CALL OF DUTY 日本語版

Text by 松本隆一
17th Dec. 2003

 

※このレビュー記事は英語版をもとに作成していますが,最後に日本語版についても言及しています

静寂が阿鼻叫喚の地獄へ これが戦場だ

 北フランスの田園地帯。星のない静かな夜。散開し,急ぎ足でドイツ軍の占拠する建物に接近するアメリカ軍空挺隊員達。ドイツ語の鋭い叫び声。土煙と共に炸裂する迫撃砲弾。建物の窓という窓から銃が突き出され,炎と共に弾丸が雨のように降り注ぐ。静寂が阿鼻叫喚の地獄に変わり,つぎつぎに倒れる空挺隊員。轟音。炎。爆発。地をなめる機関銃。立ち止まることも進むこともできず,ただ戦争の恐怖を感じるしかない瞬間だ。
 もちろん,幸いにして実体験したことはないけれど,もしかしたら本物の戦場とはこんな感じなのかもしれないなあ,と思わせる迫力満点の説得力が「CALL OF DUTY」(以下COD)の最大の魅力だ。久々の大物アクションゲームの登場,といっていいだろう。

歴史的に戦闘を戦い抜き,ベルリンに迫れ

ロンドンに900発も撃ち込まれたというV2ロケット。わざわざ燃料を入れてから破壊するというミッションだ

 シングルプレイがメインの第二次世界大戦ものFPSといえば,「メダル オブ オナー」(以下MOH)シリーズがデファクトスタンダードだろうけど,CODを制作したInfinity Wardは,そのMOHシリーズの第一弾である「メダル オブ オナー:アライド アサルト」を制作したスタッフ数十名が独立して作ったデベロッパ,ってのはよく知られた話。そのため,基本的なゲーム性はMOHによく似ている。ちなみに欧米でのパブリッシャは,Activison。

 ただ,MOHシリーズが基本的に一人の主人公をプレイするのに対し,こちらはアメリカ軍第101空挺師団マーチン二等兵,イギリス軍第6空挺師団エバンス軍曹,ソ連軍アレクセイ二等兵の3人を交互にプレイすることになり,それぞれ違った雰囲気の戦闘スタイルを楽しめる
 マーチン二等兵の場合,ノルマンディーやアルデンヌを舞台にした,ほぼ通常の中規模戦闘。SASのエバンス軍曹は単独での潜入,破壊ミッション。そしてアレクセイ二等兵は,スターリングラード,ベルリン戦のような大規模戦闘,といった具合だ。
 マーチン二等兵がドイツ軍基地から救出するイギリス軍将校がエバンス軍曹の上官だったりと,それぞれ,ほんのわずかずつオーバーラップするところはあるが,基本的に3人は独立した作戦を行う。とはいえ,マーチン二等兵やアレクセイ二等兵にもジープによる敵中突破や単独の狙撃ミッション,エバンス軍曹にも比較的規模の大きい守備作戦などもあり,それぞれの違いはそれほどはっきりしてるわけでもなかったりする。各キャラごとに八つのミッションがあるので,あわせて24ミッションとなりボリューム的には十分だ

アメリカ,ソ連,イギリス,それぞれに個性的な主人公をプレイ

 個人的に嬉しいのは,やはりゲーム"ほぼ"初登場の本格的ソ連赤軍パートだろう。MOHが映画「プライベート ライアン」にインスパイアされているように,アレクセイ二等兵の運命も映画「スターリングラード」によく似ていて,正直いって,我らソ連マニアにはたまらんものがある。
 精悍な英米兵とは違う,明らかに田舎臭い顔つきの仲間とボロ船に押し込められ,空襲のまっただ中を渡河,対岸でライフルなしの弾丸5発だけを渡され,火を噴くドイツ軍銃座の前に飛び出していかなくてはならないところなど,映画さながらだ。スターリングラード広場のシーンでは,ドイツ軍銃座と戦車にいすくめられて後方でオロオロしていると,味方の督戦隊によって見せしめに撃ち殺されるという小粋なアトラクションまでついている。おいおい。
 プレイ中,思わず椅子を引き「ゲームで良かった!」と安心することも一再ではなかったが,ほんの半世紀ほど前に,これをほんまもんでやらされた人達がいたのかと思うと,なんと言って良いやらだなあ。ふつー死ぬって,ほんと。
 さらには,後半のベルリン前面の戦闘では,T-34対ドイツ4号戦車の大規模戦車戦も出てくるし,最終マップではリアルに再現されたベルリンの国会議事堂に突入し,屋上で赤旗を振り回すという,まさにゲーム以外では考えられない涙ものの体験ができてしまう。
 お母さん,ぼかぁ,今,写真や文献で何度も見たり読んだりした場所にいて,狂信的なナチ野郎と本当に撃ち合っているのです。か,感動だなあ。あ,やられちゃった。

 もちろん,マーチン二等兵にもエバンス軍曹にも,それぞれ見せ場が用意されているので,進行が単調で飽きる,などということはまったくない。

ババリア山中の敵拠点に捕らわれたイギリス軍将校2名を救出するミッション。建物の内装が美しい 敵の塹壕に飛び込み,野砲を次から次へと破壊していく。「バンドオブブラザーズ」を観ておくと気合いが入る

プレイヤーキャラクターを使いこなすのが基本

ダムの破壊に成功すると,トラックで脱出。追いかけるドイツ軍部隊をかわし,空港まで逃げ切るのだ

 オペレーションに関していえば,FPSをいくつかクリアした人ならほとんど迷うことはないはずだ。
 超至近距離の敵をライフルやサブマシンガンの台尻で殴りつけるMelee Attackと,銃を顔の前に引き寄せることで命中率の上がるAiming Down the Sight(ADS)がほかにはない機能かもしれないが,とはいえ,撃ちまくるシチュエーションが多いので照準はあまり必要ないし,画面にサイトが出ているので,それに頼ればだいたい当たる(狙撃ライフルの場合は専用スコープが用意されている)。そのうえADSを使うと行動が制限されるので,実のところ,どちらの機能もあまり使い道がない印象だ。
 中腰になったり,伏せ姿勢になることで命中率が上がるのはよくご存じのとおり。
 また,銃器はメイン,サブ,ピストル,手榴弾の4種類しか持つことができず,例えば敵のサブマシンガンを拾った場合,今持っているサブマシンガンは捨てなければならない仕様。ときどき,敵のパンツァーファーストを使って敵戦車を撃破しなければならない場合があるのだが,パンツァーファーストは一回に一発分しか持てないため,敵の戦車が複数の場合,メイン武器を捨てたうえでパンツァーファーストのケースと戦車との間を何度も往復することになって,大変忙しい。もう,わややがな,って感じだ。現実的なんだろうけど。

 全般に,緻密に戦うというよりは,撃って撃って強行突破,というスタイルが基本になりそうだ。左右にLeanすることはできるが,それでも結構敵の弾は当たってしまう。したがって,体力を削られまくりながらも敵をどんどん倒し,あちこちに置かれた救急箱に辿り着いてひと息つき,それから次の救急箱まで再び撃ちまくりながら前進,という,いささか荒っぽい戦い方になりがちで,このへんは,好みの問題になるだろう。
 とくにサプレッシングファイア(制圧射撃)やカバーファイアを仲間から要求されたりするので,撃ちまくりゲームという印象は強い。
 ちなみに,第二次世界大戦の統計調査では,撃たれた銃弾100発のうち,敵に命中するのは一発あるかないかという結果だから,この撃ちまくりスタイルもリアルっちゃリアルなのかもしれない(兵士の死亡原因の1位は,銃ではなく砲撃なのだ)。

ここが秘匿名称ペガサスブリッジ。味方の援軍到着まで,わずかな人数で四方から押し寄せるドイツ軍の猛攻を凌ぐ。密かな名シーン
このダムの最深部にある発電施設を破壊するエバンス軍曹の隠密ミッション。隠密だけど対空砲とか爆破しまくり
バンス軍曹とプライス大尉はドイツ軍の軍艦に乗り込んで重要情報を入手しなければならない。きつい仕事だ 有名な写真さながら,国会議事堂の屋上にひるがえる赤旗。ベルリンは見渡す限りの廃墟だ

一人の兵士によって勝利を得ることはできない

 ほとんどの作戦において数名の味方と共に戦う,というのもCODの特徴の一つだ。単独任務の場合でも,脱出シーンで味方の援助を受けたりすることが多く,オープニングの文句「一人の兵士によって勝利を得ることはできない。数多くの人々がなしとけるのだ」(意訳)という,考えようによっては,自分達の作ったMOHシリーズに対するアンチテーゼともいえるテーマを実践しようとしているのが興味深い。
 ただ,味方兵士に対する指示や命令はできず,そのへんはあなた任せというか,AI任せ
 敵味方とも,AIのデキはかなり良く,登場する場所はほぼ決まっているものの,その後の動きは,ある程度,状況を読んだものになっているようだ。味方の援護射撃をしたり,障害物の背後から撃ってくる,ということも普通にやる。間一髪で味方に助けられて,こっちがびっくりしたりとか。
 また,ソ連軍はウラー突撃を好んだり,SASの隊員達は全般に能力が高かったり,といった違いも再現されているようだ。とはいえ,爆弾を仕掛けたり,味方を救出したりという重要な仕事はプレイヤーに任されることになる。このへんは,ゲームですからね。後ろで鼻くそほじっている間にミッション達成しては遊びがいがないってもんだ。

迫力満点のグラフィックスによる過酷な戦闘

大型のホーサグライダーを使った空挺部隊の強襲攻撃。強行着陸時,けが人や死者が続出するのが問題点

 グラフィックスは,当然ながら「DOOM 3」とか「HalfLife2」といった「光と影がなんたらかんたら〜」という超最先端エンジンとは違い,至ってオーソドックスなものだが,十分合格点だ。
 人間がちょっと頭でっかちかな,という気はするが,とくに爆発エフェクトと銃口の発射炎が派手で気持ちがいい。兵士の動きも良く,撃たれたときのリアクションも数種類用意されているようである。

 ちなみに,流血は最小限で,被弾したときにわずかに血煙があがる程度。もちろん,人体損壊などはない。ただ,命中すると敵は必ず悲鳴をあげるため,それを目安に攻撃すれば問題はない。
 ヘッドショットは有効で,当たると,たまにヘルメットが吹き飛ぶので分かりやすい。また,プレイヤーの至近距離で砲弾が炸裂すると,「プライベート ライアン」同様,耳がキーンと鳴って,視界がぶれ,周囲がスローモーションになる。このエフェクトもなかなかだ。

 という感じで,出来のいいグラフィックスとAIのため,結果的にゲームはかなり重い
 私の環境(Athlon XP2600+,GeForce FX 5700Ultra)では,敵味方多数の兵士が入り乱れて撃ち合い,あちこちで爆発が起きると,フレームレートががっくり下がり,コマ落ち状態になってしまうこともあった。パッケージにある最低環境では,ほとんどゲームにならないはずだ。
 またエフェクトだけでなく,弾痕や死体がかなり長く残り,敵の落とした銃は最後までその場に留まるといった,CPU/GPU共にかなり負担のかかる仕様になっているのも原因の一つだろう。画面のクオリティを落としても,AIの計算があるためかさほど効果はないようで,このあたりは,もう少しチューニングしてほしかったところだ。
 せっかくこのCODのためにビデオカードを買い替えたというのに,まったく金のかかる趣味でございます。

本作品最大の見所がここ,スターリングラード。んもう,すっごいの。実際にはただ歩くだけなんだけど

マルチプレイでもう一度熱くなろう

 最大64人参加が可能なマルチプレイには,"デスマッチ" "チームデスマッチ"といったお馴染みのものから,わずかな数の連合軍兵士となり,はるかに多いドイツ軍相手に逃げ回る"ビハインド・エネミー・ライン",重要書類を奪うか守るかの"リトリーバル",そして時間内に目標をすべて破壊するか防御するかの"サーチ・アンド・デストロイ"の五つのタイプのゲームが用意されている。
 シングルプレイが,多数のスクリプトによるストーリー重視の展開なのに対し,自由に動き回れるマルチプレイではまったく違う雰囲気のゲームを楽しめ,一粒で二度おいしい感じである。
 撃たれると,リスポーンするまでの間,自分がやられるシーンを敵の視点で見られるなど,演出にも面白いものがある。だんだん余計なお世話って気にもなってくるけど。

 とはいえ,スナイパーがやたら強い,武器の性能の違いが大きすぎるなど,私がただ単にヘタなだけでなく,ゲームバランスにやや難ありとの意見も多い。また,フォーラムなどではチート関係の問題点も指摘されていて,それらの理由で,現在のところ,それほどマルチプレイ人気大爆発とはなっていないようだ。まあ,このあたりは2003年中にも登場するというパッチ(日本語版パッチもほぼ同時に登場予定)に期待だろう。撃ち合いの爽快感が相当なものだけに,いくつかの問題が解決されれば,プレイヤーの人口も増えるはずだ。

標準的なマルチ。スナイパーが強すぎ,みんなジャンプしてるなどの問題は今後のパッチに期待したい 殺される様子を敵の視点でリプレイする"KILLCAM"。自分が殺される過程は特別まぬけに見えるもの

第二次大戦ものファンなら必プレイ間違いなし

 各商用サイトのレビューでも評価は高く,今年のベストFPSという声も聞こえてくる。ゲームの重さを除けば,演出面でもゲーム性でも満足できるものがあるし,もうすぐ待望の日本語版も出ることなので,FPSゲーマーならぜひプレイしてもらいたい。

 

日本語版について

Text by forGamer編集部 Kawamura

 日本のPCゲーマーにとって,2003年末の最大の喜びといったら,これはもうCODが今年中に日本語化されることだろう。英語版の発売からほとんど間をおかず,きっちり年内発売にこぎつけてくれたメディアクエストに感謝。なんだかんだといっても,英語の不得手な人にとって日本語版の安心感はケタ違いである。

 さて,ここではCOD日本語版について軽く紹介しよう。本作で日本語にローカライズされているのは,ゲーム中の文章全般。主なところを挙げると,システム周りとブリーフィング(ロード画面)のミッション内容,そしてゲーム中のキャラクターボイスに対する字幕だ。従って,音声自体は英語のまま。アメリカ兵もイギリス兵も,そしてソ連兵も英語を話す(映画「スターリングラード」でもそうだったが)。まぁ,このゲームの雰囲気を壊さずにローカライズするうえで,最も賢明かつ当然の選択だったといえるだろう。

 中でも最も苦労のあとがうかがえるのが,ロード画面のミッションブリーフィング。つまりロード中の待ち画面の中に,次のミッションで何をすればいいかが記されているのである。CODのロード画面はなかなか趣向を凝らしており,ミッション内容の記述画面のデザインが固定ではない。あるときは指令書のような形式となっていたり,あるときは主人公の日記調になっていたり,またあるときは地図の上にペンで作戦を殴り書きしたような形式となっている。そのステージの状況によって,臨場感が増すよう細かく演出されているのだ。
 ローカライズに関して,ここが最も苦労した部分だろう。迂闊なことをしては,せっかくの臨場感を台無しにしかねない。結局,すべての文字を日本語に置き換えるか,それとも英文はそのままにして,画面下に字幕を表示するか。この悩ましい問題について,メディアクエストは前者を選択したようだ。詳細はScreenshots集「こちら」をご覧いただきたい。

 嬉しいのは,マルチプレイもしっかり日本語対応となっていることだろう。メニューのテキストはもちろん,本作のマルチ特有の武器紹介文などもすべて日本語化されている。ただし手打ちのチャットに関しては,全角文字は化けてしまうようだ。
 なお,海外で開発されたMODなどに関してはすべて日本語版でも使用可能。また今後リリースされるアップデートパッチに関しては,日本語版対応のものをメディアクエストが間髪入れずに用意してくれるという

 現時点において,日本語版ゆえの弊害というものはほとんど皆無に等しいといえる。これで実売価格は海外版の輸入パッケージとほぼ同じ,おまけに購入特典でサントラCDも付いてくる(数量限定)のだから,英語はからっきしという人なら迷わず日本語版を手に取るべきだろう。


トーチカの中から何基ものMG42を掃射するドイツ兵。MG42の弾幕の厚さと「ブルァ〜!」という射出音は,本作の魅力の一 いかにもなところに敵の機関銃が遺棄してあるのはMOHシリーズと同じ。迫り来る敵に薙射をかませ ビルに立てこもる敵との攻防というシーンが結構多い。映画「フルメタルジャケット」を彷彿とさせ,結構興奮 戦車による市街戦。パンツァーファウストをぶっ放してくる敵兵が意外と困る。しかし住宅地はメチャクチャですな
戦車や機関銃をズラリと配置したドイツ軍塹壕に向かい,銃すら持ってない生身の兵を突撃させるソ連軍。進まないと後方の味方からも撃たれるのだ! ナチ政権の中心,国会議事堂。ここの占領は軍事的にほとんど意味はないが,政治的には重要なのだね
ベルリン前面のオーデル川における戦車戦。FPSの戦車戦で,敵味方とも混戦になるほどの戦車が登場する。ドイツ機甲師団も必死の反撃を……,T-34,強すぎやしないか? 目の前でスクランブル発進した何機ものスツーカを,対空砲で撃ち落とすシーン。スツーカが急降下爆撃を行うときの独特のヒィーンというサイレンに背筋が凍る思い

 

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■発売元:メディアクエスト
■価格:オープンプライス(実売7000円前後:12月18日発売予定)
■問い合わせ先:メディアクエストユーザーサポート TEL 03-5805-3629
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/700MHz以上,メモリ 128MB以上,空きHDD容量 1.8GB以上,メモリ32MB以上搭載したビデオカード,DirectX 9.0b以降
Screenshots集
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