[E3 2003#119]「Tron 2.0」で,デジタルの世界を体験 - 05/21 19:14

 最近,ゲーム開発にも本腰を入れ始めたディズニーは,成人向けのタイトル専用のブランドとしてBuena Vista Games社を設立。その中核ともなるゲーム第一弾が,Monolith Productions社が最新のLithTechエンジンを使って開発する「Tron 2.0」である。
 この作品は,1982年に公開されたSF映画「トロン」の続編となっている。「トロン」は,商業映画としては初めて30分にも及ぶCGシークエンスが使われたことで,公開当時たいへん話題になった作品だが,もう1つ「ウォーゲーム」と並ぶ初期の"ゲームオタク映画"であるのも忘れてはいけない。
 「Tron 2.0」では,映画「トロン」の雰囲気やストーリーラインを継承しており,ゲームソフトのプログラマー志望の若者ジェット(Jet)が主人公となる。父親のアランとは,彼の将来の事などでいつも口論が絶えないのだが,そのアランも映画の方ではTRONを作り上げたコンピューター技師なのだ。
 そんなある日,ジェットは研究室から電話をかけてきた父親の回線が急に不通になったことに不信を抱き,アランの仕事場へ急行することになる。ジェットを待っていたものは,映画同様にメインフレーム"Ma3a"の中へと吸い込まれてしまうという事件だったのだ。

 映画「トロン」のセットのフロアプランをモデリングしたという研究室シーンの後は,チュートリアルが開始する。FPSとしてはかなり異色のゲームなので,このチュートリアルで"ディスク"の投げ方やインタフェースの見方を学んでおくのが得策だろう。ディスクとは,「Tron 2.0」での基本的な武器の1つで,発射するとブーメランのように戻ってくるのが特徴だ。また,ディスクには防御用のメカニズムも用意されていて,右マウスボタンをホールドしたままで振ると,敵の攻撃をはね返すことができる。さらに,デモの担当者の話では,サブルーチンと呼ばれるアップグレードもできるようになっていて,急角度で曲がるようになったり,敵にぶつかると同時に爆発させることも可能となる
 「Tron 2.0」には,他にも数種類の武器が登場する予定で,手榴弾のような機能を持つボールや,Pロッドと名付けられた棍棒や銃器として併用できるようなものがある。サブルーチンは,ゲーム上で出会うNPCから購入するというRPG風のシステムになっており,一度購入すると買い足す必要はない。
 面白いのは「Tron 2.0」にはASM(Active System Memory)という,いかにもコンピュータ的なコンセプトがプレイヤーキャラクターに用意されており,サブルーチンなどで増強することによって,このメモリーがいっぱいにならないように注意しなければならないのだ。もっとも,各マップにはオプティマイザやコンプレッサなどのアイテムが散らばっており,これらを使ってサブルーチンを最適化するなどし,メモリーのスペースを増やすことも可能らしい。

 「Tron 2.0」は,DirectX9.0のプログラマブルシェイディング機能を駆使したグロー効果をゲーム中で巧みに使用しており,ネオン光がキャラクターモデルからオブジェクトやバックグラウンドにまで施されることによって,映画「トロン」のようなコンピューター内部のデジタル世界のイメージを上手く表現している。オレンジ色のインターネットハブや黄色いファイヤーウォールなど,各レベルによって特徴的に色分けされているので,同じような光景にはなってないのも良い。
 今回大きく紹介されていたのがライトサイクルを使ったマップで,グリッド上を周囲の壁やオブジェクトに当たらないように,縦や横へと進んでいく。もちろん3Dゲームではあるが,どことなく2Dのプラットフォームゲームのような雰囲気もあるレベルだ。ライトサイクルは,映画「トロン」にも携わったインダストリアル・コンセプトアーティストのシド・ミード(Sid Mead)氏が,現代のノウハウでデザインしなおしたもので,三種類が登場することとなる。
 E3会場では,LAN接続された複数のPCが用意されており,このライトサイクルを使っての対戦ゲームができるようにもなっていた。元々,このゲームはネットワークゲームには重過ぎるとされていたが,少なくてもライトサイクルを使ったデスマッチや協力プレイは製品版に含まれることになったようだ。マップ上には様々なアイテムが用意されており,中でもユニークなのがスピードブースト。これはプレイヤーばかりでなく,参加者全員の移動速度を高速化してしまう。スピード感があるので,敵の位置を確認しながら壁にあたらないよう気を付けるのには慣れが必要なものの,遊んでいて十分楽しいと感じられる対戦プレイだった。

 「Tron 2.0」は,欧米ではVivendi Universal Games社が流通を担当し,8月末にはリリースされる予定だ。ディズニーのブースでは,"トロン・リユニオン"と称して,映画に登場した俳優たちのサイン会なども行われていた。(奥谷海人)


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