Adventures of Sherlock Holmes
：The Silver Earring（Digital Jesters）

　「Journey to the center of the Earth」や「The mystery of the mummy」などで知られるアドベンチャータイトル専門のデベロッパFrogwaresの新作，「Adventures of Sherlock Holmes：The Silver Earring」のデモ版が登場。2002年にリリースされた「The mystery〜」はThe Adventure Campany（DreamCatcher Interactive）より，そしてその続編となる本作は，「Chaos League」や「D-Day」など最近メキメキと話題作を送り出しているDigital Jestersがパブリッシュを行う。イギリスでは2004年8月27日に発売される予定。

　タイトル通り本作は，私立探偵シャーロック・ホームズと，その助手で友人のワトソン博士を主人公とした，イギリスの作家コナン・ドイルの一連の作品をテーマとしている。そう，ヴァイオリン奏者でコカイン中毒，そして古今の犯罪に精通した知識の泉として有名であり，日本のアニメでは犬にされてしまったあのホームズを描いた作品だ。
　ただもちろん作者はとっくに亡くなっているわけで，本作のストーリーは"真のホームズファン"（公式サイトより）が書き下ろしたオリジナルストーリーとなっている。
　舞台は19世紀のロンドン。Melvyn Bomsby卿が主催するパーティに招かれたホームズ＆ワトソンコンビが，会場で発生した殺人事件の謎を追い，聞き込みや遺品の採取をしながら事件を解明していくという流れだ。

　ゲームは，ここ数年で最もアドベンチャー界を賑わせた「Syberia」などと同様に，プリレンダの静止画と3Dのキャラクターという構成。途中に挿入されているムービーは，オープニングクレジットでも分かるとおりBink Video形式を採用していて，全編を通して20本程度が用意されている。

　アドベンチャーゲームとしての作りは極めてオーソドックスで，登場人物に聞き込みを行うことで質問内容を掘り下げていく，またはカーソルやルーペで不審なオブジェクトをタッチして反応を見たりアイテムを取得していくという方式だ。基本的にはマウスですべての操作が可能で，字幕を伴った会話ウィンドウもクリックで進めていく。全編が本家本元の流暢なブリティッシュイングリッシュであるため，クリッカブルの会話ウィンドウは非英語圏のプレイヤーは非常に重宝するだろう。しかも身振り手振りを交えて話すキャラクターは，プレイヤーがクリックするまで会話を止めてくれるため，一時停止可能な演劇を見ているかのようなフィーリングで物語が進められるはずだ。
　ただ一つ問題なのは，カメラワーク。キャラクターとの会話シーンで当該者にズームインするのはともかく，部屋間の移動でカメラがあらぬ方向からのカットに変わるため，方向感覚が失われる。これは，プリレンダの静止画を用いたアドベンチャータイトルの弱点ともいえるが，同系統タイトルの「Aura：Fate of The Ages」などは，キャラクターの移動方向と背景画像の角度をうまく調整して違和感を取り去っている。これはちょっとした移動などのアクション部分，ひいてはプレイのストレスにも直結する部分のため，アドベンチャーゲーム発展のためには早期に定石を作って解決しておくべき問題だろう。

　とはいえ，冒頭からホームズに手紙を読まされ，毎度のごとくホームズにイニシアチブをとられてあたふたするワトソンの様子が，小説の像と合致していて面白い。公式サイトによると，ストーリー上に，レストレードやハドソン夫人，またホームズの兄であるマイクロフトなども存在するというので，コレクター性も十分に高い。
　日本人が満足にプレイするなら要ローカライズのタイトルではあるが，シャーロッキアンであればベーカー街にあるホームズのアパートのデフォルメ具合に小首をかしげながら，また一方でニヤリとしながら楽しめるはず。一度チャレンジしておいて損はないだろう。（Gueed）

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