1920〜30年代のアメリカといえば,1919年に施行された"禁酒法"の影響が,国全体に影を落とした時期。結果としてアメリカはアルコールのない健全で明るい社会に……はならず,日陰者だったマフィアが"密売"と"暴力"によって爆発的に勢力拡大した,まさに暗黒時代だったのである。
中でも,暗黒街の帝王と呼ばれたのが有名なアル・カポネ。彼は密造酒の販売によって個人商としては史上最高の年間純利益を記録し,その金で役人達を買収し(おかげで逮捕されないのである),部下を何百人も従え,強力な銃器を揃え,対立するギャングやら罪のない市民やらを殺害しまくり,アメリカ国民を恐怖のどん底に陥れたのだ。
というわけで,1930年前後のシカゴで暗躍したアル・カポネのギャングRTS,その名も「Chicago 1930」の登場だ。実に分かりやすいタイトルである。
本作はバットやナイフ,拳銃にマシンガンといった武器を装備したメンバーを操作して,さまざまなミッションに挑む,コマンドスタイプのRTSだ。
「ロビンフッド 〜レジェンド オブ シャーウッド〜」のカスタマイズ版ゲームエンジンを採用し,細かなオブジェクトの描写とアクション性の高さを再現している。
大きな特徴となっているのが,"バレットタイム"をこの手のシステムに採用した点。RTSというと,あわあわしているうちに次々と味方が壊滅していくから苦手! という人にとっては,実にありがたい機能の採用だろう。
もう一つの特徴は,マフィアシナリオと並んでポリスシナリオも用意されていること。この暗黒時代を生きる,気骨あるFBI捜査官の立場も体験できるのである。
デモ版では,マフィア側とポリス側を1ミッションずつ収録している。マフィア側は敵のアジト(?)に3人で乗り込んで,密造酒をぶっ壊しまくるというミッション。ポリス側は殺人事件を解決するという,RTSシステムでは珍しい捜査ミッションをプレイできる。
ゲーム中のNPCは,フェイスマークによって感情が表現され(消すことも可能),それが行動に影響する。目玉マークが出ているNPCは買収や会話が可能で,これはとくにポリスの捜査ミッションで重要になる。
また,最初から武器を構えているほうが有利,というサプライズアタックが有効なのも面白い。銃を手にしたまま敵の前に現れれば,敵は手を上げて降参する。あとはボディチェックして武装解除させたり,気絶させてロープで縛れば殺さずに敵を無力化できる。
この手のギャングRTSは以前から何本か存在するが,本作は過去の作品を大きく超えるほどのクオリティというわけではなさそうだということが,悲しいことに本デモ版から伝わってしまう。
肝心のバレットタイムは,目の付けどころは非常に良いと思うのだが,使い勝手があまりよろしくない。とても細かく描き込まれている背景も,あまりイジれないのが残念である。
もちろんゲームとしての及第点はクリアしているので,この手のジャンルや雰囲気に興味のある人はぜひプレイしてみよう。マフィア側もポリス側も,両方それなりに楽しめるだろう。(Kawamura)
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