フェイト オブ ドラゴン 赤壁の戦い

Text by TAITAI
16th Mar. 2002

三国志を題材にしたリアルタイムストラテジーが再び

 ここで紹介する「フェイト オブ ドラゴン 赤壁の戦い」(以下,FoD2)は,日本では馴染みの深い三国志をテーマとした,リアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)。アイドス・インタラクティブより2001年の4月に発売された「フェイト オブ ドラゴン 龍の系譜」の続編に当たる作品だ。Age of Empiresシリーズに代表されるオーソドックスなゲームシステムを搭載しながらも,戦闘に彩りを加える"武将システム"や各陣営ごとに用意される"居城"などの要素を持つ,一風変わった内容が特徴的な戦略ゲームである。
 史実をベースにしたシングルプレイモードに加えて,自由な設定でゲームを楽しめる「フリープレイ」,ゲームの基本ルールを親切な解説と共に学べる「トレーニング」が用意されており,PCゲームで定番のマルチプレイ機能ももちろん持っている。LANを介してなら最大8人,インターネットを介した対戦なら最大4人まで同時に遊ぶことができる。
 シングルでは,プレイヤーは「劉備」「曹操」「孫権」のいずれかを選択し,三国志の物語に沿ったさまざまなシナリオを攻略していくことになる。副題で"赤壁の戦い"と銘打ってある本作だが,実は"赤壁の戦い"自体はシナリオに存在せず,ストーリーは赤壁の戦いの後に展開される魏・呉・蜀の三国の闘争を描いたものとなっている。

"武将"に重点を置いたシステム強化に注目!

ほかのRTSと違い,攻撃の目標は拠点ごとにある「州府」と呼ばれる建物。ここを占拠すれば,その拠点の施設のすべてが自分のものとなる

 多種多様なエピソードを持つ個性豊かな英傑達の存在は,三国志の醍醐味の一つといえるだろう。前作では,劉備や孔明,関羽を始めとした数多くの武将達を登場させてはいたものの結局は"オマケ"的な要素でしかなく,いまいちその魅力を表現するには不十分な内容といえた。もっと武将の個性をゲーム中で再現してほしい! という思いは,筆者のみならず前作をプレイした多くのユーザーの要望だったのだ。
 続編にあたるFoD2では,それらユーザーの要望に応える形でさまざまな改良に取り組み,とくに武将に関するシステムの大幅な強化を試みている。まず武将の能力が個別に設定されるようになり,有能な武将と凡庸な武将がハッキリと見分けられるようになった。加えて,武将の使用する「神通力」がさらに強化され,武将が戦闘における最重要ユニットとして位置付けられるようになっているのだ。武将はレベルアップするたびにスキルポイントのようなものを獲得し,そのポイントを強化したい特殊能力に割り振ることによって自由に武将を成長させていけるという,ディアブロIIのようなユニークなシステムが追加されているところも興味深い要素といえるだろう。
 また,前作では死んでしまうと取り返しの付かなかった武将だが,今回では祭祀を行なって災害を防いだりする「寺社」で復活させられるようになり,頑張ってレベルを上げた武将が死んでしまった場合にも対処できるようになった。いいか悪いかはともかく,このルールのおかげで積極的に武将を戦線に投入でき,武将の能力を駆使した戦闘が楽しめるというわけだ。

部隊の能力を高める武将の"指揮"能力とは

 さらに,幾人かの武将には"指揮下の味方ユニットの能力値を上昇させる"特殊能力が設けられるなど,武将が"軍隊を率いる存在"と位置付けられている点にも注目しておきたい。つまり,孔明/ほう統に代表される知略に溢れる軍師や,関羽や超雲のような武勇に優れた豪の者をリーダーとして部隊を編成(グループ化)することで,軍団全体の士気,攻撃力,防御力などが上昇し,戦いを有利に進めていけるのである。武将による"指揮効果"が付加されている状態だとユニットの頭上にオーラのようなグラフィックスが表示され,一目で効果が見てとれる点も分かりやすい仕様だ。
 この指揮効果と強力な神通力の数々を組み合わせることによって,寡兵で敵の大軍を打ち破ることも可能になった。例えば,防御力を強化した部隊を前衛に配置して,その後方から攻撃力を上昇させる能力を付加させた弓隊で射撃したりと,戦術性の幅が広がっているところは素直に嬉しい部分である。

武将の復活が可能になったところは嬉しい改良だ。ただ,シナリオなどでは物語の中核となる武将が死んでしまうと,その時点で敗北してしまう点に注意 武将の等級(レベル)が上昇するにつれ,強力な神通力が使えるようになる。どんな能力を強化するかはプレイヤーの方針次第だ 一気に重要度が増した策敵用ユニット「孔明灯」。飛ばした提灯を上手く風に乗せることによって,敵地の奥深くまで見渡せるようになる

前作と比べて大きく進化!

劉備,曹操,孫権ら3人の英傑の簡単な経歴紹介も用意。三国志にあまり詳しくない人でも安心(?)だ

 「前作より確実に進歩している」というのが,筆者が一番最初に感じた印象である。イベントの発生条件が曖昧であったりと,多少の分かりづらさは気になったものの,比較的テンポよくシナリオを楽しむことができた。ゲームの難易度も微妙な具合に設定されており,武将の能力や地理的条件(城の防御的優位性など)などをうまく利用していく必要があるなど,メリハリのある内容にも好感が持てる。加えて,風向きによる戦況の変化(視界の確保に影響する)や,野戦を盛り上げる"陣営"の追加など目新しい要素も多い。
 しかしながら,システム的な完成度/ルールの整合性に関して言及すれば,正直"あと一押し"が足りない印象も拭いきれない。
 とくに,武将の経験値の獲得の方法については改善の余地があるように思える。本作では,基本的に武将が"直接"敵ユニットを倒すことで経験値が加算される。しかし,複数の部隊による乱戦が多いこの手のゲームシステムにおいて,"直接"敵を倒さなければならないというルールは,いろいろな意味で厳しいものがあるだろう。例えば,指揮下にある部隊全体の戦果や,武将に一定の影響範囲を持たせ,その範囲内で起きた戦闘の結果を経験値に反映されたりするほうが,システム的にずっとスッキリするのではないだろうか。さらにいうならば,武将という要素自体をもっともっと"演出"する内容にしてもよかったのではないだろうか。もし,続編が開発されることがあるのなら,既存のシステムに武将という要素を付け足すのではなく,武将それ自体を中心にしたゲームシステムに期待したいと思う。

 とはいえ,三国志を題材にしたRTSは実は珍しく,史実に沿ったシナリオを小気味よいテンポで楽しめる本作は,基本を外さない手堅い内容を見せる作品だ。三国志ファンがRTSというジャンルの面白さを知る,絶好のタイトルといえるのではないだろうか。

強化した神通力なら,一撃で敵軍に大打撃を与えることも 陣営の柵を利用して戦えば,被害を最小限に食い止めることができる 投石車だけでなく,雲梯(攻城戦で使う梯子)を始めとしたユニークな攻城兵器が登場する。これは,グライダーのようなものを飛ばして敵地に飛び込む天神鷹という兵器だ シナリオ中で展開されるイベントの音声はすべて中国語。まさに本場?の雰囲気が味わえるのだ
敵の陣営に攻め込んだら,食糧が貯蔵されている陣幕を焼き払っていく 城壁を挟んだ攻防は本作の醍醐味といえる。城門に兵士を駐留させることで,城門から弓矢を放てるようになった 野戦マップに「陣営」の要素が追加されたことで,野戦の展開も幅が広がった

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■発売元:アイドス・インタラクティブ
■価格:7980円
■問い合わせ先:アイドス・インタラクティブ TEL 052-775-8380
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/266MHz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),HDD240MB以上(300MB以上推奨)
■日本語デモ版(97.25MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/data/fod2.html

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