「ウルティマX オデッセイ」ついに正式発表!#インタビュー編 - 2003/08/23 21:12


 「ウルティマX オデッセイ」(以下,UXO)のリード・デザイナーを務める,ジョナサン・ハナ(Jonathan Hanna)氏にインタビューを行った。ハナ氏は,「ウルティマ オンライン」のコミュニティでは"カランドリル"(Carandryll)というハンドル名でも知られるコミュニティ・コーディネーターとして,また「ウルティマ オンライン −ブラックソンの復讐−」以降のコンテンツデザイナーとして,ここ5年近くに渡ってウルティマ オンラインシリーズを手掛けてきた人物だ。

「RPGプレイヤーは,細かい部分まで自分の思う通りにコントロールしたいと考える人が多いでしょ。その要望に答えたいですね」

forGamer.net(以下,4GN):
まず,なぜ新しいウルティマシリーズを制作することになったのかを聞かせてもらえませんか?

ジョナサン・ハナ(以下,JH):
実は,UXOは私がこのチームにリードデザイナーとして選ばれる前から決まっていた企画なのです。ライブチームのコンテンツデザイナーとしても,今後どうやって「ウルティマ オンライン」の世界を広げていくかということに葛藤がありましたが,ウルティマ オンラインは,それだけでも成功しているプロジェクトであり,その成功していること自体が,Electronic ArtsとOrigin Systems社に新規プロジェクトを立ち上げさせる契機になったのだと思います。「成功しているんだから,無理に改良する必要はない。それなら,まだやれることを別企画で立てようよ」という判断ですね。同じ角度ではなく,まったく別のMMORPGを作ってみたいと考えたのです。

4GN:
多くのファンにとっては,リチャード・ギャリオット氏が抜けたあとで,なぜウルティマの世界に手出しするのかという批判もあるとは思うのですが。

JH:
リチャードは,未だにウルティマ オンラインのことは気に留めているようで,我々もオフィスが近いことから,たまに食事に行ったりなど関係は維持しているんですよ。いまだにウルティマシリーズ本編のファンも多く,現役で稼動しているファンサイトもたくさんあります。だから,ウルティマシリーズの今後のことを考えると,我々残った開発者達も,何か新しいことをすることで,この偉大なシリーズを生存させていくことができるのではと考えたのです。何か別の視点でシリーズを見つめることで,このシリーズを生かせていけるのではないかと。ウルティマ オンラインでは,とくに"徳システム"についてはタッチされていませんでしたし,シリーズの色を残しながらも,これまでのシリーズにはなかったゲームを作りたいと考えたのです。

4GN:
このプロジェクトのリードとして,ゲームデザインにおける哲学のようなものはお持ちですか?

JH:
外せないと思うことが二つあります。一つは,プレイヤーが実際にプレイしていて,そのキャラクターを自分が操作しているんだと感じられるようにするということ。これは,コンバットシステムからクエストへの導き方なども含みます。例を挙げるなら,MMORPGではマクロ(同じキーコマンドを自動的に行う外部ソフト)を利用するプレイヤーが非常に多い。これは,そのプレイヤー達が,反復作業ばかりでつまらないと感じているからなのでしょう。「ゲームを操作するのが面白いからマクロなんて使わなくてもいい」と思わせるのが,UXOの根底に流れる哲学の一種だと思います。個人的には,楽しくない機能であれば,ゲームにまったく存在しないほうが良いとも考えています。

4GN:
UXOでは,マウスをクリックさせながらも決してハック&スラッシュになっていないのが,おっしゃる通りの操作していて楽しい部分ですね。

JH:
そうです。剣を振るなり特殊攻撃を繰り出すなりして,実際にキャラクターを操作していると感じられるでしょう? 素早く対処しても,じっくりと考えながらプレイしても,すべてのスタイルに利点があるように心掛けて作っています。RPGプレイヤーは,細かい部分まで自分の思う通りにコントロールしたいと考える人が多いでしょ。その要望に応えたいですね。

4GN:
では二つめのデザインフィロソフィとは?

JH:
二つめは,プレイヤーが自分がその世界で重要な立場にある,ヒーローであると感じられることですね。よく言われることですが,いまだにMMORPGではこの点が欠落しています。何千人というほかのプレイヤーがいるからといって,プレイヤー個人個人がヒーローになれないとは考えていません。しかし,現時点では多くのプレイヤーが途中で意欲を失ってしまい,ゲームを止めるか不法行為に走って自己満足してしまうと思われます。すべてのプレイヤーがゲーム世界でのヒーローになれるという事実に気付き,プレイヤーの行動によってNPCなども尊敬の念を表したりすれば,新しい次元で満足できるようになるはずなのです。
UXOでは,プレイヤーが自分の徳に合わせて行動したときに,なんらかのリアクションを起こします。他人を助けたプレイヤーにヒーラーが新しいクエストを渡したり,正義を重んじる町の護衛が助言をくれたりするのです。


「アイテムの生産はできなくても,UXOにはインテリジェントアイテムがあり,アイテムがプレイヤーの徳やプレイスタイルに合わせてカスタマイズできる」

4GN:
今回のデモでは町やNPCがほとんど登場していませんが,実際にはもっと生き生きした世界になるのでしょうか?

JH:
もちろんです。町はNPCで溢れ,例えば噴水付近で洗濯物をしている婦人とか,汗を吹きながら鉄を打っている鍛冶屋の主人とか,毎日の生活風景が表現される予定です。ゲームには日夜の変化はありますけど,夜になったら町が寝静まるというのはあまりにもゲームプレイヤーに理不尽なので,そういうリアルさは追求しないようにしています。
またモンスターの思考ルーチンも,今日見せたものはプロトタイプであり,今後ももっと複雑化していきますよ。仲間を呼びに行ったり,不利だと思うと逃げるのはもちろん,プレイヤーが一つの魔法ばかりで攻めるというような同じようなプレイをしていると,その戦略の裏を突いて来たりもすることになります。

4GN:
あと,一つのゾーンにいるモンスターの数があまり多くないようですが。

JH:
あくまでもデモですからね。正式稼動時には,もっとモンスターで溢れることになりますし,さらには,スポーンポイントや再生時間も自動的に調節できるUnrealエンジンの特性を生かし,リアルタイムで変化されることが簡単にできるんです。あと,プライベートエリアの存在が,ゾーンが人でごった返すことを解消してくれるんじゃないでしょうか。一つのパーティには最大で8人までが参加できますが,一人からでも専用エリアを作ってしまうのですから。

4GN:
たった一人でも専用エリアでプレイできるというのは,何となくMMORPGにシングルプレイヤーモードを取り入れたような,面白い趣向ですね。

JH:
本当にその通りです。シングルプレイヤー専用などというと,今ではチープに感じてしまう人だっていますが,我々にとっては最大の賛美ですよ。現状では,ほかのプレイヤーといっしょにプレイできないという部分をなくせば,少なくともRPGではストーリー,コンバット,経験においてシングルプレイヤー専用ゲームが優れています。だから,その面白い部分をMMORPGに取り入れることに成功すれば,街の中では大人数でワイワイしながらも,自分一人で森の中を歩いているような,プレイヤーには至極都合の良いシステムになると思います。

4GN:
パーティプレイをすることでの利点はありますか?

JH:
もちろんある程度は考慮しています。とくに,レベルの異なるプレイヤーが参加するパーティをどうするかなど,考えるべき点はいろいろありますね。ただ,パーティであれ一人であれ,楽しんでプレイできるようデザインするように心掛けますよ。

4GN:
プレイヤーがゲームを開始するのは,街ですか?

JH:
はい。種族ごとに6か所の街を用意します。これ以上は話せませんが。

4GN:
7人分作る弟子キャラクターは,レベルキャップに到達したあともプレイできるのでしょうか?

JH:
はい。キャラクターがキャップに到達しなければ別の新しいキャラクターは作れませんが,その前に作ったものなら自由にプレイできます。もっとも,次のキャラクターにはその前のステータスがある程度加算されますので,弟子が増えるほどレベルも早く上げられることになります。さらに,メインキャラクターは弟子キャラクターを一体分だけ召喚し,ペットかヘンチマン(=子分)のように連れて歩けるようにする予定です。メインキャラクターを育てるためだけに,弟子キャラクターを育てて捨てるようなことはしてほしくないですし。今のところ,弟子キャラクターは一体につき1日数時間とか,ある程度の制限は付けるつもりではいますが,何かのクエストで弟子の特殊能力がほしいときなどは,相当重宝するでしょう。

4GN:
ゲームを始めて開始した時点では,プレイヤーは一人分のメインキャラクターしか作成できないのでしょうか?

JH:
いや,現時点では固まっていないですが,何人分かのスロットは用意しています。一人のメインキャラと7人の弟子キャラクターだけしか作れないわけではないですよ。もし,せっかく途中まで育て上げたキャラクターがもったいないと思うなら,そのキャラクターをメインキャラクターの弟子にコンバートさせることも可能です。あと,弟子も1度に数人並行して育てるということはできるようになると思います。重要なのは,弟子の順番ではなく,8種の徳を極めるとこですしね。

4GN:
リソースを使った生産がないのは残念だというファンも多いと思いますが。

JH:
まだないですね。でも,持ち家システムと共に最初の拡張パックで対応する予定なので,期待していてほしいです。生産や持ち家は,シリーズでは絶対に避けて通れないことなので,うまくやりたいと思っていますし,面白いことができるはずですから。アイテムの生産はできなくても,UXOにはインテリジェントアイテムがあり,アイテムがプレイヤーの徳やプレイスタイルに合わせてカスタマイズできるので,その点ではもっとゲームアクションに根差したアイテム生産ができるようになっていると思いますよ。それほど失望しないんじゃないかなあ。

 知れば知るほど,当初感じた"ちょっとした失望"とは裏腹に楽しみになってくる「ウルティマX オデッセイ」。ハナ氏は,「この作品の"X"は,10作めというローマ数字の意味だけではなくて,何か分からない数値として利用される"X"でもあるのです」と語る。
 本作の舞台となるアリシノールとは,どのような世界なのか。プレイヤーキャラクターが昇天したあとは,どのような状態になるのか。まだまだ分からないことも多いが,すでに混雑で飽和状態に達しているMMORPGというジャンルに,まったく新しいコンセプトとRPGの本流の血筋の両方を兼ね備えたソフトが殴り込みをかけた。これまでのウルティマファンだけでなく,新たなファン層も十分に取り込めそうな作品に仕上がりそうな予感がする。

「ウルティマX オデッセイ」の公式サイトは,「こちら」
「Ultima X:Odyssey」(英語版)の公式サイトは,「こちら」
「ウルティマX オデッセイ」のScreenshots集は,「こちら」
「ウルティマX オデッセイ」の速報5連発など当サイト内の記事一覧は,「こちら」

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