チャンピオンシップ・マネージャー
 シーズン01/02 完全日本語版

Text by キーオ林
20th Nov.2002


■膨大なデータ量に圧倒される,やり込み派サッカーシミュレーション

選手一人一人にこうしたパラメータが設定されている。このほかにも経歴や契約情報などで選手をいろんな側面から知ることができる。こうしたデータが10万人分以上用意されているのだ

 メディアクエストから発売中の「チャンピオンシップ・マネージャー シーズン01/02 完全日本語版」(以下,CM)は,イギリス生まれのサッカーシミュレーションゲームである。じっくりと時間をかけてやるのにうってつけの一本だ。
 マニュアルを開くと,いきなりこのような文章が書かれている。
  「(CMは)最も完全なサッカーシミュレーションであり,複雑で難しいゲームです」
 実際にプレイしてみると,この文章に全く嘘偽りないことが実感できる。ゲーム内の時間を進行させるだけなら,何も考えずに日付を進めるコマンドだけ出していればいい。だが,それではプレイヤーがこのゲームにおいて勝利者になることは不可能である。なにせこのゲーム,データの量が半端ではない。26の国際リーグに所属する10万人以上の選手やスタッフのデータが収録されているのだ。しかも一人一人に30以上ものパラメータが設定されている。自軍を常勝のメジャーチームに押し上げるには,チーム内の人員の能力を把握し,足りないと思われる部分をほかのチームから引き抜くなり自軍の人員を育てるなりして補っていかなければならない。データを整理し,目標を明確にして,適切に多くの指示出すなどの能力が問われるのである。



試合のデータはさまざまな側面から見ることができる。試合が終わったら,こういったデータを研究して戦略面や所持戦力の問題点などを見つけるのも重要だ 自分の監督としての評判がどの程度であるかを調べることもできる。ワールドクラスの評価を得られれば,国の代表監督として君臨することも夢ではない

■気になる「サカつく」との違いは?

選手だけでなく,スタッフにもそれぞれ特性がある。満足な能力を持っているスタッフがいない場合,ほかから探してくる必要に迫られる

 日本で一番メジャーなサッカーシミュレーションといえば,セガの「J.LEAGUE プロサッカークラブをつくろう!」(以下,サカつく)の名が挙げられる。この手のゲームのファンは,同じサッカーシミュレーションゲームとしてどうしてもサカつくとCMの違いが気になってしまうだろう。
 この2作の大きな違いとして,まずプレイヤーの立場が挙げられる。サカつくではプレイヤーがサッカーチームのオーナーであるのに対し,CMではチームの監督というポジションだ。選手の人事や練習メニュー作成,試合中の作戦の組み立てなど,両ゲームの共通事項も多いが,この立場の違いによってかなりプレイする感触に差が出てくる。
 例えば,サカつくではプレイヤーはチームのオーナーなので,自分が面倒を見るのは所有するチームのみとなる。しかしCMではプレイヤーは監督というあくまでも雇われる側の立場なので,必ずしも一つのチームに拘泥する必要がない。最初は監督としての実績のないところからゲームがスタートするので,いきなりメジャーなクラブの監督に就任したところで,結果が出せなければすぐに解雇される運命が待っている。それよりもしばらくは下部リーグで実績を積み,十分な成果を得られたらより条件が良い強いチームへ移籍するほうが成功への道が開けやすいのである。こうしてチームを移りつつ,徐々にステップアップする楽しみもあるわけだ。もちろん,3部リーグのチームを1部へと押し上げるまで同じチームで続ける,ビッグクラブで金に物をいわせて名選手を大量に獲得するというプレイスタイルも選べる。
 また,サカつくのプレイヤー(オーナー)にはチームの財力を奔放に使う権利があるし,チームの成績もゲームオーバーになるほどのヒドさでなければ,あとは自分が納得出来るかどうかで,比較的安閑とゲームが続けられる。しかしCMではそう簡単にはいかない。選手を獲得するための資金もチームの理事会にお伺いを立てる必要があるし,理事会が要求する成績をチームが残せなければ,最悪の場合クビになってしまう。シーズン途中で解雇される可能性だってあるのだ
 サカつくとCMは,同じサッカーシミュレーションであり,プレイ中に行うべきことの多くが重なっているが,実際にプレイした感触はかなり異なるのである。


恐ろしいほどにシンプルな試合中の画面。このゲームでは笑っちゃうぐらいに徹底して選手の姿が出てこない。その分ほかを充実させているのだから,こういうやり方もアリでしょう 時間を進行させると,ニュースといった形でさまざまな出来事が表示される。ときにはこのニュースに応じていろいろと決定しなければならない事項も出てくるのだ


■まず最初に行うべきことは……

最初のチーム選びは重要。設備や資金が充実したチームには,それなりに高い結果が求められることも覚悟して選択しなければならない

 かなり特殊なゲームシステムなので,ここで軽くゲームの序盤の流れを追ってみよう。
 ゲームをスタートして最初に行うのは,"フォアグラウンドリーグ""バックグラウンドリーグ"の設定だ。フォアグラウンドリーグとは,ゲーム上でフルにシミュレートされるリーグ。当然,自分がプレイしようと思うリーグはフォアグラウンドに設定しなければならない。一方バックグラウンドリーグは,簡略化されたシミュレートが行われるリーグである。ここで注意したいのは,フォアグラウンドリーグをたくさん選ぶとゲームの処理がとてつもなく重くなってしまうということだ。ゲーム内の日付を1日分進めるだけでも,もの凄い時間がかかってしまう。ストレスを溜めずに快適にプレイしたいのなら,ここであまり欲張らないほうがいいだろう。
 プレイヤーの名前などを決定したら,次にプレイヤーキャラクターの国籍を選ぶ。一見ゲームの進行にまったく関係なさそうなファクターだが,実はこれが重要である。外国人監督を厭うリーグもあるし,いわゆる"サッカー後進国"のリーグでは,強豪国の国籍を持つ監督だったら,評価の低い監督であろうとも喜んで迎えてくれるわけだ。また自分の国籍とは違う国のリーグで監督になれば,自分の国籍と同じ選手をスカウトしたときにその分興味を示してくれるし,その選手もホームシックにもかかりづらくなる。サッカーというスポーツは,ワールドカップなどの代表戦で「代理戦争」とか「国の威信をかけた戦い」などと称される。日本ではまだまださほど実感はないが,サッカーにおいての"国"の重要性を考えると,国籍のチョイスはかなり大きな事柄だということが理解出来るだろう。CMはこんなところまで実際のサッカーをシミュレートしているわけである。
 さてその次は,いよいよリーグとチーム選んでプレイ開始だ。監督に就任すると,理事会がチームに対する希望内容を公示する。「チームを立て直せ」から「優勝を狙え」までチームによって内容はさまざまだが,先述したようにこの希望を達成出来なければ,最悪クビとなる。
 ここからは何をやるかはプレイヤーの自由だが,日付を進行させる前に,少なくとも自分のチームの選手とスタッフの能力を把握して練習メニューを組み立て,チーム戦術の作成まではしておきたい。そして将来に不安を持っている選手は"評価"してその不安を取り除いてやり,自分のチームにいらないと思われる選手は移籍リストに載せ,足りないと思われるポジションは補強のためにサーチする。こうやって文章にすると簡単だが,ここまでの作業量は実に膨大である。もっともその作業が楽しかったりするわけだが。

 そして試合。日程や細かなルールなどはリーグによって異なるが,基本的にはスタメンを決めて戦術を指示したあとは,眺めているだけである(もちろん,状況を見ての選手交代や戦術の変更などは必要だが……)。ほかのサッカーゲームと著しく異なるのは,この試合中,すべての試合経過が文字でしか表示されないということだ。試合中でも普段の練習や選手とのやり取りでも,選手のグラフィックスというものがこのゲームには一切出てこない。ビジュアルをカットし,その分の労力をデータに当てているようである。文字だけではどれがどの選手か混乱するという人もいるだろうが,選手にニックネームを付けることで対処出来る。


必要のない選手はとっとと売りに出してしまおう。使えるお金は無限ではない。いらないコストはなるべく削るべきでだし,そのほうが選手のためにもなるだろう 戦略はポジショニングだけでなく,個々の選手に対しても実に細かく設定できる。選手の能力を見極め,それぞれの役割分担を徹底しよう


■多少の不満はあるが,噛めば噛むほど味が出る!

長いシーズンを戦っていけば,故障者が出てしまうことも。そうなる前に試合を休ませるなどの処置も必要だ。それでも防ぎきれないケースが多々あるが……

 ザッとプレイしてみての不満点も挙げておこう。ここまでデータが多いゲームだと仕方がないのかもしれないが,インタフェースに若干の使いづらさを感じる。例えばスタメンを決めるときに戦術図を見ながら選手を当てはめられない。戦術を試合ごとに細かく変えていくようなプレイヤーは多少不便さを感じるだろう。練習メニューを決めるときなども一人一人をそれぞれドロップ&ドラッグしなければならず,最初はイライラさせられるかもしれない。それからきちんとプレイしようと思うとチェックすべき項目が多すぎて,時間がないプレイヤーには不向きである。選手が文字でしか出てこないので,感情移入……以前に個々の選手の把握にも時間がかかる。そして選手の各能力の最高値は20なのだが,トップクラスの選手になると20ばかりで個性が出にくくななっている。もっとも,そんな選手ばかりを集められるクラブチームなんて滅多にあるわけではないが……。
 ちょっとあら探し的に欠点も挙げてみたが,これらはそのほとんどが,サッカーへの情熱と時間で解決できる類のものだ。各試合の主審の傾向(カードを出しやすいか否か,など)を探り,それに合わせて作戦を練り,不服な判定には後日抗議出来る……。ここまで出来るサッカーシミュレーションがほかにあっただろうか? 海外サッカーに興味がないという人は,リーグの選択を「JAPAN」にしてやれば問題ないし(ただし権利の問題か,日本だけはチーム名などが架空のものとなっている),とにかくやりこみ派のプレイヤー達には大満足の一本となること請け合いである。噛めば噛むほど味が増すような,スルメのような面白さのあるこのゲーム,ネットワークを介して複数人数でもプレイできるので,もしあなたがサッカーファンであったら,じっくりと腰を据えて付き合ってみるのはどうだろう? それだけの時間を割く価値のあるゲームである


試合の数日前には,次の試合の形式や相手の情報などもチェックしておくべき。スカウトを敵チームに派遣して情報を探るのも基本中の基本である 選手のカード累積にも気を付けたい。カードによる退場などでチームに迷惑をかけた選手に処罰を与えることも可能だが,選手がその処罰に納得しない場合も

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■発売元:メディアクエスト
■価格:7980円
■問い合わせ先:ユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/233MHz以上,メモリ64MB以上
■修正パッチ:「こちら」

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