アローン イン ザ ダーク 〜新たなる悪夢〜 日本語版

Text by デイビー日高
13rd Dec. 2002

 「アローン イン ザ ダーク 〜新たなる悪夢〜 日本語版」は,累計で全世界において250万本ものセールスを記録した人気ホラーアクションアドベンチャーシリーズの最新作。ここでは,来る12月20日に発売予定の日本語版のレビュー記事をお届けしよう。

第1作はエポックメイキング的作品

 海外のPCゲームに興味のある人なら,本シリーズについて一度は聞いたことがあるだろう。第1作の登場はもう10年も前になるのだが,実にエポックメイキングな作品であった。それまでのアドベンチャーゲームといえば電子紙芝居的な存在だったのだが,そこにアクション性とインタラクティブ性を加えて"アクションアドベンチャー"というサブジャンルを確立した,記念すべき作品だったのだ。少し大げさかもしれないが,この第1作がなければあの「バイオハザード」も存在しなかったかもしれないほどで,アドベンチャーゲームのターニングポイントとなった作品なのである。
 また,キャラクターやさまざまなオブジェクトをポリゴンを用いて立体的に描画したり,心理的な効果バツグンの絶妙なアングルでのシーンがあったり,ラブクラフトのクトゥルー神話を題材にしていたり(「2」「3」はまた題材が異なる)と,どこを取っても非常に魅力的な作品であった。本作は,そうした偉大な作品のコンセプトを受け継いだ作品なのである。

設定は違えど漂う"暗闇の感覚"はそのまま

 タイトルに「4」と入ってないことからも想像が付くように,前3部作とのストーリー的な繋がりは一切ない。共通しているのは,主人公の名がエドワード・カーンビーということ(つまり同姓同名の別人)と,彼の職業が探偵であるという点のみだ。
 とにかく時代設定も人物設定も大きく異なるのだが,もちろん本作ならではの"暗闇からにじみ出る恐怖感"というテイストは一切変わっていない。筆者がプレイしていたときも,大げさでもなんでもなく,イスから跳び上がりそうになったことが何度もあった。「レビュー記事だから極端に書いてるんだろう」なんて思う人もいるかもしれないが,これがマジメな話なのである。演出的にも非常に練られているし,何よりも"闇"のかもし出す雰囲気が視覚的にも聴覚的にも怖いのだ。人間の本能に訴えてきて,何もないところでも何かありそうで,実にイヤ〜な感じにさせられるのである(これが魅力的なのだが)。

舞台は"闇が生きている"呪われた島シャドウ・アイランド

 本作の主人公は二人で,先述のカーンビーと,女性の人類学博士のアリーン・セドラック。この二人が,呪われた闇の島シャドウ・アイランドで命懸けの冒険を繰り広げるのだ。なお,二人の目的はそれぞれ異なるので,微妙に絡みつつも展開のまったく異なる二つのストーリーを楽しめるのである
 その目的だが,カーンビーは変死した親友の探偵チャールズ・フィスクの死因を確かめることと,彼が調査中だった依頼を引き継いで解決すること。アリーンの目的は,本作の事件の鍵を握る人物の一人オーべッド・モートン博士が盗んだ古代アメリカ・インディアンの3枚の石版を探し出すことである。二人とも,依頼者のフレデリック・ジョンソンが重大な秘密を隠しているのも知らず,"闇が生きている"シャドウ・アイランドへ足を踏み入れるのだ。
 ゲームはここまでのストーリーが語られたあと,二人が乗り込んだ小型飛行機が原因不明のトラブルで墜落し,パラシュートで脱出するシーンとなる。二人は別々の地点に降り立つため,それぞれ単独で真相の解明を目指すのだ。カーンビーはモートン博士の屋敷からやや離れた地点から,アリーンはその屋敷の屋根の上からゲーム開始となる。

 なお難易度的には,序盤に関していえば最初から武器を持っているカーンビーのほうが進めやすい。至る所にこの世の物ならぬ"闇のクリーチャー"が存在するので,武器がないと厳しいのだ。アリーンは捜索が本来の目的なので武器を持っておらず,また手に入れるまでちょっと時間がかかってしまう。そこで,まずはカーンビーでプレイして,操作感などに慣れることをお勧めする。また,一人の主人公で最後までずっとプレイしても問題ないが,交互に切り替えて進んだほうがより謎をより解きやすい。ちょっと詰まったらキャラクターを変えて進めるといいだろう。

主人公の一人,エドワード・カーンビー。前3部作の旧カーンビーとは同姓同名の別人だ ボストン大学に勤務する,人類学博士アリーン・セドラック。1974年生まれ(2001年時点で27歳)

謎解きが「これでもか」ってほど充実

 本作は,まずホラーものとして完成度の高さに目を奪われてしまうが,アドベンチャーゲームとしてもかなりしっかり作られている点にも目を向けておきたい。とにかく仕掛けがあちらこちらに張り巡らされており,このうえなく頭を使う本格的な謎解きを楽しめるのだ
 舞台は前半が屋敷内,後半がその周辺の島の各所となるのだが,前半はまさにPCアドベンチャーゲームの古典「ミステリーハウス」を思い起こさせる。屋敷内はかなり広く部屋数も多いのだが,とにかく開かないドアが多い。そのためあちこち調査して,カギを見つけるか,もしくは何かしらの仕掛けを操作してドアを開け,その先に隠された新たな秘密を見つけていくのだ。
 仕掛けを操作する場面では,そのヒントが画面内のどこかにあることが結構あるので,まず第一に観察が重要となる。さりげなく置かれている写真や,床板のひっかきキズ,望遠鏡で覗いた先に見えるものなどなど……。たまには床板や壁板の一部分だけが踏んだり叩いたときの音がほかと異なるといった聴覚的なヒントもあるが,ともかくはよく見ることが重要だ。もっとも,仕掛けとヒントを結びつける推理力も必要である

 こうした謎解きの難度は,個人的には少々高いほうだと感じた。プレイしていて,結構行き詰まることが多いのだ。だがそうした点は開発側も考慮していたようで,ヘルプ機能がいくつか用意されている。次に何をすべきかを自動的にまとめてくれたり,トランシーバーで相棒に連絡すると,大きな仕掛け一つにつき1回だけヒントをくれる。こうしたヒント機能は,ずいぶんとプレイヤーの推理を助けてくれるはずだ。
 ただ,そうしたヒント機能を総動員しても,行き詰まることはあるだろう。そんなときのため,筆者からもアドバイスをしておこう。

  1. アップになるオブジェクトには必ず何か仕掛けがある
  2. ヒントは意外とそばにある場合が多いので,よく観察すること
  3. アイテムは裏側に何かが書かれていることもある(3Dオブジェクトなので,入手したアイテムはグルグル回して見られる)
  4. 電気をつけた場合と消した場合では,見えるものが異なる場合が多々ある(これが意外と重要)

以上,抽象的すぎるかもしれないが,行き詰まったときはこれを思い出して行動してもらいたい。

アクションが苦手な人でも十分楽しめる

 先ほど軽く触れたが,本作は闇のクリーチャー達と戦うアクションも重要な要素の一つだ。そのため拳銃,ショットガン,グレネードランチャー,ロケットランチャーなどいくつもの武器を,敵に合わせて使い分けていく必要がある。ただし,FPSのように激しく動きつつ狙いを定めて撃ちまくるといった"アクションゲームそのもの"ではない。あくまでも,"アクションの要素も含まれたゲーム"レベルだ。闇のクリーチャーを狙うときも,コントロールキーで自動的に照準をセットできるので,弾丸の再装填時に跳び付かれたり,複数の敵が相手のときは囲まれないように注意するだけである。
 一つだけ注意点を挙げるならば,FPSのように弾を撃ちまくってはいけないということ。放っておいてもあまり害にならない敵はそのままにしておいて,弾丸の消費量を極力抑えることが,のちのち重要になってくるのだ。筆者はFPSも好きなので,ついいつもの感覚で片っ端から敵を撃ち殺していたのだが,後半になって弾数が不足してしまった。すべての敵を避け続ける必要はないが,可能な限り避けて,弾丸消費を抑えるようにしたほうがよさそうだ。
 また,アクション要素がそれほど高くないことの証拠の一つとして,崖などから落ちないという点も挙げられる。アクションが苦手な人でも狭い崖っぷちなどを安心して通れるのだ。
 なお,本作の移動に関する基本動作は"歩く"と"走る"(階段の登り降りも含む)だが,これ以外の特殊な動作を必要とする場所があることも覚えておこう。ところどころに出てくるハシゴはまだ分かりやすいが,ツタを伝って壁をよじ登ったり,ちょっと大きな段差を這い上がって乗り越えるといった場所もある。どこにも行ける場所がなさそうなときは,そうした特殊な動作で移動できないか試してみよう。

 以上,本作の魅力をその一端だけでもご理解いただけただろうか? アクションが苦手な人でも楽しめるので,ぜひともホラーが好きな人(もちろんそれ以外の人も)は,全編に漂う"暗闇"の恐怖感を堪能してほしい。また,歯ごたえのある本格的な謎解きで頭を悩ませたいという,"アドベンチャーらしいアドベンチャー"を求めている人にもオススメだ。筆者も,悩んで悩んで悩んだあげくに仕掛けを解いたときは,久しぶりに心底気持ちいい思いをしたのである。アドベンチャーはこうであってほしい,という1本なのだ。

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■発売元:サイバーフロント
■価格:9800円(2002年12月20日発売予定)
■動作環境:Windows 98/Me/2000/XP,PentiumII/300MHz,メモリ64MB以上,空きHDD容量450MB以上,メモリ16MB以上搭載したビデオカード
ムービー(3分41秒,99.18MB)
英語版レビュー記事

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