Judge Dredd:Dredd vs. DeathText by 奥谷海人 なぜ今頃!? と考える読者も多いことだろうが,シルベスター・スタローン主演で1995年に公開された「ジャッジ・ドレッド」のゲーム化が進められている。'90年代中期といえば映画のヘタなゲーム化が頻繁に行われ,"ライセンスゲーム イコール クソゲー"などというレッテルが貼られたのもこのころだろう。最近では「トロン」や「大脱走」など,何十年も前の映画がゲーム化されているので不思議ではないが,実は「Judge Dredd:Dredd vs. Death」は,映画のネタにもなった原作のコミックを基に制作されており,第1人称視点型のシューティングゲームとして姿を現すのだ。 本家イギリスでは大人気の国民的コミック '90年代のライセンスゲームの乱立を思い起こすと,なぜこれまでジャッジ・ドレッドがゲーム化されていなかったのかは不思議なくらいだ。
ジョン・ワグナー氏の描くコミックは,2000AD誌で1977年に登場して以来「イギリスで最も有名なコミックキャラクター」と呼ばれるほどの人気を獲得してきた。現在でも,「Batman
vs. Judge Dredd」や「Judge Dredd/Aliens」など,DCコミックや映画のキャラクターと連動させることで,イギリスのコミック界で不動の地位を築いているのだ。映画興行的には大失敗したが,コミックは,イギリスを中心に今も多くのファンに愛されているのである。 コミックのジャッジ・ドレッドに馴染みのない人のために説明しておくと,2070年に勃発した世界戦争によって核が世界各地を襲い,アフリカや中東は完全に崩壊するなど地球規模での大災害となる。アメリカもシカゴなどの大都市が消滅し,人が住めないCursed
Earthと呼ばれる無人地帯となったのだ。残った人類は安全な土地を目指して居住を始め,アメリカではニューヨークを中心とするメガ・シティ1,ロサンジェルスを中心とするメガ・シティ2,そしてテキサスに広がるメガ・シティ3という巨大都市が形成されることになった。イギリスのコミックでアメリカを舞台にしているのに不思議に感じるだろうが,それは作者のワグナー氏自身がアメリカ東部の生まれであることに起因しているのだといわれている。 強力なパワーを持つジャッジ・デスとの戦いを描く Judge
Dreddでは,このコミックの世界観を十分に堪能できるように設計されている。ゲームのカメラ視点は第1人称視点で進められるので,映画の影響でロッキーのイメージから抜け切れないスタローンを想像してしまうこともないだろう。ジャッジが厳格な規則によって行動しなければならないことから,マップ上にいるキャラクターたちに手当たり次第発砲することは不可能で,罪人に対しても厳格に対処する必要がある。それを破れば,ジャッジの行動を監視するコントロールという制御システムから警告を与えられ,最悪の場合はタイタンの収容所へと送られてゲームオーバーとなってしまうからだ。 ゲームに登場する武器には,コミックや映画でも描かれているLaw Rodと名付けられた自動小銃と,Judge
Pumpという名のショットガンがメインで用意されている。武器の数は少ないが,それを補ってくれるのが銃弾の種類の豊富さだ。防具貫通弾やリコチェット弾,爆破弾や火炎弾など,さまざまな種類のものがある。これらはインタフェース上にアイコンとして表示されていて,現在使用している銃弾に合わせてカーソルが形状を変化させるのだ。システムは「Battlefield
1942」と似ており,動かずに狙いを定めるとカーソルが小さくなり,敵にも命中しやすくなるが,その代わりに自分自身が標的なってしまう危険性もある。逆に動きながらの銃撃ではカーソルが大きくなって命中率が下がるものの,当然のことながら銃弾をかわしやすくなるわけだ。 続編ばかりが目立つFPSの中で,こういう新作が出てくるのはそれだけでも価値のあることだ。Rebellion社の制作するAsuraエンジンの性能も未知数だが,画面写真を見ても分かるように,立体感のある高層ビルも印象的である。すでに,このゲームエンジンを使って「Wardog」という別のコミックベースのゲームも開発されているほか,Rebellion社自身が旗振り役となってジャッジ・ドレッドの新作映画2本の制作が進行しているらしい。
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