The Nations Gold Edition
 日本語版(拡張パックつき)

Texr by 虎武須(Kobs)
16th Oct. 2002

 ここ最近,"箱庭系"と呼ばれる建国シミュレーションに目立ったタイトルがないように感じるのは,派手なドンパチも豪華絢爛なグラフィックスもない地味なジャンルであるがゆえに目立ちにくいためだろうか。しかしこと箱庭系においては,"そんなに話題になっていないけど,やってみるとかなりハマる"という隠れた名作が意外に多いものである。
 例えば,2002年秋にサンソフトから発売される「The Nations Gold Edition 日本語版」(以下ネイションズ)などはどうだろうか。ネイションズは,「Industry Tycoon」やGiantsシリーズでヒットを飛ばし,今や箱庭系での開発会社としてなくてはならない存在になった感すらあるJoWooD Productionが開発したコミカルな箱庭系ゲームで,「エイリアン・ネイションズ」の続編。海外で昨年発売されたザ・ネイションズ本編と,新ムービーやミッション,盗賊など新要素を追加し,全体的なバランス調整をした拡張パックがセットになったお買い得版である。

コミカルなキャラクター達とシビアなシステム

市民たちの機嫌はフェイスマークによって一目瞭然。個人の機嫌を左右している理由も,画面右下のタグを選択することで分かる

 ネイションズは,のどかな惑星ルカットを舞台にピモン族,アマゾン族,サジキス族という前作でもお馴染みの3種族が登場する。いずれも非常に個性的な種族なので,どの種族を選択してもすぐに愛着が沸くことだろう。例えばアマゾン族はチョコレートが大好きで,セクシーな女性が働き,ムキムキマッチョな男性が家事をし暇なときにはボディビルのようなポーズをキメる,という具合だし,ゴキブリ(?)に似た昆虫種族であるサジキス族は,欲張りで食料への執着心が強く,また重要なポストを決めるときはホラ吹き大会を催すといった具合なのだ。
 しかし建築物や生産品目などは一部を除いてほぼ同じなので,種族を変えると何をどうしていいのか分からない,ということはまずない。逆にいえば,各種族に個性を持たせておきながらも建築物や生産には個性がなく,このあたりはプレイヤーによって評価の分かれるところだろう。

 このゲームは建国シミュレーションであり,題名も"ネイション"(国家)とあるので,さぞかし壮大なイメージが沸いてくるかもしれないが,どちらかといえば部族の街,といった程度のもの。プレイヤーはその首長の役目を務め,市民の生活をコントロールすると思えばいい(正確にはちょっと違うが)。しかし市民達にはそれぞれ感情がある。町が発展するにつれて増大する彼らの欲求を満たせなければ,街を出て行ったり,犯罪行為に走るので気をつけなければならない

 ゲームは,ほんの少しの建築物と少人数で構成された村から始まる。プレイヤーは住民達の欲求を満たしつつ,教育し,職や住居を与え,食欲を満たし,さらに信仰によって神のご機嫌も伺いながら,ミッションごとに設定された目標に向かっていくのだ。当然ながらやっかいなのが,ほかの種族の存在。平和的に共存するもよし,あるいは敵対するもよし。いずれにしても町の発展,交易や戦争など,社会を潤滑に形成していくうえで必要なことをプレイヤーが一手に担うのだから,町が発展するにつれてとんでもなく忙しくなるわけだ。
 また,ゲーム中ではさまざまな物資を生産しなければならないが,これまたほかの物資やさまざまな条件が複雑に絡み合い,全体的なバランスを考えなければうまくいかない。騎士などに支払う賃金や物資が不足すれば,戦争すらもままならないシステムとなっている。見かけと裏腹に,内政も外交も手を抜けないシビアなゲーム性を持っているのだ

交易はこの画面中央に写っている飛行船を介して行う。他種族以外にも,「空飛ぶセールスマン」なるものが交易の対象になる メニュー画面で出迎えてくれるピモン人。カーソルを動かすと彼の顔や腕が追随して動くのだ。……ちょっと気持ち悪いけど 攻撃部隊は中心となる戦士,騎士,司令官のいずれかと,その従者達である。従者の種類によって対人向きの部隊や建物破壊に向いた部隊などさまざまだ。雇用するときには,部隊の構成に気を配ろう

戦闘まで見ていて楽しい!?

この肉体美を見よ! マッチョなアマゾン人の男達だが,その筋肉の使い道ときたら果実摘みと掃除,市場でお買い物なのである……

 さて,ネイションズの戦闘について説明していこう。
 戦闘ユニットは衛兵などの防御部隊と,騎士や戦士といった攻撃部隊に分かれている。このうち攻撃部隊は,ネイションズでプレイヤーが直接操作できる唯一のユニットだ。攻撃部隊は騎士や戦士,司令官とその数名の従者達で構成され,攻撃性や布陣なども設定できる。しかし,本作はRTSではないことをお忘れなく。一つの要塞には一つの部隊しか駐留できず,また給料など非常にコストがかさむので,大軍隊を組んで敵の町に攻め込むという感じではなく,小競り合いを繰り返すといった感じ。が,これがまたコミカルで見ていて楽しいのだ。

豊富なゲームモードでじっくり遊べる

 シングルプレイはお約束のチュートリアルとキャンペーン(製品内では「作戦」と呼ばれている),そしてPCと対戦する"カスタム・ゲーム"が用意されている。
 チュートリアルは親切な作りとなっているので,これをひと通りプレイしておけば,とくにマニュアルを読まずともネイションズを理解できるだろう。また作戦は,それぞれに設定された目標を達成しながらストーリーを追っていくものだ。
 カスタム・ゲームは,デスマッチ,エコノミー・ゲーム,タイム・ゲームの3種類が用意されている。デスマッチは文字通り敵の町を破壊するまでプレイするもの。タイム・ゲームは規定の日数内の得点を競うもの。そしてエコノミー・ゲームは規定数の金を獲得するまでの時間を競うものだ。

 マルチプレイはLANとインターネットに対応しており,シングルプレイのカスタム・ゲームと同じ3種類のゲームスタイルが用意されている。箱庭系は普通プレイ時間が長くなりがちだが,タイム・ゲームなどで遊ぶ時間を調整できるのはありがたい。

 のどかでコミカルな雰囲気と,シリアスなゲームシステムのバランスが絶妙なこのネイションズ。生産の効率化や建築のオーダーなど追求してみたい部分が多く,なかなかにハマり度が高い作品となっている。戦闘部分はやや地味ではあるが,箱庭ファンのみならず,秋の夜長にじっくり腰を据えてプレイするゲームが欲しいな,と思っている人にもお勧めしたい作品である。

オープニングやストーリーの分岐など,要所で見られるCGムービー。これを目当てにプレーするのもアリかも? 各種族ごとの作戦には分岐点がある。プレイヤーの好みによって異なったエンディングがあるわけだ ここまで街が発展してくると,収拾が付かなくなってくる。何が不足しているのか,なぜ不足するのかを常に把握しておかなければならない。 ブリーフィング画面は,このように簡潔なものとなっている。任務の目標に向かって街を発展させていくのだ

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■発売元:サンソフト
■価格:8800円
■問い合わせ先:サンソフト TEL 0587-55-0288
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/350MHz以上(PentiumIII/550MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),DirectX 7.0/8.0対応のビデオカード

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