ToonTown Online

ToonTown Online

Text by 奥谷海人

 2002年のE3でタイトルだけ発表されていた,Disney Interactive社が制作する世界初の子供向けオンライン専用RPG「ToonTown Online」が,ついにその姿を現した。低年齢層向けタイトルだと侮るなかれ。プレビュー版を遊んでみると,大人でも十分楽しめるほどしっかりと作られており,ネットゲームの初心者にも受け入れられそうだ。
 それでは,6〜7歳でも遊びこなせるよう徹底的にシステムを簡略化した,ToonTown Onlineの詳細を紹介しよう。

世界初! ディズニーから子供専用のMMORPGが登場

 アメリカの消費者はかなり保守的で,新しい商品が受け入れられにくい反面,一度ヒットしたものは,驚くほど息の長い商品となることが多い。PCゲーム業界を見ても,2003年で発売3年めを迎える「The Sims」(邦題:シムピープル)や「Roller Coaster Tycoon」(邦題:ローラーコースター タイクーン)が,依然としてヒットチャートのトップに並び続ける。これは,"保守的消費者層"(メインストリーム)が,他国とは比べ物にならないほど分厚いことを物語っているのではないだろうか。

 1997年の「ウルティマ オンライン」から本格的に始まったMMO(Massively Multiplayer Online)ゲームは,アメリカで大人気の「エバークエスト」が45万人というアカウント数を獲得するに至っているものの,まだメインストリームに乗っかっているとは言い難い。「Star Wars Galaxies:An Empire Divid」は"成功間違いなし"といわれているものの,同様に期待されていた「Sims Online」も大きな伸びは見せておらず,しばらくこの分野で大ヒット作が出ていないのが実情だ
 毎月参加料を支払わなければならないMMOゲームの世界は,"成人男性"に限られた,コアなマーケットから抜け出せていないといえる。

 前置きが長くなったが,MMOゲームはまだまだ開拓の余地がある分野であることは間違いないし,成功すればわりのいい収入が期待できることから,最近では次々と新作が登場している。
 そんななかで,およそ80年に渡って"子供の夢"の世界を支配し続けてきたディズニーが,「ToonTown Online」を引っ下げて,オンラインゲームに参加することになった。もちろん,ミッキーやドナルドダック,グーフィーらが登場する子供向けの内容で,過激な暴力表現のない,ほのぼのとしたMMOゲームになっている

月額6ドル以下の低料金

 ToonTown Onlineの利用料は,最初に9.95ドル+月額5.95ドルと,比較的低料金だ。といっても現在はオープンβテスト段階で,3日間遊べるプレビュー版が公式サイトでダウンロード可能。
 ちなみにこのToonTown Onlineでは,"ソフトランディング方式"という新しい宣伝戦略が採られている。これは,これまでのゲームように事前にプレスに情報を公開せず,まったく宣伝しないまま「静かに」ゲームを立ち上げるという方式。そうしておいて,やがて口コミで広がっていくのを待つわけだ。
 メディアの人間にはありがたくない手法だが,ユーザーに多大な期待をさせずに,おいしい部分を最後まで取っておけるというメリットがあるようだ。また,βテストを正式リリースへとスムースに移行させていくことで,発売時のユーザー集中で,サーバーに負担をかけないという利点もある。
 なお,正式リリース後には月額料金が上がるそうだが,β時にアカウントをレジストしたプレイヤーの料金は据え置きになるという。

小学生でも確実にプレイできる,優しいゲーム設計

 月額制ながら,"7歳からの低年齢層を念頭に制作"というのは,親世代からの信頼を数十年に渡って培ってきたディズニーならではの芸当といえる。スクウェア(現スクウェア・エニックス)との連携で「キングダム・ハーツ」を成功させたディズニーは,続いてMMO市場でも名をはせようとしているわけだ。

 ToonTown Onlineのストーリーは,ミッキー達が平和に暮らすトゥーンタウンの街に,コッグ(Cog)というロボット集団が攻め込んできて,楽しく愉快な街の建物を一つずつ占拠しては味気のない工業ビルへと立て替えていくといった災難に遭っている……といった内容。新しいカートゥーンキャラクターとして街にやってきたプレイヤーは,そのコッグと立ち向かうことになるのだ。
 子供用のコンテンツに資本をバックにしたホワイトカラーが敵として登場するとは,どこか社会主義的な思想が感じられて妙な雰囲気だが,コッグとの戦闘にはそういった堅苦しさは微塵も感じられない。ロボット達には"ギャグ"という概念が思考回路にインプットされていないため,例えばパイを投げつけられると,この無邪気な行動が理解できずに内部から崩壊してしまうのである

 プレイヤーが選択できるキャラクターは,現在のところネズミ,ウサギ,ダック,イヌ,ネコ,ウマの男性(雄)/女性(雌)の,計12種類。キャラクター作成画面では,性別に男を選択したらミッキーが,女を選択したらミニーが手伝ってくれることになる。キャラクターモデルは頭部,胴体部,脚部の三つに分かれており,それぞれの長さや形状,色,そしてコスチュームを,数種類のバリエーションから選んでいく。一般的なMMOゲームと比べて若干選択肢が少ないが,本格的にサービスインされれば,ゲーム内でキャラクターに着せるシャツを購入可能になるようだ
 プレイヤーキャラクターの名前には,いかにもアメリカのテレビ番組に出てきそうなものを考案してくれるジェネレータがあって便利。自分で好きな名前も使用できるが,これは運営側(Toon Council)の許可を取る必要があり,数日間かかってしまう。ただし,その間も"Blue Mouse"など与えられた仮名称でのプレイは可能になっている。

 チュートリアルはきわめて簡単で,7〜8歳でも英語さえ読めたら理解できるレベルだ。なにせゲームの操作に必要なのはマウスとカーソルキーだけで,NPCとの会話も敵との戦闘も,そのキャラクターに近づくだけである。
 このチュートリアルでは,インタフェースについても説明される。画面左下にあるキャラクターのスキントーンに合わせた配色の"Laffpoint Meter"は,一般的なRPGでの体力値にあたる。このLaffpointがゼロになってもキャラクターは死なないが,相手を笑わせる手段が尽きたという理由で,がっくりと肩を落として街の中心部ToonTown Centralに強制的に戻されてしまう。Laffpointは時間が経つにつれて回復するので,しばらくはミニゲームをするなりして時間を潰すことになる。
 またチャットも簡素化されていて,最低限必要なセリフがあらかじめ用意されており,画面左上のタブから引き出すだけでほかのプレイヤーと会話できる。もちろん,通常のキーボードで打ち込むSpeed Chatと呼ばれるタブもあるのでご心配なく。
 ちなみにこのSpeed Chatは,未成年が不埒な大人との会話に巻き込まれないように,親がロックできるようになっている。親が望まなければプレイヤーは用意されたセリフしか使えず,ゲーム中にうっかりメールアドレスや住所を相手に教えてしまう心配がない。このあたり,ディズニーも細心の注意を払っているのだ。
 画面右上には,バディリスト(友達リスト)がある。これを見れば,誰がログインしているのかひと目で分かり,またリストに載っているプレイヤー(のキャラクター)のところに瞬時に飛んでいくことも可能だ。
 画面右下に本の形をしたアイコンで表示されているのが,Sticker Book。これを開くと,ビデオなどのオプション設定からマップ,クエストの種類,gag(ギャグ)という武器の種類,倒したコッグのギャラリーなどのメニューがある。
 またマップの下部には,コッグとの戦闘中でも最寄りのプレイグラウンドまでテレポートできるボタンがある。

ミッキーマウスの住む街を汚すコッグを,ギャグで蹴散らしてしまえ!

 ToonTown Onlineの基本的なゲームの流れを紹介しよう。まずはタウンホールでToon Taskと呼ばれるクエストをもらって,ToonTownの市街へ出てコッグを倒したりNPCと会ったりしながら,クエストの達成を目指す。先述したように,途中でLaffpointが尽きたらToonTown Centralに戻り,出直すことになる。また無事にクエストを達成すれば,ヘッドクォータで報酬をもらえるというわけ。
 なお,本作にはプレイヤーがアイテムを保管できるようなシステムはない。そのためクエスト達成時の報酬も,新しいギャグが使えるようになるとか,Laffpointが増加するといったものになるようだ。

 ギャグの購入は,ToonTown Centralにあるギャグショップで行う。購入時に支払うのはお金ではなく,ジェリービーン(マメ型の砂糖菓子)だ。ジェリービーンは,トローリーに乗って数種類のミニゲームを楽しみながら入手できる。
 ミニゲームには,パックマンのような迷路でのコイン集め,海中での輪くぐり,人間(キャラクター)キャノン,コッグとの綱引き,ミニーとのダンスゲームなどがある。最大4人が同時に楽しめて,一番成績の良かったプレイヤーに,大量のジェリービーンが与えられる。ただし,低年齢の子供をくじけさせないという配慮からか,最低でも2個のジェリービーンがもらえるようになっている。他人と遊びながらいつの間にかLaffpointも回復できるのはいいが,大人には少々面倒なシステムではあるかもしれない
 ギャグには,"SQUIRT"(水掛け系),"THROW"(パイなどの投げ物系),"SOUND"(鳴り物系),"TOON-UP"(回復系)など7種類があり,さらにそれぞれ六つのギャグが用意されている。このなかでゲーム開始時点から使えるのはSQUIRTの"造花"とTHROWの"パイ"だけだが,経験値を溜めることで水鉄砲やチーズケーキなどへとグレードアップできる。なおこれらのギャグは,そのグレードに関わらず一つにつき1個のジェリービーンで購入できる。

 ToonTown Centralから延びる三つのストリートにはコッグがひしめいており,それを倒してToon Taskをこなしていく。それぞれのストリートには20軒ほどの店があり,NPCが経営しているが,これらはToon Taskとの関連で存在するもので,実際には店として機能していない。また,ほかの建物はドアさえ開かないが,ときおりコッグに占領されてしまい,プレイヤー達が協力してコッグを追い払うことになる。つまり,一般的なRPGでのダンジョンにあたるわけだ。
 このストリートは,ミニーマウスのメロディランドやドナルドのドリームランドといった,テーマが決められた地方へつながっている。それぞれにPlayGround(中心地)があって,ヘッドクォータやトローリー,ギャグショップといった主要な機能を利用できる。

 三つのストリートにはレベル1から3までのコッグしかいないが,ほかの地方にいけばもっと強力なのがウヨウヨしている。もっともコッグは,登場地点から消滅地点まで道の真ん中を歩いていくだけなので,道の端を歩くようにすれば戦いを避けることができる。また,万一Laffpointが低いときに捕まったとしても,Run機能で逃げ出したり,マップページから街の中心地へとワープしたりすればダメージを受けることはないだろう。

 ToonTown Onlineの戦闘は,「ファイナルファンタジー」のようなターン制で行う。 プレイヤーはリストの中から手持ちのギャグを使うのだが,コッグによっては"SQUIRTの攻撃は無効"なんてこともあり,ある程度の戦略性や慣れが求められる。筆者がプレイした感じでは,基本的にはTHROW攻撃のあとにSQUIRTギャグを使うのが良いようだ。
 この戦いには最大で4人のプレイヤーキャラクターが参加でき,同じ系統の武器を使うことでボーナスダメージを与えることができる。ちなみにストリートの真ん中で戦闘していると,あとから来たコッグが最大で3体参加してくるので,一人で戦闘しているときには注意が必要だ。

 コッグには,Lawbots(法律ロボット),Cashbots(金利借しロボット),Sellbots(セールスマンロボット),Bossbots(管理職ロボット)の4タイプがあり,何気に大人にしか分からないようなジョークが満載されている。攻撃法もユニークで,シュレッダで紙切れを飛ばしたり,インクを吹きかけたり,さらには"セールストーク"というような呪文系(?)の攻撃も使用する。
 作ったばかりのキャラクターでもレベル3のコッグを倒せないことはないが,コッグに占領されてしまったビルを解放するのは,さすがに無理。仲間と連れ立って戦うのがいいだろう。

 

 ToonTown Onlineは,限りなく簡素化されたアクション/RPGなので,この手のゲームが初めての未成年にはもってこいのゲームだ。
 また本作はカートゥーンに多用される単一な色遣いを逆手に取っていて,IE5.01以上とFlash Player 5.0,そして搭載メモリ8MB以上のビデオカードが必須なくらいで,低スペックなPCでも十分に楽しめる
 ちなみに開発者の話では,日本を含めた世界へのローカライズの話も出ているようだ。とはいえゲーム中でチャットを強いられることもないし,与えられたクエストの内容さえ分かれば,日本人でも英語版で十分楽しめる。お子さんのいる読者なら,週末に英語教育とMMOゲームの練習を兼ねて,家族で試してみるのもいいだろう。本作は子供用にしておくのはもったいなく,大人でも夢中になってプレイできるはずだ。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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