Casino Empire

●Preview#48
Casino Empire

Text by 奥谷海人

 Sierra Entertainment社が発売予定の「Casino Empire」は,タイトル通りラスベガスのカジノ経営を楽しむシングルプレイ専用のシミュレーションゲームだ。Sierra社といえば長年カジュアルゲーマー向けに「Hoyle」シリーズを手掛けてきたが,Casino Empireも同じ開発チームが作成しており,Hoyle系統の作品といえるだろう。ただしプレイヤーは楽しむ側ではなく,入店してくるお客を楽しませるのが目的となっており,Hoyleシリーズとはひと味違うゲームになっているのだ。

Sierraから最新の箱庭ゲーム登場

 ゲームプレイは,「(株)テーマパーク」や「ローラーコースタータイクーン」のような人気ソフトのシステムに手を加えたもので,この手のゲームを遊んだ人には取っつきやすい,シンプルなものになっている。
 既存の経営シミュレーションと大きく異なるのは,敷地の形状が決まっており,その限られた区画内にスロットマシーンやカードテーブルを設置し,魅力あるカジノフロアを作らなければならないという点だ。フロアに設置できるギャンブルマシンは,先に挙げたスロットマシーンに加え,ポーカーゲーム機,ブラックジャック,ルーレット,クラップ,パイゴウ(中国式ポーカー),バカラ(キューバ式カードゲーム)など12種類。このほかにも飲食店や両替所,トイレ,セキュリティオフィスから,スポーツギャンブルやキノ(中国式ロト)なども用意されており,これらのオブジェクトを設置するたびにどんどん賑やかな画面になってくる。
 さらには噴水や巨大な銅像のようなアトラクションもフロアに設置できる。これらのオブジェクトには,お客を引きつけ,そちらの方向に向かって誘導する効果があるのだ。

 用意されているカジノは8種類で,どれもラスベガスに実在する有名ホテルをモチーフにしたような形状だ。ピラミッド型の"Egyptian"はLuxor Hotelのようだし,ジュークボックス型でロックンロールがテーマのカジノ"Solid Gold"はHard Rock Hotelそっくり。ほかにも見覚えのある中世やギリシャがテーマのホテルや,もちろん海賊風のものもある。そのカジノそれぞれにミッションがあって,プレイヤーは潰れかけのカジノを再建したり,町一番の人気カジノへと成長させていくのだ
 またゲーム中にはランダムでイベントが発生するようになっていて,コンベンションが開催されるので宿泊施設を拡張するとか,ライバルカジノが送り込んでくるギャング団を警備員で阻止するというようなものもある。このようにイベントやミッションをこなしていくことで,新たなアイテムを利用できるようになるのだ。

一人一人にパラメータのついたキャラクター達が行き交う

 カジノ経営の基本は,客として入ってくるギャンブラー達にいかに快適な時間を過ごしてもらうか,ということである。ギャンブルマシンをうまく設置してお金を稼ぐだけでなく,お客に総合的なエンターテイメントとして認めてもらうように努めるのがCasino Empire流の支配人の仕事だ。

 本作は「シムピープル」のようにキャラクターごとにパラメータが設定されている。パラメータは"満足度" "泥酔度" "トイレ利用" "空腹" "喉の渇き",そして"エネルギー"(睡眠)の六つで,一人一人のパラメータをグラフ化して表示することで客の需要を的確に判断できる。飲食店とトイレが正反対の方向にあると,客が探し出すのにも時間がかかり,いらだって出て行ってしまうことになりかねないのだ。
 このようなキャラクターは,画面上に数百人規模で登場する。ステータスとして大きなお金を落としてくれる"ハイローラー",顧客になると店の風格が上がる"セレブリティ"(有名人),そして普通にギャンブルを楽しんでいく一般客の"ツーリスト"の3種類が存在するので,1ドルから楽しめるスロットマシーンだけでなく,最低でも200ドル賭けなければならないようなテーブルも用意して,さまざまな層の客を惹き付けるのも重要なことだ。また,細かいことに全キャラクターに名前が付いていて,超有名俳優の名前を掛け合わせたようなブラット・クルーズだとかボクサー風のマイク・バイセップなど,星がついているキャラクター(セレブリティ)をクリックして見ているだけでも面白い。ちなみに,これらのセレブリティには声色を似せた声優による音声も登録されている

本格的な思考ルーチンで快適さをアピール

 2Dの低価格ゲームではあるが,Sierra Entertainment社はこのゲームのエンジンに2年もの開発期間を費やしており,とく一度に多くのキャラクターを描写するレンダリングエンジンは特許申請しているほどだ。酔っ払ったキャラクターが千鳥足で歩く姿など,なかなかに見事である。
 もう一つゲームを快適にしているのがキャラクターの思考ルーチンで,キャラクター達がカジノのオブジェクトに引っかからないようなパスファインディングがうまく機能している。誰もが無駄にフロアを徘徊しているのではなく,きちんと魅力的な場所に集まるようになっているのだ。このようなキャラクターの思考ルーチンは,客だけでなく従業員にも利用されている。ディーラーが動くことはないにせよ,カジノに設置した施設からさまざまなキャラクターが出てくるのだ。
 セキュリティオフィスには青い服を着たガードマン達がいて,頭上に鬼のマークがついたキャラクター(詐欺師やマフィア)を見つけると外へ連れ出してくれる。トイレでは清掃員を,ラウンジではウェイトレスを予算に合わせて雇えるようになっており,それぞれの職務に合った活動をする。

 各施設をクリックすると,ゴミ箱やセキュリティカメラも設置できる。また各施設は,ギャンブルマシンと同様にどれだけの集客率や稼ぎがあるかもひと目で分かるようになっている。さらに,特定の施設ではプレイヤー自身がブラックジャックとポーカーを楽しむこともできるのだ

 お金が貯まってくると,別ウインドウを開いてホテルの部屋数やサービスを向上させたり,1ゲームにつき二つ用意されたライバルカジノにギャングを送り込んだり,食材に毒を混ぜたり,さらには未成年を送り込んで警察の摘発を誘ったりといった裏の仕事に手を染める余裕が出てくる。屋外の様子を表示するウインドウでは,ネオンサインやサーチライト,花火などの派手な演出で客を集めることも可能だ。またマーケティングにも資金を振り分けられるなど,さまざまな面でカジノの運営を楽しめるようになっている。

 Sierra Entertainment社の親会社がVivendi Universal社というのも,Casino Empireに幸いしている。ラスベガスのショー的な雰囲気を盛り上げるために,ディーン・マーティンやブライアン・セッツアーなど有名人達の音楽が各カジノのオープニングソングとして使われているのだ。その後はデフォルトで用意されているビッグバンド系のジャズに変わる予定だが,この手の音楽が好みでなければ,音楽を消してカジノの喧騒だけにするか,自分で用意したMP3ファイルで曲を聞くこともできる。

 TycoonやらEmpireやら,この手のゲームはいろいろと発売されているが,このCasino Empireには多くの可能性を感じる。マップエディタがないのが残念だが,開発者によれば「(マップエディタは)やりたかったことの一つだが,開発期間の問題で断念した。それに,開発したものの,ゲーム中に使用してないマップもある」とのことで,ある程度ヒットして拡張パックがリリースされれば,これらが追加される可能性は十分にあるはずだ。発売はアメリカでは10月初旬を予定しており,ノートPCでも手軽に遊べるソフトとして話題になりそうである

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