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デウスエクス日本語版
Text by デイビー日高
23rd Dec.2000

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  アイドス・インタラクティブ「デウスエクス日本語版」(以下,「デウスエクス」)は,荒廃した近未来を舞台にしたサイバーSFテイストあふれるRPGだ(FPSにも見えるが)。プレーヤーは,国際反テロリスト連合UNATCO(発音は"ユナトゥコ"という感じ)という世界規模の警察的組織のエージェント(スパイという呼び名はもう古い!)であるJ.C.Denton(以下,JC)となって,謎が錯綜する戦いに赴くことになる。
 ストーリーには多数の分岐があり,エンディングも複数用意されている。プレーヤーの能力の強化方法だけでも結末は大きく変わってしまうのだ。画面はJCから見た1人称視点で,銃撃戦を展開したり仕掛けをクリアしたりと,3Dアクション的な要素も多分に含んでいる。今回は,2月の発売を前に日本語β版を入手したので,ここにレビューをお届けしよう。

 

SFという設定がシステムときっちり融合している点
クリックすると拡大します  デウスエクスの素晴らしいところは,作り手がSFというジャンルをちゃんと消化して,ゲームシステムとしてしっかり融合させているところである。主人公JCは,実はナノテクで身体機能を格段に強化した一種のサイボーグ(理性派のターミネーターという感じ)。そのため,敵と戦って経験値を獲得してレベルアップとか,武器や防具を替えて戦闘力の強化といったことはしない。パワーアップは,「腕力が増大する」「放射線や毒ガスに対する抗力が増す」などの身体機能を強化する新機能を入手してインストール(!)することで実施するのだ。
 また,隠された部屋や侵入の難しい場所への突入に成功すると「スキルポイント」を獲得できる。それを貯めると,コンピュータの操作や鍵開け,射撃といった各種スキルのレベルをアップグレードできるようになるのだ。新機能をインストールするだの,スキルをアップグレードするだの,なんかPCのようである。しかし,どの機能をどれだけ強化するかで結末にさえ影響するので,色々と試してみるのも楽しいのだ。

 

 
撃ってやっつければいいってもんじゃない
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 見た目が3DアクションかFPS(一人称視点シューティング)的なので,出てくる敵はつい片っ端から撃ちたくなってしまう。が,それではダメなのがデウスエクスの特徴の一つだ。  敵は倒す存在ではなく,回避すべき存在なのだ。もし敵を倒すとしても,決して正面から向かうようなことをしてはいけない。障害物の陰を伝って敵の死角に回り込んで撃つとか,ほかの敵に気がつかれないように音の少ないサイレンサー付きピストルで射殺するとか,自分がいかに被害を受けないようにするかを考えながら戦わないといけないのだ。
 なお,始末した敵の死体はちゃんと隠そう。別の敵が仲間の死体を見つけて大騒ぎにならないよう肩に担いで運び,少しでも目につきにくいところに移すのだ(海が近くにあるときなんか,ポイッ,ドッポ〜ンと水中に捨ててしまうといいぞ)。
 また,「回避する」という作業で非常に重要なポイントになるのが音である。敵の歩く音で近づいてくるのか遠ざかっているのか判断できるし,自分自身も敵地で大きな音を立ててはならないのは当然だ。しゃがんだ状態で移動するとほとんど音が出ないので,適地のまっただ中にいるときは,しゃがみっぱなしで障害物の陰から陰へと移動していくことになる。
 ThiefProject IGI,メタルギアに代表される,このバレないように活動するというプレイが,ほかのゲームではあまり体験できないかなりの緊張感を感じさせてくれ,ヤミツキになってしまうのだ。

ビジュアル面でも細部まで徹底されたSFテイスト
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  日本で"SF"というと,どうにもいい加減な設定やデザインが使われている物語も多かったりするが,デウスエクスの徹底したSF濃度の濃さには目を見張ってしまう。SFファンなら間違いなく嬉しくなってしまうのだろう。
 まず,登場人物たちのデザインが非常にサイバー系SFテイスト感にあふれている。首筋や顔とかに結線が張っている人物も多いし,エージェントになると機械化がかなり進んでいる者もいる。片目の周辺が赤外線暗視装置付きのレンズユニットと交換されていたりするのだ。
 また,銃火器や各種アイテム,ヘリコプターやコンピュータといった大道具小道具のデザインも当然,近未来的な(なんとも便利な形容詞だ)デザインだ。しかし,個人的に気に入っているのは,通信のときの映像でのノイズの入り具合。通信相手の顔の上にザッと入るアレである。そのノイズの入り具合が非常にグーなのだ。そのほか,「デッカード」なんて名前がちょこっっと出てきたりして,SFファンなら思わずニヤリとしてしまったりするのだ(「ブレードランナー」の主人公の名前ね)。

クリックすると拡大します  なんだか熱くいろいろと語ってしまった。まずSFファンには,間違いなくプレイしてほしい作品である。もちろん,ファンタジーRPGにちょっと食傷気味という人や,目新しいシステムのゲームをプレイしたいという人にも,絶対的にお勧めである。
 それから,このとんでもないボリュームで"定価8800円"という点も見逃してはいけない。断言しよう。超お買い得である。ちなみに,forGamer.netで年間タイトルを設けることになったら,2001年のRPGの年間タイトル候補として推すつもりである(個人的には当確に近い)。そんな驚愕の連続のストーリーを,ぜひとも味わってほしい! ストーリーの全貌こそ追えないが,雰囲気はデモ版でも十分に掴み取れるだろう。ぜひ「こちら」からデモ版をダウンロードして試してみてほしい(かなり大きいけど……)。


■発売元:アイドス・インタラクティブ
■価格: 8800円(2001年2月9日発売予定)
■問い合わせ先:アイドス・インタラクティブ
  TEL 052-775-8380
■動作環境:Windows 95/98/Me,PentiumII/300MHz以上(PentiumIII/450MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量150MB以上(750MB以上推奨)
■日本語デモ版(141.21MB):http://www.4gamer.net/patch/demo/DeusEx.exe
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