シド・マイヤーズ アルファ・ケンタウリ 完全版
ついに日本語版で登場した名作の続編シド・マイヤーの代表作「Civilization」は，太陽系に最も近いアルファ・ケンタウリ恒星系へ人類を移民させるまでを描いたゲームだった。そして，移民した人類の「その後」を描いた作品が，この「アルファ・ケンタウリ」なのだ。なお，作者のシド・マイヤーは，現時点でCivilizationの発売元を離れ，今回の「Alpha Centauri」（以下αC）「Alien Crossfire」（以下AC）は，自身が設立したFiraxisGamesによって開発されている。開発元こそ違えどデザイナーは同じなので，αCとACはCivilizationの続編として捉えてもいいだろう。 さて，このαCとAC，ゲームシステムは昔ながらのターン制を採用したストラテジーシミュレーションのスタイルを採用している。Age of Empiresシリーズに代表される最近の人気作の多くがリアルタイム進行を採用しているので，新しいゲーマーはちょっと違和感を覚えるかもしれない。とはいえ，アクションゲームさながらのマウスさばきが要求される最近のリアルタイム制にはついていけない，「大戦略」出身の昔ながらのシミュレーションゲーマーには遊びやすいはずだ。 Alpha CentauriとAlien Crossfireの関係 
人類は，アルファ星系チロン星までの航行中に主義主張の違いから七つの党派に分裂してしった。プレイヤーは，この七つの党派のうちの任意の1派のリーダーとなって，ほかの六つの党派の様子をうかがいながら植民活動を行うことになる……と，ここまでがαC本編。ACはαCの拡張キットで元々別売りされていた製品だが，今回発売された完全日本語版では1パッケージに収められている。ACはαCの3年後の設定で，人類には新たに5党派が誕生し（忙しいなぁ），さらに二つのエイリアン党派が登場する。αCでも，人類はチロン星上に点在する数々のエイリアンの遺跡を発見してそこから新技術を開発できたが，それは全て彼ら2党派のエイリアンの祖先達が残したものだった……というわけ。エイリアン2党派はチロン星をどうすべきかで争っており，この紛争に巻き込まれた人類の物語となる。 心理的な駆け引きが楽しめる外交システム 
さてこのゲーム，パッと見ただけでは普通のストラテジーシミュレーションにしか見えないが，実はほかの作品とは大きく違った要素が盛り込まれている。それは「外交」システムだ。貿易などの経済的外交だけでなく，政治的，軍事的な外交が，ゲームの進行に重大な関わりを持ってくるのである。対人戦だけでなくシングルプレイでも，敵党派の代表はプレイヤーに対して数ターンの一回の割合で，積極的にコンタクトを取ってくる。コンタクトの内容は，開発した科学/軍事技術の交換要請，各種条約締結など，戦況によって刻々と変化する。自分で弱者だと思っているならば同盟や休戦を呼びかけてくるし，自分が強者であると認識しているならば横暴な要求をしてくることだろう。その返答次第でその後の相手の反応が大きく変わってくるだけに，戦局の流れを常に掴んでいなければならない。 このゲームでは戦略のぶつかり合いだけでなく心理的な駆け引きまでも楽しめるわけだ。なお，ACに登場するエイリアンは人類とは大部異なった思考を持っているので，一筋縄には行かない。飴と鞭を振りかざすだけではだめなのだ。αCとACのプレイ感覚の差（そしてそこから生じる面白さ）は，ここにもあると言っていいだろう。
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