本拠のスウェーデンにマーケティング部門,イギリスに開発部門を構えるデベロッパSimBinのFIA GT公認レースシミュレータ「GTR − Official FIA GT Racing Game」のデモ版が登場。このプレイアブルデモは,実はプレスのプレビュー用として配布されたものなので,インストール時にパスワードを要求される。本来パスワードは各プレスに配られたReadme.txtに記載されているようだが,現状,本体験版は実質フリーとなっていることだし,当サイトでも明らかにしておこう(パスワードは,「GTR_Press_Demo」)。
本作は,PCゲームシーンにおいて"久々"ともいえるガチガチのレースシミュレータだ。最近ではCodemastersの二枚看板「ToCA Race Driver 2」や「Colin McRae Rally 04」など,現実のクルマの挙動とアーケードライクな操作性を両立させたタイトルが主流だが,このGTRはセッティング項目の多さ,一見さんの見捨て具合など,コンセプトが根本的に異なるタイトルと考えていい。
ちなみにFIA GTとは,フェラーリやポルシェといったワークスチームとプライベートチームが混在して戦う耐久レーシングシリーズ。チャンピオンシップは馬力別にGTクラス(平均600馬力)とN-GTクラス(平均430馬力)に分かれており,いずれも一般人想像不可なレベルの速度域で争うモンスターマシン・カテゴリとなっている。
デモ版には前述の2クラスの車種,それぞれLISTERとMORGANが収録されており,FIA GTチャンピオンシップの第6ラウンドで使用されるベルギーのSpa-Francorchampsをドライブできる。
さて実際にゲームをプレイしてみると,エンジンの回転を上げてスコンとギアを入れた瞬間から「あ,こりゃ"違う"わ」という強い印象を受けた。実はコースインした段階ではリミッターの効果でまったく速度がでないのだが,Lキーでリミッターを解除した瞬間,女性の叫び声のような甲高い吸気音と共に一気に加速を始める。モーションブラーを用いて加速を演出するゲームが多いなか,本作は"音"でもってそれらを凌駕する鳥肌モノの加速感を実現しているわけだ。
また,本作はいうまでもなくステアリング/アクセルワーク共にガッチガチのシミュレータなので,走行中にはタイヤのグリップやエンジンのトルクをひしひしと肌で感じることができる。
なかでも特筆すべきはダウンフォースをうまく再現している点だ。高速域でリアタイヤがググッと路面に押し付けられる感覚や,コーナリングでマシンが切れ込んだ途端にフッとスポイラー下のタイヤがグリップを失う感覚が,非力な一般車の運転経験しかない筆者にも十分伝わるほど巧みに表現されている。"高馬力のエンジンを積んでちょっぴりバランスの崩れたレース専用マシン"というのを久しぶりにゲームで感じられた気がする。
ただ逆にいうと,この点が初心者を寄せ付けない原因になっていて,少なくともキーボードによるアクセルワークでは,ステアリングを切る度にハラハラしなければならない。ホイールコントローラ,少なくともアクセル/ステアリングがアナログに操作できる環境でプレイしたいところだ。
本デモ版は収録モードは単独走行のみなので,ライバルカーのAIやチャンピオンシップを含めたゲームの全体像は掴み切れない。だが現時点のクオリティでも十分既存のライバルレースシミュレータに太刀打ちできるポテンシャルが感じられ,2004年中旬の発売前に,シミュレータ部分がどう練り込まれるのか,また現段階ではチープと言い切れてしまうマシンモデリングとテクスチャをどうブラッシュアップしてくるかに期待がかかる。
なおタイムリーなことにSimBinは,5月7日付けの公式サイトのニュースで「E3 2004」のNVIDIAブースにて本作を出展することを明らかにした。どうやら開発の進んだバージョンが見られるようなので,続報に期待してほしい。(Gueed)
■■2004.10.13 オフィシャルデモ追加
2004年5月に掲載したプレスデモに続き,今回新たにオフィシャルデモが公開された。オフィシャルデモでは,AIによるオートラン機能と車のカラーリングなどが変更されている。プレイモードは,ARCADEモードでWEEKEND WARRIORとSEMI-PROモードでRACE WEEKENDを遊ぶことが可能だ。車種とコースは前回のデモ同様LISTERとMORGANで,ベルギーのSpa-Francorchampsを走ることとなる。アーケード系ドライブシムを好むプレイヤーは,まずはAIの走行を参考にして本作を体験するとよいだろう。(Seirou)
(C)SIMBIN DEVELOPMENT TEAM AB
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