H.P.Lovecraft

H.P.Lovecraft  H.P.Lovecraftをご存知ない人のためにざっとご紹介しておくと,Howard Phillips Lovecraftは,1890年アメリカで生まれた。幼少の頃から天文学などに興味をもつ早熟な少年だったようで,1914年頃から執筆関連の仕事に携わるようになった。1923年に処女小説「Dagon」が怪奇小説専門雑誌"Weird Tales"に掲載され,以後プロの小説家としてもっぱら恐怖/幻想小説を執筆していく。
 主な作品発表の場が安物の雑誌に限られていたため,生前は一般にはほとんど評価されず,あまり幸福とはいえない人生であったようだ。没年は1937年で享年47歳。代表作に「Call of Cthulhu」「The Shadow Over Insmouth」「The Dunwich Horror」「At The Mountains of Madness」など。

 彼の作品の特徴は,いわゆる"クトゥルー神話"と呼ばれる,一連の壮大なバックボーンが多くの作品を通して登場するところにある。
 この神話を簡単にいうと,人間が地球に誕生するはるか以前。まだ地球が出来上がったばかりのころ,宇宙の彼方から,あるいは次元の狭間を通り抜けて,異世界の生物が地球に飛来した。これらの生物達は地球の覇権をかけて互いに争い,闘争に敗れたもの達は,深海底の底深く,あるいは宇宙の彼方に封じ込められてしまった。だが,これらの生物は決して死ぬことはなく,やがてくる開放のときをじっと待っているのだ。そして彼らが再び地球に帰ってくるときこそ,人間の歴史が終わりを告げるときなのである……というものである。
 このクトゥルー神話の設定は,H.P.Lovecraftの死後も,彼のファンである作家仲間のうちで使われ,クトゥルー神話体系と呼ばれる一連の作品群を生み出した。そしてこの神話体系を受け継ぐ小説は,21世紀の現代になっても連綿と書き綴られて今日にいたっている。
 日本にもファンは多く,作家の菊池秀行氏朝松健氏栗本薫氏などは神話体系を組み込んだ小説を発表しているほか,俳優の佐野史郎氏が大ファンであることは割と有名。
 創元推理文庫から「ラヴクラフト全集1−6」が,青心社よりクトゥルー神話体系をまとめたアンソロジー「クトゥルー1−11」がそれぞれ出版されている。

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