SWAT:Urban Justice

●Preview#42
SWAT:Urban Justice

Text by 奥谷海人

ギャング抗争の終息に活躍するロサンジェルスのSWATチーム

 第4作目となる「SWAT:Urban Justice」(以下,Urban Justice)の舞台となるのは,近未来の2006年。225回目の記念日を祝うロサンジェルスでは,ギャングが起こす事件や抗争も史上最悪規模になっていた。プレイヤーは,ロサンジェルスの特殊精鋭部隊SWATチームのコマンダーとなり,激化する事件に対処していくのが目的となる。敵がこれまでのようなテロリストではなく,地元のギャング団となったのは,去年の同時多発テロ事件の影響でもあるようだ。
 Urban Justiceは,Sierra Entertainment社の内部開発グループによって開発されており,シリーズをプロデュースしてきたロッド・ファン(Rod Fang)氏を始めとするコアチームが継続して製作。監修として,SWATに27年間従事したケン・サッチャー(Ken Thatcher)氏が起用されている。Urban Justiceは,すでに非公開のβテスト段階に入っているようで,欧米では9月頃のリリースが予定されている。
 実はこのSWATシリーズは,元々「Police Quest Adventure」という戦略ゲームとして始まったものであるが,「Rainbow Six」のようなコンバットアクションゲームの影響を受けてアクションゲームに変更されたのが,前作の「SWAT 3:Close QuarterBattle」(1999年)に当たる。本作は,手堅いゲーム性で人気となったSWAT 3のゲーム性を引き継いだもので,“Takedown”と名付けられた最新グラフィックス機能を搭載したゲームエンジンが使用されている。もちろん,5人編成のSWATチーム(SWAT用語では“エレメント”と言う)を,赤チームと青チームの二人ずつに別れて指示するというSWATの基本戦術はしっかりと踏まえている。今回からは,エレメントメンバーの各人に,プレイヤーの好みの武器を持たせたり,防弾ジャケットやゴーグル,マスクなどを数々のリストの中から選択して装備させることが可能になっているのも重要なポイントだ。また,2つめのエレメントにコマンドを与え,怪我人救助などの作業に従事させることで,プレイヤーのユニットのリスクを減らすこともできる。
 Urban Justiceでは,ロサンジェルスの主要地域や名所を中心に,16種類のミッションから構成される。メキシコの香りがするオルベラ通りや北部のグリフィス展望台などの名所をはじめ,市長邸宅や美術館,レコーディングスタジオが登場するようだ。前作と異なるのは,必ずしも現場の青写真や見取り図を元にマップを製作しているのではなく,ゲームとしての流れを重視した独自のデザインがなされているということだろう
 敵として想定されているギャング団には,Compton 187,Krazy Boys,Loco Ridersという名称が付けられており,彼らがロサンジェルス全域に渡って三つ巴の抗争を始めたというのが設定である。そのため,Urban Justiceのミッション内容も,ナイトクラブでの銃撃戦への介入や,ギャング団の資金集めによって行われた宝石店強盗事件を解決するというようなものになっているのだ。

さらなるリアリティーの追求とゲーム的な面白さを確保

 さて,上で「ロサンジェルスの特殊精鋭部隊」と記し,「ロサンジェルス市警のSWATチーム」としなかったのにはわけがある。Urban Justiceは,これまでのシリーズのように,ロサンジェルス市警(LAPD)から正式なライセンスを受けていないのだ。それも開発者に言わせると,「このシリーズが,ゲームとして飛躍していくための選択」なのだそうで,ライセンスを解除することで“お墨付き”を失うものの,その規約に縛られないゲームへと成長させるのが大きな理由だ
 例を挙げれば,SWATチームの規則として,激しい銃撃戦で銃弾が切れても,近くに横たわっている敵の死体から銃器を取って戦うということは,後の状況鑑定などの都合からできないことになっているし,現在では女性隊員の参加が認められていないなどの制約がある。Urban Justiceでは,それらをゲームで可能にしてしまうことで,本来のSWATチームに厳密に沿ったものではなく,プレイヤーへの自由度を優先したものになったといえるだろう。
 もちろん,通常のタクティカルシューティングのように,綿密な計画によってプレイヤーキャラクターを駒のように進めていくのは以前通りだ。しかし,Urban Justiceではより速いペースのアクションを目標に製作されているようで,新しく追加された機能である“ジャンプスタートモード”は,ボタン1つで通常の手続きを通り越し,ミッションがランダムに自動選択され,そのミッションに合わせたディフォルトのSWATメンバーを構成してくれるというものだ。前作と異なり,プレイヤーはゲーム中の状況を判断し,戦略を逐一メンバーに伝えるということはなくなり,事前に与えておいた簡単な命令に従って行動してくれるようになった。
 例えば,不審な部屋に到着し,その中の人物が降参するまで全て攻撃しても良いと判断したなら,コマンドメニューで“Breach to Contact”を選択して命令を下しておく。エレメントのメンバーたちは,それに従ってドアを蹴破りながら,着実に敵を追い詰めていく,という具合である。敵を見るなり撃ち殺すのではなく,警察として“犯人を活かす”判断ができるというのもSWATシリーズの特徴だが,一人も人を殺さずにゲームをクリアするのも不可能ではないらしい
 それとは別に,本作では“キャリアモード”というストーリー仕立てのゲームモードもある。これはオープンエンド方式になっていて,プレイヤーは好みのミッションからゲームを選択できるというのが面白い。ゲーム自体は,イベントの発生などで進められていくストーリー重視の姿勢が取られている。ストーリーは,プレイヤーが選択したミッション内での出来事によって変化していくらしく,逃がしたギャングメンバーや死んでしまった民間人といった状況が,後々の展開に影響を及ぼしていくとのことだ
 現場でのリアリティーを追求しているUrban Justiceでは,武器や装備用具も忠実に再現している。現在知られている銃器には,AK-47,AK-74U,AN94,Gemtech Quantum 22口径,HK69A1 40mmロケットランチャー,H&K G36C,M249SAW,M4A2,M4RIS,MP5,MP5K,MP5PDW,MP5SD,P90,Serbu BFG-50,Serbu Super Shorty 12口径,Steyr Aug,Super90,UMP45のほか,アサルトライフルや各種グレネードがあり,さらに追加される見通しだ。ギャングや民間人が使用している武器としては,Beretta 93R,Colt 1911,FN57,Glock 21,M9,USP 40などがゲーム中に登場し,プレイヤーが手にとって使用することも可能になる。銃器だけでも,合計で40種程度になるらしい。これらの銃器のサウンドクリップは,全て実際に射撃場で試射したものが録音されている
 また,これらの武器は,プレイヤーがお好みの仕様にカスタマイズできるようになっている。これは,各銃器がパーツごとにデザインされているからで,グリップやマガジンを取り換えたり,バレルの長さを変更することが可能だ。機種によっては,もちおんスコープやサイレンサーを装着することもできるだろう。発砲速度や回数を変更するなど,機械的な部分でも改造可能になっているなど,ガンマニアにはたまらないゲームになりそうだ。開発者の話では,ライフルの先端にガス缶を取りつけるように改造して,敵の頭にぶつけるだけの攻撃力しかない武器を製造することもできてしまうのだという。

24人までのマルチプレイヤーモードで,市警対ギャングの抗争を実現

 Takedownゲームエンジンの中心的な地位を占めるのが,やはりDirectX8.0に完全対応したグラフィックス機能だろう。より精密なバンプマッピングや環境マッピングを可能にするマルチテクスチャリング技術の他,プログラマブル・ピクセル・シェーディング機能を駆使して,よりリアリティーに溢れる光や影の投影や,細かい煙硝の効果を実現している。画面写真を見ても,その描画能力の凄まじさがわかるだろう。マップには,海岸沿いの遊園地のようなものもあり,数々の乗り物や出店のほか,前に立つと体が変形して移る鏡で覆われた部屋など,ゲームエンジンの性能をフルに活かした演出も見られる。
 Urban Justiceのキャラクターモデルは,1キャラクターのポリゴン数が少なくても4,500ポリゴンと,前作と比べて4倍から5倍程度に増加した。それによって当たり判定が向上したため,体の各部位は29箇所に分割されており,それぞれに異なるダメージ値が設定されている。アニメーションも,モーション・キャプチャー技術を利用し,例えば片足を撃たれれば足を引きずりながら逃げたり,肩に銃撃を受ければその場所を押さえて痛がるといった光景も見られる。もちろん,頭部なら一撃即死となるようだが,ダメージ自体は骨の厚さや内臓の位置,弾丸の加速度や距離によって異なる計算がされているというマニアックさだ
 プレイヤーはまた,各SWATメンバーのプライマリー(標準)とセカンダリー(予備)の武器に,どんな弾丸を補填するかなどの設定もできるオプションが加わっている。ただし,各銃器や装備には“重量”という概念が加わっていて,それによって移動速度が変化するという凝りようだ。逆にいえば,ミッションを遂行していくうちに各キャラクターの負担も減り,移動速度が上がっていくという,ゲームでは初めての試みもなされているのだ。SWATチームのメンバーにはキャラクタークラスがあり,それぞれのクラスに複数の男性モデルや女性モデルが用意されている。それぞれに移動速度や体力,忍耐などのパラメーターがあり,プレイヤーが自由に設定を変更し,独自のキャラクターを作成することも可能になっている。
 AI(思考ルーチン)は,150人分がパターン化されていて,SWATチームやギャング,通行人,捕虜などによって,様々な行動をするようになった。しかも,その時の状況下での感情や反応が異なるため,銃撃戦中にパニックになって避難場所から飛び出してくるような民間人もいるかも知れない。AIをパターン化することで,レベルデザイナーがマップの製作時に1つ1つのキャラクターに手を加える必要がなくなり,データマネージメントの観点からも自由度が高くなった。マップを生成するごとに,違った反応をするAIキャラクターが登場するわけで,リプレイヤビリティーもかなり高くなると見込まれている。
 さらに,Urban Justiceは初期出荷時点でマルチプレイヤーモードに対応しているのも重要なポイントだろう。最大で24人までがSWAT隊員もしくはギャングに分かれて対戦することができ,デスマッチやチーム対戦モードはもちろん,ハンテッドやエアーソフトなどのモードがある。ギャングにも,少なくとも20体ほどのモデルが用意されているようで,良く見ると耳にタバコを挟んでいたりと,細かい部分までモデリングされているのも興味深い。Urban Justiceには,Valve Entertainment社が「Half-Life」や「Counter-Strike」で威力を発揮したMODやマップを製作するためのツール,Worldcraftが付属される予定になっている。

 武器や戦術面でのリアリティーにこだわり,タクティカルシューティングの面白さを煮詰めながらも,より自由度の高い快楽的なゲームとして成長させた「SWAT:Urban Justice」は,アクションゲームファンなら押さえておいて損のないゲームになりそうだ。

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