ヘル ストライク

Text by 川村ハルト
25th Sep.2002


■第二次世界大戦を攻撃ヘリで戦う!?

とくに明記されてはいないが,ツインローターのフォルムからしてKA-50 Hokumあたりか? 世界初の単座攻撃ヘリだ

 第二次世界大戦における攻撃ヘリコプターの戦いを題材とした3Dシューティング「ヘル ストライク」(第二次大戦で攻撃ヘリ!? というツッコミは,ひとまず保留してください)。日本での販売元はカプコンだが,開発したのはロシアのゲームメーカーG5 Software。そう,これはロシア生まれのゲームなのだ(原題は「Red Shark」)。ただ,さすがにゲーム中の言語はロシア語ではなく英語版で,日本語マニュアルが同梱されている。
 この作品の特徴は,フライトシム化するとウンザリしてしまうほど難解なヘリの操作を,思いっきりスマートにデフォルメしている点にある。離着陸や燃料の心配はなく,装甲はダメージゲージ制で機関銃は撃ち放題。つまりこの作品はリアルシミュレータではなく,単純明快なアクションシューティングである。フライトシムファンのマニア心を満足させるタイプの作品ではないので,うっかり間違えぬよう最初に明記しておこう。「オペレーションフラッシュポイント」のヘリ搭乗時よりも(若干だが)大胆に操作できるといった感覚だろうか。
 デフォルメされて単純明快とはいっても,ヘリの挙動(のそれっぽさ)と攻撃ヘリによる戦術(っぽさ)は再現されているゲームである。上下前後左右へと縦横無尽に飛び回る3次元飛行,レーダーに頼った長距離からのミサイル攻撃などは,普通の3Dシューティングでは絶対に味わえない攻撃ヘリならではの要素だ。



電子戦に長けた攻撃ヘリにとって,森に隠れた1km先の敵戦車を探すなど造作もないことだ 四つのルートに分岐した全15のミッション。難易度によってメダルを贈呈される


■ヘリ1機で歴史を変えることができるか

ターゲットは敵兵器だけとは限らない。基地や燃料への攻撃を目的としたミッションもある

 2011年。極秘にタイムマシンを完成させたロシアは,最新鋭の攻撃ヘリを過去に送り込むことで歴史を操作できるのではないかと考えるに至った(ロシア人は大変辛抱強い民族なので,奥ゆかしい計画を好むのだろう)。このプロジェクトの試験場として,彼らは第二次世界大戦を選ぶ。こうしてあなたは最新鋭のヘリと共に,1940年代へと送り込まれるのであった……。
 という,わりと強引なバックグラウンドストーリーを持つ「ヘル ストライク」。たった1機の攻撃ヘリで,第二次世界大戦のソ連vs.ドイツの戦いに介入するという,通常ありえない設定の裏にはこんな事情がある。まぁ大方のアクションゲームと同様,そんなストーリーは知らなくても"ヘリシューティング"というゲームの本質は楽しめる。だがこのストーリーが,実はなかなかの曲者なのだ。

 ゲームを開始すると,ブリーフィング画面で次に参加するミッションを選択することができる。これは途中でいくつかのベクトルに分岐しており,それぞれが違った結末にたどり着く。"歴史を変える"というファクターは,このような形でしっかりとゲームに関わってくるのである。ちなみにルートは四つあり,ラストは,同じ戦場で4通りの異なる戦いが待っているのだ。


ミッションブリーフィングはすべて英文だが,クリア条件は非常にシンプル。誰にでも容易に分かるだろう このステージは,爆撃機が到着する3分少々の間に,敵対空兵器の70%を叩いておくのが目標

地の利を生かした敵の秘密基地を攻撃する。見てのとおり,地形描写は結構いい感じ 哀れ,墜落シーン。60年前の兵器が相手とはいえ,集中砲火を浴びればひとたまりもない


■1940年代の兵器を最新鋭の攻撃ヘリで蹴散らす快感

なんといっても一番痛快なのが,燃料タンクの破壊。開発者も相当楽しんで作ったに違いない

 全15のステージにはさまざまな勝利条件が設定されている。最初は敵戦力の全滅などといった単純な内容だが,中盤以降は友軍師団の護衛,街に潜む敵の捜索,さらには四方八方から敵が迫りくる街を守ったり要人を暗殺したりと,ヘリ1機には荷が重過ぎるほどバラエティに富んだミッションも登場する。
 敵として登場するのは,IV号戦車,Flak 43 L/60対空戦車,Pz.Sd.Kfz 6/2 対空自走砲など,年代もののドイツ兵器ばかり。自動化された対空システムなどありゃしない。現代兵器の中でもハイテクの粋である攻撃ヘリが第二次大戦当時の兵器に立ち向かうのだから,やりたい放題ハデに戦うことができる。この痛快さこそ「ヘル ストライク」の醍醐味だろう。とはいえ,基本的にあらゆるミッションが多勢に無勢。迂闊に飛び出しても対空砲で蜂の巣にされるだけだ。ヘリならではの機動力を生かして,敵の側面や背後に回り込むなどの卑怯な戦いっぷりで生き残ろう。

 ヘリは,30mm機関銃,S-8ミサイル,Vikhr対戦車誘導ミサイルと,3種類の火器を装備している。機関銃は弾数無制限で,ほとんどあらゆるターゲットに有効だ。S-8は自動追尾式ではないが頼もしい威力と豊富な搭載数を誇り,ロケット弾に近いものと思われる。Vikhrはロックしたターゲットを自動追尾する。搭載数が少ないうえにロック可能な標的にしか使えず,ロックオンには時間がかかるが,移動目標を確実に破壊できる最強の兵器だ。
 さらに,ヘリそのものが持つターゲットシステムが,機関銃やS-8ミサイルを強力にサポートしてくれる。ターゲットしている敵に照準を合わせると,パイロットがそれほど精密に攻撃しなくても,機体がある程度の射撃補正を行なってくれるのだ。これだけの装備があれば,第二次世界大戦の兵器では相手として役不足だろう。
 難易度設定はEASY,NORMAL,HARD,NIGHTMAREと4段階あり,最も簡単な"EASYモード"ではヘリをどんなに地面に近づけても墜落しなくなる(ほかのモードでは木に引っかかっただけでも墜落する)。逆に難易度を高くするほどヘリのミサイル搭載数がガクガク減り,大部隊相手に機関銃で立ち向かうハメになる終盤戦は悲しいほど過酷だ。アクションゲームにゃ泣けてくる筆者の腕では,EASYモードでしか全15ミッションをコンプリートできなかった。裏を返せば,EASYなら誰でも一通り楽しめるだろう。腕に覚えのある人からヘリにゃとんと疎いという人まで,あくまで気軽にタンクキラーの爽快感を味わえる作品だ。

敵のエアボーン作戦による都市の占領を阻止しようという,最終ステージの一つ 基本的にマップ上は好き勝手に飛び回れる。深い森を抜けて背後を突くことも可能だ 写真は,レーダーでは捕らえられないトーチカ(ある意味最強の敵かも)へ,至近距離から機銃掃射の図

大市街戦となる可能性を孕んだステージもある。家などのオブジェクトはすべて破壊可能 カメラ視点を操作すれば,敵の詳細を確認することもできる。ミサイル視点もあるぞ カメラ視点で空挺兵の一人にフォーカスしてみた。一人ずつ撃ち殺すこともできるのだ

このページを印刷する

■発売元:カプコン
■価格:5800円
■問合せ先:カプコン TEL052-760-0335
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,Pentium(R) II 350MHz以上,メモリ64MB以上,空きHDD容量320MB以上

Copyright (c) 2000-2002 G5 Software. All Rights Reserved.