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ミグ アレイ 完全日本語版
Text by 桜薗冬弥
19th Jul.2001

 第二次大戦後,米国はベトナム戦争や湾岸戦争など数々の戦争を経験している。大戦後,わずか5年で次の戦争へと赴く米国の体力は驚くべきものがある。その戦争が朝鮮戦争であり,メディアクエストから発売されている「ミグ アレイ 完全日本語版」(以下,ミグアレイ)の舞台である。

1950年代のジェット機特有の挙動をマスターせよ!

クリックすると拡大します  ゲーム中で使用できる機体は,「P51Dムスタング」「F80Cシューティングスター」「F84Eサンダージェット」「F86Aセイバー」の4機種だ。1950年当時は,ジェット戦闘機が常用的に戦争に投入された時期で,空対空の戦いでは機銃,空対地ではナパームとロケット砲という,大戦中と同様な兵装を用いていた。各々の機体にはレーダーなどは装備されておらず,インテリジェントなヘッドアップディスプレイも誘導型ミサイルもない。つまり地図で自分の位置を確認しながら目標地点に向かい,敵を目視で確認して攻撃を行わなければならないのが特徴的だ。
 周りが敵だけならわかりやすいが,実際はそうはいかない。恐らく,いかに同士討ちを避けるかということが,敵を撃破することと同レベルのプライオリティを持つフライトシムだといえる。
 フライトモデルの厳密さに関してはプリファレンスである程度設定できるが,ここはやはりリアルなモードを選んでみるのがいいだろう。  P51Dを除いたそのフライトモデルは,ちょうどジェット機とレシプロ機の中間といった雰囲気だ。パワーがあるおかげで旋回を繰り返しても速度や高度を極端に失うということはないが,高G旋回やラフな操縦桿の操作を行うと翼面から揚力の剥離が発生してすぐに失速してしまい,場合によっては復帰不可能なスパイラルダイブへと陥ってしまう。ハイパワー&ハイテクな現代の戦闘機に乗りなれた(もちろんフライトシムで)筆者に,久々に揚力を感じとって飛ぶことを思い出させてくれた。
 一方,AI機の動きに関しても及第点を与えられる。旋回戦に入っても膠着状態を崩そうとさまざまな機動を仕掛けてくるので,背後を取れたとしてもまったく気が抜けないのだ。
 また敵味方ともに2機,あるいは4機のチーム戦を仕掛けてくるので,1機を深追いするとすぐに背後にもう1機が食らい付いてくる。レーダーによる警戒システムなどあるわけがないので,常に後方の確認と,味方からの通信には気をつけていなければならない。

高い難易度のキャンペーンモードと豊富な機能のミッションエディット

クリックすると拡大します  ゲームのモードはフライトシムとしてはオーソドックスな内容だ。「ホットショット」と「クイックミッション」はシナリオなどに関係なくプレイできるモード。「キャンペーン」と「朝鮮戦争」は一連のミッションをこなしていくモードである。
 キャンペーンモードでは,5つのシナリオが用意されている。どれからプレイしても構わないが,最初はやはり時間軸に沿って順番にプレイしていくのがよいだろう。
 初期のシナリオでは,「38度線を越えて南進してきた共産軍の地上部隊を叩く」というのが主なミッションとなる。その後は戦況の変化により逐次変化していく戦場の様子が伝えられ,それに応じたミッションが作成されていくのだ。
 ここがミグアレイの魅力的な部分の一つで,ミッションをエディットすることが可能なのだ。プレイヤーのとった行動によって変化する戦況によって,自動的に表示されるミッションを手直ししたり,あるいはゼロから立案したりすることができるのだ。提示されたミッションの飛行ルートに,「ついでに破壊できそうな目標があればそれを攻撃対象に加える」などとすれば(もちろんプレイヤーの腕もそれなりに必要となるが),後々の戦況が有利となる。
 ただしミグアレイのキャンペーンは,難易度が高めに設定されている。序盤は提示されるミッションを淡々とこなしておけばよいのだが,最終的には戦況を判断して自分でミッションを立案し,部隊配備やローテーションなどのスケジューリングも行わなければならない。すべての機能を駆使しながら作戦を練らなければ,勝利は難しいだろう。
 これらのミッションエディットや戦況の分析を行なう画面に用意された機能は,とにかくやたらと多い。攻撃の必要がある地上目標や,敵部隊の動きだけではなく,敵および自軍の施設状況,自軍部隊の配備状況,パイロットの状態などなど……   ここまで詳細にエディットできるとなると,さすがに悲鳴が出そうだ。幸いなことに,すべてが日本語化がなされているので,言語的な問題で「解らない」ということはないのはうれしい部分だ。
 ほかにも,キャンペーンとは別シナリオとなる「朝鮮戦争」というモードが用意されている。これは6ヶ月間という期間の中で,一連の目標をクリアしながら進めていくものだ。自軍の機体を乗り継いでいき,経験と戦果を積み重ねて,最終的には空軍司令官となって戦いの全てを管理運用しなければならない。これもすべてクリアするのは非常に厳しい……
 このレビューのために筆者はテストプレイに結構な時間を割いたが,これを書いている時点でまだクリアできずじまいなのである。逆の発想をすれば,長く遊べることとなるので,これはこれでうれしいのだが。

自分の目と腕がすべてを左右する空中戦

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 ミグアレイの最終的なキモはキャンペーンにあるとしても,やはり重要なのは一つ一つの戦闘にあるのは間違いない。ハイテク装備の一切ない1950年当時の空戦で勝利するためには,さまざまなテクニックを駆使することが求められるのだ。
 まず一つめは,太陽を背にして戦うこと。これは非常に重要である。というのも,ミグアレイでは太陽光を受けると機体がキラリと光るので,場合によっては遥か遠くの敵を早期に発見できるメリットがあるのだ。大抵の場合,連合軍側は朝鮮半島の南側に位置するので,部隊はまず北に向かっていくことになる。プレイヤー側からすれば,雲の上を飛行中に遥か彼方で並んで輝く複数の点を発見したら即,部隊に報告を入れ散開するなりして迎え撃てばいいのである。
 次に,パッドロック機能を使いこなすことも重要。最も近い敵や地上目標を選んだり,次のウェイポイントに視点を固定したりと,レーダーが用意されていないために全ての戦闘行動はこのパッドロックに頼ることになる。レーダーに変わるものは己の目と,自軍の無線による報告しかない。ボーっと前だけ見ていては勝利は遠いのだ。
 とにかく自分の目が頼りと述べてきたが,少々気になるのは地上の表現。衛星写真レベルの美麗なグラフィックスも低空になるとかなり荒さが目立ってしまう。やや低空で敵機が自機よりさらに低空に位置し,さらに少々距離がある場合では,パッドロックしているにも関わらず,大きなドットの集まりとなってしまっている地上の表現に敵機が埋もれて全く見えなくなるのだ。まあこれも目視での空中戦の醍醐味なのだろう。しかし,地上目標もこの地形のマッピングに埋もれているので非常に見にくい。地上目標が多いマップでは,非常に気になってしまう……
 ほかにも,3Dのポリゴンの表現が少々気になった。普通にプレイしてるときには気にならないのだが,外部カメラ視点で自機を眺めたり,リプレイで戦闘を眺めているときなどに目立つ現象が起こる。これは距離が遠いオブジェクトほどポリゴンを間引くようにするという処理。恐らく演算を軽くするためと思われるが,比較的近いオブジェクトでもこの処理が行なわれてしまうようで,そのために機体の表面などがポコポコと動くように見えるのである。「まあ,俺は戦いあるのみだ」という方には問題ない部分ではあるのだが……

 ミグアレイは面倒な電子機器の操作がないので,誰にでも入りやすいフライトシムといえるだろう。フライトモデルも申し分なく,このジャンルのファンでも楽しめることだろう。8人までに対応したオンラインプレイや,自機のマーキングをカスタマイズすることなど,オプション機能も充実している。
 しかし,キャンペーンだけは敷居が高くなっている印象が否めない。それを補足するマニュアル類も,内容的にやや説明不足に思われた。ゲーム中に何かしらのチュートリアルがあればさらによいものに仕上がっていただろう。
 全体を見れば日本語化も丁寧に行なわれており,完成度も高い。幅広いユーザーにお勧めできるほか,レシプロ派の人もぜひプレイしてみてもらいたいタイトルだ。

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■発売元:メディアクエスト
■価格: 7800円
■問い合わせ先:メディアクエスト TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 9x/Me,PentiumII/266MHz以上,メモリ32MB,DirectX 7以上,空きHDD容量600MB以上
■英語版デモ(53.89MB):http://www.4gamer.net/files/demo/migdemo.exe

Mig Alley (C) 1999-2001 Entertainment International (UK)Ltd. All rights reserved. Published by Empire Interactive. Software
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