GIN-YOKU -銀翼-

Text by 杉山淳一
4th Oct.2001

"最新"のフライトシム

クリックすると拡大します いまや一つのジャンルとして定着した感があるフライトシミュレータ。"大人のゲーム"として確固たる地位を築いたといってもいいだろう。そのフライトシム業界に一石を投じるタイトルが現れた。それが,アクアシステムGIN-YOKU -銀翼-である。
 ちなみにフライトシミュレータは,ジャンボジェットやセスナなどを扱った民間モノと戦闘機などを扱った軍事モノの二つに分類できるが,本作は前者に属しており,次世代の空の交通を担う最新旅客機B777の操縦が楽しめるゲームとなっている。そう,いち早くB777を扱っていることから,ある意味"最も最新の"フライトシムといっても過言ではないだろう。
 ちなみにデジタル化が進んだ最新旅客機は操作が非常に簡単なのだが,それを受けて本作は,驚くほどお手軽にプレイできるようになっている。"操作が簡単"というと初心者向けと勘違いされるだろうが,ほかのフライトシムには見られない要素も多く,ビギナーからマニアまでが幅広く楽しめる仕掛けも満載である。では,さっそく銀翼の魅力について紹介してみよう。

 

B777-200で日本の空を散歩しよう!

クリックすると拡大しますクリックすると拡大します 本作の主人公は最新鋭旅客機のB777なのだが,見事なまでにこれをを再現している。コクピット一つをとっても,"フライ・バイ・ワイヤー"によってスッキリとしたコクピットはもちろんのこと,自動航行システムまでバッチリ再現している。よって本作では,プレイヤーがほとんど操作する必要がなくなってしまった……。
 リアリティを追求した結果だから仕方ないけれども,これではゲームとして面白くない。しかし,マニュアルでの航行モードも用意されているので安心してほしい。さらにマニュアル操作を必然のモノとするため,ランディングギアやエンジン,フラップ類の故障率を設定可能。故障が発生した場合は,自動航行システムを解除し,自らの操縦で胴体着陸や近隣空港への針路変更をすることになるわけだ。
 フライトが自動化されてしまったからといって,フライト中には雑誌をめくりながら……なんてとんでもない。ユーザーには"自動航行システムの警告灯を緊張しながら見つめる"という,本職のパイロットのような使命が待っている。まあ,モニターを見つめているだけだと言われるとそれまでだが,これでもリアリティを追求する飛行機ファンには面白くてたまらないだろう。そして,実際にトラブルが発生したにもかかわらず,それを乗り越えて無事着陸できたときは,もうなんともいえない心地よさで一杯になる。フライト後には疲れを癒すためビールでも空けてリラックスしたくなるほどだ。

※フライ・バイ・ワイヤー※
 一般的にイメージされるジャンボジェットのコクピットといえば,アナログメーターとトグルスイッチが乱立するというイメージが強いだろう。ところが,こんなコクピットが採用されていたのはB747初期型までの話。今では,次世代の操縦系統方式として"フライ・バイ・ワイヤー"があるのだ。このシステムでは操縦桿をほとんど動かす必要がなく,操縦士がかけた力をコンピュータが計算して各機器に伝えるようになっている。よって,操縦桿を大きく動かさずとも,わずかな力加減だけで操縦可能なのだ。
 また,デジタル入力になったおかげで大幅に機器を削減できるようになり,コクピットの省スペース化にも大いに役立っている。ちなみにこのシステムは,旅客機だけではなく戦闘機にも積極的に取り入れられている。

 

日本各地の39の空港で離発着可能

クリックすると拡大します 本作に収録されている国内の空港は39か所もあり,羽田空港,関西国際空港,福岡空港といったおなじみのものは特に精密に再現しているらしい。多彩なフライトプランが作成可能で,最も簡単な遊び方は出発空港と到着空港,複数の経由地を指定してフライトプランを作成するというもの。なおゲームでは,フライトプランを作るだけで自動航行システムを利用できる仕組みになっている。
 飛行開始となっても,前述のとおり操縦は自動化されているので,本格派のフライトシミュレータは苦手という人でもまったく問題ない。まずは滑走路までタキシング(空港内を走行すること)して滑走開始。"V2(ブイツー:離陸速度)"の合図が出たら操縦桿を引く。次に"G"キーでギア(車輪)を格納したら,"Insert"キーを押して自動操縦に切り替える。あとは着陸態勢になるまで何もすることはない。もっとも,故障が発生する設定をONにしているなら緊急事態に備えなくてはいけないが……。
 長い旅を経て到着空港に近づいたらギアを出し,ILSを受信しつつ自動的に着陸体制に入る。着陸時の風や路面バウンドの状況に応じてエルロンを操作し,速度が40ノット以下になったら"右Shift"キーでブレーキをかける。必要な動作はたったコレだけだ。初心者が航空機の操縦で最初にぶつかるであろう壁が"着陸"だが,まったくもって至極簡単なのである。「着陸はイヤだけど,空の旅は大好き」,「着陸のお手本を見たい」という人には,ぜひオススメしたい。


空の旅を楽しむためのソフト

クリックすると拡大します 以上のように,銀翼を一言で表すなら"飛行機の旅"を楽しむソフトだ。地上の風景は高さに忠実で,山脈の稜線をも美しく描いているし,時刻に応じて変化する景色や空港や都市の夜景も美しい。雲に至っては,地域ごとに出現傾向を分析してランダムに発生させているという。
 もちろんメカニックファンにも満足できる要素はある。例えば本作で採用されたB777-200型機のモデリングも満足いくデキで,コクピットのメーター群,ランディングギアの挙動,翼の稼動部分,各部のランプ群が忠実に再現されているといった具合だ。
 視点についてもなかなかのもの。"コクピットビュー"はもちろんのこと,"ワイドビュー"はFPSゲームのような視点となり,"随伴機ビュー"では外から飛行中の機体を観察できる。また,飛行機が空港に近づくときは"管制塔ビュー"が選択可能で,離着陸のダイナミックな場面が間近に鑑賞できる仕掛けもある。また,"乗客ビュー"を選ぶとキャビンに着席した視点となり,小さな窓から景色を伺える。乗客もアテンダントもいない寂しい客席だが,シートポケットには機内誌とイヤホンまで描かれているといった凝りようだ。(ちなみに機内ビューはビジネスクラスなので,ちょっぴりリッチな気分になる)。さらに観光ガイド機能をオンにしておくと,眼下の都市や湖,山などの名所が,飛行中にスーパーインポーズで説明されるようになっているぞ。

 本作は飛行機ファンにとって"もっとも癒される空間"を再現するツールともいえる。離陸や緊急時の操縦をパイロットとして楽しみ,フライト中は機内のシーンにしておき,その画面の前で乗客になりきって雑誌を読んだり,自前のステレオで音楽を聴いてみるというのもオツであろう。また外部視点にしておくことで,ちょっとした環境ソフトのノリで楽しむこともでき,颯爽と飛行するB777の勇姿を心ゆくまで堪能できる。本作は,あらゆる面からB777の魅力を再現していることが最大の魅力なのである。
 また,前述したように本格指向でありながらも操作が簡単で,エントリーユーザーにもオススメの一本といえよう。再現性の高さでマニアも納得,操作性の容易さでビギナーもラクラク。なんて贅沢なフライトシムなんだろう。

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■発売元:アクアシステム
■価格:8800円
■問い合わせ先:アクアシステム TEL 096-379-5418
■動作環境:Windows 9x/Me/2000 Celeron 300MHz以上(PentiumIII/600MHz以上推奨),メモリ64MB(128MB以上推奨),空きHDD容量90MB以上, DirectX 8以上
■体験版(44.93MB):http://www.4gamer.net/files/demo/GINTRIAL.EXE

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