風の探索者・大陸編〜EternalFlame〜

Text by Iwahama
20th Aug.2002

■日本発,「ローグ」の血を引く正統派RPG登場

フィールド上で右クリックすると,簡易マップがメインに切り替わる。ここで移動先を指定すると,パーティが高速で移動する

 E3などゲーム関連イベントの取材でよく思うのだが,シングルプレイ専用のRPGが,確実に減ってきている。もちろんオンラインRPGが増えるのもいいことだが,シングルRPGファンとしては,正直,少しさびしい気もする。さらに国産のPCゲームに限っていえば,わずかばかりストーリー重視のアクションRPGが残っているくらいで,もっと腰を据えて遊べる,(ゲーム性を重視した)硬派なRPGは皆無に等しい。そのため筆者のような硬派RPGファンは,「ウィザードリィ8」「The Elder Scrolls III:Morrowind」などわずかに残っている海外産シングルRPGを遊ぶことで自らを満足させる毎日である。

 ところが,久々に筆者がビビッと来る国産RPGが登場した。そう,この「風の探索者・大陸編〜EternalFlame〜」(以下,大陸編)である。ハッキリいってストーリーはあってないようなものだし,海外ゲームのようなドハデなグラフィックスでもない。そのうえ一般的な国産RPGのようなアニメ絵のキャラクターが画面いっぱいに登場して音声で喋りまくる,なんて演出もない。そういう意味でジミなのは否めないが,しかし,そんなこととゲーム性は関係ない。大陸編は,"ダンジョンに潜る"という行為そのものが楽しい,コンピュータRPGの古典「ローグ」の血を引く正統派RPGなのだ。



探索した場所は自動的にマッピングされ,フィールド上に薄く表示される。この表示はオフにすることができるうえ,細かく色を調整できてなんとも便利 探索した場所の情報は,探索日誌に細かく記録される。完成率まで表示されるので,ついついすべて100%にしたくなる


■Q:なぜ危険をも顧みず冒険するのか? A:それが仕事だから

腹が減ってはいくさはできぬ。いや,腹が減るから戦うのかな? ともあれ,食料はこまめに買い足しておこう

 プレイヤーが操るのは,4人のキャラクターからなるパーティだ。
 初めて大陸編をプレイするときは,まずキャラクターメイキングを行う。ところで,筆者はこのキャラメイクという行為が好きである。そして同じ嗜好の人は多いだろうことは,想像に難くない。実際問題,どのゲームでも,どんなキャラクターを作ろうがゲームが始まってしまえば大して違いはないのだが,ついつい凝ってしまうのだ。しかしこのキャラメイクも,最近ではMMOタイプのゲーム以外ではほとんど見なくなってしまった。そういう意味でも,この大陸編は筆者のツボを突いている。
 さて,容姿(24パターン),名前,性別,年齢(16歳〜24歳)をそれぞれ決めて4人のパーティを編成し,最初から与えられている4万ポイントの経験値を全員のスキルに割り振れば,キャラメイクは終了。続いてこの4人が,ダンジョンに潜り財宝を持ち帰ることをなりわいとする"探索者"になる決意を,育て親である修道院長のハルドルに話すシーンに移る。自身も元探索者であるハルドルは,4人に一つの試練を与える。その試練を乗り越え,ハルドルに探索者になることを認めてもらえば,あとは,来る日も来る日も冒険の毎日となるのだ。

 ところで筆者の個人的な感想だが,プレイヤーキャラクター達がダンジョンに潜りモンスターと戦う理由が,単に"仕事"というのがイイ。素敵である。"囚われたお姫様を助ける"だとか,"村人を苦しめる悪のモンスターを倒す"だとかそんな勧善懲悪な理由ではなく,"生活のために"危険に身をさらしているのである。へそ曲がりな筆者にも,この設定は非常に受け入れやすい。
 実際このゲーム中での生活はシビアで,ひとたびダンジョンに潜ったならば,何が何でも価値のあるものを入手して戻ってくるべきである。というのも,ゲーム中のすべての行動には,時間がかかる。というと当たり前だが,例えばドアを開けるときも階段を上るときもゲーム内の時間がカウントされ,経過した時間の分だけ,きっちりと全員の満腹度が下がっていく……つまりお腹が空いていくのだ。満腹度が90%を切ると体力が自然回復しなくなり,0%になれば,全行動に2倍の時間が必要になってしまう。こうなるとどんなザコ敵にでも負けかねないし,となれば食料を手に入れる&お金を稼ぐこと……つまり生活が非常に困難になってしまうだろう。だから大陸編のプレイヤーキャラクター達は,文字通り生きるためだけにダンジョンに潜るのだ。



魚系のモンスターは,よく食料を落としていく。正直,あまりおいしそうには見えないのだが…… コンバットフィールドからはみ出るほどの巨大なモンスターも数多く存在する。当然,どいつも強い


■探索中のドキドキ,戦闘中のドキドキ

戦ったことのないモンスターは,カーソルを合わせると「未確認生物」と表示される。一度ダンジョンに出てセーブをしたほうがいいだろうか?

 筆者的には非常に"好み"であるものの,評価が分かれると思われるのが,セーブのシステム。ダンジョン中では,基本的にセーブができないのだ(ロードには制限なし)。
 とはいえ,広大なダンジョンの場合,途中で一旦ゲームを終了したくなる場合もあるだろう。そのために,「SAVE&OVER」というコマンドが用意されている。これは,セーブと同時にゲームが終了するコマンドで,次回起動時に「CONTINUE」を選ぶことで続きを遊ぶことができる。ただし,一度CONTINUEすると,そのときのセーブデータは消えてしまう。つまり,本当に一時中断ができるだけで,ダンジョン中で失敗したときのための"保険"としてセーブは行えないわけである。
 だからダンジョン探索中は,ドキドキしっぱなし。レベル(難度)の高いトラップを見つけたときなどは,無宗教の筆者も祈りながらクリックしてしまうほどである。先述したように食料の問題もあるし,1回の探索でできるだけ奥へ進みたいのだけど,長いことダンジョンに潜っているうちに「そろそろ外に出てセーブしないとまずいかな〜」という心の中の声が大きくなっていき,ついついこまめに帰ってしまうのである。

 そのドキドキのピークは,いうまでもなく戦闘シーンだ。ちなみに大陸編では,パーティメンバーの何人かが死んでも,残りのメンバーでダンジョンから出てしまえば,町の修道院で簡単に,かつ無料で死者を復活してもらえる。そのうえ,パーティメンバーが全滅した場合でも,自動的に修道院まで運ばれ,復活してもらえるのだ。じゃあ戦闘だって怖くないと思われるかもしれないが,やはり怖い。死には,"スキルダウン"という強烈なペナルティがあるのだ。
 大陸編には,キャラクターにレベルという概念はない。すべての能力は,スキルによって表されているのである。スキルを上げるには,基本的に二つの方法がある。一つは,戦闘やイベントで得た経験値を割り振る方法。もう一つは,お店などでGoldを使って上げる方法。つまりどちらにしろダンジョンでの探索が必要であり,逆にいうと,スキルダウンは数時間分の探索の成果がムダなってしまうわけ。そして,大陸編ではモンスターも宝箱も,有限である。つまり,パーティメンバーが死ぬ頻度によって,最終的な強さがずいぶん変わってくることになる。
 だから,戦闘が怖い。ある程度の成果を得て一旦町に戻ろうとしている最中に,モンスターに襲われたときなどはなおさらである(しかもこういうときに限って,戦闘中にほかのモンスターが参入してくる)。しかし,怖くとも戦闘をしなければ先に進めないし,経験値やお金も稼げない。すると,いつまで経っても弱いままである。
 大陸編は,このへんのバランスが絶妙である。うっかり死者を出してしまった場合,筆者などはついAltキー+F4で強制終了させてしまい,ほかの作業を始めるのだが,30分もしないうちにドキドキを求めてまた大陸編を起動している自分に気づく。いろんな意味で,"怖い"ゲームである。

戦闘中に,さらに別のモンスターから攻撃を受けることも。"隊列"の概念がある大陸編では,横や後ろから攻撃を受けると,ちょっとやっかいだ 女神像に触れたら,壁に囲まれた場所にワープしてしまった。そして,近くに隠しダンジョンがあることを示すマークが!


■隠し通路,NPC,モンスター図鑑,そしてアイテム探し

向かうダンジョンによっては,NPCが一緒に探索することになる。"タダ"で戦ってくれるので,正直大助かり

 いままで挙げてきた以外にも,大陸編の魅力はある。上のキャッチがその例である。順に見ていこう。
 まずは"隠し通路"。これまた,筆者が好きな言葉である。大陸編に登場するダンジョンには,必ずと言っていいほど,忍者屋敷のごとき隠し通路がある。その奥は,強大なモンスターが宝を守っていることもあれば,出口への近道ということもある。モンスターや宝箱が有限である大陸編では,隠し通路の発見も非常に重要だ。隠し通路の発見に必要なスキル「計測術」は早めに高めておきたいところである。
 "NPC"は,説明するまでもないだろう。ダンジョンによっては,NPCが探索に同行してくれる場合がある。彼らは探索の結果手に入れた経験値やお金,宝物を欲しがらないので,純粋な戦力となってくれる。しかも,結構強い場合がほとんどだ。
 ただ,こちらのパーティメンバーに比べて同行するNPCがあまりにも強い場合,そのダンジョンはパーティにとってきびしいだろう。そのNPCとは一旦分かれて,先に別のダンジョンに行ったほうがいい。
 "モンスター図鑑"も,読んで字のごとし。戦ったことのあるモンスターが,次々と登録されていくのだ。モンスターが使用可能な魔法の一覧など,プレイ中には案外気づかないデータも載っているので,ときどき目を通すといいだろう。また,この図鑑には出会った人物達もしっかり登録されているのがユニーク。これを見ると,修道院長ハルドルはかなりの強者であることが分かる。いつか一緒に探索してくれることもあるのだろうか?

 そして,"アイテム探し"。そもそも"探索者"であるパーティにとって,アイテム探しは仕事である。しかしこれが,かなり魅惑的な作業なのである。ローグやウィザードリィ,ディアブロで味わったあの楽しみが,大陸編にもあるのだ。
 ダンジョン内には,あちこちに宝箱が落ちている。またモンスターを倒したときに,しばしば宝箱が現れる。宝箱の中身は,さまざまだ。普通はGold,あるいは食料。薬類,酒類,鍵を手に入れることもあるだろう。もちろん,武器や防具も手に入る。それら装備品の多くは,手に入れたときは未鑑定品であり,使用できない。ゲームの後半でパーティメンバーが「鑑定」できるようになるまでは,町の「引き取り所」にて鑑定してもらい,初めてどのような効果を持つ装備か分かるのである。
 この,鑑定の瞬間がたまらない。同じ装備でも"Rag"や"Silver"などさまざまなグレードがあり,グレード次第では,一番安い「ダガー」でも,十分使える武器となったりするのだ。また,町の武器屋では手に入らないユニークな武器も数多く登場する。
 キャラクター達が"生活のため"に毎日ダンジョンに向かうのであれば,プレイヤーは,さしずめ"未知のアイテムを手に入れるため"に,やはり毎日のようにダンジョンへ向かうわけである。


これがモンスター図鑑。1種1種に,プレイヤーキャラクターと同じパラメータが設定されているのが分かるだろう。タブの一番左には,"Man"という項目まである これが修道院長のハルドル。プレイヤーキャラクター達の育ての親だ いかにもいいものが入っていそうな宝箱だが,鍵がかかっているうえ,罠まで!

■"風の探索者シリーズ"は続く

「アイアン・ケイジ」に登場するボスモンスター,グリード。立て続けに攻撃が当たったシーンだが,よく見るとダメージが入ったのは最初の一撃だけ

 タイトルにわざわざ"大陸編"とつくのには二つの理由がある。一つは,2000年に発売された「風の探索者〜Grand Slam〜」(以下,前作)というゲームがあるから。そしてもう一つは,前作とストーリーがつながっており,キャラクターの持ち込みもできる「風の探索者2〜Shadow Kingdom〜」2002年の冬に発売されることが決まっているからである。

 つまり大陸編は,"風の探索者シリーズ"の番外編といったところなのだ。前作との違いは,"隊列"の概念が導入されたことと,ゲームバランスを見直し,若干難度を下げてあること。
 実は前作では,すべてのスキルをある程度均等に上げていかないと,ゲームに行き詰まってしまうことがあった。そのため,一部の熱狂的ファンに支持されながらも,ゲーム初心者に敬遠されてしまったのも事実だろう。
 しかし大陸編では,最も高いスキルによって弱点を補強できるように改良され,多少偏ったキャラクターの育て方をしても,問題なくゲームを続けられるようになった。初心者からマニアまで幅広くお勧めできるゲームになったのである。

 ともあれ,ここまで興味深く読めた人であれば,すぐにでもこの大陸編を遊んでほしい。体験版は「ここ」にある。とはいえ,この独特のシステムに慣れるには多少時間が必要なので,できれば製品版を購入してほしい。そしてこの大陸編が楽しめた人なら,さかのぼって前作を遊ぶといいだろう。前作で育てたキャラクターは,大陸編よりさらに進化した風の探索者2で使えるのだから。


このユニコーンが強い! しかもこちらのシールドやアーマーを破壊するからたまらない。別のダンジョンに先に行くべきだったか…… 現在メインのキャラが持っている武器は,これ。ノックバック&攻撃力は嬉しいが,攻撃スピードが遅くて使いにくい

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■発売元:グルッポワン
■価格:5800円
■問合せ先:グルッポワン TEL 042-536-2972 E-mail gruppo1@din.or.jp
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PentiumII/233MHz以上,メモリ32MB以上,空きHDD容量160MB以上
■風の探索者・大陸編〜EternalFlame〜デモ版:http://www.4gamer.net/patch/demo/data/kaze.html

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