Aquanox 2:Revelation

Aquanox 2:Revelation

Text by 奥谷海人

 「Aquanox」は,DirectX 8.0のプログラマブルシェーダー機能をいち早く取り入れたゲーームとして話題になった作品だ。発売されたのはちょうど1年前のことだが,開発元のMassive Development社はすでに「Aquanox 2:Revelation」の制作をほぼ終了しており,11月中には欧米でリリースされる。ゲームプレイでの未熟さや品質管理面での問題が問われた前作から,どのような進化が見られるのだろうか。

27世紀の大海原を舞台に,新しい主人公ウィリアム・ドレイクが活躍

 forGamerを読んでいるコアプレイヤーでも,前作のAquanoxが実は続編だったというのを知らない人も多いだろう。ドイツを拠点にするMassive Development社は,1996年末に「Archimidean Dynasty」という「Wing Commander」の海底版のようなソフトをBlueByte Software社からリリースしており,ストーリー部分では密接な関係を持っているのだ。このソフトは,ドイツでは「Schleichfahrt」というタイトルで,本国を中心に15万本の売り上げを記録している。

 そのArchimedean Dynastyのバックストーリーまで振りかえってじっくりとおさらいしておこう。
 人類が海底での生活を始めたのが22世紀のこと。核戦争や疫病の蔓延で住みづらくなった地上から避難し,海中に新天地を求めたのだ。27世紀にもなると,大西洋に大きな勢力を築き上げたアーキメディアン王国(Archimedean Dynasty)や,竜巻が頻繁に発生する危険区域として知られるトルネードゾーンの無政府地帯などに海底文明が広がり,人類も完全に適応していたかのように見えた。
 ところが2661年に,突如本能を持ったロボットたちの新種族バイオンツが王国に侵略を開始し始める。この危機を描いたのが,Archimedean Dynastyである。トルネードゾーンから王国に雇用兵として招かれたエメラルド・フリントと4人の仲間たちは,人類の繁栄を脅かしたバイオンツの一掃に成功するのだった。
 Aquanoxになると,ゲームの時代設定は5年後の2666年に移行している。,フリントたちがギャング団クロウラーズを追っているうちに,武装化した反乱分子や海底から解き放たれたモンスターたちと対峙することになるのだ。「Aquanox 2:Revelation」(以下,Aquanox 2)では,フリントが英雄っぷりを発揮しているのと時を同じくしており,若い商人ウィリアム・ドレイクが本作での主人公だ
 ドレイクは,その商才が認められながらも,自分自身では退屈な生活に飽き飽きしている。その日も,東太平洋のガラパゴス領域からトルネードゾーンへ向けて物資を運搬していたが,そこへ外国船籍からの救助信号が入ることになる。その救助作業自体は,海洋で生活するドレイクのような人間には格段珍しいことではなかった。しかし,この事件がきっかけとなり,ドレイクは謎の宝石「海底の星」(Star of Deep Sea)を探し出すというアドベンチャーに巻き込まれていくことになるのだ。

ミッションシステムを変更し,アドベンチャー性を加味

 2001年11月に発売されたAquanoxは,このようなストーリーを中心とした70ページにも及ぶ解説書が添付されていたものの,その内容をゲームから把握するのは難しかったのは事実だ。この反省を生かしてか,Aquanox 2では海底王国の市民戦争という壮大なテーマから,ドレイクのパーソナルな冒険劇に焦点を絞っており,声を与えられているNPCも,Aquanoxの83人から12人程度に減っている。これにより,一人一人のキャラクターの動機や人間関係がより細かく描かれる結果となったのだ
 Aquanox 2は,前作のように海底都市の周辺が舞台ではないため,武器の調達は海中に置き去りにされた残骸から回収するというシステムになっている。実はゲームの導入部分で,過去に存在した海底商業王国時代に建造されたという巨大な商艦ハーベスターがプレイヤーに与えられることになっており,プレイヤーが操作することになる潜水艇も,毎回このハーベスターから出撃する。潜水艇は,エメラルド・フリントが愛用したソルティドッグを始め,ドッグファイトなどに最適なマイティマギーなど数種類から選べる。ただし,それらにどんな武器やパーツを付けるかは,ミッション内容を検討して決めることも必要で,「MechWarrior 4」のように,それに合わせた部品を収集する必要がある。これは"ブーティーシステム"と命名されていて,プレイヤーが戦っている間に,ハーベスターの乗組員が自動的に行ってくれることになるようだ。
 ストーリーの焦点になっている"海底の星"は,ドレイク以外にも狙っている人間がいるという設定で,1度は味方として協力しつつ敵を撃退しても,その次には裏切りにあって敵対するなどという展開がAquanox 2の醍醐味だ。ミッション中にも,ゲームエンジンで制作されたインゲームムービーなどのイベントが頻繁に起こり,ミッション内容に変化をもたらすこともあり得る。

 ミッションは前作と同じ30種類だが,一つのマップにつき一つのミッションという構成を変えることで新鮮さを出している。"ターゲット"と呼ばれるオブジェクティブ(ゲームの目的)が,各ミッションにメインとなるものが一つと,複数からなるボーナスターゲットが用意されているのだ。メインターゲットは,ゲームを進めていくうえで必ず完了させなければならないもので,ボーナスターゲットは,ゲームの進行には直接関わりがないもの。Aquanox 2は,メインターゲットが終了してもプレイヤーが終了ボタンをクリックしない限りはずっと散策して回れるというオープンエンドな仕様になっており,好きなときにボーナスターゲットに手を出してもいいのだ。クロウラーズに人質に取られた科学者を救出するというような内容のものとなり,その名称通り,完了すればボーナスをもらうことができる。
 このボーナスに相当するのは,武器やエンジンをはじめとする潜水艇の各パーツなどだ。これらのボーナスは,ボーナスターゲットの完了時にランダムで与えられるのだが,マップにはいくつかの隠し部屋が用意されていて,その部屋をアンロックしていくことで,価値のあるボーナスが出る可能性が高くなるとのこと。ボーナスの中には,1回しか使用できない非常に強力な武器などもありそうだ。

前作で世界に知れ渡った高度なグラフィック技術は健在

 Aquanoxがプレイヤーの記憶に留められている大きな理由の一つが,NVIDIA社のGeForce 3に完全対応した初めてのソフト(の一つ)だったということではないだろうか。GeForce 3グラフィックカードは,DirectX 8.0に対応したグラフィックアクセラレータとして早くから市場に投入されて話題になっており,その画像のデモとして利用されていたほどだ
 このときに開発されたKrassエンジンの性能は,現在でもトップクオリティを維持しているようだ。現在主流になったDirectXのバージョン8.1に対応させたグラフィックスで,数々のテクスチャマッピングや光陰の表現などがグレードアップしている。もちろん,このゲームになくてはならない,太陽光の筋も健在である。ゲームの色調は前作の群青色(ぐんじょういろ)とは一変して,錆び付いたようなダークな雰囲気になっている。中でも,海草のレンダリングを行うための独自のプログラムには拍車がかかり,表示できる海草は前作より格段に多い3万本というボリュームになるというから驚きだ。機体は1万ポリゴン,銃は7000ポリゴン程度で表示されている。

 視覚的な変更点で最も目立つのがコクピットが表示されたことだ。前作の3Dホログラフではなく,シャーシやクロスバーなど,プレイヤーが実際に座る潜水艇内部が表現されたことで,よりスペースシューティングゲームのような,もっといえば「Descent」シリーズのようなゲームへと変更されたのだ。コクピットという固定化されたオブジェクトと,左右まで見渡せる周囲の様子が,プレイヤーが本当に海底にいるような気分にさせてくれる効果も出ている。前作では上下の動きが極端に制限されていたことが欠点の一つとして上げられていたが,開発チームはこの部分にも修正を施し,360°自由に移動できるようになっている。
 敵の思考ルーチンにも改良が加えられており,本作では1度に登場する敵が少ない分,なかなかに手強い相手になりそうだ。警護船はパトロールをするし,スナイパー船は好んで物陰に隠れるというような,その種類に合わせた独自の行動パターンを備えているのが特徴である。敵にも,一般にライン・オブ・サイトと呼ばれる視界範囲が設定されているので,後方からの追随を宙返りなどで阻止し,そっと岩場に身を寄せてスナイパーガンで狙うというようなステルス的なプレイ法も可能になっている。
 小人数ながらも,開発元のMassive Development社の開発スピードは相当なもののようで,Aquanox 2がフル回転での制作に入ったのは,前作が登場して長い休暇を取った後の今年3月からだというから驚きだ。残念なのは,そのためにいくつかのオプションも制限されてしまったようで,とくに,前作ではあったマルチプレイヤーモードがなくなったのは寂しい限り。だが,それはそれで「マルチプレイヤーモードよりも,ほかのことで自社の独自性を出す」という決心の表れでもあるのだと思いたい。最近では,そういう判断をする開発元が増えてきたのは確かで,グラフィックスやストーリーの重要性を強調しているソフトも少なくない。

 Aquanox 2:Revelationは,前作の発売元だったFishtank Interactive社が買収された相手−−同じドイツ圏内で成長を続けるJoWood Productions社からリリースされる。地味な雰囲気の海底は,とかくゲーム開発者からは敬遠される傾向にあるが,逆にオブジェクトを増やしたりエフェクトの派手さでカバーしたAquanoxの続編は,11月中旬ごろに欧米で発売される予定だ

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