Age of Mythology:The Titans

Text by 奥谷海人

 E3 2003で初公開された「Age of Mythology」(エイジ オブ ミソロジー)の拡張パック「Age of Mythology:The Titans」がアメリカにおいて発売された。新種族として失われた海洋民族アトランティス人が登場し,最終兵器ユニットとして,攻撃力/体力共に強力なタイタンを使用できるようになるなど,この作品には新しい要素もふんだんに用意されている。
 日本語版も「マイクロソフト エイジ オブ ミソロジー 拡張パック:アトランティスの巨神たち」として,2003年11月7日に発売が決定したこともあり,シリーズ最新作の要点を日本語版発売前にチェックしておこう。

アトランティス文明の復活を目指せ

 「Age of Mythology:The Titans」(以下,The Titans)のシングルプレイヤー用キャンペーンのストーリーは,このシリーズが歴史と神話を微妙にマッチさせていることを,あらためて印象付ける内容だ。
 オープニングムービーは,空に舞う一羽の鷹が,轟音をたてながら迫り来る大軍によって飲み込まれてしまうシーンから始まる。主人公はタイタン神族のクロノスで,自分の息子でもある全能神ゼウスによって閉じ込められていた冥府タルタロスを抜け出し,昔の世界を取り戻そうと進軍し始めたのだ。これは,元々ギリシャの覇権が地中海周辺に及び,タイタン信仰が抑圧されたという史実にも基づく。日本では,時の神クロノスとしての知名度が高いが,実際にはギリシャ先住民の信仰対象だったわけだ。
 一方人間界でも,父と子の親子関係が軸となるイベントが起きていた。クロノスの追放によって神々から見放され,漂流民族に成り果てたアトランティアン(Atlanteans/アトランティス人)を率いるカスター(Kastor)は,前作の主人公だったアルカントスの息子。破壊された生まれ故郷の島を抜け出し,放浪していたのである。第一ミッションでは,カスターがアトランティス人と協力し,彼らが強制移住させられていた北の大地から,ポータルを使用して南国に戻ることになる。
 このミッションは,操作法や新しいユニットの能力を学習するための練習ミッションだが,シリーズ熟練のプレイヤーにも苦のないよう,かなり簡略化されている。そこからさらに,小型の町で小規模の軍隊を率いてのプレイをメインをするミッションをこなし,やがては信仰を失ったタイタン神と,信仰対象を失ったアトランティアンが出会い,これまでにないユニットが紹介されていく。こうしてプレイヤーは,The Titansのゲームプレイに慣れ親しんでいくことになる。

高コストながらも強力なユニットとゴッドパワーの数々

 The Titansのアトランティアンは,オリジナル作品のギリシャ,エジプト,ノースの3種族と比較しても,かなり毛色の違ったものになりそうだ。基本的に一対一の戦闘では,アトランティアンのユニットが他種族のユニットを圧倒しそうなくらいの強さを誇る。どの村人ユニットでもヒーローへと進化させられるというのも大きな特徴だ。またアトランティスの村人は,他種族よりも3倍ほどの効率で労働する代わりに,単価は3倍になっているし,一人で3人分のスロットを消費することで人口キャップを圧迫する。
 敵側としてアトランティス種族を考慮すれば,小さな軍隊だからといって油断するのは禁物だ。こちらのほうがユニットの生産が速いのは確かなので,常に多くのユニットで対抗するのが得策だろう。実際アトランティアンでプレイしていると,資源の消費が早く,敵に農地や金鉱,村人ユニットを重点的に破壊されると,挽回するのが大変なようだった
 これまでのような比率で村人ユニットを生産すれば,十分な数の軍隊を作れないし,村人ユニットが少なくては被害を受けたときのダメージが大きい。マルチプレイヤーモードでアトランティスを楽しみたいなら,シングルプレイヤー用ミッションでこのあたりのバランスやゲームのペースを覚え直す必用がありそうだ。

 アトランティスで選択できる主神は,クロノスのほかにも,神話では彼の両親にあたるガイアやウラノスも選択できる。その特徴は,すでにE3 2003のレポート「こちら」に掲載したので割愛し,従神にもスポットを当ててみよう。


CLASSIC AGE

Leto (レト)
 月の神レトは蜘蛛の巣を設置可能。蜘蛛が卵のときは微弱だが,成長すれば土に身を隠す伏兵ユニットとなる。またロボットで自己修理能力を持つオートマタという神話ユニットが使用できる。

強化対象 オートマタ
ゴッドパワー 蜘蛛の巣:地下に潜んで近づく敵を攻撃する,巨大な蜘蛛を出現させる
神話ユニット オートマタ:互いに修理したり再生したりが可能な,金属製の神話ユニット

Oceanus (オケアノス)
 すべての河川や湖の父となった神で,ゲームでは海上ユニットを治癒でき,陸上ユニットを治癒するカラドリアという神話ユニットと対になっている。また兵士ユニットのMurilloやKatapeltesを強化するテクノロジが修練できる。

強化対象 歩兵
ゴッドパワー 食人花:巨大な人食い植物を出現させる
神話ユニット

カラドリア:味方のユニットを回復できる,空飛ぶ神話ユニット

サーヴァント:自然の力の化身である水生の神話ユニット。味方のユニットを回復できる


Prometheus (プロメテウス)
 予言の神。瞬時に複数のユニットをヒーローユニットに変換するValorというゴッドパワーを持つ。破壊されると,さらに複数の小型ユニットに分裂するプロメシアンという神話ユニットが使用可能。ヒーローユニットの開発コストも削減される。

強化対象 英雄
ゴッドパワー 武勇:エリア内の人間のユニット数人を英雄に変身させる
神話ユニット

プロメシアン:倒されると 2 体にわかれ,さらに戦い続ける泥人形の神話ユニット

 

HEROIC AGE


Hyperion (ヒュペリオン)
 観察の神ハイペリオンを選ぶと,サテュロスとネレイデスという二つの神話ユニットを利用できる。指定範囲の敵ユニットを,敵味方のない反逆ユニットに置き換えるChaosゴッドパワーを持つ。

強化対象 英雄
ゴッドパワー 混沌:狙った敵のグループを混乱させ,敵味方の区別無く攻撃し合うように仕向ける
神話ユニット

サテュロス:狙った敵に大量の槍を浴びせかけ,徹底攻撃する神話ユニット

ネレイデス:敵の神話ユニットに対して非常に威力のある水生の神話ユニット


Rheia (レア)
 ゼウスの母。ティターン神族の追放後に,世界の領有に関してゼウスと対立したため,山岳地帯に追いやられた。そのため野生動物と関連する神になった。

強化対象 恩恵
ゴッドパワー 反逆:狙った敵ユニット単体を味方に転向させることができる
神話ユニット

ベヘモット:自分でヒット ポイントを回復する生きた攻城兵器


Theia (テイア)
 ヘリオスやセリーンらの母といわれる光の神で,ヘスペリデスという大樹(施設の1種)を建設でき,そこから樹木を擬人化したドリュアデスという強力な神話ユニットを生産する。また長距離攻撃が可能な飛行型の神話ユニットステュムパロスの鳥が登場し,すべてのユニットの視界力が広がるなどのテクノロジが使える。

強化対象 騎兵
ゴッドパワー ヘスペリデスの木:選択した場所に,神話ユニットのドリュアデスを作成できる木を出現させる
神話ユニット

ステュムパロスの鳥:空中から攻撃する神話ユニット。射程を持つユニットでしか攻撃できない

 

MYTHIC AGE

Atlas (アトラス)
 ゼウスに懲罰として大地を支えるよう命じられた神。

強化対象 建物
ゴッドパワー 内破:狙ったエリア周辺のユニットと建物に,甚大なダメージを与える。特に,敵の軍事ユニットの大軍には効果的
神話ユニット

アルゴス:酸による攻撃で一瞬にして敵を倒す。泡のように形の定まらない軟体の神話ユニット


Helios (ヘリオス)
 マップ中の自軍ユニットを特定の場所に集結させるVortexというゴッドパワーは,ゲーム中に複数召喚できる特性を持つ。雷を放つクラゲのようなマンノウォーという海上ユニットと,ヘカ ギガンテスという巨人ユニットの二つの神話ユニットが作れるようになる。

強化対象 攻城兵器
ゴッドパワー 旋風:すべての軍事ユニットを、選択したエリアへ瞬時に移送する
神話ユニット

ヘカ ギガンテス:地面にこぶしを叩きつけて敵を転倒させる力強い巨人

マンノウォー:水上を移動し、稲妻を連発して敵を攻撃する水生の神話ユニット


Hekate (ヘカテ)
 夜と魔性の神。タルタロスの門という,タルタロス界の魔獣を召喚させるゲートを設置するゴッドパワーを持つ。神話ユニットはランパデスで,ヒュペリオンのゴッドパワーと同じように,攻撃を与えるすべてのユニットをChaos状態にできる。

強化対象 神話ユニット
ゴッドパワー タルタロスの門:混沌に満ちたタルタロスへの門を出現させ、破壊されるまで、周辺のユニットを攻撃し続ける怪物の群れを召喚する
神話ユニット

ランパデス:遠隔攻撃で敵を混乱させる黄泉の国のニンフ (精霊)

 

究極ユニットタイタンは,なんと7000ヒットポイント!

 副神の説明を見ても分かるように,アトランティス種族の一部のゴッドパワーには,1ゲームで複数使用できるものが含まれているのが新鮮だ。Mythユニットも,遊んでみた感覚では非常に強力なものが多い。ただしMythユニットに関しては,ゲームのオリジナル3種族のものも,コストが高い割に利用価値が少ないという批判があったことから,神殿を設置するときにフリーで与えられるなどの変更点もあるようだ。

 しかしThe Titansでの一番大きな変更点は,タイトルと同じ"タイタン"という究極ユニットを,すべてのプレイヤーが使用できるようになったことである
 タイタンは,Titan Gateと呼ばれる施設ユニットから孵化させることで使用できるMythユニットの一つで,移動速度は遅いものの,7000に及ぶヒットポイントと破壊的な攻撃力を持っている。オリジナル作品で最強だったコロッサスの,実に6倍に及ぶ数値だ。
 タイタンは,人間ユニットを20〜30ユニットを送り込むだけではまったく歯が立たず,城壁や施設をも次々と破壊していく。タイタンはそれぞれの種族ごとに異なる外観で,アトランティスはマグマでできたようなジャイアント,ギリシャは三つの犬の首を持つ男,エジプトは鷹の首,そしてノースは氷の槌を抱えたトロールとなっている。
 多くの兵士を引き連れながらほかのタイタンを迎え撃つ様子は,「Black & White 2」を連想させる。
 当然コストは非常に高く,それこそワンダーを建設するくらい必要だ。またTitan Gateの建設はほかのプレイヤーに知らされるため,十分な兵力や城壁で囲っておく必要があるだろう。タイタンが這い上がってくる様子は,かなり格好良く描写されている。

 さて,アトランティスやタイタンにばかり注目して説明してきたが,The Titansは細かい部分の調整も忘れていない。とくに,マルチプレイヤーゲームを意識した変更点が,あちこちで確認できる。
 インタフェースの大きな変更点は,"Repeat Build"ボタンの追加によって,資源がある限り,好きなだけ指定した施設を自動生産できるようになったこと。一刻を争う中級以上のプレイヤーには,非常にありがたい機能になるはずで,これまで以上に戦闘配備に集中できるようになるだろう。さらに,ミニマップを大きくしたような"Strategic Mini Map"という形式のマップが追加されていたり,"Easy Select Military"という,マウスドラッグしたときに戦闘ユニット以外が指定されないような機能が追加されたりしている。

 マルチプレイヤーモード自体の新規追加はないようだが,The Titansのプレイヤーは,オブザベーションモードと呼ばれる,他人の試合を見物するための特殊モードで楽しめるようになった。これは,ゲームにアクセスしても自分でプレイできないものの,自在にカメラを操って他人の対戦を傍観できるという,最近のメジャーなゲームによく搭載されている仕様だ。上手なプレイヤー同士の対戦を見たいという人は多いはずで,トーナメントやLANパーティで利用されることになるだろう。
 またシナリオエディタ機能の追加も嬉しいところ。なんと,シリーズ自慢のゲームエンジンを使ったインゲームムービーも,プレイヤー自身で作成できるようになっているようだ。カメラアングルを自由に操作できるだけでなく,イベントを発生させるトリガーなども,アマチュアでも分かりやすく調整できるとのこと。
 本作のスタッフは,RTSでは大きくないMODコミュニティの育成も考慮しているのだろう。


 「こちら」で報じたように東京ゲームショウで日本語版も発表された本作(日本語公式サイトは「こちら」)。タイタンの登場でバトルシーンが一層激しくなりながらも,よりバランスの取れた遊びやすい印象があり,マルチプレイヤーモードの面白さは格別。先述したようにアメリカでは本日(2003年9月30日)発売されており,今後しばらくは本作の話題でもちきりになることだろう。

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