The Entente:World War I Battlefields 完全日本語版

Text by Sluta
22nd Dec. 2003

 

コサックスエンジンを使った第一次大戦RTSが登場

 「The Entente:World War I Battlefields 完全日本語版」(以下,アンタント)は,その名の通り第一次世界大戦を舞台にしたリアルタイムストラテジー(RTS)だ。第一次大戦が舞台というレアさはひとまずおくとして,本作の大きな特徴は,「コサックス」と同じゲームエンジンを使っている点。コサックスエンジンの特徴は,「2D画面上で」「一度に何千という単位のユニットを」「比較的低スペックで」「滑らかに」表示できることで,アンタントはこのエンジンの特徴をフルに生かした,ダイナミックで迫力のあるゲームに仕上がっている。
 なお,本作はオリジナルのロシア語版や,この日本語版はすでに発売されているものの,まだ英語版は発売されていない(2003年12月22日現在)。そのため,まだ世界的には無名に近いソフトだが,RTSファンには無視できないタイトルなので,さっそく紹介しよう。

史実をもとにしたキャンペーンが充実

重爆撃機が大量に飛来するようだと,戦闘の終結は近い

 まずは,ゲームの概略を説明しておこう。
 舞台となるのは,1914〜1918年に起こった第一次世界大戦の各戦場だ。プレイヤーは,「オーストリア・ハンガリー帝国」「ドイツ」「フランス」「イギリス」「ロシア」の5陣営のいずれかを指揮して戦うことになる。
 シングルプレイのゲームモードは,「キャンペーン」「ミッション」「ランダムマップ」の3種類。「キャンペーン」は史実に沿って各戦場を転戦していくもので,登場する5国分がそれぞれ用意されている。「ミッション」は,キャンペーンのものとは別に,単体の戦場を集めたもの,「ランダムマップ」は史実とは無関係にプレイヤーが好きなマップ/設定で遊べるモードである。
 マルチプレイはTCP/IP接続(つまりインターネット経由)のみをサポートし,最大で8人が同時に対戦できる。こちらは「ランダムマップ」モードのみ。ただ正直,現状ではマルチプレイを評価するのは難しい。というのも,対戦相手を探すのに非常に苦労するためだ。これは先述したように,英語版が未発売なのが痛い。2004年の2月頃に発売されるという話もあるので,それまでは我慢しよう。
 ただアンタントは,COMを混ぜてのマルチプレイが可能なので,一緒に遊べる知人が一人か二人もいれば,十分マルチプレイ気分を満喫できるようになっている。

 ゲームの進め方は,ごくごく一般的なRTSといった感じ。何人かの民間ユニット(労働者)がマップ上で命令を待っている状態からゲームが始まり,プレイヤーは労働者を使って建物を建て,資源を採取していく。最終的な目標は,自分で育成した軍事ユニットを駆使して敵を打ち破ることだ。
 登場兵器は陸海空それぞれがひと通り揃っているほか,トーチカなどの防御施設も重要な役割を果たす。研究を進めていけば毒ガスを使うことも可能だ。

「経済顧問」「軍事顧問」によってプレイしやすさが大幅に向上

 アンタントの一番の魅力は,なんといっても何千という単位のユニットを使った大迫力の会戦にある。単純に数で評価するものでもないだろうが,「コサックス」では1プレイヤーあたり1000ユニット程度だったものが,アンタントは人口を増やすことが容易なこともあり,1万ユニットまでは軽く増やせるのだ。両作品をプレイしてみて,実際のプレイ感覚でも,5〜6倍は増えているという印象を持った。
 また,戦車や空軍,潜水艦などが加わり,コサックスの時代よりも兵器のバリエーションが増えていることもあって,戦い自体も派手さを増している。

 しかし,これだけ数も種類も豊富となると,プレイヤーがすべてのユニットをまとめきれず実際のゲームプレイは雑になってしまうのではとの懸念がある。この問題を見事に解決しているのが,「経済顧問」と「軍事顧問」という二つのシステムである
 これは,コンピュータAIがプレイヤーの代わりに内政/軍事の一部分を担当してくれるというもの。どの程度まで顧問にやらせるかは設定で自由に変更できるし,顧問のオン/オフはワンクリックで簡単に切り替えが可能だ。
 顧問は,「委任する」というような意味合いではなく,あくまでも「サポートしてくれる」といった感じ。オンにしてプレイヤーが何もせずに放っておけばすべてをひと通りやってくれるし,逆にオンにしておいてもプレイヤーが積極的にプレイしていれば,プレイヤーの邪魔をすることなく,ミクロなサポートに徹してくれる。要するに,放置されている/使われていないユニットのみを顧問が操作してくれるようになっているのだ
 経済/軍事顧問のおかげで,筆者はプレイに面倒臭さを感じることはまずなかった。プレイヤーは,自身が重点的に操作したい部分に集中できるわけだ。AIの出来はまずまずで,経済顧問なら足りない資源を確保するように動いてくれるし,軍事顧問なら,敵に一直線というのではなく,扇形に広がるように綺麗に布陣してくれる。RTSに不慣れな初心者に嬉しい機能であることはもちろん,操作に忙殺されずに楽しめるという意味で,熟練プレイヤーにも便利な機能だ

ランダムマップの設定画面。最大8人での同時対戦可能 静止画ではうまく伝わらないかもしれないが,大軍がわらわらと動くサマが圧巻 AIのデキは,なかなかのもの。右下のミニマップを見ると,COMの緑がプレイヤーの赤を包囲している様子が分かる

じっくり陣地を作りつつ,じわじわ前進,というタイプのゲーム

 さて,もう少し踏み入って,アンタントというRTSについてディープな話題に入ろう。
 まずアンタントの全体的な印象だが,良くも悪くも「大味な作品」だといえる。理由の一つは,内政のバランス。スタート直後こそ資源が乏しいものの,内政基盤を整えてアップグレードをしていくにつれ加速度的に資源が増えていき,30分も経てば資源はどれも10万超,というような状態になる。万単位の資源を要するユニットやアップグレードもあるので,資源が無限にあるように感じるわけではないが,市場の利用コストが非常に低いこともあり,中盤以降は資源のやりくりに困ることはまずない
 人口制限もあってないようなもので,家(共同住宅)を筆頭に,ユニットも労働者や歩兵ならコストが非常に安いので,どんどん家建設→ユニット生産→内政拡大,が可能だ。マップ上の土地が許す限り,内政を拡大できてしまう。内政に煩わされることが少ないという意味ではプレイしていて楽だし爽快感もあるが,絶妙なバランスがあるとはいえず,真剣勝負の対戦型RTSとしては向いていないと思う。

 戦闘そのものは,「歩兵」「迫撃砲」「戦車」「榴弾砲」「爆撃機」などを組み合わせて行う。それぞれのユニットの役割は限定されているので,単体で突撃しても戦果は望めないだろう。歩兵や戦車で陣地を保ちつつ,砲や爆撃機で敵にダメージを与えていく,という展開になる
 また,敵味方共にユニットがあふれ出るように沸いてくるので,しっかりと戦線を構築してプレイする必要がある。前線が壊滅したときに後続がいないと,すぐに押し込まれてしまうのだ。トーチカや監視塔は防御施設として戦線を維持するのに適しているので,これらを建設しながらじわじわと前進していくのがいいだろう。このような,じっくりと攻めていくプレイが好きな人に,非常にお勧めのゲームといえる。

 コサックスエンジンを採用しているため,プレイ感覚もコサックスに近いだろうと思うかもしれないし確かにグラフィックスや操作感覚がよく似ている。しかしコサックスは「民間ユニットの奪取ルール」によって荒らしや奇襲が有効で,かなりスピーディなゲーム展開だったが,アンタントにはそれがなく,防御施設も強力なため,かなりゆったりとしたゲーム展開になることが多い。ゲーム性はかなり別物という印象だ。

戦艦は非常に高価だが,艦砲射撃はとてつもなく強力だ メインのゲームモードはキャンペーン。史実に沿って,各戦場で戦っていくことになる メニューの一つ,博物館。建物を含むすべてのユニットの画像と解説がある

陸海空揃った,大軍同士の迫力の会戦が純粋に楽しめる

グラフィックスは史実に基づいて描き込まれており,第一次世界大戦の雰囲気をよく再現している

 マイナス面だと思われる点を挙げておこう。一番気になったのは,ユニットのパラメータが表示されないことだ。
 一般的な歩兵である「兵士」を例に取ると,選択したとき,"ライフ値を示すバー" "ユニット名" "国名"と,あと「手榴弾を3個所持」なんて表示されるくらいで,それ以外のデータは見られない。攻撃力や防御力の表示はなく,ライフ値もバーだけで,実際どれくらいあるかが数値では分からない。
 それぞれのユニットの特性については,マニュアルやゲーム内の博物館というセクションに説明があるのだが,細かいデータまで網羅されているとはいえず,どんなユニットなのか分かりにくい。維持費や将校によるステータスボーナスなどもあるはずだが,ゲーム中に表示されないので詳細が分からない。
 ほかにも,建物を複数選択できない,ショートカット(ホット)キーが不十分,リプレイ機能及びマップエディタが非搭載,などは,やりこむにつれ不便を感じ,残念に思える点だ。

 とはいえ本作は,大部隊同士の激突を前面に押し出し,純粋に戦いを楽しめるという点では非常に面白いし,コサックスよりも進化している点は多い。細かい操作を気にせず,どんどんユニットを出してぶつかりあうことができるという意味では,本家コサックスよりも,"コサックスエンジンの活かし方"が優れているとも思うくらいだ。
 最後になったが,本作のもう一つのウリは,「第一次世界大戦を舞台にしている」こと。筆者の知る限りでは,第一次大戦のみを題材にしたRTSは,これが初めて。もちろん当時に実在した兵器が登場するし,戦史の解説も丁寧になされているので,歴史ファンにも要注目のタイトルではないだろうか。

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■発売元:MYSTIX STUDIOS
■問い合わせ先:MYSTIX STUDIOS ユーザーサポート
■価格:オープンプライス(MYSTIX STUDIOS公式サイト通販特別価格:8820円)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(Pentium4/1GHz以上推奨),メモリ 256MB以上(512MB以上推奨),空きHDD容量 600MB以上,DirectX 8.1以降
ムービー(2分45秒:31.1MB)
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The Entente:World War I Battlefields (C) 2003 Buka Entertainment.
The Entente:World War I Battlefields (C) 2003 Lesta Studio.