ヘルボーイ 〜破滅の導師〜 日本語版

Text by 朝倉 哲也
9th Apr. 2002　

主人公は地獄から来た元モンスター

時空を飛び越えた修道院での戦い。胸から触手を飛び出させて攻撃してくる

　第二次世界大戦下のナチスドイツにおいて，密かに研究されたラグナロク計画。それは，暗黒の儀式により地獄から呼び出した生物を最終兵器とする恐るべき計画だった。その儀式により地獄から召喚された悪魔の赤ん坊は，やがてドイツを勝利へと導くはずであったが，終戦によってナチスの悪魔の計画も潰えた。
　アメリカ軍に引き取られた赤ん坊は成長し，やがて超常現象専門の秘密調査組織"BPRD：超常現象捜査局"の一員となった。赤い肌と尻尾を持ち，人間をはるかに超える体力を持ちながら，やさしい心を持つ彼を，人は"HELLBOY：ヘルボーイ"と呼んだ。

　メディアクエストから2002年4月26日に発売される，「ヘルボーイ 〜破滅の導師〜 日本語版」は，ヘルボーイと呼ばれる，地獄から呼び出された男（と呼んでいいものか）が主人公の3Dアクション/アドベンチャーゲームだ。
　プレイヤーは，このモンスターまがいの外見を持つヘルボーイとなって，世界の破滅を願う一人の魔導師が，異界より呼び出そうとしている究極の邪悪"ノホクス・キャニス"の降臨を防ぎ，死んだ友人の仇を討つため，事件の発端となったチェコの精神病院に潜入し，やがては時空を越えた旅にまで発展するというストーリーとなっている。

砂時計みたいなのがセーブポイント。決められたところでしかセーブできないのだ

アドベンチャー要素の強いアクションゲーム

　ゲームは三人称視点で展開する。所々に登場するモンスターや，悪に魅入られ堕落してしまった人間達との戦いでは，アクションゲーム的な要素が現れるものの，本作はダークな雰囲気と，ストーリー展開を楽しむアドベンチャーゲームとして捉えたほうがよさそうだ。というのも，戦闘においてはヘルボーイのパンチがメインの武器となるのだが，戦闘キーを押すと，ただただ"左，左，右。左，左，右"とパンチを繰り返すだけで，格闘ゲームのような必殺技やコンボ技もなく，敵に近づいてひたすら殴るだけで済んでしまうからだ。登場する敵も総じて弱めになっている（さすがに，要所に登場するボス敵は強めではあるが）。
　反面，ゲーム全体に漂うダークな雰囲気は，不気味なBGMと相まって中々いい味を醸し出しているといえる。本作の舞台は，精神病院，薄暗い地下道，修道院など，"いかにも"といった場所で進んでいくので，ゲーム全編を通じて暗く沈み込んだような，重苦しい圧迫感を感じることができるだろう。
　また，随所に登場するパズル的な仕掛けには，かなり悩まされるに違いない。筆者もドアを開けるためやアイテムを手に入れるための「仕掛け」「パズル」にかなり手こずってしまった。ちなみに，マニュアルの最後のあたりにゲームを進めていくためのヒントが掲載されている。マニュアルを読まない人はかなり多いようだが，せめてここだけでも目を通しておこう。絶対に役立つはずだ。

心やさしいモンスター＝ヘルボーイ

　ところで，プレイヤーの分身となる主人公ヘルボーイは，外見からしてまったく人間とは違う。肌の色は赤く，尻尾を生やし，額には角まがいのこぶまで生えているという，さすがに地獄生まれというだけの外見を備えている。しかし，その内面は非常に人間的だ。セリフ回しやNPCとのやり取りでは，知的でユーモアのセンスに富んでいることを見せてくれるし，親友の死に哀しみ，敵を討つことを誓い，同僚の女性捜査官にかける暖かい思いやりなど，そこらへんの人間以上といえる。この外見と内面のギャップが主人公ヘルボーイの大きな魅力だろう。
　なお，このゲームには原作がある。原作者はマイク・ミニョーラで，日本でも小学館よりヘルボーイを主人公としたコミックが数冊出版されている。また，全高30センチにも及ぶソフトビニール製のフィギュアも発売されているなど，かなりの人気となっているので，一度読んでみるのもよいだろう。

精神病院での戦い。悪魔に魅入られ，もはや人間ではなくなってしまった，病院の元職員	天井にぶら下がるモンスター。こちらの武器はパイプ一本	奥の扉を開くために，天使の像を動かす仕掛け。4体あるので組み合わせを探すのが大変	石柱を動かして階段にし，屋根へ乗り移る