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KA52 Team Alligator英語版
Text by 桜薗冬弥
/Vmag.2000年6/15号

クリックすると拡大します  この地球上で,1人で行うものとしては最も操縦が難しいとされている乗り物。それはヘリコプターだ。独特な航空力学を元に機動をとるため,直感的に操作するのが非常に難しい(らしい)。しかし,そのヘリコプターを乗りこなしたとき,トリッキーで俊敏,かつ隠密性の高い戦闘能力は,有時には絶大な威力を発揮するだろう。ここで紹介する「KA52 Team Alligator」はその戦闘ヘリのフライトシムだ。
 素材となっているKa-52は,ロシアのKamov(カモフ)社が開発した最新の夜間偵察攻撃ヘリである。Jane'sがフライトシム化している「AH-64D Longbow」の東側版といったところ。このKa-52はKa-50“ホーカム”を並列副座型に変更したもので,NATOコードは“Hokum-B”,または“アリゲーター”という。特徴はなんといってもカモフが得意とする同軸2重反転式ローターと,その恩恵でテールローターが排除されたことによる操縦安定性だ。
「KA52 Team Alligator(以下KA52)」は,ヘリコプターのシミュレータとしては難易度は低いほうで,リアリズム設定を高くしても比較的飛ばしやすい。これはやはり実機の特性を引き継いでいるからなのだろうか。KA52はゲーム設定で操縦難易度を設定できるので,その設定によっては"シューティングゲーム"に近いレベルまで難易度を落とすことも可能になっている。
 しかしながらヘリコプターの醍醐味は,なんといってもその機動特性だ。ゲームに慣れたら,サポート機能は全てオフにして飛んでもらいたい。

開発の技術レベルは好印象
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  グラフィックスに関しては可もなく不可もなくといったところ。一定水準のクオリティは持っているが,特に抜きん出たものでもない,というレベルだ。しかしながら戦闘ヘリは,地形の起伏や建造物,森といった遮蔽物を利用して作戦行動を行う必要があるため,用意されたフィールドも非常に密度が濃いものとなっている。たとえば,戦闘域へ入るまでに農家や森を飛び越えていったり,敵の集結ポイントに対して有利な位置を得るために低空で丘を大きく回り込んだりといった要素で,かなり楽しめる。
 さて,実際に操縦してみた感覚は,リアリズムの設定によって多少は変化する。最大リアリズムで飛行した感覚では,速度域による機動の変化もスムースで,不自然さもない。かなり大型のヘリにも関わらず,複合材料の採用などで比較的軽量に仕上がった機体なため,その機動能力は非常に高い水準にあるのだろう。
 また,ヘリ独特の垂直降下による揚力損失(失速状態)に陥った場合も,同軸2重反転式ローターの恩恵で機体は比較的安定状態にある。そのため,機体の立て直しも非常に行いやすいのだ。ヘリ初心者(?)でも比較的扱いやすい機体なので,そういった意味でもKa-52という素材は正解だったようだ。

ヘリの飛行特性を知るのが先決
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  さて,コクピットに座ってまずすべきことはエンジンスタート。心地よい金属音が高まり,ローターの回転が始まる。逐次機体のステータスを報告するパイロットの音声が雰囲気を盛り上げてくれる。ちなみにゲーム中での通信などは,ロシア語も選択できるが,雰囲気を楽しむ程度にとどめたほうがいいだろう(笑)。
 次にローターのコレクティブ(ローターピッチ)コントローラーをゆっくりと上げていくと,機体はふわりと舞い上がる。ホバリングのための中立位置も許容範囲が広く,空中でピタリと静止できて気持ちがよい。高度が確保できたら,横滑りを抑えつつジョイスティックを前方に倒すと,機体は徐々に前進を始める。低高度・低速度域での失速は致命的なので,デリケートなコントロールを心がけよう。また,ヘリコプターは低速時と高速移動時では,コントロールに対する挙動が変化する。まず,ヘリを飛ばそうと思ったら,その航空力学的な特性を理解しておこう。うまく飛ばすことができないからと諦めたりせず,ぜひともマニュアルを熟読して特性を理解してほしい。

戦略性の高いキャンペーンだが……
クリックすると拡大します  基本的なゲームシステムはフライトシムでは定番ともいえる構成で,「トレーニング」「クイックコンバット」「クイックミッション」「キャンペーン」というラインナップになっている。しかし,KA52を独特なものにしているのは,そのキャンペーンモードなのだ。
 キャンペーンモードは,基本的にリアルタイムで進行する。自分が管理する部隊には複数のパイロットがいる。彼らに食事を与え,休ませ,治療し,働きによっては階級を上げたり勲章を与えたりと,パイロットとしての士気を維持するのだ。部隊に配備されているKa-52や搭載兵器も数に限りがあり,装備をやりくりし,ローテーションを組んでメンテナンスを行う必要もある。
 そういった隊員や装備の管理を行っている間も時間はどんどん流れていき,情勢を伝えるニュースが入電してきたりもする。そして出撃命令も突然やってくる。出撃命令がきたときに隊員が行動不能になるまで疲労していたり,整備が終了しておらず出撃できる機体がない,などという状況も考えられるのだ。そのためにも,部隊管理とローテーションは手を抜けないのだ。“部隊”としての活動,すなわちそれがKA52の副題に「チーム」とつくゆえんである。

 全体を通して見ると,このKA52はフライトモデルやグラフィックスといった技術的な面も,ゲームとしての内容や戦略性も比較的高いレベルにある。しかし,このKA52のウリでもあるキャンペーンモードはかなり複雑だ。入電してくるニュースを読んだり,出撃命令が出てからパイロットを選出したり,装備を変更している間も時間はどんどん過ぎていく。これはKA52に限らず,海外のフライトシム全般にいえることだが,キャンペーンモードはぜひとも日本語でプレイしたい部分だ。日本語版でなくて残念なのはここだけ。
 喉元まで忍び寄り,一気に敵の息の根を止める戦闘ヘリ部隊。ジェット戦闘機のカタルシスが音速で疾駆する爽快感にあるならば,戦闘ヘリは特殊部隊のように隠密裏に,しかし確実に戦力を削いでいく特殊部隊のようなカッコよさだろう。食わず嫌いになりやすいジャンルだが,その楽しさを一度は体験してみてほしい。
■発売元:メディアクエスト
■価格:7800円(日本語マニュアル付き)
■問い合わせ先:メディアクエスト
  TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 95/98,Pentium/200MHz以上(PentiumIII/450MHz以上推奨),メモリ32MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量130MB以上(550MB以上推奨),Force Feedback対応
■英語版デモ(91MB):http://www.3dfiles.com/games/ka52teamalligator.shtml
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