コサックス 〜采配の芸術〜

Text by TAITAI
14th Jun.2002


■ヨーロッパの壮麗な歴史の紐を解く

これほどまでに迫力のある戦いをゲーム上で再現できるようになったのだから,テクノロジーの進歩という奴は凄いものだ

 各国家ごとに統一された軍服,様式美溢れる戦闘隊形,そして壮観な合戦模様……中世〜近代にかけてのヨーロッパにおける戦いというのは,煌びやかな,それでいて味のある独特の雰囲気を持ち,歴史フリークを魅了する要素には事欠かない題材といえるだろう。グスタフ・アドルフが活躍した「三十年戦争」や,強国プロセインの基礎を築いたフリードリヒ大王と「七年戦争」など,日本では比較的マイナーかもしれないが,それらにまつわるエピソードの数々は非常に興味深いものが多い。

 これから紹介する「コサックス 〜采配の芸術〜」は,そんな中世〜近代ヨーロッパの戦いを題材にしたリアルタイムストラテジーゲーム「コサックス 〜攻城の世紀〜」の,拡張パックに当たる作品だ。「オーストリア」「イングランド」「フランス」など前作でも登場した16か国の列強に加えて,新たに「バイエルン」と「デンマーク」の二つの国家が追加され,よりバリエーション豊かな戦いが楽しめるようになった。さらに,ゲームプレイの経過を記録してあとでじっくりと鑑賞できる「リプレイ機能」が追加されるなど,ユーザーの要望に応える嬉しい機能も多く用意されており,よりゲームを楽しめるような配慮が随所に施されている。




多機能のマップエディタも今回のウリ。オリジナルのマップを作って友達と遊ぶのも面白いだろう 艦船は圧倒的な耐久力と砲撃力を誇る強力なユニット。しかし,建造や維持には膨大なコストが必要となる ほかのストラテジーゲームと同様,戦いの前にできるだけ兵力を集中させるのが勝つためのコツだ


壮大な"大決戦"をゲーム上で再現! これは,ゲーム史上に記すべき功績だ

前作からの要素だが,マルチプレイでは「歴史上の戦い」という対戦モードが用意されている。歴史的な戦いを題材に,用意されたユニットを上手く指揮して勝利を目指さなければならない

 当然ではあるが,基本的なゲームシステムは"攻城の世紀"と全く同じだ。プレイヤーは,16〜18世紀のヨーロッパに存在した列強各国のいずれかを選び,国家を発展させながら強力な軍隊を組織して,敵対する勢力の打倒を目指していく。資源を集めながら国を発展させるという,いわゆる"Age of Empires(以下,AoE)系"のスタイルを完全に踏襲している作品なのだ。インタフェースや操作感もAoEのそれに近く,普段からRTSに慣れ親しんでいるプレイヤーならば,すんなりとルールを把握することができる。
 とはいえ,コサックスという作品の醍醐味はそんな些細な部分ではない。この作品の最大の魅力は,なんといっても数え切れないほど大量のユニットが演出する,迫力の合戦描写に集約されるだろう。数百ものユニットが整然と隊列を組み,鼓笛隊の鳴らす太鼓のリズムにのって前進し……。そして突撃していくときの臨場感たるや,ほかのRTSなどとは比較にならないほどの出来栄えだ。理論上では,最大8000ものユニットを戦場に送り込めるというのだから,その凄まじさは推して知るべし,である。歴史ゲームファンを虜にするには十分過ぎるほどのクオリティを誇っている,と断言しても構わないだろう。

 しかし,だからこそ筆者は思う。「この作品は,AoEのゲームシステムを真似る必要があったのか?」と。
 先にも書いた通り,コサックスという作品の魅力は"大軍同士の激突"に尽きると筆者は考えている。なのになぜ,"激突"をユーザーにより楽しませるシステムを用意しなかったのか。なぜAoEのシステムを単純にまねるに甘んじてしまったのか。高い技術力を駆使して,"大軍同士の激突"という圧倒的な表現力を手に入れながらも,それを生かし切れていない点が残念でならないのだ。この作品の持つポテンシャルはもっともっと高いものであると,筆者は信じて疑わない。
 "大軍同士の大決戦という表現自体を面白さに直結させるシステム"を提示することができれば,この作品はPCゲーム史上に残る不朽の名作として認識されていたのではないだろうか? 本作が持つ内政的なシステムの出来が悪いとは決して思わない。しかし,それがゲームを楽しませるために絶対に必要なシステムだったのかと考えると,「必要ない」要素だったのではないかと感じてしまうのである。

描き込まれたグラフィックスは一級品。ユニットのアニメーションも滑らかだ 乱戦になると,あとは軍の質と量で勝負が決まる。劣勢ならすぐにでも後退命令を出そう
 実際,本作の比較の対象として多くのユーザーがAoEの名を挙げているという事実が,筆者としては非常に口惜しい。AoEが非常に優れた作品であることを認めたうえで,このコサックスがまた違う素晴らしさを備える作品であることを,もっと多くのユーザーに知ってほしいと思う。歴史ゲームファンを自負するならば,本作は絶対に遊ばなければならないタイトルといえるだろう。もちろん,すべてのプレイヤーにお勧めできるとまではいわないが,歴史ゲームファンならば絶対に損はしないはず。購入をしようかと迷っている暇があったら,さっさと買うべきタイトルといえよう。





付属する「コサックス エンサイクロペディア」を読めば,ゲームに登場する国家や武器などの歴史的な背景を学ぶことができる 陣形はとても重要な要素。部隊全体の防御力を引き上げることができるぞ 一画面に表示されるユニット数は,ゆうに数百を数える。それでもかなり"軽い"のだから驚きである

一撃で敵部隊をなぎ倒すほどの破壊力を持つ大砲の配置は,戦いの趨勢を決める大事な要素だ 敵地に攻め込んで主要な施設を抑えてしまえば勝ちは目前だ 騎兵を生かすも殺すも司令官の腕次第。機動力を生かして,敵の横腹を突くのも面白い

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■発売元:ズー(本作をプレイするには「コサックス〜攻城の世紀〜」が必要です)
■価格:5800円("攻城"とセットになった限定パックは1万2800円)
■動作環境:動作環境:Windows 9x/Me/2000/XP,Pentium200MHz以上(PentiumII/500MHz以上推奨),メモリ32MB以上(256MB以上推奨),空きHDD容量400MB以上

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