Soldiers:Heroes of World War II

Text by 奥谷海人

 ここしばらくリリース作品が減っているRTSジャンルに,第二次世界大戦をテーマにした「Soldiers:Heroes of World War II」(以下,Soldiers)が投入される。ウクライナで制作を続ける若い開発チームの実力は未知数だが,細部まで描き込まれたグラフィックスが非常に魅力ある作品だ。
 ステルスやアクションが強要されず,好きなようにミッションをこなしていくことができ,建物はすべて破壊することが可能。使い古された第二次世界大戦という設定で,どれだけ新鮮味を感じさせてくれるだろうか。


リアリティ溢れるユニットを駆使して,敵の包囲網を突破しろ!

 Soldiersは,「Colin McRae Rally」や「FlashPoint Operation」などシミュレーションゲームで定評のあるイギリスのCodemasters社が2004年夏ごろに発売予定のRTSだ。
 第二次世界大戦をテーマにした「Commandos 3」風のプレイ感だが,RPGの要素を加味しながらもテンポはスピーディになっている。画面は第三人称視点で,細かく美しい3Dグラフィックスが特徴的だ。
 開発を担当するのはウクライナに本拠を置く新鋭のBest Way社で,本国では1C Company社から「Out Front」というタイトルで発売されることになっている。
 Codemasters社は,本作のほかにも欧米向けに1C Companyから3本のソフトの販売権を獲得しており,本作にも「Perimeter」や「War Command」がリリースされる予定だ。

 ストーリーは,戦争で引き裂かれたヨーロッパの片田舎に取り残されてしまった戦車団の司令官が,すでに敵に囲まれてしまった前線地帯を潜り抜けながらの生還を目指すというもの。しかしその道のりは遠く,また仲間のいない状態で敵に真っ向から勝負するのは自殺行為だ。そこで,現地に残るパルチザンらと手を結び,自らの軍隊を作り上げて強行突破するという奇天烈な作戦を展開させることになるのだ。

 Soldiersに用意されたシナリオは全体で30種類ほどで,一つのマップで次々とオブジェクトが変わっていくような,最近のRTSでは主流になっている方式が採用されている。敵の防衛ラインを突破して市街地に潜入し,襲いかかってくる敵と闘いながら捕虜になっている味方を救出する,というような展開になるのである。
 面白いことにSoldiersでは,連合軍(アメリカ/イギリス),ドイツ,そしてロシアの三つの軍隊でプレイでき,それぞれに10種類ずつのシナリオで構成されたキャンペーンが用意されている
 先ほどそのカメラ視点からCommandosと比較したが,最終的には「UFO Aftermath」をスピーディにしたというか,「CALL OF DUTY」のカメラをズームアウトさせたようなゲーム感覚になるかもしれない。映画的な演出も多用されており,ぐいぐいと引っ張っていってくれるようなストーリーが期待できる。
 Soldiersでは,それぞれの軍隊で実際に使用された25種類の銃器が登場し,ナイフやライフル,マシンガン,グレネード,さらにはモロトフ・カクテルなどの武器をキャラクターに装備できる。ほかにも,タンクやジープなどの車両も含めて全軍のユニットの総数は105種にのぼり,当時の武器や兵器に魅力を感じるコアゲーマー層にも十分納得のできるラインナップになっているのだ。


ストラテジーゲームなのに,弾丸までにこだわった物理効果

 Soldiersの操作性はかなり柔軟なシステムになっていて,RTSで一般的なグルーピングなどでチームを動かすこともできれば,3Dアクションゲームのようなパーソナルな視点でユニット単位のコントロールも可能になっている
 古いゲームでは「Battlezone」がこの方式だったし,最近の作品では「Hidden&DangerousII」などの3Dゲームで採用されているが,カメラの方向やアングルの急激な変化に対応できずにコントロールが難しく感じてしまうことも多い。このあたりを,本作ではどのように料理しているのかが気になるところだ。

 こうして,プレイヤーはミッションで使用可能なユニットで部隊を編成し,マウスとキーボードを利用してチームに命令を出したり,時にはタンクや兵士を単体で操って正確な攻撃を実行するのである。派手な爆発や建物の倒壊がアクション性を強調しているが,実はステルスで切り抜けるような戦術を採ることも可能で,プレイヤーは好みのスタイルで難局を切り抜けていけるようにデザインされているという
 例えば,夜の闇にまぎれて海岸線を進行し,水際で上陸を妨いでいる巨大なテューレットを占領するというような,ステルスに偏ったミッションも用意されているようだ。この場面では,周囲の景色が本当に薄暗く,手がかりになるのは遠方に見える村の電灯のみ。ゆっくりと近づいて,静かに電灯を消し去るというような「Tom Clancy's Splinter Cell」を連想させる場面もある。
 全体的には,ある程度の戦術や状況の把握は必要となるものの,ゲートの開け方を探るなどの細かいパズルにはこだわらず,サクサクと進むゲームとして制作されているのは好感が持てる。

 登場する銃器や兵器は非常に細かくモデリングされており,丁寧なことに弾丸一つ一つさえもがリアル志向で制作されている
 弾丸の種類によっては,戦車や人間ユニット,建物から樹木に至るまでの被弾による効果と被害が変わってくるというのである。当然のことながら,マップ中のすべての建物も,その被害によっては破壊されることになるのだ。
 あまり建物を破壊しすぎると,敵の援護が来たときに隠れる場所がなくなってしまう半面,うまく建物を倒壊させれば,その中でスナイピングしてくる敵も葬り去ることができるだろう。
 また,モデルは各パーツごとに作り分けられているので,ジープのタイヤを銃撃してパンクさせたり,相手兵士の頭部を狙って即死させることもできる。すでに公開されているムービーを見ても,風に揺れる木々から車両の轍まで,恐ろしいほど描き込まれているのが確認できる。頭上を見る機会はないようだが,水面には空を流れる雲が反射したりする。キャラクターアニメーションも秀逸で,片手に武器を持って川や湖を泳ぐと,そのキャラクターは実際に片手で平泳ぎをしているという懲りようである。
 マルチプレイヤーモードも実装する予定で,シングルプレイヤーモードのシナリオを仲間を一緒に進めていく協力モードが楽しめるのに加え,デスマッチやキング・オブ・ザ・ヒル専用のマップも用意される。


 Soldiersにおいて気になるのが,コンピュータ制御に切り替わった仲間のAI(思考ルーチン)である。現時点では未知数ではあるが,公式サイトではフィーチャー(主要機能)として列挙されているので,グラフィックスやフィジックス並に作り込んでくれているのだろうか。
 Soldiersは,欧米では第2四半期の発売予定となっている。 RTSゲームのリリースは,ここ数か月減少気味なだけに,予定通りの登場でこのジャンルを盛り上げてもらいたい。日本での発売は未定なので,E3前後の動きには注目しておこう。

*ゲーム画面はすべて開発中のものです。また,本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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