Back
アプサラス
Text by 真鍋慎一
/Vmag.2000年9/15号

クリックすると拡大します  コーエーといえば「信長の野望」「三國志」「Winning Post」と,シミュレーションにおいてネットワーク対応ゲームを発売してきた国産メーカーの老舗。しかし第4弾「アプサラス」は,いつもの路線とはちょっと違う。
 ウルティマオンライン,EverQuest,そしてDiabloUと海外勢が異様に強いネットワークRPGにあえて打って出た。純国産ネットワーク対応RPGがどのように仕上げられてきたのか,原稿執筆時点ではかなり初期のβテストだが,それを元にレポートしよう。
 ちなみに発売は9月29日がが,それまでの間に2度,一般公募によるβテストが行われた。1回めは7月から,2回めは8月から行われ,今回のレポートは第1回めのβテストの内容を元にしている。
 当たり前だが,これはあくまでもテスト版でのレビュー。この2回のβテストで寄せられた意見を元にしてゲームバランスや機能を変更していったはずのだ。なので今回は,バランスなどには触れずに(原稿執筆時点では触れようがないのだが)システムを中心にアプサラスの世界を見ていこう。製品版では大幅に違う内容もあるかもしれないが,ご容赦願いたい。

ネットワーク対応部分はDiabloタイプ
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  7月1日に発売されたDiabloUをすでに遊んでいるユーザーならば,アプサラスを理解しやすいだろう。基本システムはDiabloとほぼ同じで,1人だけで遊ぶシングルプレイと,ネットワーク対応のマルチプレイの二つのモードが用意されている。
 マルチプレイの場合は,ユーザーがチャットルームであるロビーサーバーに接続し,そこで一緒に遊ぶプレイヤーを最大8人まで募り,2〜8人でダンジョンを制覇していく(β版では1人でも遊べた)。このあたりは,これまでのコーエー製ネットワーク対応ゲームと同じだ。さらに,ユーザーが集合するロビーサーバーもいままでのものを使っているので,コーエー製のほかのゲームを持っているユーザーと交流しながら遊べることとなる。このあたりもbattle.netライクだ。
 ちなみに筆者は,信長の野望Internet以来約2年間このロビーサーバーを利用しているが,接続できないとかダウンしているとかいったネットワーク的なトラブルは少ないほうだと思う。最近までかなり不安定だったDiabloIIのbattle.netのように,ロビー(チャットルーム)に接続できてもゲームが始められないというようなことはないだろう。

時間制限付きダンジョンを制覇
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  メンバーを募ったら,その仲間で森,砂漠,沼,火山などを舞台としたさまざまな自動生成型ダンジョンに挑んでいく。各ダンジョンは(いまのところ)8フロアあり,それぞれにボスキャラが設置され(β1では8フロアめのみ),これを制限時間内に倒していくことになる。制限時間が過ぎたから即ゲームオーバーというわけではないが,時間になると「死神」が登場し,すばやくプレイヤーを追いかけてくる。追いつかれると一太刀のもとに殺されてしまうので,死神が登場する前にクリアするのは必須である。
 ちなみに,死亡したプレイヤーは幽霊となるが,パーティ全体の人数によって決まる復活回数である「パーティライフ」がある限り,何回でも復活できる。パーティライフがなくなってすべてのプレイヤーが死ぬとゲームオーバー。誰かが生きているうちにダンジョンを抜ければ(生きているプレイヤー全員の同意でいつでもダンジョンを抜けられる),死亡したプレイヤーもすべて生き返る。
 このシステムは,1ゲームあたりの時間が予測しやすい利点がある半面,チャットする間もないような状況になりやすいことが分かった。実際,βテスト中でもゲーム中のチャットはほとんどなく,ダンジョンを抜けた後に後日談的に会話するぐらいなので,水中で黙々と何かをしているような,ちょっと息詰まる感じだ。時間制限をボスキャラの登場までに区切ったり,ティータイム的な場所やフロアを用意するなど,チャットができる時間の確保が必要になるだろう。そうでないとネットワーク対応ゲームの面白さというものが半減してしまうと思うのだが,どうだろう。

選べる職種は4種類
クリックすると拡大します クリックすると拡大します  プレイヤーが選択できる職業は,剣士,盗賊,龍術師,龍神官の4人である。この世界では魔法のことを龍術と呼んでおり,"龍術師"は魔法使いにあたり,"龍神官"が剣士+魔法使いと捉えておけばよい。シンプルで分かりやすいが,正直もう少し職種が欲しかったところだ。しかも,盗賊/龍術師は女性キャラ,剣士/龍神官が男性キャラに固定されているので,気に入った職種で名前に悩んでしまうかもしれない。
 作成したキャラクターには,職業や腕力などの各種パラメータのほか,アプサラスの特徴である属性も作成時にランダムで付けられる。属性には,地,水,火,風,空の5種類が用意され,キャラクターだけでなく,モンスターや装備品(アイテム)にも付けられている。属性には,地>水>火>風>地という力関係があり,水の属性のモンスターに対しては,地の龍術(攻撃)が効果的である。空は特別な属性で,ほかの属性に対して有利,不利がない中性的な位置付けである。
 この属性はゲームを進めるうえでキーになっており,たとえば,水属性のモンスターが多いダンジョンン(沼など)に火属性のキャラクターで挑むと,非常にやられやすい。逆に地属性のキャラクターで挑めば,かなり楽である。そうなってくるとキャラクターの属性選びを慎重にしたいところだが,キャラクターの属性は装備品によって強制変更できるので,2,3種類の属性に変更できるような装備品集めをするほうが重要になる。また,異なる属性のプレイヤーでチームを作り,うまく連携していくのも手だ。

合成によって作り出せる装備品は膨大
クリックすると拡大します  ダンジョンでゲットできる装備品は,合成することにより,より強力なものに変えたり,属性変更やアビリティを付加したりできる。例えば「呪いの青龍刀」に「鳳翼杖」を合成すると,より強力な「鳳翼青龍刀」になる。ただ,いまのところ単純な修飾詞の上書きになっているので,合成といっても足し算をやっているような感じだ。
 まぁこれだけでも装備品の深みは出るが,製品出荷までにさらに整備される予定なので,鉄+クロム=ステンレスのようなちょっと気の利いた合金作成のルールも取り込んでほしいところだ。そうすれば,長く遊べるゲームになるだろう。なお,入手した装備品は,ロビーサーバー上でも交換できる予定。

覚醒とレベルアップの微妙なバランス
クリックすると拡大します  アプサラスがほかのRPGと大きく違うのは,2種類のレベルがあることだ。一つは,通常のRPGにあるような恒久的な"レベル"で,もう一つは"覚醒レベル"と呼ばれるものである。覚醒レベルは1ダンジョン内のみ有効で,ダンジョン内でモンスターを倒していくとどんどん上がっていくが,一度ダンジョンを抜けてしまうとレベル1に戻ってしまう。あの名作「Rogue」チックというか。
 覚醒レベルは,とくに龍術(魔法)を使う龍術師と龍神官に大きく影響し,通常レベルとは無関係に,覚醒レベルによって使える龍術が変わってくる。そのため,龍術師が剣士などと冒険していて,剣士だけがどんどんモンスターを倒してしまうと,龍術師の覚醒レベルが足りず,下手をすると龍術そのものが使えないまま進んでしまうことがある。
 また,通常のレベルが高いキャラクターほど覚醒レベルが上がりにくいので,通常のレベルが高いほうが,役立たずの龍術師になりがちである。そんなこんなを見ると,現状のバランスはやや問題ありだが,おそらく製品版では覚醒レベル1から最低限の龍術が使える,もしくは覚醒レベルを上げておくようなアイテムが現れるなどの仕様変更があるだろう。
 なお,アプサラスではマジックポイントのような概念はなく,生命力(ヒットポイント)を削って龍術を唱えるようになっている。複雑になりがちなRPGをシンプルにまとめているが,2人以上による回復魔法の掛け合い技など,チームプレイの要素を増やしてもいるので,これはこれでゲームを面白くするポイントになっているといえる。

もっと詳しく知りたい〜
 βテストということもあって,コーエーのネットワーク対応ゲームのホームページ,
 http://www.koei.co.jp/netgame/
にはテスターからの要望などがリアルに書き込まれている。コーエー側の今後の対応も記載されているので,製品版がどのように変更されていき,最終的にどのようになりそうか詳しく知ることができる。もっとよくアプサラスを知りたい人は,ここをマメにチェックするといいだろう。

DiabloUより買いか?
 個人的な感想だが,現状のものがブラッシュアップされるなら,ずばり「買い」である。現時点ではバランスが悪い部分も多々あり,当たり前だがアイテムやダンジョンが少ないなど作りかけの部分があるので長くは遊べないゲームだ。しかし,多くの課題は製品出荷までに対応される予定なので,属性,合成など要素が多く,β1の段階でも操作性がよいので期待できる。そして何より,日本語でチャットしながらゲームができるので,長く遊べるゲームになるだろう。
 最後に,コーエーゲームファンの読者へ老婆心ながらひと言。信長の野望Internetがやっとできるぐらいのスペックのマシンでは,アプサラスは遊べない。PentiumII/300MHz,メモリ96MBでなんとか遊べる状態だ。今後チューニングが進むと思うが,リアルタイムゲームではマシンパワーを消費するので,マシンの準備も忘れずに。
■発売元:コーエー
■価格: 8800円
■問い合わせ先:コーエー
  TEL 045-561-6861
■動作環境:Windows 95/98/NT4.0/2000,MMX Pentium/266MHz以上(PentiumII/300MHz以上推奨),メモリ64MB以上(128MB以上推奨),空きHDD容量400MB以上
© 2000 KOEI Co.,Ltd.