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| ウインドウを広げて一度にたくさんの店舗の状況を眺めるのも,箱庭ゲームならではの楽しみだろう。ちなみに,ライバル店の様子も見られる |
"ザ・コンビニシリーズ"は,日本の経営シミュレーション及び箱庭ゲームの草分け的存在だ。1995年に,このシリーズのデザイナーでありマスターピースの社長でもある鬼才,吉川氏が記念すべきシリーズ1作めを発表したとき,メディアからの「ゲームのジャンルは何ですか?」「何タイプのゲームですか?」「つまり,従来のどんなゲームに似ていますか?」という質問に辟易したという。その後,ご存じのように同タイプのゲームが数多く登場することになるが,この時点ではまったく新しいゲーム。そんなとき吉川氏は,仕方なく「あえていうならば,シムシティですかね……」と答えたそうだが,今であれば,これらがいかにつまらない質問であったかは想像に難くない。
時は流れて2002年。「つまらないから」という理由で続編を嫌っていた吉川氏が,多くのユーザーの要望に応え,ついに重い腰を上げてシリーズの最新作を作り上げた。ちなみに「ザ・コンビニII」はライセンスを受けたメーカーがコンシューマ専用で出したゲームなので,吉川氏が作るザ・コンビニとしては,実に6年ぶりの新作なのである。
いきなり結論をいうと,「ザ・コンビニIII」(以下,III)はシリーズの伝統を守り,ほかの作業中にも遊べるお手軽さと,結果をとことん追求できる奥深さを併せ持ったゲームである。筆者もノートPCにIIIをインストールしているのだが,海外出張時に待ち時間を潰すのに,大いに役立った。というのもその待ち時間がほんの30分のときでも,3時間に及ぶときでも,同じように楽しませてくれるのだ。"時間をかければ”面白いゲームは数あれど,こういった短い時間でも楽しめるゲームというのは,貴重であると思う。
ここからは,IIIならではの特徴をみていこう。
この6年の間に,コンビニ事情は大きく変わっている。いつの間にか音楽CDやコンシューマソフト,PCソフトなどは当たり前のように売られているし,近頃ではキャッシュディスペンサーすら珍しくない。おそらく,この先もコンビニはどんどん便利になっていくのだろう。IIIでも,当然そういったフィーチャーを余さず取り込んでいる。それどころか,まだあまり聞かないサービスまで登場するのが面白い。
例えば高級鮮魚類が販売可能なのは序の口で,クリーニング,証明写真撮影,ピンボール,スロットマシーンなんてサービスもある。店の前にたこ焼き屋やクレープ屋,ヨーヨー掬い,りんご飴屋などの屋台を出せるし,ピアノやハープといった楽器類,滑り台やシーソーといった遊戯設備,待ち合わせに最適な噴水や時計,彫刻,なぜか石灯籠,注連縄(しめなわ)といった各種ディスプレイ,さらに観葉植物の種類も豊富だ。果ては人型や犬型のロボットまで店内に配置でき,ちょっと大げさにいうと,未来のコンビニをも感じさせる。
ここに挙げたのは極端な例で,この中の一つも使わなくてもクリアは可能だが,ともあれコンビニが現代人の生活になくてはならないものであるのは間違いなく,その内装や商品を自由自在に決められるというのは,それだけで十分に楽しい作業なのである。
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| 行動不審者は「つまみ出す」こともできるが,「警備」の値が100であればその必要はないだろう | 研究所に依頼して,新商品を開発してもらおう。ちなみにこの画面写真は,支持率26.9%(最高で27.0%)という,かなりよい商品ができたところだ | 町が成長してくると,土地代が暴騰して新しく店舗を建てるのには莫大な金額が必要になる。だったらむしろ,ライバル店を買収するほうが効率がいい |
IIIの最大の特徴は,シリーズで初めてインターネットでのサービスに対応したこと。といっても,いわゆるマルチプレイとはちょっと違う。
具体的にみていこう。インターネットに接続してユーザー登録をすると,IIIの公式サイト内にユーザー専用のページが作られる。この「マイページ」を利用して,さまざまなサービスが受けられるのはもちろん,こちらからほかのユーザーに対してサービスを提供できるようになるのだ。
ゲームの進行度によって提供できる/されるサービスは違う。具体的には,以下の通り。
| (1)ユーザー登録直後 | (3)中級シナリオクリア後 |
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| (2)初級シナリオクリア後 | (4)上級シナリオクリア後 |
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| ザ・コンビニIIIの公式サイト。ここで各種ランキングが見られるうえ,自分やほかのプレイヤーのマイページを確認できる。いいものを出品しているページはお気に入りに登録しておこう |
なお,ここでいうダウンロード/アップロードは,ほかのユーザーを対象にしているというのが面白い。自分がアップロードしたものがたくさんダウンロードされれば,マイページの「ネット利用評価」が上がっていく。これと「シナリオ評価」は公式サイトでランキングも発表されているので,ここでの1位を目指すという遊び方もあるわけだ。ちなみに,マイページ内の公開部分には写真付きで宣伝メッセージを入力できるから,気合の入った名文を載せて,アップロードしたあれやこれやを,ガンガンダウンロードしてもらおう。
当然のことながら,これらのネット上のサービスは,必要ないと思う人ならまったく使わなくてもいい。またこれらのサービスを使うにしても,時間を縛られないというのが嬉しい。自分の好きなときにアップしたり,ダウンしたり,写真とコメントを変更することでほかのプレイヤーとのコミュニケーションが図れるわけだ。これならネット接続の課金が従量制の人でも安心して遊べるし,何より生活サイクルが乱れることがなく,筆者は「非常に健全なゲーム」と思っているのだが,賛同してくれる人はきっと多い……と思う。
ゲームシステムといい,マイページを利用したコミュニケーションといい,PCゲームの初心者にも受け入れられやすいゲームといえるだろう。その点は,コンシューマも含め110万本以上売れたザ・コンビニシリーズの最新作としても期待通り,いや期待以上のデキである。
しかし逆に,ハードなゲーマーの中には不満を持っている人もいるようだ。例えばこの原稿を執筆している2002年6月上旬時点でシナリオ別ランキングを見ると,上位4人が満点で並んでいる。しかも現状,"時間さえかければ多くの人が満点を取れる"システムであるため,もっと自分の能力の限界まで出し切って戦いたいプレイヤーは「つまらない」と感じてしまうようだ。ほかにもIIIの開発中に噂されていた新商品にオリジナルの名前を付ける機能や,文字通りの通信対戦の機能がないことも不満として挙げられている。ただし,これらはすべて今後のアップデートで改善可能な問題というのも確かだ。後ろの二つはともかく,ゲームシステム自体はコンビニ経営をとことん追求できるほど奥深く作られているので,シナリオの評価ポイントの問題はいずれ解決されるだろう。
最後に個人的な感想を述べておくと,正直,のんびりと自分のコンビニチェーンがある町の様子を眺めているだけで十分楽しいし,ほかのプレイヤーのページを巡って,それぞれのコメントやアップしている写真を見るのもまた楽しい。普段あまりPCゲームで遊ばない友人達を誘って,みんなで店員や商品を交換しつつ,ダラダラ〜と遊んでみたいと思う。
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■発売元:マスターピース (C)2002 Masterpiece Co.,LTD. |
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