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アリス イン ナイトメア
Text by Sealiss
/Vmag.2001年2/15号

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  原作は知らなくても,ハンプティ・ダンプティやチェシャ猫などのキャラクターを知らない人はあまりいないだろう。「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」をモチーフとしながらも,まったく新しいストーリーでアリスワールドをつくりあげたのが,今作「アリス イン ナイトメア」だ。そのストーリーの面白さだけでなく,練られたマップ構成が魅力の3Dアクションゲームだ。

狂ってしまった不思議の国
 オクスフォードの数学者ルイス・キャロルによって生み出された「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」は,全世界で慕われてきた作品。主人公アリスの不思議の国での冒険は,以後のファンタジーに多大な影響を与えているといってもいいだろう。読みやすく,そして理解しやすいように,ディズニーや童話などの媒体にも移植(?)されたが,原作は非常に巧妙に「言葉遊び」や「アクロスティック(折句)」が織り込まれている大人向けファンタジー作品なのである。読んだことがないなら,いますぐ読むことをお勧めする。チェスがモチーフになった「鏡」もいいが,とりあえずは「不思議」のほうだけでもプレイ前に読んでおこう。
 このアリスワールドを3Dアクションというジャンルで再現したのが今作。ただし,原作を忠実に再現してはおらず,「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」に続く「3番目の不思議の国のアリス」を目指し,全く新しいストーリーとなっているのが特徴だ。

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  Aliceは,「不思議の国のアリス」から約10年後の18歳のアリスが主人公。火事で両親を亡くし,その影響で10年間を精神病院で過ごしていたアリスの前に,再び白ウサギが現われた。白ウサギに連れられて不思議の国へと帰ってきたアリスが見たものは,狂ったハートの女王が征服した,以前とはまったく異なる"不思議の国"だったのである。

 このようなバックストーリーで,物語は展開していく。白ウサギやチェシャ猫など,アリスワールドにお馴染みのキャラクターが多数ゲーム中に登場する。また体を小さくするアイテムがキノコだったり,巨大キノコに腰掛けているイモムシに出会うなど,原作にあったシーンも再現されている。残忍で混沌としたアリスワールドを冒険できるのと,所々で原作と絡み合っているのが斬新で面白い部分だ。

アクション性が求められるゲームシステム
 3Dアクションといっても,UnrealやQuakeなどの一人称視点ではなく,トゥームレイダーのような三人称視点を採用している(チートコマンドで一人称視点に切り替えることも可能)。
 三人称視点のメリットは,キャラクターの動きが把握しやすいこと。Aliceでは,戦闘よりもマップ中の移動アクションに比重が置かれているため,三人称視点のほうが分かりやすいのだ。アリスの動作バリエーションも非常に多く用意され,新しいアリスワールドを十分堪能できるだろう。
 画面の左右に用意されているのは,意識レベル(赤)と勇気レベル(青)を示すゲージだ("体力"と"マナ"といえばいいだろうか)。不思議の国を冒険しているときは,トランプ兵などからの攻撃だけでなく,トラップによるダメージも受ける。意識ゲージがなくなるとゲームオーバーとなってしまうが,レベルアップやアイテムによってゲージの総量を増やすことはできない。敵をいかにして攻撃を受ける前に倒すかということが求められるのだ。

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  で,敵を倒すために,アリスには10種のオモチャが用意されている。不思議の国でのオモチャは,身の毛もよだつ武器となるのだ。ゲーム序盤で手に入るオモチャは攻撃力が低く頼りないが,ゲーム後半にはトンでもない破壊力を持つものも多数用意されている。
 ちなみにそれぞれオモチャでの攻撃には,メインとサブの2種類の使い方があるのが特徴。メイン攻撃は勇気ゲージをあまり消費しないが,ダメージは少なめ。サブ攻撃は勇気を消費して大ダメージを与えられるものだ。初めに拾えるナイフを例にとると,メイン攻撃が斬りつけの近接戦闘用,サブ攻撃がナイフを投げる遠距離攻撃用となっている。10種の中で用途が似たようなオモチャはないので,敵やシチュエーションによって適宜変えていかなければならない。
 敵のターゲッティングや,オモチャを投げる方向の指定にはマウスを使用する。移動やオモチャのチェンジはキーボードだ。マウスとキーボードの同時使用というのは,PCゲームでは極当たり前のことだが,慣れないと最初は途方に暮れて,操作性が悪いと感じてしまうかもしれない。
 前述したように,敵を的確に素早く倒すということも大事だが,小さな足場をピョンピョンと飛び跳ねていったり,狭い小道を進んでいくなどの微妙なアクションを必要とする場面が多い。とはいえ,マウスとキーボードの両方を同時に使うとなると,マウスを右手,キーボードを左手というポジションを取らざるを得ないのだ。
 コアなPCゲーマーでない人(大半だろう)にはちと可哀想だが,慣れてもらうしかないかも。正式には対応していないが,ゲームパッドにキー操作を割り振ることもできるものの,あまり操作性は変化しない。ゲーム中盤以降になると慣れてくるので,序盤は我慢してプレイするのがいいだろう。

→続く

■不思議の国でアリスが使えるオモチャ■

ナイフ

狂った不思議の国で最初に拾える。サブ攻撃は攻撃力があるものの連続使用できないのが難点

悪魔のサイコロ

悪魔を呼び寄せて(召喚?)敵と戦わせることができるが,敵がいないときにはアリスが狙われる一長一短のオモチャ

トランプ

ホーミング性能がある遠距離用のオモチャ。空中にいる敵に対して効果的だ

ジャック

ちいさなブーメラン状の刀を複数撃ち出せる。壁で反射するので狭い場所で効果的

クリッケーの木槌

原作でも登場したクリッケーに使う木槌。フラミンゴを模ってあるのが,原作ファンにうれしい小粋な配慮

目玉の杖

チャージ式の強力なアイテム。サブ攻撃は周囲にボムを降り注ぐが,アリス自身もダメージを受けてしまう

びっくり箱ボム

メイン攻撃は爆弾,サブ攻撃はそれに加えて火炎放射もするというびっくり箱。まさにビックリ。使いどころが難しい

不思議な時計

30秒の間,時を止めることができる究極アイテム。連続使用はできない

アイスワンド

敵を凍らせることができる魔法のワンド。ゲーム中盤でのメインとなるオモチャだ

   

ラッパ銃

ゲーム中最大の攻撃力を持つおもちゃ。しかし勇気ゲージをすべて使ってしまうという一長一短の特徴を持つ