●Preview
銀河英雄伝説 VS

Text by Murayama

"銀英伝"に異色の外伝登場!

 ボーステックの看板タイトルとして幅広いユーザーに認知されている"銀河英雄伝説シリーズ"は,タイトルを重ねながらさまざまな試行錯誤を行ってきた。シリーズを通じての基本プレイスタイルは,広大な宇宙空間で数千隻もの艦隊を操り,敵軍と戦術を競うというものだ。しかし,今回紹介する「銀河英雄伝説 VS」(以下,VS)は,同シリーズの中でも外伝としての位置付けとなっており,これまでの銀英伝とはまったく異なるものである

 起動してみると,オープニングはかなりマニア泣かせのデキである。テーマソングはアニメの外伝と同じのモノを採用し(ゲームも"外伝扱い"のため,わざと外伝のテーマをチョイスをしたのだろうか?),始まり方もアニメとほとんど同様。だが次の瞬間に画面に映し出されるのは3DCGの戦艦達であり,当然ながらアニメでは見られなかった演出だ。このオープニングでは3DCGの戦艦達を使った同盟軍と帝国軍の迫力ある戦闘シーンが見られ,帝国軍の旗艦ブリュンヒルトや同盟軍第2艦隊旗艦のパトロクロスの勇姿が登場。これから始まるゲームへの期待をグッと高めてくれる。ある意味,オリジナルアニメを超えたオープニングといってもいいだろう

今回は個人視点での戦い!

 VSではプレイヤーが大艦隊を率いることはなく,艦長かパイロットとして戦闘に参加することになる。軍全体を指揮するこれまでとは異なり,個人視点で展開される銀英伝である。
 プレイを始めると,宇宙艦隊戦における個人や兵器がいかに小さなものであるかを経験することになるだろう。なお,ゲームシステムはこれまでのシミュレーションではなく,同社の「超時空要塞マクロスVOXP」と似た感じのテキパキとしたアクションゲームになっている。とはいってもそのまんまシステムを流用しているわけではなく,上下左右方向へのカニ歩きが可能になっていたり,砲撃,推進力,中和磁場の三つのエネルギー配分を考えるといった新要素も見られた。また,VOXPでは戦艦に当たり判定がなくて,通り抜けてしまったことに不満を覚えたプレイヤーも多かったが,VSでは戦艦の当たり判定もちゃんと設定されているようだ

 ゲームは「シナリオプレイモード」「ミッションクリエイトモード」の2種類があり,前者は用意されたシナリオを使ってソロプレイのほか,最大16人までのネットワークプレイを楽しめる。ネットワークプレイでは,対戦以外にプレイヤー同士が一緒に敵軍と戦う協力プレイも可能だ。
 ちなみに筆者が触れたα版に収録されていたシナリオは,「奪還者」「グランド・カナル」「レグニッツァ上空遭遇戦」「永遠の夜の中で」「愁雨きたりならば」「アムリッツァ星域会戦」の6種類。中でもアニメの外伝である「奪還者」の収録はなかなかに興味深い。いまのところ外伝+原作の13話程度までのシナリオが収録されているが,よくよく見ると原作の27話あたりで活躍(?)した,攻撃空母アムルタートなども収録されているので,製品版ではもっと多くのシナリオが収録されることを期待してもいいかもしれない
 後者の「ミッションクリエイトモード」(有料サービス)は未実装だったが,ユーザーデータをサーバーに置くことで,勝利ポイントランキングのサービスが楽しめたり,買い物をして戦力アップを図れるとのことだ。なお,これらの有料サービスに関してはボーステックが運営しているSoftCityの会員になる必要があり,将来的には戦艦データやシナリオダウンロードも受けられるようになるとのこと。

戦艦と戦闘機どちらを選ぶか?

 先に触れたように,本作の最大の特徴は戦艦か戦闘機を選んでプレイすることにある。基本はアクションゲームであるが,戦艦と戦闘機ではどのようにプレイスタイルが異なるのだろうか? 本作品においてキモと思われる部分なので,じっくりと紹介してみよう

●戦艦
 攻撃方法は,主砲/副砲/ミサイルの3種。砲撃距離は"至近"と"長射程"に切り替え可能だ(原作でしばしば「主砲制射,目標至近!」というセリフが聞かれることから砲撃距離の切り替えが導入されたのだろう)。
 いつでも好きなときにレーダーを参照でき,マップ上に移動ルートを設定出来るうえ,艦載機に移動命令などを出せる(移動ルート上に敵がいた場合,戦闘機は自動で戦闘する)。つまり,司令塔としての役割を担うわけだ。
 ゲームには戦艦だけではなく巡航艦クラスの艦船も登場。もちろん,ブリュンヒルトやヒューベリオンといった特定の戦艦も登場するので,ファンならぜひとも操作したいものである。なお,特定の戦艦に関しては有料サービスで使えるかどうかは不明だ。

●戦闘機(スパルタニアン/ワルキューレ)
 攻撃方法は主砲/副砲/ミサイルの3種(ワルキューレには副砲はなし)。帝国軍はワルキューレ,同盟軍はスパルタニアンという戦闘機に乗り込んで戦う
 戦艦に艦載された状態でスタートするが,出撃するタイミングは自分で選べるようだ。スタート直後から出撃して敵陣に斬り込むのもよし,戦艦の中にずっと待機し,必要なときだけ出撃して攻撃&帰還というプレイスタイルもOKというわけ。また僚機への攻撃指示も出せるが,近接する敵のみが対象になるようなので,戦闘指示というよりも援護要請といった感じであろう。ちなみに戦闘機はコックピットに表示されるマーカーなどで大まかな敵の方向などを知ることは出来るが,戦況全体を把握することはできない(戦艦に帰還時のみ戦況マップの閲覧は可能)。

 戦艦と戦闘機の違いを簡単に紹介するとこんな感じで,どちらを選んでも,ゲームは非常にテンポ良く軽快な印象を受けた。戦艦までかなり軽快に動かせるのは嬉しいが,あまりにも軽快すぎるので,雰囲気を重視するのであれば戦艦はもうちょっと遅くてもいいかもしれない。
 また気になったのが移動方法である。本作ではテンキーの2/4/6/8で上下左右へのシフト移動,5で前進,0でブレーキ(後退),方向キーの上/下/左/右で機首を上下左右に振るという非常に独特な操作方法を採用している。だが少し考えれば分かるが,これではロールや"機体を横に倒す+上昇"での急旋回ができないのだ。このあたりはぜひとも製品版までに修正されることを願いたい。
 それから戦艦/戦闘機共通の特徴として,プレイ中にエネルギー配分を考えなければならない点は面白い。といってもこれはエネルギーの残量にビクつきながらプレイするというものではなく,推進力を上げると中和磁場の出力が下がってしまうといったように,移動/砲撃/防御の要素が互いに影響しあっているのだ。時には連続砲撃を行うために推進力を殺して戦ったり,防御や攻撃力を殺して素早い動きで敵を翻弄するなど,さまざまな戦術が考えられるだろう。ちなみに,ゲーム中では6種類のスイッチがあり,好みに応じてさまざまな調整が行える。しかもこれらはON/OFFのみの切り換えではなく,スイッチを押している時間の分だけゲージが変動する仕組みなので,組み合わせに悩むことになりそうだ。ちなみに設定できるスイッチは下記の6種類。

●推進出力を上げ,エネルギー中和磁場出力を下げる
●推進出力を下げ,エネルギー中和磁場出力を上げる
●推進出力を下げ,主砲充填出力を上げる
●推進出力を上げ,主砲充填出力を下げる
●主砲充填出力を下げ,副砲充填出力を上げる
●主砲充填出力を上げ,副砲充填出力を下げる

総括 〜α版に触ってみて〜

 本作は,同シリーズにおいてまったく新しい境地を開いた作品である。オープニングのデキも素晴らしく,ゲームの内容も申し分ないものとなっている。ある意味こうした形の銀英伝を望んでいた人は多いのではないだろうか?(筆者は大歓迎である)ただ一つ気になる点があるとすれば,今回原作でお馴染みのラインハルトやヤンがまったく登場しない点だろう。ゲームのコンセプト上,ユーザー同士の戦いがメインとなることから原作のキャラ達は必要ないかもしれない(ユーザーが誰かに扮して遊べるとした場合,ラインハルトが二人登場するのも変だし)。だが贅沢を言わせてもらえば,シナリオモードなどで演出の一種として登場してほしかった。ファンにとっては登場人物も銀英伝を語るうえで大事な要素であるのだから。
 今回プレイしたα版は,サーバーを介した対戦も未実装だし,ゲームバランスなどもまだまだという感じだったが,今後のバージョンアップに大きな期待が持てる。最後にどのようになるのかが非常に楽しみだ。早く"星の大海"に出撃したいものである。

*画面はすべて開発中のものです*

(C)2002 田中芳樹・TKW (C)2002 BOTHTEC ORIGINAL MECHANIC DESIGN 加藤直之