マイクロソフト エイジ オブ ミソロジー 拡張パック
アトランティスの巨神たち

Text by TAITAI
27th Nov. 2003

 

全世界で100万本以上を売り上げた人気タイトルに拡張パックが登場

新たに追加された主神の中にあって,ひときわ悪役面のクロノス。シングルキャンペーンでも物語に深く関わっている

 神話をモチーフにしたリアルタイムストラテジーゲーム(以下,RTS)「エイジ オブ ミソロジー」(以下,AoM)のアドオンである「マイクロソフト エイジ オブ ミソロジー 拡張パック:アトランティスの巨神たち」が,マイクロソフトより2003年11月7日に発売された。

 AoMとは,日本でも大ヒットしたRTS「エイジ オブ エンパイア」の流れを組む作品で,いまや世界的なヒットメーカーとしてその名が知られるEnsemble Studiosが開発を手がけているタイトルだ。資源を集めてユニットを生産し敵と戦っていく,というオーソドックスなスタイルを踏襲しながらも,従来の"文明"という要素をさらに進化させた"神"という概念を導入しているなど,非常にユニークなシステムが盛り込まれている点が大きな特徴。滑らかなユニットのアニメーションや美しいグラフィックスを始め,洗練されたインタフェースなど,ゲーム自体の作り込みの細やかさも素晴らしい非常に秀逸な作品である。全世界で100万本以上のセールスを記録した実績が,その完成度の高さを表しているといっていい。

 そんな人気タイトルの,それこそ待ちに待った拡張パックとなる「アトランティスの巨神たち」なわけだが,簡単に概要を説明しておくと,従来からあったギリシャ,エジプト,北欧の三つに加えて,新たにアトランティスという文化圏が追加されている点と,「ティタン」と呼ばれるスーパーユニットが登場するという,この二点が主な変更となる。  詳細は追って説明するが,なかでもティタンの概念の導入は最も特徴的な追加要素。城や要塞ほどもあろうかという巨大なティタンが大暴れする様子は,まさに怪獣映画さながらだ。居並ぶ敵ユニットを蹴散らしながら敵陣を破壊してくれるなど,ティタンを扱う爽快感こそが,「アトランティスの巨神たち」の最大のウリだといっても過言ではない。


爽快感重視のゲーム設計か!? 究極ユニット「ティタン」降臨

 上記でも触れたように,本作の最大のポイントは,ティタンというスーパーユニットが登場すること。ティタンは,「神話の時代」に進化したのちに研究可能となる「ティタンのゲート」を研究し,またそれの建設を完成させると扱えるようになる。食料800,木材800,金800,恩恵50という高い研究コストと,象徴の建設並に必要な膨大な建設時間など,費やさなければならない手間こそ多いものの,ヒットポイント7000で範囲攻撃を持つなど,その強さは天下一品。文字通りの"最終兵器"として,ゴッドパワーと同様にゲームの"戦略"に密接に関わってくる存在となっている

 具体的にいうと,ティタンの導入によってゲーム展開は全体的にかなりスピィーディになり,また「即ティタン狙い」など戦略的な選択肢が増えることによって,ゲームがよりスリリングかつ逆転要素の強くなっているような印象だ。ティタンは,多少後れを取る程度ならばさほど脅威でもないのだが,一方的に相手に出されてしまうとほとんど手に負えなくなる……といったバランス。序盤の不利を十二分に覆せる,後半の決定打がゲーム中に用意されたことにより,従来より駆け引きの要であった"進化"の位置付けが,大幅に強化された格好だ

 元々初代エイジ オブ エンパイアは,各文明ごとに用意された"得意戦法"を巡る戦いの駆け引きが面白かった対戦ゲーム。今思うと決してバランスが良いとはいえない内容であったが,Aの文明は序盤が強いがそこで攻めきれないと負け,Bの文明は序盤は苦しいが後半には強力無比なユニットが登場するなど,メリハリのあるゲーム展開がプレイヤーの間で好評を博した。最近のRTSでは,各勢力(文明)間のバランスを重視するがゆえに,そういったある意味いさぎよいゲームバランス/ゲーム展開は見られず,

 どの時代でもみんなそこそこ戦える → 逆転要素が薄い
     = だったらとにかく序盤で勝負したほうが有利!(展開がワンパターン)

といったお決まりのパターンにハマリがちだったといえる(戦略ゲームとしては,先手必勝は正しいロジックなんだけど)。
 そんな風潮を感じる中,そういった流れに一つのアンチテーゼを提示しているという意味で,逆転的な要素が強くなったこの「アトランティスの巨神たち」は,非常に好印象。筆者としては,せっかくファンタジー的な世界観で現実世界の"縛り"を受けずに済むタイトルなのだから,実際の戦略性がどうこうというよりは,ゲームとして,あるいは競技(対戦ゲーム)として,より面白いモノを目指してほしいと思うのだ。

ティタンは,各勢力圏ごとに一体ずつ,計4つが用意されている。筆者のお気に入りは,ギリシャのティタンである通称「ワンワン」と,エジプトの鳥。どっちも目が可愛い


ここで質問! みなさんマルチプレイの経験ってありますか?

 対戦で思い出したが,今このレビューを読んでいる読者のみなさんの中に,エイジ オブ ミソロジーやほかのいわゆる対戦ゲームで,マルチプレイゲームを遊んだ経験のある人はどのくらいいるだろうか?

 今回紹介している「アトランティスの巨神たち」は,もちろん「対戦こそがすべて!」という作品ではない。アトランティス文明にちなんだ全12章仕立ての新たなシングルキャンペーンはよくできているし,前作と同じくシームレスに挿入されるリアルタイム3Dムービーも,前作で活躍したアーカントスの息子カストルを軸に繰り広げられる,ティタン神族との戦いの物語を過不足なく表現している。

シングルキャンペーン専用のティタンである「プロメテウス」のヒットポイントは,なんと5万。回復力も尋常ではなく,通常のユニットではまったく歯が立たない

 しかし,しかしである。もし本作の魅力のすべてを体験したいと考えているなら,絶対にマルチプレイにチャレンジしてみるべきである。マルチプレイには,シングルキャンペーンなどとは違う,まったく異質の感覚/楽しさがあるからだ。これを体験せずにして,本編のミソロジー,そして「アトランティスの巨神たち」の真の楽しさは,絶対に理解できない。

 ただそう思う半面,「なかなかマルチって遊びにくいよなぁ」とも思う。ここ最近,イロイロな対戦ゲームを見てきたが,そのどれもが日本での盛り上がりに欠けるところがあるような気がしてならないのだ。

 なぜだろうか?

 ゲーム自体がツマラナイのか? いやいや,そんなことはない。「アトランティスの巨神たち」もほかのタイトルも,対戦ゲームとしての完成度は相当なモノだし,現に海外では,多くのプレイヤーによってオンライン対戦ゲームは楽しまれている。では,なぜか?
 筆者が考えるに,日本でオンライン対戦ゲームがいまいち盛り上がりに欠ける最大の理由は,ずばり「環境の無さ」に尽きるのではないか。つまり,例えプレイヤーがマルチプレイに興味を持ったとしても,遊ぶに至るまでに"必要な情報"や,遊ぶための"快適な場"が,日本には整っていないのだ。
 ひと口に対戦といっても,流行している戦法や専門用語,独自のルールなどなど,プレイヤーたちの輪の中に入っていくには,結構な"情報"が必要になってしまう。本当の初心者がいきなりESO(Ensemble Studios Online)に入ったとして,それだけで"ちゃんとマルチプレイを楽しめるか"というと,やはりそれは難しいと言わざるを得ない。
 現状では,そういった情報をメディアやメーカーが拾いきることはリソース的に難しく,個人のプレイヤーによる情報サイトが発信源の主流だ。そのようなサイトがあることは素晴らしいと思うが,そもそも大して興味もない時期に,そういった込み入った情報を検索サイトなどを使って積極的に探そうというプレイヤーが一体どれだけいるだろう? 考えれば考えるほど,今の日本には,マルチプレイのゲームが流行する土壌が出来上がっていないのではないかと感じてしまう。

 また遊ぶ場所ならESOがあるじゃないか,という突っ込みもあるだろう。しかし筆者が言いたいのは,もう少しコミュニティに直結するモノが必要なんじゃないか? ということなのだ。マルチプレイゲーム,いやオンラインゲームは,他人と対戦なり協力なりをしていくところに,その面白さがある。オンラインゲームを遊び始めた最初のうちは,見知らぬ人との対戦プレイ/協力プレイに心躍らされることだろう。
 しかし,ある一定の期間を過ぎると,さらに"一歩進んだ協力"や"付き合い"が生まれてくる。要するに,オンラインゲームを通じて"遊び仲間"が出来ていくワケだ。そして,この"遊び仲間"という部分こそ,オンラインゲームが楽しくなるかつまらなくなるかの,最大のポイントだといえる。自分にあった友達と出会えるかどうか,出会えたとしてそれを繋ぐシステム(環境)があるかどうか,そここそがオンラインゲームにおける"肝"なのではないだろうか?

 例えばMMORPGには,広大な世界という"公の場"に加えて,ギルドやパーティなどといった小単位のコミュニティ形成のシステムがある。つまり,見知らぬ人と知り合える場所と同列に,知り合い同士だけで騒げる特別な空間がMMORPGには用意されているわけだ。オンラインゲームには,そういった仕組みが必要なのではないだろうか? そしてこれは,対戦ゲームでも同じなのではないか? 筆者はそう考えずにはいられない。
 「アトランティスの巨神たち」でいえば,ESOは"公共の場"として有効かもしれない。しかし,そういった"友達単位のコミュニティ"をまとめる機能も,同列で必要なのではないだろうかと思うのだ

 とはいえ,そんな"環境"を一足飛びに用意することもできないので,マルチプレイに臨むための情報源として,ここでプレイヤーのサイトを一つ紹介したいと思う。

 プレイヤーサイト:AoM普及

 このサイトは,「アトランティスの巨神たち」の普及を目標に,初心者向けのコンテンツを充実させつつあり,また現状(2003年11月26日),最も活発なサイトの一つといえる。マルチプレイをやってみたいという人は,ぜひこういったプレイヤーたちによるサイトを巡って情報を集めながら,気の合う友達/コミュニティを見つけだしてほしいと思う。一度マルチプレイの楽しさを知れば,きっと抜け出せなくなるほどの魅力を感じるハズだ。

もちろん新たなゴッドパワーも追加されている。アトランティスの神々は,扱いやすいゴッドパワーを持つものが多い


結論

 総じていえば,ただ勢力やユニットが増えるだけになり勝ちな拡張パックの中では,本作は,かなり意欲的に新要素を盛り込んでいる秀作といえる
 ティタンの導入もそうだが,古典の時代から「町の中心」が建設可能になっていたり,神話ユニットが時代を進化するたびに無料で提供されたりと,細部のバランスにも手が加えられており,新鮮な気持ちでゲームを楽しむことができる。AoMのプレイヤーにとっては,間違いなく"買い"のタイトルだといえよう。ティタンを扱う爽快さを,ぜひ一度体験してほしいと思う。

 ただ一つ残念なのが,マルチプレイ時の接続性の悪さ。これはAoMから見受けられた欠点なのだが,拡張パックになっても直っていないのには,正直かなりがっかり。マルチプレイが非常に面白いタイトルだけに,ここはなんとか直しておいてほしかった。

 ともあれ,追加パック「アトランティスの巨神たち」によって,よりアグレッシブに面白さが増しているのは確かな事実。本作は,購入を検討するべきタイトルだろう。

新たに追加されたシングルキャンペーンでは,ティタン神族にまつわるミッションが用意されている。暴れ回るティタンから町を防衛するミッションも

 

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■発売元:マイクロソフト
■価格:5800円
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumIII/500MHz以上(Pentium 4/1.4GHz以上推奨),メモリ256MB以上(512MB以上を推奨) ,空きHDD容量500MB以上(750MB以上推奨),16MB以上のVRAMを搭載しDirectX 9.0b以上に対応したビデオカード
体験版:日本語版
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