Horizons:Empire of Istaria

Horizons:Empire of Istaria

Text by 奥谷海人

 「Horizons:Empire of Istaria」は,イスタリアという広大な仮想世界を舞台にしたファンタジーMMORPGで,プレイヤーキャラクターとして選択できる種族の中には,通常であれば狩りの対象となってしまう巨大なドラゴンも含まれているのがユニークだ。プレイヤータウンに突然襲いかかったモンスターの一団に,どこからともなく飛来したドラゴンが襲いかかる……。想像するだけでもワクワクする光景ではないか!

エルフやドワーフから,果てはドラゴンにまでなれるイスタリアの世界

 ATARIとしては初のMMORPGとなる「Horizons:Empire of Istaria」(以後,Horizons)は,新興のゲーム開発会社Artifact Entertainmentによる開発だ。 Artifact Entertainmentは,「Demise」という「ウィザードリー8」や「アークス・ファタリス」風の3D-RPGを製作していたメンバーによって1999年に創設された。Horizonsのために開発されたRevolutionエンジンは,コア部分のレンダラーとしてIntrinsicの"Alchemyエンジン"を採用しており,ネイティブでDirectX8.1に対応したグラフィック性能を備えている
 Horizonsでプレイヤーが冒険を楽しむイスタリアの世界に関して詳細は公表されていない。現在の情報から推測できることは,ウェザード・エイジスという黒幕に操られたアンデッドの大群が,イスタリアの巨大大陸アラドス及びアラドス・マイナー島に侵攻したことから始まった混沌の時代を描いているということだ。
 詳しいゲームのバックグラウンドは,サービスインの直前や,ソフトに付属するマニュアル,ゲーム内での会話やイベントを通して,序々に明らかにしていこうという趣旨のようだ。そもそも,Horizonsではゲーム中に起こるイベントにプレイヤーがどのように対応していくかでメインストーリーが影響を受けるという仕組みになっている。プレイヤーが,共同で好みの筋書きを仕立てられるのである。

 プレイヤーキャラクターとして選択できる種族は9種類。現在でこそ,多くのMMORPGで使用されるようになったが,Horizonsが始めて公表された数年前から,すでにネコ型やトカゲ型の種族の登場が謳われていた。さらに今後は,ゴブリン,オーク,そしてドライアッドというユニークな種族などが登場してくるようだ
 キャラクターメイキングでは,プレイヤーの好みによって肌の色や目鼻の特徴,髪型に加え,皺などによって年齢を表現したり,痩せ型から太り過ぎといった体型まで自在に調節できるようになっている
 中でも,最もユニークなのがドラゴンだろう。プレイヤーキャラクターとして選択できるHorizonsでのドラゴンは,通常のRPGでは敵モンスターとして登場するような巨大なもので,一対一では到底敵わないような強靭な体力を誇る。その代わり鎧などのアイテムは一切使えないようだが,全身が硬い鱗で被われており,口から吐く炎で攻撃したり,魔法を跳ね返したりもできるというので,たいしたハンディキャップにはならないのではないだろうか。さらに,ドラゴンは成長することによって翼が大きくなり,イスタリアの世界を自由に飛び回ることもできる。しかも,ハイレベルなドラゴンは,人間に変身して地上を歩き回れるような魔力までも備わるのだという
 開発者の話では,アイテムゲットを狙ったクエストなどを行う必要がないため,ドラゴンでプレイするプレイヤーは,他のプレイヤーとは根本的に違ったゲームプレイになるだろうということだ。確認できなかったが,他の種族のように街を作ったり生産や物品売買への参加ができなくなるとすれば,ドラゴン特有のクエストが与えられる事も十分考えられる。ここまでくれば,まるで2つのゲームを1つの世界で遊んでいるようなものと言っても良さそうだ

プレイ可能なキャラクター種族

Human
何でも平均以上にこなせる使い勝手の良いアラドス大陸の主勢力で,体力,腕力,敏捷性,集中力ともに申し分のない潜在能力を秘めている。学術や神秘魔法への探求を好むが,それ以外の分野でも使えるキャラクターになり得る。

Elf
長距離攻撃に適したエルフ族には,さらにハイエルフ,ウッドエルフ,ダークエルフの亜種が存在する。エルフ軍への徴兵制度があるなど,他の種族には見られない統率性があり,高い集中力を利用してスカウトやウィザードとして活躍できる。

Fiend
青い肌を持つFiendは,美しい容姿に角や尻尾を持つという外見上のギャップが特徴だ。氷のような肌の色は,復讐と力の女神・ニアサ・モラヴェンへの崇拝による影響だといわれている。身体的な能力は低めだが精神力は強い。

Dwarf
誇りの神ブロベットによって生み出された,ヒューマノイドでは最も古い種族。元々正義を重んじる閉鎖的な社会を形成していたが,アンデッドの大群によって彼らの都市が占領されてしまったという噂が囁かれている。

Dragon
プレイヤーキャラクター種族の中で最もユニークなのが,鱗で被われた巨体が自慢のドラゴンだ。最初は使えない翼も,いずれは飛行可能にまで成長する。ドラゴンの社会では,多種族と共闘しようというグループと,孤立を守ろうという勢力が反目しあっているという。

Saris
ネコ科のヒューマノイドで,アラドス・マイナー島でシリック族と共存している。近年の混乱で壊滅的な状態に陥っている。様々な模様の毛皮に被われた気品ある種族で,精神力が高いだけでなく,類まれな跳躍能力を活かしてモンクとして戦う事にも適している。

Gnome
魔法も使える小型の種族だが,その特徴は魔力を利用した技術開発や生産能力にある。平和的な種族ではあるが,多種族との生活の中ではリーダーシップを発揮することもあり,都市型生活を好むプレイヤーには適しているだろう。敏捷性を活かして,スカウトにもなれる。

Sslik
男女性別のない唯一のヒューマノイドで,他種族からの迫害を逃れてアラドス・マイナーの森林に移り住んだ。しかし世界が混沌としてくるに従い,彼らの強靭な肉体と治癒能力が求められ,同じ島のサリス族と共に世界中で活躍するようになった。

Half-Giant
神の時代に北方山岳地帯に移り住んだヒューマン族の亜種で,伝説の民ジャイアントとの混血であるともいわれている。他の種族を圧倒する身体能力を持つ,生まれながらにしての戦士だが,極寒の環境に耐えることで忍耐力と集中力も備わっており,ヒーラーとしても活動できる。

 

イスタリアでは,庭や精錬工具までデザインできる

 プレイヤーキャラクターとして選択できるドラゴンが,一般のMMORPGと比べ際立って特徴的ではあるが,他のプレイヤーキャラクター種族に魅力がないわけではない。他の種族たちは,ダイナミックに変化していくストーリーのの成り行きに関与するだけでなく,プレイヤータウンを作ったり,特殊武器を造り出すといったことにも焦点が当てられている。
 イスタリアの世界は,察するに帝国君主制の政治体系であるはずだが,実際にはかなり近代的なシステムになっている。イスタリアの市民は金さえあれば誰でも土地を購入することができる。この"土地"の購入というのがミソで,"家"の購入ではないのである。まずは分譲されている土地を購入し,さらに資金に余裕があれば,相応の建物を建てられるといった感じだ。また,敷地には当然ながら"庭"も存在しており,建物を購入するのが一般的な他のMMORPGとは,大きく異なる部分である。
 分譲地方式は,現在のβテストの段階でも好評な機能であるらしく,プレイヤーが植林したり,噴水を置いただけの庭園のようなプレイヤータウンも見られる。ガーデニングが楽しめるMMORPGというのも,かなり新鮮なものであるに違いない。
 もちろん,プレイヤーは家と造園用のオブジェばかりでなく,自分の職業に関連した鍛冶や木工,服飾などのワークショップや牧場などを,1つの土地にいくつか設置することもできる。自分の敷地内に収まるのであれば,建物を数軒建てることもできるため,何人かのプレイヤーが集まって,実際の街並みのように入り組んだ構造にもできるのである。
 さらに,Horizonsにはコミュニティビルディングという概念もあり,自分の敷地内に他のプレイヤーも利用できるような施設を設置することができる。これらには,NPCが管理してくれる酒場や倉庫,店などが含まれている。ただし,個人用の建物と違い,コミュニティビルディングとして設定された建物は,モンスターの来襲で破壊されることがあることから,敵襲を防ぐための物見櫓や壁,橋のような施設も存在する。

 ドラゴン以外のプレイヤー種族は,それぞれの潜在能力に従って,戦士やウィザード,ヒーラーはもちろんのこと,武器や宝石の技術者となることもできる。モンスターを殺したりクエストを完了するだけでなく,生産や売買においても経験値を重ねてレベルを上げていくこともできるのだ
 スキルの中には"テクニック"と呼ばれるものもあり,技術者たちは自分のレベルによって通常の武器にプラスアルファを加味できる。スキルが高いほどアイテムの能力は高くなり,1つのアイテムに複数の効能を付け足すことで,さらに価値あるアイテムを生産することもできる。アイテム製作には,イスタリアの世界から集め回った資源を活用することになるが,この資源もレベルの高いプレイヤーほど貴重なものを産出できるなど,レベルに従って結果に変化をつけることで,単純な生産にならないよう工夫されているようだ
 例えば剣1つとっても,刃の部分と柄の部分で異なるデザインを施したり,宝石やルーン,モンスターの一部などを装着するソケットを付け加えることで,見た目も異なるユニークなアイテムに仕立て上げることが可能だ。ソケットに装着するアイテムは,取り外しもできるので,戦うモンスターに合わせたマジックアイテムとして利用することもできる。
 このあたりのバリエーションが豊富なのがHorizonsの良いところで,剣,斧,槍,弓,棍棒など25タイプの武器には,さらに25種類の柄のデザインが施せ,さらには10種類のタッセル(装飾用のフサ)も装着できる。アイテムは最大で3つ装着でき,宝石やルーンは20種類が用意されている。さらに,種族の属性に合わせた3パターンのスタイルがあり,6種類の合金,10種類ずつのパーティクル効果とシェーダー効果までを合わせると,実に7億種類に近いパターンの武器デザインが存在することになるらしい。面白いことに,生産者用の槌や斧にも様々なパターンがあり,レベルが向上するに従って"金色に光る精錬工具"なども開発できるようになるのだ。

戦闘も充実し,リアルタイムで世界の状況が変化

 Revolutionエンジンの特徴の1つが,サーバーを停止することなく,プレイ中でもリアルタイムに世界のあり様を変更できてしまうことだ。突然火山が噴火するというような劇的なものから,地域の資源を増減してみたり,モンスターの集団を登場させたり,稲妻を伴う嵐を発生させるということを,パッチを当てることなく質や量,期間,地形,天候の変化まで調節できるのである。この手法により,経済システムがアンバランスにならないように手を加えるとか,ゲームマスター側がプレイヤーの反応を見ながら,プレイヤーに悟られないようイベントを進行させることが可能となっている
 この仕様は,かなりダイナミックなイベント演出を可能とするのではないだろうか。例えば嵐と共にモンスターの集団がプレイヤータウンに現れる。迎え撃つプレイヤーが戦っているうち,ある特定のアイテムが有効だというのに気付き,そのアイテムを生産するコミュニティビルディングを守りつつ必死で戦っていると,ようやく救援にかけつけたドラゴンによって形勢が一気に逆転する……,というようなグループ単位での即席イベントも行えるようになるだろう。

 戦闘に関してだが,Horizonsでは少なくとも初期の段階ではPK:プレイヤーキリングは認められず,モンスターとの戦闘のみを楽しめるように制限される。これは,特にゲームを始めたばかりの新人プレイヤーに,ゲーム内での体験に集中してもらいたいという開発側の考えのようだ。ただし,現在のβテストではギルド戦争などもテストされているので,拡張パックなどの導入時に,PvP(プレイヤー対プレイヤー)も可能なサーバーが追加されることになるようだ。
 イスタリアに登場するモンスターは,ゾンビやスケルトンなどアンデッド系が中心となっており,軍隊のように一団となってプレイヤー達に襲いかかって来ることもある。そのほか,環境に合わせた石や氷,火炎系のエレメンタルや昆虫系など,MMORPGで考えられる多くのタイプが存在するのは言うまでもないだろう。

 戦闘は,1度モンスターをクリックしたり不意打ちされたりすると,後はほぼ自動的に行われる。戦闘中に発動できる特殊能力も多数用意されており,プレイヤーキャラクターの職業によって,戦士であればKickやCritical Strike,Double Strike。スカウトならHideやLong Range Shot。ヒーラーであればEnhanced HealやAura of Lifeなど様々な特殊能力を繰り出すことが可能だ。
 こういった特殊能力は,プレイヤーのレベルが上がっていくに従って,新しく学習できるようになっている。なお,Horizonsでは転職もできるが,転職すればこれらの特殊能力を破棄しなければならない。ただし,元の職業へ戻ることで,以前の特殊能力は完全に復元されるという。という事は,プレイヤーキャラクターは1度に全ての職業の特殊能力を利用することはできないが,1つのキャラクターを様々な職業に育て上げ,アイテムや防具など一式を別々に揃えておけば,用途に従って使い分けることも可能になるということのようだ。クエスト中の状況判断で,「ちょっとウィザードに戻って帰って来るよ」などと言ってグループから一時離れるといったシーンが見られそうだ。

 Artifact Entertainmentは,ボストンをベースにするFroghopと2002年に提携しており,携帯電話やPDAを使ったプレイができる機能を持っている。もちろん,現時点ではアメリカのみのサービスになるだろうが,プラットフォームを超えて同じギルドのメンバーとリアルタイムでチャットしたり,コミュニティやキャラクターのマネージメントを可能するということだ。
 韓国では,サーバーの設置にNC Softが名乗りを挙げるなど,アジア圏内への本格的な参入も期待できそうだ。現時点ではβテストも最終段階に差し掛かっているらしく,後は微妙なゲームバランスの調整や安定したサーバー環境の構築などを残すのみ。早ければ今年の秋ころにはイスタリアの世界に飛び込めるかもしれない。

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*本記事の内容は製品版では変更される可能性もあります。ご了承ください。

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