大戦略 VII

Text by TAITAI
27th Dec.2001

定番! 大戦略シリーズ

オープニングムービーより抜粋。迫り来る敵を迎え撃つの図

 ウォーゲーム好きには定番の「大戦略」シリーズは,ヘックスという六角形のマス目を並べて構成されるマップとターン制のゲームシステムを採用した,ボードゲーム調のウォーシミュレーション。登場する膨大な数の兵器を操り,マップ上に点在する戦術的な要地を見極めて,敵軍の打倒を目指す作品だ。国内では戦略シミュレーションの元祖的なタイトルとして知られており,大戦略に触れてウォーゲームの面白さに目覚めたプレイヤーも多いハズ。かくいう筆者も,過去に"どっぷり"とハマってしまった経歴を持つ一人だったりする。
 そもそも,筆者が初めて"大戦略"という作品に触れたのは,メガドライブ版の「スーパー大戦略」だった。この作品は,PC版の大戦略シリーズとは若干異なる部分のあるメガドライブ用に作り変えられたモノだったが,そのシステムの完成度は素晴らしく,文句なしに「名作」と思える数少ないタイトルの一つであった(ちなみにこれは,大戦略のシステムを使ったセガブランドの製品)。

 大戦略シリーズは,陸・海・空のありとあらゆる兵器が"コマ"として表現され,それら特徴ある兵器を有機的に組み合わせて戦っていくことが重要になっている。しかし兵器ごとの特性を把握して効率よく部隊を配置していく知的な楽しさもさることながら,一つひとつの兵器に細かく設定されているデータを眺めているときの,まるで兵器事典を見るかのような面白さは,このシリーズの大きな特徴といえるのではないだろうか

高度の概念を導入したシリーズ最新作

立体的に表現された戦場マップが今回の目玉だ 近代戦らしく? 遠距離攻撃が戦いのカギを握る

 さて,シリーズ最新作となる「大戦略 VII」は,前作「大戦略 VI」で採用されていたリアルタイム制からシリーズの原点ともいえるターン制へとシステムを戻し,じっくりと楽しめる本来の姿へ立ち戻っている。古くからのユーザーも親しみやすい内容になっているのだ。アメリカの次期主力戦闘機「F-22 ラプター」など現代兵器約450種が登場するほか,遊べるマップは大小あわせて60ほど用意されており,ボリュームの大きさも相変わらずという印象である。リアルタイムでの通信対戦こそできないが,メールを使った対戦機能をサポートしており,遠くの友達と遊ぶことも可能だ。
 戦場マップを,シリーズ初めてとなるフル3Dで表現している点も今作の特徴といえる。ボードゲームのような"コマとしての部隊"を意識したのか,ユニットは箱状の形で描かれており,妙にクラシカルな気分に浸れてしまうところも見逃せない。
 またマップのフル3D化に伴い,新たなルールとして"高度"の概念が導入されている。一つのヘックスが海中,海上,地上,低空,中空,高空の六つの高さに分けられていて,射程の短い対空砲では高空に位置している航空機を攻撃できないなど,戦術性がより奥深くなっているのだ。ただ,ユニットが折り重なって見にくいなどの弊害(これは本作の問題というより,高さの概念そのモノの弊害かもしれない)が散見されるところは残念。従来通りの2Dマップも引き続き用意されており,視野の範囲の違う3種類の視点を自由に切り替えることができる。局地戦の戦線構築をじっくりと考えたい場合には,ユニットや地形がよく見える"小視界マップ"を使用したほうがいいし,広域に広がる戦線の状況を把握したときなどには"大視界マップ"が便利というわけだ。

 また,公式ページの「ここ」や当サイト内「ここ」で,専用のマップエディタが公開されている。自分だけのオリジナルマップを簡単に作成できるという非常に便利なツールなので,本作を購入したユーザーはぜひダウンロードしておこう。ただし,このエディタについてはシステムソフト・アルファーのサポート対象外となっているので,使用は自己責任で行ってほしい。

大戦略シリーズはどう進化していくのか

ゲームスタート前に,初期の資金や燃料,生産できる兵器のタイプ(国を選ぶ)を決められる マップ上の部隊の状態を一覧する機能も用意されている

 この手のブランドシリーズは,常々"伝統"とも呼べる昔からのシステムを望まれる一方で,新たな面白さを発見させてくれる"新要素"までユーザーから要求されることが多く,往々にしてユーザーとメーカーの"すれ違い"を産んできた。どちらを重視するべきなのか,それは私なんぞがとやかくいうことではないし,簡単に結論を出せる問題でもないので,ここでは論じない。が,ただ一ついえる点があるとすれば,ユーザーインタフェースは常に"進化"していくべきではないかということである。同じシステム,同じルールであっても,操作性が一つ違えば,ゲームの面白さそれ自体が大きく向上するものだと思うからだ。実際,筆者は過去のいくつかのゲームでそれを感じてきたし,操作性/視認性の向上は,"すべてのユーザーが恩恵を受ける"もっとも大事な部分だと信じている。
 その観点からシリーズ最新作「大戦略VII」を見てみると,まだまだ"進化する余地は多い"のではないかと思う。誤解がないように断っておくが,本作のインタフェースはけっして悪くはない。マウスでの操作を良好にする「コマンドメニュー」は扱いやすいし,目に飛び込んでくる情報の数々もさすがにすっきりとまとまっている。
 しかし,例えば"部隊表一覧ウィンドウ"からユニットの選択/操作を可能にするなど,表やデータ画面が"もっとゲーム部分とリンク"していれば,より快適なプレイができるのではないだろうか(本作は,部隊表からユニットを画面中央に呼び出すことはできる)。新要素が追加されていない続編は,確かに"進歩のない作品"という誤解を招きがちであるし,ユーザーを飽きさせない試みは大切な部分だろう。しかし,大戦略のゲームルールは,ウォーゲームとして一つの完成形だといえる。故に,この完成されたゲームを"どうすればより楽しく,快適に遊べるのか"という観点も,大戦略というシリーズが挑んでいくべき課題の一つだと思うのだ。

 "伝統のシステム"に立ち戻り,ウォーゲームの原点を感じさせてくれる「大戦略 VII」。昔ながらのウォーゲームファンや,最近流行のリアルタイムストラテジーは忙しすぎてちょっと……というプレイヤーならば,買ってみてもよいのではないだろうか。ただ「Age of Empires」に代表されるRTSのようなテンポの良さ/手軽さを望むプレイヤーは,手を出さないほうがよいだろう。
 「いまさらターン制のゲームはなぁ」と思うプレイヤーも正直多いかもしれない。だが,将棋が将棋のままであるように,チェスがチェスのままであるように,大戦略も大戦略のままが一番よいのではないかと思うのである。変わらないこと,それこそが"完成度の高さの証明"である,と感じるのだ。

地上では圧倒的火力を誇る戦車も,高空からの攻撃にはなすすべがない 航空機は,ヘリコプターなどの遙か上空を移動できるようになり,一方的な攻撃を仕掛けられるようになった 高い対地戦闘力を誇る空軍ユニットも,着陸時を狙われてはお終い 現実と同じく,制空権の確保は大切。コストの高い航空機は大事に扱う必要がある
艦船ユニットは射程の長い武器を多く搭載し,支援兵器として非常に強力 高さの概念の導入により,同じヘックスに複数のユニットを重ねられるようになった ユニットには"装甲"の概念が,武器には"火力"の概念がある 作戦の目標は,敵の生産拠点を占領すること

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■発売元:システムソフト・アルファー
■価格:1万1800円
■問い合わせ先:
システムソフト・アルファー TEL 092-752-3902
■動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,PemtiumII 266MHz以上(PentiumIII 400MHz以上を推奨),メモリ64MB以上(128MB以上を推奨),HDD空き容量200MB以上,DirectX8.0以上
■体験版:http://www.4gamer.net/patch/demo/data/daisen7.html

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