Port Royal

ポートロイヤル

Text by 奥谷海人

 「Port Royale」(邦題「ポートロイヤル 日本語版」:カプコンから発売予定)は,大航海時代のカリブ海を舞台にした,貿易や都市開発に重点を置いたシミュレーションゲームである。開発元が本拠にするドイツというお国柄か,細部にまで手が加えられたグラフィックスの描き込みが秀逸なうえに,貿易商や海賊となって巨万の富を築き上げるのに不可欠な経済システムが入念に開発されている。
 同じAscaron Entertainment社が開発した「PatricianII」(邦題「パトリシアンII 日本語版」:メディアクエストから発売中)のカリブ海版ともいえるこの作品のデキ映えは,いかに?

"パイレーツもの"の期待作登場

 小説や映画に関わらず,ガレオン船を操って大海原を駆け回る"パイレーツもの"には,何かワクワクさせられるものがある。PCゲームでも,当サイトでも何度となく紹介している「1503A.D.」(邦題「創世記1503」:ズーから発売予定)や,コーエーの「大航海時代」のようなヒット作品があるし,2003年9月に公開が予定されているジョニー・デップ主演の「Pirates of the Caribbean」の人気を見込んでか,続編なのにライセンスを取得してタイトル名を映画と同じにしてしまった,旧タイトル「Sea DogII」(プレビュー記事は「こちら」)も忘れてはいけないだろう。
 ことゲームに関しては,シド・マイヤー氏の往年の名作「Pirates!」の影響が多大なようで,シミュレーションとアドベンチャー,そして適度のアクションを混ぜ合わせたジャンルになることもが多い。本作Port Royaleも,そんな作品の一つだ。

 Port Royaleでは,プレイヤーは"Trader"(貿易商人),もしくは"Pirates"(海賊)となり,大航海時代後期のカリブ海で生活することになる
 Traderはほとんどの港で自由に交易できるが,戦闘などでは制約がある。逆にPiratesは,好き勝手にほかの船を襲って物資を略奪できる分,入れない港があったり,賞金首に賭けられたりするのだ。
 また"Buccaneer"(私拿捕特許状を持つ海賊)という,国のお墨付きをもらって敵国の商船や艦隊を自由に攻撃できるという職業もある。

 ゲームの目的は,カリブ海のさまざまな地域を航海し,良い産物や港を見つけて交易路を開拓していき,最終的に巨万の富を得ることだ。ゲーム終盤には地域の総督に任命されるというイベントも発生する(総督になればゲーム終了)が,そのオファーを蹴って交易を続け,より大きな商業区を発展させても構わない。
 シングルプレイヤーモードでのプレイ時間は,なんと250時間を越えるといわれている。もっとも開発者にいわせると「ゲームにハマって止められなくなるだろうから,プレイ時間は無限なんだよ」とのこと。彼らのこの自信は,やはりPatricianIIで得た経験によるところが大きいのだろう。

基本システム

 プレイヤーが選択できる直属の国家は,オランダ,イギリス,フランス,そしてスペインの4か国だ。選択しなかった3か国は,交易や航行阻止をリアルタイムで行うライバルとなって,カリブ海の覇権を競い合う。ただしBuccaneerはともかく,TraderやPiratesとしてプレイする場合は,これらの国家に忠誠を誓う必要はなく,思い通りの交易や略奪を楽しめる。
 プレイヤーキャラクターは最初はヘルパーという立場でしかないが,ミッションをこなしていくうちにランクも上がり,やがては総督にまで上り詰められるのだ

 Traderとしてプレイする場合,大きな船を物資の輸送に使えば効率良く金銭を得ることが可能だが,船は大きいほど海賊達に見つかりやすくなるので,戦闘時のために水夫の戦闘器具や大砲などの設備投資も重要だ。
 この手のゲームではお約束だが,最初は小さな船一艘でやりくりしながら,やがては大きなガレオン船団を率いてゆうゆうと航海することになる。プレイヤーは,最大で10隻にキャプテンを配置し,さらにそれぞれ10隻ずつを連帯させることが可能。つまり全体で100隻もの船をコントロールできるのである。これらの船団には,交易ルートや水域のパトロール,さらには未開拓地域への探索などの命令が出せるので,かなりの部分で自動制御可能。PatricianIIではほとんどなかったアドベンチャーや戦闘部分も加味されているが,やはりゲームのコアは商業発展にあるのだ。

 Port Royaleのインタフェースは,PatricianIIをプレイしたことのある人ならお馴染みの作りになっていて,都市のウインドウを開いてリストにない物資を供給し,その都市にある物資を積み直して再び航海に出る。なお,都市でこのリストを開いたままにしておくと,商業船が入港するたびにそれぞれの物資の価格が変化する。物資が多く供給されるとその分価値が低下して,"おいしい商売"ではなくなってしまうのである
 また,あまり自動制御に頼り過ぎると,知らないうちに資金繰りが悪化することもある。このあたりの物価変動を見分け,より儲けの出やすい航路へと柔軟に変更していくことも不可欠なのである。
 Port Royaleで交易が可能な物資には,麦,魚,肉,ぶどう,ヘンプ(紙や衣類にも使用できる大麻の一種)など貿易港で生きる人々の生活必需品や,レンガや木材,鉄など町の発展になくてはならない物資など,20種類近くがある。
 登場する都市は,ニューオリンズからアンティグア,サンフアンに至るまでの60都市で,もちろんどれも実在した都市ばかりだ。大航海時代に詳しいプレイヤーなら,未開拓の地域でも,それほど苦労せずに都市を見つけ出せさそうだが,遠くにいくほど海賊や遭難の危険も増えるので,プレイヤーのレベルにあった地域で適確にルートを築き上げていきたい。

戦闘システム

 PiratesやBuccaneerでのプレイで戦闘が重要なのはもちろんとして,Traderでプレイしていても,突然Piratesに襲われたり,敵国のBuccaneerによって攻撃を受けることもある。商品が略奪されたり大事な船を沈められたりするので,軍備も忘れてはならない。
 戦闘シーンは,RTSゲームほど見栄えのするものではないが,波に反射マッピングが施された海洋で船が動き回る様子や,砲台からの噴煙や帆に穴が開く様子が細かく描写されている
 プレイヤーの操作によっては有利に戦闘を進められることもあるが,自動で戦闘を行えば,船の大きさや大砲などの設備から,至極平等に計算されて勝敗がつくようになっているようだ。

 砲台に装着できるものには,帆や船体に穴を開けるためのキャノンボール(球形砲弾)や,人を殺傷するのに利用するグレープショット(ぶどう弾)と呼ばれる複数の小型キャノンボール,そしてマストを折るのに利用する鎖などがあり,それぞれ状況に応じて使い分けることができる。
 戦闘時には風向きも重要な要素の一つで,船をうまくコントロールして敵船の横に貼り付くことができれば,敵船の中に乗り込んで船ごと制圧することも可能だ。ただし,乗組員の人数や銃器,剣などの量によって勝敗が左右されるので,事前の準備を忘れないようにしたい。
 また海上での戦闘だけでなく,敵国の都市ごと奪い取るための,陸上戦も用意されている。これは,その都市のディフェンスレベルに見合うだけの多くの人員が必要なため,ゲームでも後半になってからの楽しみとなるだろう。100隻近くの船を乗りつけて敵国の重要都市を圧倒するところなどは,想像するだけでもワクワクするシーンである。

政治/経済システム

 プレイヤーは都市の発展にも関与でき,持ち金に合わせてタバコ畑や牧場などを配置できる。また,それらの産出物を保管する倉庫を建て,原料を加工して衣服やココアなどの交易物資をプレイヤー自ら生産できるようになれば,収穫時にはヨーロッパの商人達に販売できるのだ。
 生産性を高めるためには,その都市に住居を建てて人口を増やすことも重要だ。また病院などの施設を建てたり,街路樹や噴水などを作ったりして都市の生活水準を高めると,その町でのプレイヤーキャラクターの評判が向上する。このほかにも造船所やパブといったものも建設できるようになっており,市長の邸宅を建ててあげれば,より有利にことを運ぶこともできそうだ。

 ゲーム中ではリアルタイムに4か国の政情も変化し,プレイヤーが庇護されていたイギリス本国がスペインとの戦争を開始し,それまで利用していた港が使えなくなった……なんてこともある。突然敵国の船に襲われるのも重大事件だが,物資の供給に常用していた港が使用不可になった場合などは,プレイヤーの危機管理能力が大いに問われるだろう。

ミッション&ランクシステム

 ミッションは,プレイヤーのランクに合ったものが与えられる。足りない物資を運んできてほしいといったものから,科学者や探検家の輸送,禁制品の密輸入など怪しい仕事まで用意されているが,どの仕事を受けるかはプレイヤーの自由。ミッションの多くはその町の市長から与えられ,完了するとその町での評判が上昇するようになっている。
 ランクや評判が上がれば,より大きな船団を編成するための水夫を雇えるようになり,また物資の取り引きにも影響が出てくる。序盤は足を踏み入れることができなかった都市にも入れるようになるようだ。海賊の中には賞金が賭けられている者もいるので,腕試しで戦闘を挑んでもいいだろう。
 開発者によると,ゲーム中盤までは交易が50%ほどの比率を占めているが,ランクが上がることで戦闘や探索などの比率が上がっていく。Port Royaleのマップ規模は,実世界に合わせると4000km×3040km四方と広大で,実にPatricianIIの4倍の広さ。探索を続けて,海賊の隠れ家を潰して回るだけでも,相当な時間遊べそうだ。

 前作PatricianIIはプレイヤー達に評判が良く,新作Port Royaleもすぐに日本語化されて遊べるのは嬉しい限り。初心者でも取っつきやすいように,かなりの部分が自動化されているのも好印象だ。本格的なシミュレーションファンでも,リストやグラフと睨めっこしながら細かいコントロールができるので,相当な充実感を得ることができるだろう。
 マルチプレイヤーモードは,インターネットとLANで最大8人までがサポートされているが,このような貿易のシミュレーションに特化したゲームは,一人でじっくりと楽しみたいというプレイヤーが多いのではないだろうか。そんなPort Royaleは,アメリカではTri Synergy社から6月中旬に,日本ではカプコンから6月20日に発売される予定だ。

*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

 

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