスもこの流れに乗ってマルチプレイ対応だったりする。ただ,メーカー側のサーバーによって管理される一つの世界を不特定多数のプレイヤーが冒険していくウルティマオンラインのようなスタイルではなく,どちらかといえばQuake系のようなデスマッチ系のマルチプレイルールを採用している。よって,共にパーティを組んで大冒険を……というゲームではない。なお,マルチプレイでは「フラグ争奪」「デスマッチ」などを筆頭に5種類のゲームモードが用意されている。
Westwoodが主催する対戦ロビーを利用する場合にはユーザー登録が必要だが,アカウント登録料は無料,年会費も無料だ。緻密なシングルプレイモードに比べてマルチプレイはちょっと大味なゲーム性が気になるが,一度は体験してみるべし。
■発売元:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
■価格: 8800円(対戦用CD付き)
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ・スクウェア
TEL 03-5436-6499
■動作環境:Windows 95/98,MMX Pentium/233MHz以上(PentiumII/300MHz以上推奨),メモリ32MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量500MB以上
■日本語版デモ(23.3〜45.3MB):http://www.japan.ea.com/download/main.html
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