Deer Hunter 2004(Atari)

 1997年,価格も内容も桁違いにお手軽なゲームがアメリカでミリオンヒットを記録した。大自然の中で,ただ鹿を狩るという「Deer Hunter」という作品である。ちょうどFPSという過激なジャンルが世界中で急速に浸透してきた時代,滅多に出てこない鹿を探して撃つだけという,のんびりとしたFPS(?)が異例の大ヒットを飛ばす。これはゲーム業界にとって衝撃的な出来事であった。しかも,どうやら「Deer Hunter」は普段PCゲームをしそうにない一般層にウケたらしいのだ。なぜならゲーマーなら見向きもしないようなタイトルであったし,実際見向きもしなかったのである。
 だが「Deer Hunter」は1998年の年間セールス第2位を記録,続く「Deer Hunter2」はベストセラータイトルとなった。似たような亜流タイトルが山ほど発売され,狩猟ゲームというジャンルが確立。本家「Deer Hunter」はシリーズ化され,年間ゲームランキングの上位に毎年顔を出している。
 さて,今年も「Deer Hunter」の季節がやってきた。さすがに長い年月をかけてシステムはすっかり向上し,3D画面のままでは移動すらできなかった初代「Deer Hunter」のようなハンパさはない。3D描画技術も毎年向上を重ね,森の中を歩いていると,なんか新鮮な空気を吸って健康的になっていくかのような錯覚を覚えるほどのレベルに到達している。
 しかし本シリーズが偉大なのは,内容的に高級感は増していくものの,ゲーム性は基本的に何も変わっていないことだ。最新作「Deer Hunter 2004」も,余計な要素はほとんど何も加わっていない。あいかわらず何者も見当たらない森の中に,ポツンと放り出されるところから始まる。ちょっと歩いてみても,双眼鏡で周囲を見回してみても,鹿どころか木ぐらいしか出てこない。主人公を殺したくて殺したくて仕方がないクリーチャーやらテロリストやらが大挙して押し寄せてくるFPSに慣れたゲーマーは,最初はかなり戸惑うだろう。

 シリーズ代々,鹿の挙動だけは本物同然の再現性だった「Deer Hunter」。もちろん現実同様,ゲームでも野生の鹿は臆病極まりなく,まず人間に近寄ってくることはない。それどころか,かなり離れた距離からでもこちらの足音を聞きつけ,森の奥へピューと消えてしまう。
 そのような手ごわい相手を,どうやって狩ろうかというのが本作の本質的なゲーム性だ。プレイヤーは鹿のフンを探し,匂いのスプレーを散布し,エサを置き,鹿笛を吹き,風向きを考慮し,じっと身を隠して鹿を狙うのだ。なんとも地味な戦いだが,これが本作の魅力なのである。
 ちなみにまったくの余談だが,筆者は以前「Deer Hunter」の記事の関係で,渋谷の某店に鹿笛を買いに行ったことがある。そのとき,怪しい店の親父に「そこらで吹いたら,草むらからどんどん飛び出してくるから」とアドバイスを受けた。渋谷のど真ん中での話である。何が飛び出してくるのかは聞かなかったが,もしかしたら鹿かもしれないので,みんなも気をつけよう。

 今回リリースされたデモ版では,シングルプレイ,マルチプレイ,ワイルドライフ(動物を眺めるモード)といった一通りのゲームモードが楽しめる。最初のキャラクターメイキング画面で各種能力値にボーナスポイントを振り分けたら,さっそく狩りを開始しよう。ちなみにボーナスポイントは,狩りを成功させるたびに獲得できる。また装備品の選択も,若干は変更が可能だ。
 広大な狩猟場の移動には馬を使える。馬上でも,徒歩での移動中も,Shiftキーを押すと走ることができるが,音に敏感な鹿に気づかれやすいので気をつけたい。移動しつつ動く物陰を探し,あるいは双眼鏡で周囲を見回し,根気よく鹿を探そう。肉眼ではギリギリ物陰が見えるぐらいの距離で発見しなければ,まず気づかれてしまう。発見したら中腰,伏せるといった行動も併用し,慎重に近づいていく。
 森の中には立派な角を持った目的の牡鹿のほか,かわいらしい雌鹿や小鹿,タヌキに野うさぎ,リス,空には鷲が飛び,川にはバスもいる。基本的には,これらのすべてをハンティングできる。しかし母子鹿(たいてい一緒にいる)を狩ったり,戯れに小動物を撃ったりするのは,なかなか残虐非道な気持ちにさせてくれる。人間も鹿も,銃で狙われるのは男の役目だ!(と思う)。ちなみにまったくの余談だが,筆者は以前「Deer Hunter」の記事の関係で,都内の某動物園に取材に行こうとして「鹿狩りの取材なんですが……」と電話口で言ってしまい,厳しく断られたことがある。みんなも気をつけよう。
 仕留めた獲物は,キャラクターメイキング画面から行ける展示室にて閲覧できる。デモ版にしては随分と太っ腹に遊ばせてくれるので,ぜひ一度お試しを。(Kawamura)


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キー操作

  • 前後左右移動 W / S / A / D
  • 銃を構える,撃つ,アイテム使用 マウス左クリック
  • 銃の構えを解く,アイテム選択画面 マウス右クリック
  • スコープのズーム,アイテム選択 マウスホイール
  • 馬に乗る,獲物を獲得 Enterキー,Num0
  • リロード R
  • 中腰,伏せる X
  • 立つ C
  • 走る,歩く Shiftキー
公式サイト 119MB
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