ディプスファンタジア

Text by DKG
25th Apr. 2002

ダンジョンのボスであるドラゴンにチェインを決める瞬間。スキルが発動する前にチェインを合わせなければいけないため,なかなかタイミングが難しい
 この「ディプスファンタジア」(以下,DF)は,エニックスによるMMORPGの第2弾。リトス島を舞台に,剣と魔法の冒険が繰り広げられる。
 MMORPGといっても,「ウルティマ オンライン」で見られるような"生産系のスキル"はまったく存在せず,戦闘に重点を置いた作りになっている。同社の「クロスゲート」がほのぼの系だとすれば,こちらはシリアス系といえるだろう。
 4種類の職業から一つを選び,敵との戦闘ではそれぞれの個性を生かして戦うことになる。面白いのが,「チェイン」というプレイヤーの連携技で,スキル効果をパワーアップさせるシステム。戦闘中はいかにこのチェインをつなげるか,という駆け引きを楽しむことができる。また,MMORPGにしては珍しく,プレイヤー自身がストーリーを進めることができるのも特徴だ。最後のボスを倒すとゲームクリアとなり,2周めが始まる。これまでスタンドアローンのRPGしか遊んだことがない人にも,取っつきやすいシステムといえるだろう。

初めてでも迷わない親切設計

 MMORPGといえば,ゲームスタート→世界に投げ出されっぱなし,というのが定番だが,このゲームは違う。DFには操作やシステムに慣れるためのクエストが序盤に用意されていて,それらをすべて終わらせる頃には,この世界のマップやシステムなどが理解できるようになっているのだ。また,初心者のために「初心者ワールド」というサーバーも用意されているので,もし分からないことがあれば,そこで仲間を募るか上級者に聞いてみてもいい。こうして,ネットゲームならではのコミュニケーションも図れるというわけだ。
 ただ,この序盤のクエストを終わらせないと街の施設が使えないというのは,ネットゲーム上級者にはちょっと面倒に感じるかもしれない。道具屋のクエストをクリアしたら次は武器屋,というように順番にクリアしていかなくてはいけないため,筆者はちょっとばかり窮屈に感じてしまった。だが逆にいうと,次にとるべき行動がハッキリしているので,誰もが次の行動に迷わずに済むわけだ。その点は,さすが「ドラゴンクエスト」を世に出したエニックスのネットゲームである。

 DFのサーバーは,通常のものが9つと初心者ワールドが1つ用意されているものの,プレイヤーキャラはどのサーバーでも共通だ。また,ログアウトした位置が保存されているので,ちょっと混んでる場合などは,ダンジョンの途中でもほかのサーバーに移動して続きから遊ぶことができる。主に混んでいるサーバーは初心者ワールドと「ワールド1」で,ワールド1でパーティメンバーを募集して,冒険はほかのサーバーで……という遊び方が主流になっている。なお,初心者ワールドは一度でも転生(ストーリーのクリア)するとログインできなくなるので,上級者とのパーティプレイ中にありがちなネタバレや,レベルを上げる楽しみを奪いかねないパワーレベリング(低レベルキャラが,高レベルキャラに経験値がたくさん入る場所につれていってもらい,あっという間にレベルを上げてしまう行為)を防ぐことができる。といっても,未転生者もほかのサーバーへ行くことができるし,逆に初心者ワールドで転生しないで高レベルまで上げている人もいるため,あまり意味はなくなっているのが実状だが。

細部まで描き込まれたグラフィックス。だが……

モンスターはすべてアニメーションする。慣れてくればモンスターグラフィックスに使われているエフェクトの種類で,どんなスキルを使ってくるのか見分けることが可能だ

 エニックスのもう一つのMMORPG「クロスゲート」のグラフィックスは256色だったが,DFはフルカラーに対応しているだけあって,なかなか綺麗だ。マップの背景から武器や防具,モンスター,回復アイテムのリンゴやグレープに至るまで微細に描き込まれているし,プレイヤーキャラなどのアニメーションも滑らかなので,戦闘を見ているだけで楽しい。また,キャラクターデザインに人気イラストレーターの山下しゅんや氏を起用しており,DFの世界観構築に一役買っている。おそらく,パッケージイラストを見て購入を決めたユーザーもいるのではないだろうか。ゲーム中でも,山下氏のイラストがバストアップでバンバン出てくるので,ファンにはたまらないはずである。

 確かに山下氏のイラストはいい。文句のつけようがないくらいに。ただ,バストアップで表示されるキャラと,ゲーム中のキャラとのギャップが多少気になる
 また,DFの欠点として筆頭に挙げられるのが,"グラフィックスの使い回し"が多いことだろう。NPCはともかく,モンスターも名前と色が違うだけで見た目が同じということが多々あるし,ユーザーを一番不満にさせているのがプレイヤーキャラの個性のなさ,剣や鎧などのグラフィックスの少なさである。アニメーションが美しいだけに残念だ。
 ネットゲームの場合,自分のキャラクターに,ほかの人とは違う個性を出したくなるのは当たり前のこと。DFには,何も装備していないノーマルな状態でのグラフィックスが,男女それぞれ2パターンの計4パターンしかなく,あとは鎧や兜,楯を装備すればちょっと変わるくらいのレベル。鎧3種類,楯と兜は2種類しかない。また,アイテム欄ではカッコよくても,見た目に反映されないのはどうだろう。"深紅の鎧"や"深青の鎧"といった色を連想させるものを装備しても,自キャラの色と同じになる。例えば,プレイしているキャラの髪の毛や服が緑色の場合,"深紅の鎧"を装備しても鎧の色は緑色なのだ。せっかくCD-ROM2枚組なのだから,個性を出せるキャラ作りをさせてほしかったというのが,一プレイヤーとしての本音である。

DFのメイン,戦闘とチェインシステム

ワールド1の教会前はいつも人がいっぱい。アイテムの売買からパーティメンバーの募集まで,すべてはここで行われている。ただし,そのぶん非常に"重い"

 DFのウリであるのが,戦闘システムの「チェイン」だ。
 このシステムを簡単に説明すると,スキルを使おうとしている仲間キャラに自分のキャラのパワーを送り込むことで,その人とまったく同じスキルを一緒に発動させる,というもの。"ファイヤーブラスト"というスキル(魔法)をスペルユーザーが使おうとしているときに,ほかの3人がスペルユーザーに対してチェインすると4人で連続してファイヤーブラストを繰り出すことができる。
 このチェインには,"並列""直列"の2種類がある。並列はスキルを使う人に全員がそのままチェインをする方法で,威力もそんなに高くない。現在主流となっている直列は,スキルを使う人を最後として,A→B→C→Dというふうに順番にチェインをつなげていく方法だ。直列は事前に順番の打ち合わせが必要になるし,行動が遅いファイターなどに合わせなければいけないため大変なのだが,そのぶん成功したときのメリットも大きい。スキルの威力は最大で2.5倍近くにもなり,しかも消費スキルポイントも減るのだ。基本的にザコ戦ではスペルユーザーに,ボス戦ではファイターに直列チェインをすることになる。

 こう見ると,スペルユーザーとファイターだけ優遇されてそうだが,それは違う。クレリックがいなければパーティ全体を回復できないし,シーフがいれば,敵から盗んだアイテムでスキルポイントを回復することもできるというふうに,4つの職業のバランスが非常によく取れているのだ。戦闘では各職業の特徴を活かして,ときには直列チェインを決めたり,ときには回復したりと臨機応変さが問われる。当然パーティメンバーとのコミュニケーションが成立していなければできないことだ。DFの戦闘では,仲間との信頼関係がものをいう,まさにネットゲームならではのシステムだ。
 また,戦闘では助太刀システムというものがある。画面上で戦闘をしているキャラのアイコンを右クリックすると情報が表示されるのだが,このとき,1対4などで不利そうだなと感じたら助太刀に入ることができる。もちろん自分が助太刀されることもあるわけだ。自分が死にそうになっているときに颯爽と助太刀が入ってきて敵を殲滅してくれたときの嬉しさは格別だ。といってもフルパーティ(4人)には助太刀で入ることができないため,パーティプレイが必須になってくる後半のダンジョンなどではまず助太刀はないと思っていい。このシステムは序盤の初心者向けといったところだ。オリジンベルの街周辺で苦戦してそうな初心者を見つけたら助太刀してあげよう。

 戦闘はモンスターとの戦いのほかに,対人戦(デュエル)とギルド戦がある。前者は1対1からパーティ同士の対戦までできるのだが,素早さの高いほうが圧倒的に有利なため,魔法や居合い切り2段などを使えるシーフが最強といえなくもない。それでもユーザー同士でローカルルールを作って,現在はかなり楽しめるものになっている。観戦も可能なので,ほかのプレイヤーがどんな戦い方をするのか勉強できるのもいい。

ギルド守護神は,拠点を持たないギルドの場合,カルナックの村で育てることになる。お金やジェムをあげまくって守護神のレベルを上げていけば,外見と能力が大きく変化する。また,外見は同じでも,あげたジェムの種類によっては覚えるスキルが異なる

 もう1つのギルド戦では,ギルドの守護神同士を戦わせることができる。一度でも転生すればギルドが作れるようになり,その守護神はカルナックの村でジェムやゴールドを与えるたびに成長していく。
 ある意味通常の対人戦よりも,このギルド戦のほうが熱いかもしれない。というのも,拠点を持っているギルドと対戦して勝利すれば,その拠点をまるまる奪うことができるからだ。しかも負けたギルドは解散になり,拠点の倉庫に預けてあった荷物は勝ったギルドに所有権が移ってしまう。勝った側のギルドマスターの采配次第で,奪った荷物を元のギルドへ返却してあげることもあるし,もちろん自分たちのものにしてしまう場合もある。こうした事後処理も含めて,ギルド戦は面白い。勝てばウハウハ,負ければ即解散。拠点持ちギルドは常に危険と隣合わせといえる。だが拠点を持っていれば,アイテムを安く買えたり,倉庫が使えたり,特殊なアイテムを商人が売りにきたり,傭兵が雇えたりとメリットのほうが大きい。

オークションが熱い!

 オリジンベルの街にはオークションマスターがいて,彼に頼むことでアイテムを出品したり,逆に落札することができる。オークションへの参加は一切無料。月額料金も出品手数料もいらないので,アイテムとお金があれば誰でも参加できるのが魅力的だ。レアアイテムや,武器防具を強化するための各種ジェムなどは値段が高騰しており,普通の人が手を出せる金額ではなくなっているが,それでも装飾品やあまり人気のないジェムなどは安く購入できるので,オークションハウスにはいつも人がいっぱいだ。たまに破格の安値で出品している人もいるので,初心者のうちはオークションで装備品を買ったほうが得だったりする。また,武器防具などはジェムで強化されていることも多い。自分で育てたアイテムをオリジナルの名前にして出品している人も少なくないようだ。
 だがこのオークション,現実のオークションと同じように詐欺も多発している。アイテムの名前を鑑定屋で変更することができるので,グラフィックスが同じアイテムをレアアイテムの名前に変更して出品するのである。出品されているアイテムの"詳細"を見れば一発で分かるのだが,せっかちな人などが詳細も見ずに落札してしまい,泣き寝入りなんてことが多かった。よくあった例でいうと,カルナックの村にワープできる「カルナックの翼」というレアアイテムと,誰でも手に入れられる「オリジンベルの翼」のグラフィックスはまったく一緒。これに目をつけた人が,「オリジンベルの翼」を「カルナックの翼」と改名してオークションに出品していたのだ。現在では修正パッチで,既存のアイテム名と同じ名前には変更できなくなったのでその心配も少なくなったが,「カ(ちから)ルナックの翼」なんて名前で出品する人もいる(まあネタに近いのでダマされる人はいないと思うが)。落札時間間際の競り合いなども熱く,現実のオークションのいい部分も悪い部分も味わえる。
 しかし,オークションでの売上金や落札できなかった場合の返金が,冒険中にそのまま手元に戻ってくるのはちょっと困りもの。DFでプレイキャラクターが死んだときのペナルティは,所持金が半額になるだけなのだが,ダンジョンを攻略中に10000Gが戻ってきてしまい,死んで半分を失ってしまったときの空しさといったら……。銀行に戻るようになればよいのだが。まぁ現状では,オークション中は危険を冒さないようにすればいいだろう。

オークションの落札合戦は現実のソレと変わらない。出品者のコメントも重要で,同じ武器でも攻撃力が倍近く違ったりするので,気になるアイテムは隅から隅までチェックしたい

不具合は素早くパッチで対応。これからの展開に注目!

 不具合が出たらパッチで即修正。これはネットゲームなら当たり前のことで,DFも頻繁にパッチが当たる。このとき,バグだけでなくゲームバランスも変わることがあるのだが,ここに多少問題がある。
 ゲームバランスがたまに変わる,というのはなんら問題はないが,DFの場合,見事にしょっちゅう変わったのだ(最近は落ち着いてきたようだ)。例えば,ファイターのスキルに修正が入って弱くなり,その次の日には元に戻っていたことがあった。スペルユーザーの魔法の威力も,クレリックの回復力も開始当初から比べるとだいぶ変わったし,装飾品の効果もひっそり変えて,ひっそり元に戻したり……と,なんというかβテストをやらされている気分になっていたわけだ。
 ユーザーとしてはバグが直るのは大歓迎。しかし,ゲームバランスがちょくちょく変わるのにはついていけないユーザーも出てくるだろう。ゲームが発売されてから4か月以上経つのだから,さすがにもう安定期だとは思うが……。
 職業ごとの個性も,転職というシステムがあるために結局無個性になってしまっている。戦闘も,ある程度強くなれば単調な作業になりがちだ。また,パッケージで謳っていた「ランダム生成される100階層ダンジョン」も未だに実装されていないなど,ネットゲームとしてはまだまだ発展途上といえる。だが,見方を変えればこれから大きく成長するゲームともいえるわけで,手を出そうか迷っている人は,まさにこれからの展開に期待して購入してみるのもいいかもしれないし,すでにプレイしている人も,もっともっと遊び続けていくべきだろう。DFは,ユーザーとメーカーが一体となって作り上げていくゲームなのだから。

同社のクロスゲートと同じく,パーティを組むとリーダーを先頭にぞろぞろと歩く。冒険が終われば,フレンドリストに登録し合ったりアイテムを分配したりして別れることになる ギルド守護神は,拠点を持たないギルドの場合,カルナックの村で育てることになる。お金やジェムをあげまくって守護神のレベルを上げていけば,外見と能力が大きく変化する。また,外見は同じでも,あげたジェムの種類によっては覚えるスキルが異なる

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■発売元:エニックス
■価格:8800円
■問い合わせ先:エニックス TEL 0570-057-050
■動作環境:Windows 98/Me/2000/ Celeron/466MHz以上(PentiumIII/500MHz以上推奨),メモリ128MB以上,空きHDD容量:1.5GB以上

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