GIN-YOKU -銀翼-Text by 杉山淳一 "最新"のフライトシム いまや一つのジャンルとして定着した感があるフライトシミュレータ。"大人のゲーム"として確固たる地位を築いたといってもいいだろう。そのフライトシム業界に一石を投じるタイトルが現れた。それが,アクアシステムの「GIN-YOKU
-銀翼-」である。
B777-200で日本の空を散歩しよう!本作の主人公は最新鋭旅客機のB777なのだが,見事なまでにこれをを再現している。コクピット一つをとっても,"フライ・バイ・ワイヤー"によってスッキリとしたコクピットはもちろんのこと,自動航行システムまでバッチリ再現している。よって本作では,プレイヤーがほとんど操作する必要がなくなってしまった……。リアリティを追求した結果だから仕方ないけれども,これではゲームとして面白くない。しかし,マニュアルでの航行モードも用意されているので安心してほしい。さらにマニュアル操作を必然のモノとするため,ランディングギアやエンジン,フラップ類の故障率を設定可能。故障が発生した場合は,自動航行システムを解除し,自らの操縦で胴体着陸や近隣空港への針路変更をすることになるわけだ。 フライトが自動化されてしまったからといって,フライト中には雑誌をめくりながら……なんてとんでもない。ユーザーには"自動航行システムの警告灯を緊張しながら見つめる"という,本職のパイロットのような使命が待っている。まあ,モニターを見つめているだけだと言われるとそれまでだが,これでもリアリティを追求する飛行機ファンには面白くてたまらないだろう。そして,実際にトラブルが発生したにもかかわらず,それを乗り越えて無事着陸できたときは,もうなんともいえない心地よさで一杯になる。フライト後には疲れを癒すためビールでも空けてリラックスしたくなるほどだ。
日本各地の39の空港で離発着可能 本作に収録されている国内の空港は39か所もあり,羽田空港,関西国際空港,福岡空港といったおなじみのものは特に精密に再現しているらしい。多彩なフライトプランが作成可能で,最も簡単な遊び方は出発空港と到着空港,複数の経由地を指定してフライトプランを作成するというもの。なおゲームでは,フライトプランを作るだけで自動航行システムを利用できる仕組みになっている。
空の旅を楽しむためのソフト以上のように,銀翼を一言で表すなら"飛行機の旅"を楽しむソフトだ。地上の風景は高さに忠実で,山脈の稜線をも美しく描いているし,時刻に応じて変化する景色や空港や都市の夜景も美しい。雲に至っては,地域ごとに出現傾向を分析してランダムに発生させているという。もちろんメカニックファンにも満足できる要素はある。例えば本作で採用されたB777-200型機のモデリングも満足いくデキで,コクピットのメーター群,ランディングギアの挙動,翼の稼動部分,各部のランプ群が忠実に再現されているといった具合だ。 視点についてもなかなかのもの。"コクピットビュー"はもちろんのこと,"ワイドビュー"はFPSゲームのような視点となり,"随伴機ビュー"では外から飛行中の機体を観察できる。また,飛行機が空港に近づくときは"管制塔ビュー"が選択可能で,離着陸のダイナミックな場面が間近に鑑賞できる仕掛けもある。また,"乗客ビュー"を選ぶとキャビンに着席した視点となり,小さな窓から景色を伺える。乗客もアテンダントもいない寂しい客席だが,シートポケットには機内誌とイヤホンまで描かれているといった凝りようだ。(ちなみに機内ビューはビジネスクラスなので,ちょっぴりリッチな気分になる)。さらに観光ガイド機能をオンにしておくと,眼下の都市や湖,山などの名所が,飛行中にスーパーインポーズで説明されるようになっているぞ。 本作は飛行機ファンにとって"もっとも癒される空間"を再現するツールともいえる。離陸や緊急時の操縦をパイロットとして楽しみ,フライト中は機内のシーンにしておき,その画面の前で乗客になりきって雑誌を読んだり,自前のステレオで音楽を聴いてみるというのもオツであろう。また外部視点にしておくことで,ちょっとした環境ソフトのノリで楽しむこともでき,颯爽と飛行するB777の勇姿を心ゆくまで堪能できる。本作は,あらゆる面からB777の魅力を再現していることが最大の魅力なのである。
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