エンジェリック・ヴェール・プログレス
 〜ウェスペールの迷宮〜

Text by Seal
4th Dec. 2003

 

 クロムシックスが開発を行う「エンジェリック・ヴェール・プログレス 〜ウェスペールの迷宮〜」は,2003年4月24日にリリースされた前作「エンジェリック・ヴェール」の外伝的な要素を持つストラテジーゲーム。その絵柄もさることながらキャラクターの成長要素などもあり,いわゆるコンシューマの"シミュレーションRPG"のジャンルに属する。

今作では中型ユニットが追加され,ユニット種の増加によっていろいろな戦術が取れるようになった

 今作では,前作で指摘されていた操作面が改善されているほか,新アイテム,新キャラクターなどファンにとって嬉しい要素が追加されている。基本的なゲームシステムは,前作と同じだが,前作では思いがけない大ダメージを受けてしまうことがあった戦闘ロジックが変更され,より戦略的に進めていけるようになった
 また,本シリーズはマップ上のユニットの位置を把握するのにスクエア形のマスを使用するが,通常ユニットは1マス,ドラゴンなどの大型ユニットは3マス×3マスを占有する。前作では2マス×2マスの中型ユニットは存在しなかったが,今作ではそこにも改良が加えられ,ゴーレムなどの中型ユニットが多数追加されているのだ。戦闘ロジックと合わせて,戦闘面をより面白くさせるような工夫が詰まっているといえるだろう。

 今作のストーリーは,ベルーナ王国とジェレニア共和国との大戦"シュロン戦役"から,半年ほど経過した時期。戦後処理という意味も含めて,あちらこちらのダンジョンや村などを調査していたが,ある遺跡に派遣したチームが全て消息を絶ってしまったというのだ。消息を絶った人の中には,腕の立つものもいたので,大戦でもその力を発揮していた黒騎士ガウェインが派遣されることになった。
 ……と,このようなバックストーリーでゲームはスタートするが,前作でのオージェル,フィオ,ユズリハといった主人公たちは,ガウェインの増援として参加することになる。
 ストーリーが進んでいくと,ありがちな展開ではあるが,前作での仲間たちが次々と登場する。今作では,前作では成長させられなかったキャラクターたちが使えるようになっているので,前作をプレイしているとより楽しめるだろう。

テーマによって特徴があるマップ構成

 今作での舞台は,古代の遺跡「ウェスペールの迷宮」。この迷宮は,6ステージを1階層とする簡単な構造をしているのが特徴。各階層のラストステージでは,ストーリーが一段落するようなボス級ユニットが用意されているので,ストーリーを追っていくという意味では分かりやすい。しかし,前作のようにあちらこちらと移動する必要がない分,同じ場所の繰り返しのように感じてしまい,プレイ感が単調になってしまうのが残念だった

ウェスペールの迷宮は,6ステージで1階層の簡単な構造をしている

 この迷宮には1階層ごとにテーマのようなものがあり,例えば,ある階層では火属性のユニットが多かったり,またほかの階層では侍やニンジャが多かったりといった感じだ。今作ではプレイヤーキャラクターとして成長させられる指揮官ユニット(主人公キャラ)が増やされているので,マップに応じて得意なユニットを選択していくのがゲームを楽に進めるコツだ。ただし,お気に入りのキャラクターはずっと使っていきたいだろうし,より成長させたいとも思うだろう。今作では武器や防具のアイテムも充実しているので,それらを組み合わせていけば,苦手とするマップでもある程度戦っていけるのが嬉しい。

 この武器や防具といったアイテムが多数追加されたのも,今作の魅力の一つ。今作では,前作でのセーブデータをインポートすることができ,キャラクターの能力や強力なレアアイテムなどが引き継がれるという機能がある。ただし,インポートで引き継がれるアイテムは,武器と防具のみとなっていて,前作で便利なアクセサリーの一つ"ワープブーツ"などは引き継がれないのが残念。また,武器や防具には属性があり,それがゲームを進める上での重要なファクターとなっているが,今作では若干変更されていて,インポートすると変更後の属性になる。前作を遊びつくしてデータをインポートした人は,この変更にちょっと戸惑ってしまうかもしれない。
 さらに,今作ではユニット能力/アイテム性能が全体的にパワーアップしているために,前作での強力なアイテムは,使えないアイテムとまでにはいかないが,そこそこの能力に感じられてしまう。さらに新登場のアイテムには"+1","+2"などの強化アイテムも存在するので,アイテム面に関しては揃え直しが必要だ。この部分は意見が分かれるかもしれないが,完成したキャラクターで簡単に進んでいくよりはいいのではないだろうか。

前作での主要キャラクターは,今作にも登場。お気に入りのキャラクターを成長させていけるのが嬉しい 攻撃時での属性表示がアイコンで分かりやすくなった。効果的な武器を装備して倒していこう

ステージ攻略を面白くさせる2種類の装置

青く光っているマスはテレポータ。どこに飛ばされるか分からないので慎重に

 ストラテジーパートでのゲームシステムは前作と同じで,各キャラクターの素早さに応じて行動の順番が周ってくるという,このジャンルではオーソドックスなもの。それをそのままに,今作では戦闘コマンドの入力ウィンドウの利便性を向上させている。前作では,攻撃や特殊技能の使用にプルダウンの入力方式で2回のクリックが必要だったが,今作は,すべてのコマンドにボタンが用意されたので,非常にスムースに進められるのが嬉しい
 これ以外にも,戦闘シーンに関するいろいろな部分で見直しが図られていて,前作での必勝法などは今作ではあまり効果的ではない。ほかにも,一斉攻撃時の命中率も増加しているので,素早さが高く,倒しにくいユニットなどには有効的だ。

 また,前作では,3D描画を生かした立体的な地形マップが多かったが,今作では高低差がほとんどなく,平面的となっている。しかし,新しい仕掛けとして,"テレポータ"と"踏みスイッチ"の2種類が導入されている
 テレポータは,文字通りそのマスに入ると対応する一方の地点へと瞬時に移動するというもの。これを利用したステージも多く登場するが,テレポータに乗るのに1ターン,テレポート後のマスから移動するのに1ターンと計2ターンが必要となる。少ない時間でクリアするのがクリア時の評価を上げる重要な要素の一つなので,各キャラクターの敏捷度を把握しておかないと,移動に"つまって"しまい,無駄な時間が経過してしまうことになる。
 一方の踏みスイッチは,マップを分断している柵のような装置をはずすために使われるものだ。この柵は相手も通過できない壁の役割を果たしているので,開けるタイミングによっては,多数の敵が一斉に押し寄せて来るといった状況にもなる。しかも,このスイッチにはフェイク(にせもの)があり,初めて攻略するときは,どのスイッチがどの柵に対応しているかが分からないのが面白いといえるだろう。

丸い模様が描かれたマスは踏みスイッチ。今作は,これの使い方でマップ難度が変化する 今作では,ユニット性能が全体的にパワーアップしている。ダメージが200を超えることも 特殊技は,非常に強力。味方にも効果を及ぼしてしまうものがあるので,使いどころには注意

ストーリー分岐はないが,サブイベントで楽しめる

 今作のイベントシーンも声優陣を起用したフルボイスで行われるが,前作での恋愛アドベンチャーチックなストーリー分岐は今作では用意されていない。基本的にイベントは迷宮内で発生してストーリーが進展していくが,面白いのはベースキャンプ地で起こるサブイベントだ。これは主要キャラクター同士でのたわいのない会話だけだが,思い入れのあるキャラクターの思いがけない側面が見られるので,ゲームを進めていく上で非常に新鮮に感じられる。各ヒロインパートをクリアしたデータをインポートした場合,特殊なイベントも見られるので,前作からのファンならば,すべてのサブイベントを見るようにしたいところだ
 そのほか,ゲームをサクサクと進めるためのモーションウェイト(キャラクター動作のタイミングを合わせる遅延)の設定や,ステージ開始時の指揮官の位置の変更など,多くの改善/変更点がある。前作をプレイしているならば,その後のストーリーを追っていくためにもぜひ遊んでみてほしい一本だ。

キャンプ地でのイベントシーンでは,各キャラクターの側面が垣間見られる。こういうイベントはファンにとって嬉しいものとなるだろう

 ちなみに,今作にはバグの修正を行うパッチ(2003年12月1日時点ではVer1.02)がリリースされている。これは,武器や防具の装備変更が反映されない,地下20階で移動ができないなどの不具合を修正するためのものだ。パッチを当てていないとゲームを進められなくなってしまうこともあるので,必ず導入しておこう。

前作では1ステージしか使えなかったスピカが,今作ではずっと仲間として戦列に加われる 武器や防具も強力にパワーアップ。プラス効果のあるアイテムもあるので探してみよう 3Dエンジンにより,視点の回転やズームアップなどが自由自在。狭い地形では非常に重宝する機能だ

 

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■開発:クロムシックス
■発売元:エレクトロニック・アーツ
■価格:6800円
■問い合わせ先:エレクトロニック・アーツ カスタマーサポート係 03-5436-6400
■動作環境:Windows98/ME/2000/XP,PentiumII/400Mhz以上(PentiumIII/800MHz以上推奨),メモリ128MB以上,空きHDD容量1GB以上
体験版(98.2MB)
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