「キャピタリズムII 日本語版」
Text by 成宮 澪 26th Feb.2003
「キャピタリズムII 日本語版」は,製品の製造,流通,販売を扱った本格的な経営シミュレーションだ。プレイヤーの立場は,製造業や販売業,ビル経営業などといった大手企業の社長。材料の購入や輸入に始まり,製造,販売,宣伝などあらゆる部門を自分で管理し,ビジネスを展開していく。そして,その舞台となる都市の住民にモノを買わせて利益を追求していくのだ。
収録されているシナリオは,チュートリアルの「実業家キャンペーン」が8本,「資本家キャンペーン」が最終的に20本以上。前者はチュートリアルとはいえ,そこそこ難度が高い。まずはこれで基本を身に付けてから,より本格的な後者に挑むことになる。
■経営と聞くと難しそうだが心配は無用
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箱庭的要素もタップリ。また,インタフェースはシンプルで見やすくデザインされている |
題材が"経済"なのでハードルが高いと思うかもしれないが,その心配はいらない。先述したように,ビジネス戦略を学習できる丁寧なチュートリアルが用意されているからだ。"経営"初心者でも十分楽しめ,プレイしているうちに自然と経営学が身に付くというわけ。
だからといって,現実と比較して極端に簡素化されているわけでもなく,かなり細かく作られている点もポイント。原材料や商品の購入時には,購入費用に加えて輸送費用までかかるなど,ほかの同タイプのゲームでは省かれることが多い部分まで細かくデザインされている。さらには株や金融などの要素も扱われており,バランスシートも表示されるなど,実に本格的だ。
ゲームの大まかな流れは,まず材料を生産/購入し,それをもとに製品を製造。そして広報宣伝活動を行い,小売店で都市の住人に販売していくというもの。このように全行程を扱っている企業なので,日本でいうと大手自動車メーカーや電機機器メーカーといった感じである。部品の製造から小売店(ディーラー)まですべて"系列企業"という大会社なのだ。その大企業を任されるわけだから,プレイヤーも責任重大である(いったい社員何千人の生活がかかっていることか……)。
こうした大規模なメーカーを取り仕切るわけだから,単純にモノを製造して小売店の棚に並べればいい,というわけではない。商品開発→製造→広報宣伝→販売という流れをしっかりと把握し,すべてにおいて連携の取れた戦略を立てないとダメなのだ。よって,いくら広報宣伝にお金をかけようが,自分が作りたいモノだけを作っていたら,まず自社の余命は長くない。それぞれの都市において,そこの住人が何を必要としているのかをしっかりとリサーチし,ニーズを見極めることから始める必要がある。正しいニーズに合わせて製品を製造し宣伝を行えば,よりニーズが高まり,自社製品が売れるというわけなのだ。
また,製造したそばから販売するというだけでは,いつか破綻が来る。在庫管理もしっかり行わないとダメだ。在庫はありすぎるのも困るけど,まったくなくて品薄状態というのも困りものである。宣伝したからといって絶対に売れるわけではないので,この在庫管理はとても難しい。だから,読みが当たって在庫もドカドカ売れるような状態になったときはメチャクチャ嬉しいし,ハズれて余剰在庫を抱えたときは頭が痛くなる。こうして,気がつくと経営者を辞(止)められなくなるのだ。
■各工程は専用のユニットを建設して行う
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自分の店を設置したところ。いつかはその隣宅のような豪邸に住んでみたい! |
さて,モノを作って売るための購入,製造,宣伝,販売,保管といった基本的な流れはご理解いただけたと思う。これをどのように行うかというと,ここらへんはうまく簡略化されていて,変に細かく気を遣わなくて済むようになっている。それぞれ専用のユニットが用意されていて,それを建設するだけで,各作業を行えるようになるのだ。
各ユニットを建設したら,材料調達から小売店での販売までをリンクして,ライン(工程)を組む。ここで重要なのは,稼働率というパラメータ。これが低いと施設や資源を有効活用しておらず,いうまでもなく会社に悪影響を与えていることになる。では効率を良くするにはどうするかというと,一つのラインを試しに組んで,しばらく観察すること。多数のユニットを設置してから見直そうとすると,時間も費用もかかって非効率的である。よって,効率の良いラインを見付けてからユニットを増やしていくのが,無難なやり方というわけである。
なお,宣伝はラインとは別物と思われるかもしれないが,これもゲーム内で,宣伝ユニットをラインにリンクすることで行う。宣伝ユニットをリンクさせたら,まず宣伝する製品を決め,次に用途や費用などを考えてテレビや新聞,ラジオといったメディアを選択。すべて終えると,宣伝キャンペーンの開始となるのだ。
■製品製造が簡単かつ面白い
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店の取り扱い商品などを選ぶ画面。4種類の品を各都市のニーズに合わせて選ぼう |
このようにいくつもの工程があるわけだが,なかでも筆者のお気に入りなのが製造である。さまざまな原材料を組み合わせて製品を作り出すのだが,これがつい夢中になってしまう。例えばコーンからはコーン缶が,コーンと砂糖を組み合わせればコーンフレークが……といった具合で,食品,生活用品,車,コンピュータなど多種多様なジャンルにおいて70種類以上もの製品が用意されている。パズルをやっているような感じで,これがまた実に楽しいのだ。
ちなみに材料は,必ずしも自社の工場や農場で初めから生産する必要はない。輸入したり,ほかの会社から買い付けることも可能である。
材料の加工は,工場画面の右にある九つのボックスを組み合わせて,製造工程を設定することで行う。ボックスの一つをダブルクリックすると「購入」「加工」「販売」「貯蔵」といった項目が表示されるので,「加工」を選んだでボックスとボックスの間にあるラインを繋ぐだけ。これで製造工程の完成である。
実に簡単なのだが,それでも慣れるまではとまどうこともあると思う。そんなときは,"製造レイアウトプランライブラリ"機能を利用すると便利だ。手軽にレイアウトを決められるので,とくに始めたばかりのころは活用することをお勧めする。またこのライブラリには,プレイヤーが新たに作ったレイアウトを追加して保存できる。自分なりに納得のいくレイアウトが出来たときはすかさず保存し,ノウハウを溜めていくようにしよう。
またレイアウトに関する機能で筆者が非常に便利だと感じたのは,"サプライヤー自動リンク"。この機能をオンにすると,自動的に供給元を探してリンクしてくれるのだ。供給が追いつかず操業停止になった場合でも,その不足している材料をよそから見つけてくるというわけである。
■16種類ある小売店をターゲット別に使い分けよう
次は小売店について紹介しよう。小売店は,当然ながら店によって販売できる商品の種類が異なり,また扱える品物は4種類までと決まっている。小売店は消費者に対する窓口なので,その品揃えがニーズに合うように,よく考えて決めよう。
小売店は,全部で16種類。全製品を販売できるディスカウントショップやデパート,そして専門的な小売店であるドラッグストアやコンピュータショップなどがある。なお,店をオープンするときは,人件費などのコストも忘れてはならない。
工場へ材料を仕入れるときの費用,農場や工場,お店の運営費といった支出を上回る売り上げを出さなければ破産してしまうのは当然だ。とはいっても,小売店の売り上げだけに目を向けていてもダメで,ライン中の無駄を省くということも忘れないように。経営の合理化は,非常に重要なのである。
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財務レポート。収支の増減を観ていると,髪が抜けたり胃が痛くなるような,現実の経営者並みの苦労を味わえる |
これは本社を建てた直後。あとはオフィスを用意すれば,頼りになる管理職クラスを雇用できるようになる |
■巨大企業のトップを目指して
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開店直後のデパートの中。人がどっとやってきた! |
もう一つの重要なポイント,人事についても触れておこう。最高責任者であるプレイヤーは会社の戦略を練ることが最も重要な職務なので,任せてしまえる部分は人に任せてしまうのがコツである。
まずは日常業務から。これは最高執行責任者(COO)を雇用して任せてみよう。COOの得意な分野により会社に与える影響が違うので,自社の状況をよく見て,最も適した人物を雇うようにするといい。そのほか,CMOこと最高マーケティング責任者(広報ユニットの効率をアップ),CTOこと最高技術責任者(研究開発プロジェクトを効率をアップ)などなど。決して人件費は安くないかもしれないが,会社を発展させるためならケチケチしないこと。なお,雇用するときはその人物の性格や関心ごとなどにも目を配り,適材適所で配置すること。また彼らを雇うには,本社を建て,オフィスを用意する必要がある点もお忘れなく。
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ゲーム中に何度もお世話になる製造ガイド。コーンからは何を作れるか? |
何種類かの材料を組み合わせることで,新たな製品を作り出せる。この新製品開発がハマるのだ |
■一人でも面白いが……
本作は,箱庭的な要素を持つ経営ゲームでは珍しく,最大で7人までのマルチプレイに対応しているのも大きな特徴だ。一般的なストラテジーゲームやFPSのような力と技の戦いも面白いが,友人と"経営手腕"で戦うのも,また一興である。
残念ながら日本では対戦相手を見つけるのが難しいが,ファンサイトもあるようなので,そこで同志を探すのもいいだろう。
本作は事業を軌道に乗せるまでこそ厳しい戦いを強いられるが,それさえ過ぎてしまえば非常に楽しめる。各都市への進出が成功すればお金もガンガン入ってくるから,新規事業や株式などいろいろと行えることが増えてくるのだ。こうなってくるととても楽しく,いわゆる"成功した人"の気分を味わえる。お金がお金を産む爽快感はなかなかのもので,筆者も気が付くと徹夜しているという毎日。自社ブランドで都市を制覇する快感を,あなたも感じてみてほしい!
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